東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

2024鑑賞実践講座④|「展示室でまなぶ場づくり 〜スペシャル・マンデーに向けて〜」

2024.08.26

 


 

第4回鑑賞実践講座|「展示室で学ぶ場づくり 〜スペシャル・マンデーに向けて〜」

日時|2024年8月26日(月)14:30~17:30
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ、ギャラリーA・B・C(『大地に耳をすます 気配と手ざわり』展 会場)
講師|石丸郁乃(Museum Start あいうえの)、越川さくら(とびらプロジェクト)
内容|
・「スペシャル・マンデー」の事前〜当日〜事後の流れを学ぶ
・当日の流れを展示室で体験する
・会場を知る

 


第4回の講座では、とびラーが活動する「Museum Start あいうえの」の学校来館プログラム「スペシャル・マンデー」に向けて、展示室での鑑賞の場づくりについて考えました。

まず、「Museum Start あいうえの」のプログラム・オフィサーである石丸郁乃さんが、「スペシャル・マンデー」の映像を交えながら、プログラムの概要を説明しました。事前授業〜当日の展覧会鑑賞〜事後授業までの流れを理解することで、プログラム全体の構成を把握しました。

続いて、講座担当の越川が、作品を守りながら展示室で子どもたちの鑑賞を深めるためのポイントについてレクチャーしました。

その後、スペシャル・マンデー当日のプログラムの流れを、実際に鑑賞する展覧会会場で体験しました。

とびラーたちは、子どもたちの鑑賞体験を想像しながらグループで展示室を巡り、鑑賞を楽しみました。その上で、作品保全のために注意すべき動線や、子どもたちのグループをどのように誘導するかを確認しました。


2024年度のとびらプロジェクトには全盲のとびラーが参加しています。鑑賞実践講座では、毎回の鑑賞作品に合わせてスタッフが「触図」を制作し、構図やモチーフの形を伝えながら情報保障を行っています。

今回の講座では、実際の作品の前でグループで鑑賞を行う際に、手元にA4サイズの「触図」を用意しました。全盲のとびラーは、実際の作品の大きさについてスタッフから説明を受けながら、手元の触図で構図を確かめつつ、グループでの対話に参加していました。

作品図版のカラーコピーを用いて作成した「触図」。モチーフの輪郭線が触ってわかるようになっている。


 

グループでの鑑賞後は、スペシャル・マンデー当日に子どもたちが体験する「ひとりの時間」を、とびラー自身も体験しました。

グループで対話しながら鑑賞することで視点が広がり、作品への理解が深める回路ができた後、ひとりで作品と向き合い思索する時間です。この流れを実際に体験することで、とびラー自身も子どもたちにとっての「ひとりの時間」の豊かさを実感しました。

展示室での体験が終わった後は、「鑑賞者と作品の両方にとって、安全で安心できる鑑賞の場を作れていたか」という視点で、グループごとにふりかえりを行いました。


9月から始まる「スペシャル・マンデー」に向けて、何度も展覧会に足を運び、さらにファシリテーションのイメージを深めていきましょう。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2024アクセス実践講座③|Creative Ageing

2024.08.25


日時|2024年8月25日(日)13:30~16:30
場所|東京藝術大学 第1講義室
講師|藤岡勇人/東京都美術館 学芸員、金濱陽子/東京藝術大学


 

東京都美術館と東京藝術大学が取り組むプロジェクトとして「Creative Ageing ずっとび」があります。

2021年にスタートし、台東区の病院や福祉関連施設と連携しながら、アクティブシニア(元気なシニア)対象のプログラム認知症の方や、認知症が気になる方、またそのご家族へ向けたプログラムを実施してきました。

第3回では、「Creative Ageing ずっとび」を担当する、東京都美術館 学芸員の藤岡勇人さんと東京藝術大学の金濱陽子さんから、立ち上げの経緯やこれまでの取り組みの事例についてお話しいただきました。

 

 

 

ずっとびのプログラムにおいて、とびラーは参加者と一緒に作品を見たり、発言を引き出したりしながら、参加者が安心した気持ちでプログラムに臨めるような場づくりを進行しています。

今回の講座ではプログラムに参加したとびラーにも登壇してもらい、参加者の様子で印象的だったことやどんな時間だったかなど、感想も交えてお話ししてもらいました。

 


各プログラムの詳細は、それぞれの活動紹介ページや動画でご覧いただけます。

■「動く、遺影!イェイ!イェーイ!」(2024年8月7日実施)

活動紹介ページ

■「アート・コミュニケータと一緒に楽しむ おうちで印象派展」(2024年3月16日実施)

活動紹介ページ

動画

■「ずっとび鑑賞会」(2023年10月3日実施)

活動紹介ページ

動画


 

その話を受けて、とびラーは3人組になって自分たちが感じたことを話合いました。

 

 

後半は、台湾やイギリスでのCreative Ageingの活動事例について、藤岡さんからお話しを伺いました。

 

 

人は誰もが歳を重ねていきます。世間ではアンチエイジングという言葉も見受けられますが、とびらプロジェクトやずっとびは「歳をとること」をポジティブに捉え、さまざまなプログラムを通して、この価値観を発信していきたいと考えています。

講座の中での「創造的な活動は健康に良い」というお話が印象に残りました。高齢者に限らず、どの世代の人も創造的に、そして健やかに日々を過ごすことができたら、自分はもちろん他者の視点や価値観を肯定し、お互いに認め合える社会になるのではないかと、今回の講座から感じました。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 西見涼香)

2024建築実践講座②|建築を鑑賞する

2024.08.24


第2回建築実践講座|「建築を鑑賞する」

日時|2024年8月24日(土) 14:00〜17:00
会場|東京藝術大学 第1講義室
講師|倉方俊輔(大阪公立大学 教授、建築史家)


 

大阪公立大学 教授の倉方俊輔先生をお招きし、「建築を鑑賞する」をテーマにお話いただきました。

近年、精力的に取り組まれている美術作品の対話による鑑賞を建築でおこなう「建築鑑賞」を軸に講座が進んでいきました。

建物の所有者や利用者が使い続けること、一般公開し活用することによって建築の価値を捉え直したり、市民が鑑賞することで貴重な建築を保存し後世につながることについて考える時間になりました。

倉方先生が実行委員長を務めていらっしゃる東京建築祭をはじめ、最新の情報も交えてさまざまな事例を挙げてお話くださり、建築を介したコミュニケーションについて理解を深めていく講座となりました。

 

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 西見涼香)

 

2024鑑賞実践講座③|「ファシリテーション基礎(2)」

2024.07.15

 


 

第3回鑑賞実践講座|「ファシリテーション基礎(2)」

日時|2024年7月15日(月・祝)10:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム・スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))、ARDAコーチ5名
内容|
・映像を使ったVisual Thinking Strategies ファシリテーション分析
・Visual Thinking Strategies ファシリテーション実践と分析

 


 

第3回は、前回に引き続き、NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)の三ツ木紀英さんから、Visual Thinking Strategies(ビジュアルシンキングストラテジーズ:複数の人で対話をしながら作品を鑑賞する手法。以下、VTS)におけるファシリテーションの基礎を学ぶ2回目です。

午前は、まず、小学4年生の児童がVTS鑑賞をしている映像を視聴しました。映像内のファシリテータと児童の対話の内容をメモしながら、ファシリテータが行っていること、問いかけていること、また、その作用を観察しました。

特に今回は、VTSの手法の中で「Q2」と呼ばれるファシリテータの問いかけを中心に観察を行いました。

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「Q2」は、VTS鑑賞において、鑑賞者が「こんなふうに感じる」という主観的な意見を言った場合に、「(あなたに)そう感じさせるのは、作品の中の何が要因なのか」ということを、客観的に考えていくための質問です。問いかけの例としては「作品のどこからそう思いましたか?」などです。この質問をすることで、発言した児童や、一緒に鑑賞している児童にどんな変化が起こっているかという部分を中心に映像を観察しました。

(VTSのファシリテータは対話の問いかけとして3つの問いかけを用います。「Q2 」以外に「Q1」「Q3」があります。「Q1」は、対話を始めるときに参加者全員に投げかけるオープンな問いかけ。例:「この作品の中で何が起こっていますか?」など。「Q3」は、1つの意見の検討が終わった時に、再び全員に向けてする問いかけ。例:「他に発見はありますか?」などです。)

作品画像のカラーコピーを用いて制作した「触図」。スタッフがモチーフの輪郭線を触らせながら説明している様子。

午後は、グループに分かれて、VTSファシリテーションの実践とふりかえりを行いました。ここで鑑賞した作品は、実際にとびラーが来館者と鑑賞をする展覧会の作品から数点が選ばれました。

ここでも、「Q2」(作品の中に根拠をさがす質問)を、何に対して、どのように聞いていたのか。または、聞いていなかったのか。また、「Q2」を聞くことによって、鑑賞の場にどんな影響が起こっていたかということをグループで検証していきました。

今回は、VTSファシリテーションの基礎となる「問いかけ」とその作用について1日を通して考え、実践してきました。次回は、実際の来館者との鑑賞に向けて、展示室での場づくりについて学んでいきます。

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2024鑑賞実践講座②|「ファシリテーション基礎(1)」

2024.07.14

 


 

第2回 鑑賞実践講座|「ファシリテーション基礎(1)」

日時|2024年7月14日(日)10:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム・スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))、ARDAコーチ5名
内容|
・グループ鑑賞体験
・ファシリテーションのポイント観察
・Visual Thinking Strategies ファシリテーション実践

 


 

第2回からは、NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)の三ツ木紀英さんを講師に迎え、Visual Thinking Strategies(ビジュアルシンキングストラテジーズ:複数の人で対話をしながら作品を鑑賞する手法。以下、VTS)におけるファシリテーションを学びながら、作品をよりよくみることや、アートを介したコミュニケーションの場づくりについて考えていきます。

第2・3回は、ファシリテーションの基礎を学ぶ2日間です。

第2回の午前は、 グループに分かれ、ポスターサイズの作品画像を用いて、複数の人で作品を鑑賞する体験をしました。また、その鑑賞体験をふりかえりました。とびラーは、1人で作品をみるときとは一味違う鑑賞の深まりや複数の視点でみることの面白さについて話しあっていました。

 

 

午後は、三ツ木さんのファシリテーションで、現在の東京都美術館で開催中の展覧会出展作品より2作品を鑑賞しました。

とびラーは、作品を鑑賞する「鑑賞者」と、VTSの場を観察する「観察者」に分かれます。そして、ファシリテーションのポイントをその場で観察します。

観察のポイントは、ファシリテータが行った振る舞いや問いかけが、鑑賞の場にどのように影響するか、その「原因と結果」を読み取ることです。

ここでは、鑑賞実践講座への参加2・3年目のとびラーが中心となって、観察して発見したファシリテーションのポイントを全体でシェアしていきました。

2024年のとびらプロジェクトには、全盲のとびラーが1名参加しています。今回の講座では、情報保障として、作品のモチーフの輪郭線が触覚的にわかる作品画像(=触図)を制作しました。作品画像のカラーコピーをモチーフの輪郭ごとに重ねていく簡易的な作りです。

触図は、グループの対話で語られる視覚的な情報を、スタッフが隣について伝えながら使用しました。モチーフの位置や全体の構図を触って理解できることで、構図についての説明が伝わりやすくなります。また、グループの対話の内容も理解しやすくなるというメリットがありました。それにより、全盲のとびラーも鑑賞の流れを掴みやすくなり、自分の意見や質問を発言することができていました。

鑑賞実践講座への全盲のとびラーの参加を考えることを通して、見えない人との鑑賞についてもとびラーと一緒に考えていきます。

 

作品画像のカラーコピーを用いて制作した「触図」

 

また、講座の最後には、小さな作品画像を使って、全員がVTSファシリテーションにトライする時間も設けました。

いよいよ、VTSファシリテーションの実践的なレクチャーと体験が始まりました。実際の来館者との鑑賞に向けて、座学だけでなく実践を積み重ねながら学んでいきましょう。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2024アクセス実践講座②|ろう文化

2024.07.07


日時|2024年7月7日(日)14:00〜16:15
場所|東京藝術大学 第3・4講義室
講師|小野広祐/明晴学園 教頭


 

第2回は、明晴学園教頭でありNHK手話ニュースキャスターでもある小野広祐先生をお招きし、ろう文化について伺いました。

聞こえない人といっても、音声言語を身につけた後に聞こえなくなった中途失聴者、音がある程度識別できる難聴者、生まれつき聞こえなかったり、音声言語を獲得する前に失聴したろう者とさまざまであり、手話にも日本手話と手指日本語があるとお話がありました。

小野先生は普段、日本手話を使ってコミュニケーションを取っていらっしゃるとのこと。顔の動きやうなずきによって、意味やニュアンスが変わることを学びました。そして「日本手話は、音声の代わりとなる補助的なものではなく、言語のひとつ」という言葉が印象に残りました。

 

 

言語が違えば、表現も異なります。手話では相手を指差すことが多々あります。聴者が日常生活で同じことをすると失礼という考えもありますが、指差しは手話にとって大事な表現です。ゲームによって指を差すこと/指されることに慣れたり、実際に手話をやってみたりして、手話の表現やろう文化について学びを深めていきました。

 

 

とびラーの中には、ろう・難聴のとびラーもいます。

また、とびらプロジェクトと連動する「Museum Start あいうえの」では、2年にわたって聴者・ろう者・難聴者が参加するプログラム「みるラボ」を開催し、さまざまな「きこえ」の状況にあるティーン世代の参加者ととびラーが一緒に作品を鑑賞し、手話、口話、筆談、通訳、身体表現などの手段を通して「伝える、共有する」ことへの試行錯誤を重ねてきました。

とびラーには今回の学びや感じたことを色々な機会で思い出し、ろう者や難聴者とのコミュニケーションに活かしてくれたらと思います。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 西見涼香)

2024アクセス実践講座①|障害者差別解消法:合理的配慮とは

2024.06.30

 


日時|2024年6月30日(日)10:00~14:00
場所|東京都美術館 講堂
講師|又村あおい/全国手をつなぐ育成会連合会 常務理事 兼 事務局長、小牟田悠介/東京藝術大学


 

2024年度アクセス実践講座の第1回は、とびらプロジェクトマネジャーの小牟田さんから講座の趣旨についてのお話があり、その後、全国手をつなぐ育成会連合会 常務理事 兼 事務局長である又村あおいさんに、障害者差別解消法や合理的配慮についてご講義いただきました。

 

 

まず小牟田さんから、東京都美術館のミッションや取り組みと合わせて、とびらプロジェクトが美術館へのアクセシビリティを学び、考え、実行していこうとする背景についてお話しがありました。

 

続いて、又村さんからは、障害者差別解消法などの法律について伺いました。「障害とはなにか。障害理解とは」を考える時間では、社会のさまざまな障壁によって生じる「社会モデル」があることや、ヒトは歳を重ねることで視力や聴力、身体機能などが低下していくので数年後の自分の理解にもなるのではないかというお話があり、新たな気づきがありました。

 

 

また合理的配慮とは、相手との建設的な対話によって「できる」「できない」で考えるのではなく、できる範囲で対応可能な、納得の得られる配慮をおこなうことであると伺いました。

とびラーの中には、ろう者や難聴者、全盲の方がいます。スタッフやとびラーは普段から音声アプリや筆談、ときには手の感覚(触覚)を使い、彼らと一緒に対話を重ねながら、とびらプロジェクトは進んでいます。そして、東京都美術館では、特別展の休室日を利用した「障害のある方のための特別鑑賞会」を開催しています。

このような場で活動する機会が多いとびラーにとって、当事者が困りごとを申出しやすい場をつくることが大事だと気づく講座になったのではないでしょうか。

 

 

合理的配慮という言葉は聞いたことがあっても、何をどうすればいいのかわからないと身構えてしまっていましたが、とびらプロジェクトで日々おこなっているように、気軽に声をかけることから始めてみようと、今回の講座から思いました。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 西見涼香)

 

2024建築実践講座①|都美の建築と歴史と楽しみ方

2024.06.29


第1回建築実践講座|「都美の建築と歴史と楽しみ方」

日時|2024年6月29日(土) 10:00〜15:00
会場|AM:東京都美術館 講堂/PM:東京藝術大学 第3講義室
講師|河野佑美(東京都美術館 学芸員)


 

現在の東京都美術館は1975年に「新館」として開館し、2010年から2012年にかけて大規模修繕工事がおこなわれた建物ですが、講座の午前中はそれ以前の1925年に開館した「旧館」も含めた東京都美術館の建物や歴史について、東京都美術館 学芸員の河野佑美さんにお話しいただきました。

東京都美術館では「とびラーによる建築ツアー」を実施しています。建築家が込めた想い、歴史、建物の色・デザインといった建築を楽しむポイントを切り口に、東京都美術館の建築空間をアート・コミュニケータ(とびラー)と対話しながら味わいます。このツアーは2012年のリニューアル時におこなった館内ツアーがきっかけで始まりました。
建築ツアーが生まれた経緯や建築家ではない人がツアーを作り上げていくことについても、河野さんの経験を交えながら熱く語っていただきました。

 

 

そして午後は「とびラーによる建築ツアー」を体験しました。
とびラーの中には建築ツアーに参加したことがない人もいます。ガイド経験者のとびラーがガイド役となって、参加者役のとびラーと都美館内を巡りました。
ツアー後は各チームでふりかえりをおこなったり、別のチームでふりかえりで出た話題を共有したりして、私たちの拠点となる東京都美術館への関心を深めていきました。

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 西見涼香)

 

2024鑑賞実践講座①|とびらプロジェクトで大切にしている鑑賞体験とは?

2024.06.24

 

 


 

第1回鑑賞実践講座|「とびらプロジェクトで大切にしている鑑賞体験とは?」

日時|2024年6月24日(月)14:30〜17:00
会場|東京都美術館 講堂
講師|熊谷 香寿美(東京都美術館 学芸員 アート・コミュニケーション係長 )

 


 

第1回目の講座では、今年度の鑑賞実践講座の目標に基づき、「みる」という行為についてさまざまな角度から考えました。

 

講座目標
・さまざまな人が自分の感じ方を大切にしながら作品をよくみるためのコミュニケーションの場づくりができるようになる。
・作品を媒介にして、共同的かつクリティカルに複数の人が思考する場をデザインできるようになる。

 

2024年のとびらプロジェクトには、全盲のとびラーが1名参加しています。鑑賞実践講座でも、視覚だけでなく多様な知覚や感性を働かせながら、他者との関わりを通じて思考する方法を考えていきます。

初回の講座ではまず、「とびらプロジェクトで大切にしている鑑賞」や「共同的な学び」について考えるレクチャーを行いました。

 


 

その後、私たちに備わるさまざまな知覚に意識を向ける体験を行いました。用いたのは、「貝殻」です。

 

 

ツルツル・ざらざら・ギザギザ・まるまる…

触れることで、普段「見ている」だけでは気づけない多様な感触を実感することができました。

さらに、自分が知覚した感触を他者に言葉で伝えることで、自分と他者のコミュニケーションの中で新たな理解が生まれる過程を体験しました。

 

次に、2〜3年目のとびラーがファシリテータとなり、東京都美術館の敷地内に常設展示されている野外彫刻やレリーフをグループで鑑賞しました。

 

 

14期とびラーの皆さんには、自分の感じ方を大切にしながら作品を深く鑑賞する楽しさや、作品を媒介に他者と一緒に考える場の豊かさを体験していただけたのではないかと思います。

 

このような「とびらプロジェクトで大切にしている鑑賞体験」を生み出す場をデザインしていくために、これから約半年間の講座と実践に取り組んでいきましょう!

 

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

【とびラボ活動報告】とびラ体操を作りたい!

2024.06.22

 

■はじめに

とびラー11期の小野関です。

とびラーとして色々な人と関わり、様々な活動に参加する中で、コミュニケーションが発生する場面や仕組みに興味が向きました。

まさか体操を作ることになるとは思ってもみませんでしたが、丸1年に及んだこのとびラボの歩みをご紹介します。

数あるとびラボの中では、異色なラボだったかもしれません。

アートスタディルームで汗をかくまで運動している姿は、他のとびラーたちの目にはどう映っていたでしょうか。

まずはこのラボで制作した「とびラ体操」をご覧ください。

 

 

■体操はコミュニケーションツール

2023年の6月にとびラーの交流会が行なわれました。

2年目、3年目となるとびラーが、4月から加わった新しいとびラーを迎えるためにいろいろな企画を準備し、交流を楽しむ場となりました。

その企画の中の1つに、ラジオ体操がありました。

交流会の当日は、12期とびラーにとって全6回の基礎講座の最終日であり、受講で疲れた頭と体を癒して、リラックスしてもらおうという気持ちから出たアイデアでした。

 

日本で育ったほとんどの人はラジオ体操を知っています。

様々な背景を持つ人の集まりであるとびラーが、同じ時間を過ごすことのできるグッドアイデアだと感心しました。

交流会で実施した際には、「気持ちいいね!」「こんなに長かったっけ?」など、会話が広がっていく様子を見ることができ、コミュニケーションツールとしての体操の持つ力に興味をもちました。

 

少し調べてみたところ、体操を体力向上や健康増進だけでなく、コミュニケーションツールとして活用している地域や学校もあると知りました。

また、ラジオ体操以外にも、「〇〇体操」というコンテンツはたくさん作られています。純粋に運動するためのものや好きなものを身体で表現しているもの、本格的なものからシュールなものまで様々ですが、そのどれにも共通して感じられたのは、「みんなで一緒にやろう!」という気持ちです。

 

体操がコミュニケーションのきっかけになるのであれば、とびラーとかけ合わせたらきっと面白くなるのではないか?

どんなものができるかはまったくわからないけれど、これを作っていくプロセスはきっと楽しいだろう、という予感はありました。

 

 

■「この指とまれ[i]」の想い

交流会から数週間後に、「この指とまれ」をする想いを文章にして、とびラー専用掲示板に投稿しました。その時に書いていたのが以下の文章です。

 

10期・11期・12期とびラー交流会の準備から本番まで、何度かラジオ体操を踊りました。毎回みんなが楽しそうだったのが印象的でした。やり方は少しずつ違っても、同じ動きをすることってコミュニケーションツールなんだと思いました。

だから、都美を題材にしたオリジナルの体操を作って、みんなで踊ればきっと楽しい。そして作る過程では、題材のことをよく見たり、表現方法を考えたりするのがきっと楽しい。

 

これは鑑賞→表現→コミュニケーションの連鎖を感じられるものになりそうな気がする。とびラーもスタッフさんも学芸員さんも守衛さんもみんなで踊りましょう!

 

「体操」の動詞は「踊る」で合ってるのかな?と悩んだことを思い出します。(たぶんですが、「体操」の動詞は「体操する」なんですよね…)

 

動機を一言にしてしまえば、「楽しそうだから」という一点のみだったのですが、それだけでは趣味の自主制作と変わりません。

そこで少しだけ自分たちに問いを向けて考える時間を持ちました。

・美術館で体操を作る意味があるのか?

・美術館で作られる体操とはどんなものか?

・とびラボでやる意味があるのか?

 

考えた結果、「この指とまれ」の掲示板の文中にある「鑑賞→表現→コミュニケーションの連鎖を感じられるものになりそうな気がする」というぼんやりとした考えが浮かびました。

全くもって抽象的なのですが、あとは集まったメンバーと一緒に考えながらやってみようと思っていました。

最後の一文は思い切って大風呂敷を広げましたが、半分は煽り文句のつもりで。でも半分は本気で、とびラーだけでなく美術館にいる色々な人とやってみたいと考えて書きました。

 

これは僕が感じているとびラボの面白いところで、他のコミュニティなら躊躇ってしまいそうな呼びかけでも、おもしろそう!やってみよう!と受け止めてもらえるのです。

結果よりも試行錯誤するプロセスや、その場で生まれた気持ちを大事にしたいという共通の想いがあり、明確なゴールが見えていなくても、同じ興味を持った人が能動的に集るのです。

 

そしてこのゆびとまにも、何人かのとびラーが集り、とびラボとしてスタートを切りました。

 

 

■想いの共有

ラボのキックオフミーティングでは、集まったメンバーに「このラボに参加しようと思った理由」「体操って何?」「どんな体操にしたいか?」「誰のための体操か?」などについてメンバーの考えや想いをきき合いました。

 

とびラボでは、折衷案を取るということではなく、みんなの興味や気持ちの重なる部分を確かめ合いながら目指す方向を探るようにミーティングが進みます。

一人ひとりの想いをじっくりときき、その人が何を大事にしているのかを理解しようとする力が働いているように感じられます。

素直な意見をその場に出せる雰囲気をみんなで作っている感覚です。

だから、ゴールのイメージがなくても、みんなでスタートすることができるのです。

 

 

■とびラーならではの題材とは何か?

次には、「体操で何を表現したいか」を話し合いました。

東京都美術館に親しんでもらうために、建築の特徴を表現するのはどうか?

より広くアートそのものに興味をもってもらうために、誰もが知っている有名な作品を表現するのはどうか?

上野という地域性を取り入れて、パンダや西郷像も入れてはどうか?

それぞれの想いから、色々なアイデアが出されました。

そして最初に取り組む対象として、普段からとびラーが親しんでいる、東京都美術館の野外彫刻作品[ii]を題材にしてみることにしました。

 

題材の模索中には、あるメンバーが現代美術家の高橋唐子(たかはしとうこ)さんが、静岡県立美術館の彫刻作品から着想を得て作られたという《ロダン体操》[iii]を発見し、共有してくれたことで、僕たちと同じようなこと(全然ちがう!と言われるかもしれませんが)を考えた先人がいたことに喜び、一方的につながりを感じました。

 

その後、ラボのミーティングを開く際には毎回《ロダン体操》で身体をほぐしてから始めるようになりました。

初めてアートスタディルームで音楽に合わせて《ロダン体操》をした時は周囲からの視線を感じ、どう思われているのだろう?と不安になりました。

しかしその後も毎回やっているうちに、見ていた人たちから「なんだかすごく楽しそうなことしてるね!」という声がたくさんきこえてくるようになりました。

 

 

■作品愛と体操らしさの両立

題材が決まってからは、まずは試しに表現してみようということで、彫刻の画像を見ながら体を動かしてみることにしました。

 

最初は僕だけが立って「こんな感じかな?」「これはどう見える?」と色々な動きを試していたのですが、次第に一人二人と立ち上がり「あの作品はこうだよね!」「こうのほうがいいんじゃない?」とアイデアを出し合うようになりました。

 

一度火がついてからの勢いはすごかったです。

掲示板に上げた文中で、「鑑賞→表現→コミュニケーションの連鎖」と書いているように、作品の観察にも時間を割くことを想定していたのですが、既にメンバーが見慣れている作品であったためか、次々と動きのアイデアが溢れてくる状態でした。

 

 

 

 

 

 

みんなそれぞれに作品への愛を持っていて、少しでもその作品らしさを表現したいという気持ちが表れていたように思います。

また、あまり気にしていなかった作品とは、改めて向き合う機会になれたのではないかと思います。

 

時に奇抜なアイデアに大笑いしながらも、気をつけたかったのは、止まったポーズで表すのではなく、動きの中で表すということ。

そして手先足先の小さな動きではなく、身体全体を使った大きな動きで表すということです。

メンバーの中には、地域の高齢者に体操の指導をしている方がおり、体操らしい身体の動かし方になるように相談しながら、作品らしさと体操らしさが融合する振り付けを考えていきました。

 

それぞれの彫刻を表す体操ができてからは、全体の構成を考えました。

前出の指導者の方も体操の専門家ではありませんので、あくまでも自分たちで考え、やってみて、身体のどこに負荷がかかっているか、同じような運動が続いていないかなどを確認しながら組み立てました。

 

いつも《ロダン体操》をしてから、振り付けや構成の試行錯誤を始めると、誰かが「休憩しよう」と言うまで動き続けていたので、気が付くとみんな汗を流してフラフラ。

自分も含め若者ではないことを感じざるを得ませんでした。

ラボの連絡をする掲示板の持ち物欄には、「スポーツドリンクとタオル」と書くようになっていました。

 

 

■自分たちのやり方でできた喜び

次は、考えた構成で音楽に合わせてみることにしました。

曲は、ラボのメンバーがフリーのBGMを見つけてきてくれましたので、それに合わせてみることにしました。

 

楽譜を書き起こすことができれば、もっと上手なやり方があったのかもしれません。

でもそれができなかった僕たちは、まず曲を聴いて、メロディーと尺に体操のタイミングが合うように、何度もやりながら回数や間隔を調整しました。

 

今思えば、なんとも不器用なやり方でしたね。

でもその時は、方法について議論しようという空気にはなりませんでした。

 

最初は全然合わなかったものが、ここのタイミングを速めて・・・ここを一拍空ければ・・・と微調整を繰り返すうちに少しずつ重なっていきました。

何度目だったかわかりませんが、曲の終わりと深呼吸で息を吐くタイミングが噛み合った時は、「おー!」という感動の声が上がりました。

 

きっとベストな方法ではないと気付いていながらも、その時自分たちにできるやり方で前進し、最後にはこれでもできたと喜び合うことができた。

まるで未開の登山ルートを切り拓いたような爽快感がありました。(登山はしたことないですが。)

 

 

■見える化で広がった安心感

さて、音楽に合わせることができたので、次の回では、自分たちが練習する時のお手本とするための動画を撮影することにしました。

しかし、改めてやってみるとまた曲と体操がズレてしまっています。

前回90分間をフルに使って微調整を繰り返し、やっと合わせられたものだったので、さすがに気持ちが萎えかけました。

 

再現性を高めるにはどうしたらよいだろう?と悩みましたが、このあたりからラボに参加してくれたメンバーの一人が、動き方や拍数をイラストに描き出してくれたのです。

 

それがこちらです。

みんなが頭と身体で覚えていたことを見えるかたちにしてもらえたことで、メンバー内に安心感が広がりました。

書き残す、可視化するというのは基本的なことですが、そんなことも忘れて突っ走ってきていたのだなと気付かされました。

 

このイラストを印刷した紙をカメラの横に貼り、動画の撮影を行ないました。

 

 

■隠せぬ疲労感も味になった?

イラストを見ながらの体操を撮影し、全体の流れが確認できる動画ができました。

この後は数日間の自主練習を経て、完成版としての動画の撮影に挑みます。

 

数日後の撮影当日。

朝からメンバーを入れ替えながら少しずつ撮影を行ない、なんとか夕方までに撮り切ることができました。

ただ、若者でない僕たちにはさすがにハードスケジュールだったようで…

完成した動画の中でも疲労の色が隠せず、足元がフラフラだったり無表情だったりしていますが、それはもうこの動画の味として笑ってください。

 

初夏にゆびとまをし、この頃は次の春がもう目の前でした。

10期とびラーの開扉の日が迫っていて、現役中に完成させることは難しいだろうということは分かっていました。

それでもラボに参加してくれて、「頑張って完成させてね」と言ってもらったことは、その後のモチベーションになりました。

 

 

■どこまでも自分たち流を楽しんだ

映像の次はナレーションと字幕です。

これも専門のコピーライターがいるわけではありませんので、自分たちで考えます。

この時はNHKのラジオ体操のナレーションを研究し、たたき台となるものを作ってきてくれたメンバーがいました。

本当にメンバーの能動性、主体性にはいつも感心させられます。

 

彫刻作品を表現する体操であるため、作品の形状の部分に言及するのか、体操としての効果の部分に言及するのか、色々な角度から言いまわしを検討しました。

実際に作ってみると、考えることがたくさんあるということに気付けたこともこのラボの収穫です。

時には遊び心も入れて、自分たちの納得のいくかたちに仕上げました。

 

音声の収録はアートスタディルームの脇にある小部屋に籠って行ないました。

録音機材はiPhoneのみ。

とても音響の専門家には見せられない環境ですが、少しでも外の音が入ってしまわないようにホワイトボードを衝立の代わりにしたりして工夫しました。

 

 

 

■ゴールのかたちも自分たち次第

映像と音声の素材が揃いましたので、最後の作業は編集です。

当然、動画編集の専門家はいません。

しかし、少しだけ経験のあるメンバーが手を上げてくれました。

こればかりはみんなでできる作業ではないので、自宅で作業してもらうことになります。

動画編集は時間のかかる作業です。

映像を切り貼りするだけでなく、画面の構成をデザインしたり、字幕の固有名詞の表記を確認したりすることも必要です。

にもかかわらず、家庭での時間を割いて作業してくれました。

 

また、動画の冒頭にタイトル画像も入れようという提案があり、これはデザインの心得のあるメンバーが自宅作業を引き受けてくれました。

 

もし編集ができなければ、音楽に合わせて体操するところをノーカットで撮影し、同時にナレーションも録音するという、考えるだけでも気が遠くなるようなことをやろうとしていたかもしれません。

あるいは、動画は諦めて紙芝居のようなものを作っていたかもしれません。

それでも悪くはないのですが、「みんなで一緒にやろう!」という気持ちを体現するかたちとしては、やはり動画がベストだったと思います。

 

 

■プロセスを重ねたことへの達成感

6月。昨年の交流会でのラジオ体操からほぼ1年が経ちました。

編集された動画をアートスタディルームで試写し、最後に字幕の文字校正をして、「とびラ体操」の動画は完成しました。

 

ゴールのかたちも含めて、集まったメンバーと一緒に考えて進めていくプロセスの中で起こること、それを楽しむことがこのラボの目的でした。

 

ここまで書いてきたように、動画というかたちになるまでは色々な試行錯誤がありました。

誰も専門家がいない中で、みんなで意見を出し合い、1つの制作物を完成させられたことは、まさに「この指とまれ式」と「そこに居る人が全て式」で進めてきたプロセスの集大成になったと思っています。

 

何よりもこのプロセスを重ねて来られたことに達成感があります。

そしてこのブログを読み、動画を見てくれた人にも、僕たちが経験してきたことの一端を感じてもらえたら嬉しいです。

 

 

■‘24の交流会での実演

動画の試写には、たまたまその日居合わせたプロジェクトマネージャの小牟田さんも同席してくれました。

そして動画を見終わった時に、「今年の交流会でやったら?」と仰いました。

 

思わぬ一言に「え?いいの?」という感じでした。

 

というのも、みんなで頑張って作ったものなので、どこかで実演して、他のとびラーにも一緒にやってもらいたいという気持ちはありつつも、そのためだけに他のとびラーに集まってもらうのは自己満足のようになってしまう気がしていました。

そしてなにより、コミュニケーションツールとして制作した以上は、その用途に合った場面で使いたいという想いがありました。

ちょうどよい機会はないだろうか?と考えていたところでしたが、その機会を見出せず、またいつかチャンスがあれば・・・ということで終わりにしようと考えていたところでの小牟田さんからの一言でした。

 

早速、その場にいたメンバーで、交流会で実演するための設計を考えました。

「とびラ体操」を見たことのない人にも一緒に体操をしてもらうためには、このラボに関わってくれたとびラーに見本になってもらう必要があります。

会場内のどこにメンバーを配置すれば効果的かを考えると、あと二人ほど見本となれる人が欲しい。

こういう時僕は、どうしようかなぁ…と悩み始めてしまうのですが、行動の早い他のメンバーは思い当たるとびラーに早々に声を掛け、協力をお願いしていました。

しかも協力をお願いした二人とも二つ返事でOKしてくれました。

 

交流会までは2週間ほど。

短期間で体操を覚えてみんなの前で実演してほしい、というなかなかハードルの高い要求だったと思うのですが、快諾してくれて本当に助かりましたし、このタイミングでラボに関わるとびラーが増えて、大団円への勢いが増した気がしました。

 

また、とびラーの中には、きこえない人、きこえにくい人、見えない人もいます。

そういう人たちにも一緒に体操してもらうためには、どうしたらよいか?も考え、できる限りのアイデアで進行台本をまとめました。

 

交流会当日。

「とびラ体操」でたくさんのとびラーが前後左右に揺れている光景は壮観でした。

 

一年前のラジオ体操はみんなが知っているもの。

今年のとびラ体操はほとんどの人は初めて見るもの。

どうなることかと不安もありましたが、みんなが映像と実演を見ながら楽しそうにやってくれて、忘れられない景色になりました。

動画に出演しているとびラーも動画内の表情とは打って変わって笑顔満開でした。

 

 

■最後に

この「とびラ体操を作りたい!」は、ほぼ月に一度のペースで、丸一年続けました。思わぬ長丁場となりましたが、支えられたのは、ラボに参加してくれたとびラーの熱量と、見守り、声をかけてくれたとびラーやスタッフさんの応援だったと思っています。

 

参加してくれたとびラーの熱量の高さには毎回驚かされました。

いつも集まる度に「さあ、今日もやろう!」というエネルギーに満ちていて、みんなでサポートし合いながらラボを前進させてくれました。

最初からずっと参加してくれたとびラーはもちろん、途中から入ってくれた人も、戻ってきた人も、みんなそれぞれに存在感を発揮してくれました。

 

そして、ラボに参加していないとびラーたちからもたくさん声をかけてもらえたのは、このラボの特徴だったのではないかと思います。

ラボを行なった後に活動報告のホワイトボード[iv]を公開すると、「ホワイトボードを見るだけでも楽しい」「時間が合えばいつか参加したい」などのコメントをもらいました。

興味を持ってもらえることが、ラボに参加するとびラーの熱量をさらに高めたように思います。

 

最後にもう一度書きますが、「とびラ体操」はコミュニケーションツールのつもりで制作しました。

世の中にある「〇〇体操」の1つとして、どこかで使えるチャンスがあれば、どんどん使ってほしいと思います。

そして、人や場所や時間に合わせてどんどんカスタマイズしてほしいと思います。

 

《ロダン体操》につながりを感じた僕たちのように、どこかの誰かに東京都美術館と、そしてとびラーとのつながりを感じてもらえたら・・・

 

「とびラ体操」がどこかで活躍してくれることを期待して、「とびラ体操を作りたい!」ラボは解散いたします。

 

みんな!やったね!ありがとう!

 

 

 


 

執筆:11期とびラー 小野関亮吉

たくさんのとびラボに参加し、たくさんのとびラーと関わらせてもらいました。「この指とまれ式」と「そこにいる人が全て式」から生まれるものには、関わった人たちの体温を感じます。毎回、内容も顔ぶれも変わりますが、1つの気持ちをみんなで育てていく感じは、何回やっても飽きません。

 


 

[i] 「この指とまれ式」でとびラボを始める時の合言葉

[ii] 東京都美術館にある彫刻作品 https://www.tobikan.jp/archives/collection.html

[iii] ロダン体操 https://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/rodin/gym/

[iv] とびラボなどの活動内容を共有し合う、とびラー専用の掲示板

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