東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

2024鑑賞実践講座⑦|「作品選びについて」

2024.12.09

 


 

第7回鑑賞実践講座|「作品選びについて」

日時|2024年12月9日(月)10:00〜15:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)
内容|事前準備。作品を選ぶ。作品のシークエンスを作る。テーマ:〜鑑賞者の鑑賞プロセスをイメージする〜

 


第7回の講座では、Visual Thinking Strategies(VTS)で鑑賞する作品の選び方について考えました。鑑賞者の年齢や、作品鑑賞の経験、人生経験の違いを踏まえて作品を選び、鑑賞体験をデザインすることはファシリテーションの第一歩です。

まず、講師の三ツ木さんが「美的発達段階」という概念について説明しました。これは、人が作品を理解していく際に、ある程度体系化された鑑賞体験の段階のパターンがあるという考え方です。この考え方を手がかりに、どのように作品を選ぶかについてのレクチャーがありました。

レクチャーのあとは、あらかじめ選ばれた2つの作品を題材にしてグループワークを行いました。このワークでは、作品選びの5つの観点に沿って、それぞれの作品の特徴を話し合いました。

続いて、開催中の「上野アーティストプロジェクト2024 ノスタルジア─記憶のなかの景色」展にて、鑑賞者の属性(年齢や参加プログラム)を想定し、そこに向けた2作品の鑑賞順序を考えました。

このように、VTSのファシリテータは、作品を選ぶ過程で鑑賞者の立場を想像し、対話の展開をイメージしながら、鑑賞の場を作る準備を進めます。その過程を通じて、ファシリテータ自身の「作品をみる力」も養われ、鑑賞者の気づきを受け止める土台ができていきます。

講座も残り1回となりました。

VTSの奥深さに気づく一方で、その難しさを感じるタイミングでもあるかもしれません。しかし、実践で出会う鑑賞者との経験と、講座での学びを互いに影響させながら、さらにステップアップしていけることを願っています。

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

【当日受付・先着18名/日本語対応手話あり・定員2名】トビカン・ヤカン・カイカン・ツアー(11月)

2024.11.25

 

 トビカン・ヤカン・カイカン・ツアー  

 

夜の照明に浮かぶ東京都美術館を散策する金曜の夜間開館時限定の40分ツアーです。
夜ならではの建物のみどころをとびラー(アート・コミュニケータ)がご案内します。
美術館全体が、まるで宝石箱のような輝きを放つ夜。昼とは違うその表情を一緒に楽しみませんか?

【当日受付・先着18名/日本語対応手話あり・定員2名】

 


日時|2024年11月29日(金)   19:05 – 19:45
会場|東京都美術館
対象|東京都美術館に興味のある方、建築ツアーに興味のある方
定員|18名(当日受付・先着順※日本語対応手話あり・定員2名
参加費|無料

 

参加方法|
先着順。当日17:00より東京都美術館LB階ミュージアムショップ前にて整理券配布します(混雑時は場所変更の可能性あり)。
※LB階自動扉の入り口付近にて整理券の配付場所をご案内いたします。
※整理券は先着順です。先着人数に達し次第、受付終了となります。

 

ツアー集合時間・場所|
18:50 東京都美術館 LB階中庭(自動販売機側・入口横)
※整理券をご持参ください。

 

その他注意事項|
※サポートが必要な方は受付時にお申し出ください。
※メールなどによるお申し込みは受け付けておりません。
※広報や記録用に撮影を行います。予めご了承ください。

 

【とびラボ開催報告】一村展でバードウォッチング

2024.11.23

 

執筆:11期とびラー 曽我千文

 

2024年9月19日から12月1日まで、東京都美術館で「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」が開催されました。

田中一村(たなか いっそん)は、昭和を代表する日本画家で、幼少期から絵の才能を発揮し神童と呼ばれていました。東京美術学校(現在の東京藝術大学)を中退した後も、生涯にわたって多くの名作を生み出しました。田中一村の画家人生のうち、前半生の千葉時代には、関東地方の郊外や農村で見られる身近な風景や自然を、後半生は鹿児島県の奄美大島に移住し、そこで見た奄美特有の自然を描きました。本展覧会で紹介された生涯を通じた作品の多くに、生き生きとした植物や昆虫、魚、そして鳥たちが描かれています。

 

野鳥が好きで、奄美大島にも野鳥の観察に訪れている私は、会場に幾度となく足を運びながら、バードウォッチングの気分で、作品の世界に野鳥の姿を探していました。出展作品数が300点以上ととても多い中でも、延53点とおよそ6分の1の作品に野鳥が描かれているのを見つけることができました。体がはちきれんばかりに声高らかに歌うアカヒゲ。ひっそりと森の奥で薄目を開けるトラフズク。岩の上で凛と佇む炎の鳥アカショウビン。かつて出会った野鳥たちの姿を想い、いつの間にか奄美の湿度の高い空気に包まれて、時がゆっくりと流れていく気がしました。

 

囀るアカヒゲ 撮影:鳥飼久裕

 

絵の中の鳥たちについて、名前や、どこに棲んで何を食べているか、どのように子育てをしているのかなど、その姿や暮らしぶりが分かると、一村の作品世界が現実味を帯び、生命の躍動が伝わることで鑑賞がぐっと深まるのではないか。そう考えて、東京都美術館のアート・コミュニケータ「とびラー」たちと、野鳥を通して一村世界を楽しもうと「一村展でバードウォッチング」というラボを、会期中に2回行いました。

こちらの展覧会に伺いました。

田中一村展 奄美の光 魂の絵画 (会期:2024年9月19日(木)~12月1日(日))

 

延53点の作品に見つけた24種の野鳥を「身近な鳥」「山の鳥」「旅先の鳥」「奄美の鳥」に分けて、図録を使ってみんなで一緒に作品を見ながら、それぞれの野鳥の特徴、文化とのかかわり、行動などのエピソード、ほかの鳥との見分けのポイントや鳴き声などを紹介していきました。自然と話題は、モチーフである鳥たちに対する一村の造詣の深さ、観察の鋭さを深掘りする場になっていったことは言うまでもありません。

本当なら実際に展覧会場で作品の森を歩き、双眼鏡で野鳥を探しながら話をしたらおもしろいだろうと考えたのですが、一村展の人気はすさまじく、連日混雑している会場内では、さすがにそれは叶わず、館内のアートスタディルームで、スライドを使ったインドア・バードウォッチングとなりました。そこで出たいくつかの話題をご紹介します。

※(P、№)は「田中一村展 奄美の光」図録掲載ページと作品番号です。

アートスタディルームでのラボ風景

 

■風景の中に鳥の姿を探す

『秋晴』(P101、№132)という大きな作品は、農家の母屋と納屋、ケヤキの巨木の枝に真っ白なダイコンが干してある秋の夕暮れの風景です。黄金色の空には小さく、飛んでいる3羽の鳥が描かれています。これを私はヒヨドリではないかと考えました。そう思った理由は、まずヒヨドリは人里の環境でよく見られる鳥であること。描かれた翼の幅や、長めの尾のスタイルがヒヨドリに近いこと。何より3羽のうちの一番下を飛ぶ鳥が、翼を畳んだ細長い「かつおぶし」のような形で描かれていることです。ヒヨドリやセキレイ、キツツキの仲間は「波状飛行」といって、羽ばたきと翼を閉じることを繰り返して、波形を描いて飛びます。この3羽目の鳥は、まさにヒヨドリの飛んでいる姿を表していると思いました。この謎解きを、とびラーたちも大変おもしろがって聞いてくれました。

ヒヨドリの波状飛行

 

■ぬえの鳴く夜を聞く

本展の中でも代表的な作品『白い花』(P98、№131)で、満開のヤマボウシの下に止まるトラツグミ。黄色と黒のトラのような斑模様からその名があります。一見派手に見える姿ですが、ひとたび地面に降りると、落ち葉に姿が溶け込んで、どこにいるのかわからなくなります。夜に鳴く、鳥とは思えないその声から、その昔『平家物語』にも、顔は猿、体は狸、脚は虎、尾は蛇の「鵺(ぬえ)」という妖怪として登場します。トラツグミの声の録音を聞き、「ヒョーッ」という、消え入るような声にみんなで耳をすませながら、闇に包まれた森で鳴く姿を思い浮かべました。

トラツグミ

 

■種と亜種

島のように地理的に隔てられた環境で、独自の進化を遂げた野鳥の中には、同じ種の中でも、少しずつ異なる特徴を持つ「亜種」というグループに分けられたものや、かつては同じと考えられていた種が異なる種、別種であることが明らかになったものがいます。

奄美で見られるオオアカゲラ(P221、№296)は、オーストンオオアカゲラというオオアカゲラの亜種で、本州などに棲むオオアカゲラに比べて全体に黒っぽく、翼の白い班も目立ちません。

また、一村が描いた、声高らかにさえずる奄美のアカヒゲには、同じ南の島である沖縄本島に、ホントウアカヒゲという、そっくりの別種がいます。奄美のアカヒゲには、脇腹に漆黒の班があるので、違いが分かります。(P194、№246ほか)

そのような島の鳥独自の特徴、色の違いも、一村はひとつひとつ正確に描いています。

ちなみに、本展で見られるトラツグミの作品(P132、№167ほか)は、一村が1958年に奄美に渡る前に描かれているので、本州のトラツグミだと思われますが、もしも一村が奄美でトラツグミを描いていたとすれば、それはミナミトラツグミという、トラツグミとそっくりの別種の鳥だったはずです。

奄美のアカヒゲ 脇腹に漆黒の班はあるのが特徴 撮影:樋口公平

 

■情熱の赤い鳥

田中一村の絵といえば、鮮やかな朱色の鳥、アカショウビンを思い浮かべる方も多いでしょう(P198、№249ほか)。録音で「キョロロロー」という物悲しい声を聴いてみると、真っ赤な羽色、がっちりとした嘴の情熱的な姿態から感じていた印象がちょっと変わります。その声が、「雨ふれふれふれー」と歌っているように聞こえることから、「ある日、火事で焼けて赤くなったアカショウビンは、体を冷やすために悲しげな声で鳴いては雨降れと天に乞うている」という言い伝えがあること、鮮やかな体も、陽の当たらない森の中では、深い緑色の木々に姿が溶け込んでしまうことにも、みな納得してくれたようです。

いかにも南国の雰囲気漂うアカショウビンですが、実は夏に日本に渡ってくる鳥として、北海道から沖縄まで広く生息しています。奄美や沖縄にいるのは、これもまたリュウキュウアカショウビンという亜種で、本州などにいるアカショウビンよりも、背中に紫色の光沢が目立ちます。

アカショウビン 撮影:樋口公平

 

■驚くべき観察眼

一村による野鳥の描写を追いながら感嘆するのは、その観察の鋭さです。スケッチブックの素描には、ひとつの鳥の多様な姿勢をさまざまな角度で、羽根の一枚、一枚まで描き分けています。(P88、№112ほか)たくさんの鳥を飼っていたとも聞きます。

今回、お借りしたカケスの翼の羽根を、一村の「かけすの羽」のスケッチ(P89、№116)と、みんなで見比べてみると、羽根の一枚一枚まで正確に描写していることが分かりました。

 

カケスの翼

 

一村は野鳥の体の細かいパーツまでも克明に描写しています。本展ではアカゲラ(P130、№164)と、オオアカゲラ(P221、№296)の2つのキツツキ類が登場していますが、キツツキの行動には木の幹に垂直に止まるという特徴があります。野鳥の趾(あしゆび)は、前に3本、後ろに1本あるものが多いのですが、キツツキは前2本、後2本の指で、しっかり体を支えて幹に止まります。加えて2本の脚だけでなく、羽軸の硬い尾羽を幹に付けて体を支えています。クライミングの基礎、3点支持の技法ですね。趾の数、幹に当てた尾羽のどちらの特徴も一村は正確に捉えて描いています。

また、アカショウビンやカワセミは、2本の前趾(まえあしゆび)がくっついています。脚をスコップのように使って、土に巣穴を掘るのに都合がいい形になったと言われていますが、アカショウビンを描いたスケッチブックのすみに、鉛筆で小さく描かれた趾も、しっかりその形態を写し取っているのを見つけた時には、本当に驚きました。(P205、№259)図録の写真ではそこまではっきりとは見えないのが残念です。

 

鳥の趾

 

■羽根を顕微鏡で見てみる

鳥の光沢のある羽根の色は、色素によるとは違い、光の波長によって、見える色が変化する「構造色」と呼ばれるものです。お借りしたアカショウビンやカワセミの翼を実体顕微鏡で拡大して見て、その輝く美しさの秘密を楽しみました。リュウキュウアカショウビンの体は、色素による朱色をしていますが、光の当たり具合で、構造色による赤紫色の光沢が現れます。

また、実物の野鳥の翼を手にしてみると、想像していたものよりかなり小さいことにも、多くのとびラーが驚いていました。

 

 

下の写真でお分かりになるでしょうか、アカショウビンの腰には鮮やかな水色の羽根があります。本展で展示には、アカショウビンの腰が見える作品はありませんでしたが、一村作品の中にも、例えば『白花と赤翡翠』(岡田美術館所蔵)のように、しっかりアカショウビンの腰の水色が描かれているものもありますので、機会があればぜひ観察してみてください。

腰に青い羽根がのぞくアカショウビン 撮影:樋口公平

 

一村の心身には、自然の中で生きる野鳥の輝きが鮮やかに刻まれ、常に創作意欲を掻き立てられていたのではないでしょうか。私たちも野鳥の姿やその生態を知り、感動の追体験をすることで、正確で細やかな描写による一村の作品世界に深く入っていくことができました。最初はラボで、鳥好きのオタク話なんて関心を持ってもらえるだろうかとも思いましたが、とびラーたちの知的好奇心の豊かさで、話題を引き出してもらい、自然の美しさを想う感性溢れる場になったと思います。参加したとびラーからは、

「まさに格闘するようなスケッチ」

「神童と言われた一村は、天才というよりは努力の人」

「鳥によって声が違うのもおもしろい」

「もう一度一村の鳥を鑑賞しに行かなくては」

などの声が聞かれました。次にみんなが、一村の絵の前に立った時には、きっと葉の影から鳥たちの声が聞こえてくることでしょう。

その後も、

「ラボ以降、見た鳥の名前を図鑑で調べるようになりました」

「関心を持つと街中にもこんなに鳥がいたのかと驚いています」

などの嬉しい報告もいただいています。一村の深い観察、魂の絵画は私たちに、美術への感動を与えてくれるだけでなく、自然に関心を寄せる気持ちや行動を誘う力があると確信しました。これからもアート・コミュニケータとして、野鳥というひとつの扉から、人とアートと自然をつなげることができればと思います。

世界でも奄美大島、加計呂麻島、請島のみに棲むルリカケス 撮影:樋口公平

 

最後になりましたが、ラボを行うにあたり貴重な資料である野鳥の羽根をお貸しいただいた(公財)日本野鳥の会参事の安西英明様、生き生きとした野鳥の写真をご提供くださった奄美観光大使の樋口公平様、奄美大島の鳥飼久裕様に心からお礼申し上げます。みなさま野鳥の暮らす大切な自然の保護に日々ご尽力されている方々です。どうもありがとうございました。

 

(参考)樋口公平さんのYouTubeで奄美の野鳥の声を聴くことができます

アカヒゲ
https://youtu.be/2_XRdDkRyCU
亜種リュウキュウアカショウビン
https://youtu.be/3tslWjD08x8
奄美の森 野鳥たちのオーケストラ
https://youtu.be/BtrWw5eNB70?feature=shared

 

(表)とびラーが見つけた「田中一村展」のなかの野鳥たち一覧

 


執筆:11期とびラー 曽我千文

野山でふらふら鳥を見ていた子どもを、鳥好きのよその大人がかわいがってくれたおかげで、鳥が好きなまま50年が経ちました。誰かと一緒に楽しむことで、アートも自然も守り伝えることができるかもしれない。とびラーとして学んだことのひとつです。

 

 

【開催報告】障害のある方のための特別鑑賞会:「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」

2024.11.11


日時|2024年11月11日(月)10時〜16時
展覧会|「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」展(会期:2024年9月19日(木)~12月1日(日))


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東京都美術館で開催された「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」にて、「障害のある方のための特別鑑賞会」を実施しました。この鑑賞会は、障害のある方がより安心して鑑賞できるよう、特別展の休室日に事前申込制で開催しています。

鑑賞会当日には、障害のある方とその介助者約630名が東京都美術館を訪れ、一村の幼年期から晩年までの創作の全貌を辿りながら一つ一つの表現の巧みさに魅入っていました。

参加者を迎えるのは、アート・コミュニケータです。とびらプロジェクトで活動中の「とびラー」やとびラーの3年の任期を満了したアート・コミュニケータが数多く参加しました。アート・コミュニケータは、受付で参加者をお迎えしたり、館内のエレベータの乗り降りをサポートしたり、展示室で鑑賞体験をサポートするなど、館内の様々な場所で活動しました。

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参加者とアート・コミュニケータがともに生み出す鑑賞の空間

展示室では、一村の膨大な作品群を前に、描写の巧みさや構図の面白さ、また一村の人生に想いを馳せる参加者の姿がありました。アート・コミュニケータたちは時に参加者と言葉を交わしながら、細部まで観察するサポートを行なったり、様々な動植物の描き方に注目してコミュニケーションを行っていました。

 

iPadで作品画像を大きく拡大し、作品の細部をお見せすることもあります。車いすに乗っていて目線が低い方や、目の見えづらい方などにはとくに好評です。このiPadで拡大して鑑賞をサポートするアイデアは、アート・コミュニケータが発案し、検討と準備を重ねて実施しています。今回の特別鑑賞会では、のべ約400名の方がiPadで画像を拡大しながらアート・コミュニケータと一緒に作品を鑑賞しました。

触れて鑑賞する作品 ─「触図」の導入

今回の特別鑑賞会では、視覚に障害のある方の作品鑑賞を補助するツールである「触図(しょくず)」を新たに導入しました。これは、田中一村の作品を立体的な線や凹凸で表現したもので、手指で触れることで構図やモチーフを描写した線がわかるようになっています。

当日は、アート・コミュニケータが展示室内で触図の案内を行い、作品の特徴や色、構成などを丁寧に説明した上で、参加者と対話をしながら鑑賞しました。参加者も、触図があることで、作品に描かれている内容をより理解することができていました。

この触図は、特別鑑賞会の日に限らず会期中であればいつでも、希望する方にスタッフから説明をしながら共に作品を鑑賞するために使用していました。

 

「消しゴムハンコ」でデザインされた案内状

「障害のある方のための特別鑑賞会」への申込みは、①Webサイト申込みフォーム、②メール申込み、③はがき郵送、の3つの方法があります。

このうち、③はがき郵送でお申込みされた方には、当日の案内状を封書でお送りしています。封筒の表面には、展覧会にちなんだ絵柄のスタンプが押されています。このスタンプは全て、とびラーがオリジナルの消しゴムハンコを彫って手作りしたものです。

様々なとびラーが制作するスタンプの絵柄は、毎回20種類以上に上ります。「自分に届いたものとは違う絵柄も見たい!」という声を受けて、展覧会会場の終盤で紹介するコーナーを設けるようになりました。

絵柄を制作したとびラーたちと、デザインの工夫やみどころについて展覧会を身終えた参加者とのお話しがはずんでいました。

・「

東京都美術館は、すべての人に開かれた「アートへの入口」となることを目指しています。参加者とアート・コミュニケータがともに作品を味わい、感想を共有し合うひとときは、作品が持つ力と、人とのつながりの大切さを改めて感じさせてくれました。

次回は、2025年5月26日(月)、「ミロ展」にて開催を予定しています。

次の鑑賞会でもみなさまにお会いできるのを、アート・コミュニケータ一同楽しみにしています。

・・
(とびらプロジェクトコーディネータ 越川さくら)


「障害のある方のための特別鑑賞会」は、東京都美術館の特別展ごとに1回ずつ開催しています。
詳細、お申し込みはこちらからどうぞ:https://www.tobikan.jp/learn/accessprogram.html


2024鑑賞実践講座⑥|「ファシリテーションのふりかえり」

2024.11.04


 

第6回鑑賞実践講座|「ファシリテーションのふりかえり」

日時|2024年11月4日(月・休)13:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)、ARDAコーチ5名
内容|VTSファシリテーションのふりかえりについて

 


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第6回の講座では、Visual Thinking Strategies(VTS)鑑賞のファシリテーションをどのようにふりかえるかについて、実践を交えながら考えました。

まず初めに、今年度の講座の実践の場である「スペシャル・マンデー」や「ずっとび鑑賞会」について、とびラーのファシリテーションに対する三ツ木さんのフィードバックを伺いました。

VTSを実施することがゴールではなく、鑑賞者が会場に到着してから帰るまでの体験全体をどのようにデザインするかが重要であるという視点が語られました。実践を重ねたからこそ気づく新たな視点に、とびラーたちは頷きながら話を聞いていました。

三ツ木さんからのフィードバックが終わると、今日のテーマである「VTSファシリテーションの実践とふりかえり」に移ります。実際にVTSとふりかえりを行う前に、まず、とびラー同士がクリティカルかつ協働的に議論を進めるために、どのような点に気を付けるべきかを改めて話し合いました。

その後、チームに分かれてVTS 実践とふりかえりを繰り返していきました。VTS実践では、チーム内でファシリテータ・鑑賞者・観察者・対話記録の役割に分かれ、それぞれの立場から鑑賞の場を体験し、観察しました。

ふりかえりの際には、それぞれの立場から体験・観察したことを出し合い、対話の流れを追って検証していきました。

鑑賞者の考えが深まったタイミングでは、ファシリテータがどのような働きかけをしていたのか。その逆に、深まらなかったときには何が影響していたのか。それぞれの視点から意見を出し合いながら、ふりかえる方法を体験しました。

お互いに客観的な視点を持ちながら鑑賞の場を検証し、とびラー同士でファシリテーションのスキルを高め合うことは、実は簡単なことではありません。しかし、経験を積むことで、ふりかえりの方法自体もスキルアップしていけるはずです。

今日の講座をきっかけに、実践とふりかえりのサイクルがさらに回っていくことを願っています。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2024建築実践講座⑥|「共在の場」の思想と実践

2024.10.26


第6回建築実践講座|「公・共・私・個を意識し,それを越えて新しい関わり方をつくる」

日時|2024年10月26日(土) 14:00〜16:00
会場|東京藝術大学 第1講義室
講師|山田あすか(東京電機大学 教授)


 

人々が集う空間の<公・共・私・個>の段階的変化や、公共の在り方について、東京電機大学 教授の山田先生にお話を伺いました。
山田先生ならではの視点で語られる国内外の場づくりやまちづくりの事例は、とびラーが任期満了後それぞれのコミュニティに戻って活動する際の大きなヒントになったのではないでしょうか。

「場をデザインする」とは、その場所(コミュニティ)を共有したい人は誰なのかを考えてフィルタを想定することというお話は、参加したとびラーの多くが印象に残ったようです。

 

とびラーからのふりかえりの一部をご紹介します。

 

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•活動内容ではなく、その場所ありきでハード面から活動内容を考えることが興味深く、話を聞くことが出来た。来る人に主体性を持たせることで、その場に責任を持つという考え方も納得できた。今までは、みんなに開かれたことが大前提だったが、フィルターを掛けることも場のデザインには必要だと知った。

 

•特に、「みんな」って誰?と言う問いかけは新鮮でした。「誰にでも」とは、少しづつフィルターを掛けて「その場を求めている人誰にでも」ということなんだ、そして「少しづ広げていく」「次」を作ることで、結果的により開かれた場となっていく、というのは腹に落ちますね。「みんな」一人一人に個性やニーズがあり、「共生型コミュニティー」を作るというのは実際にはいろいろと難しい事がある、という当たり前のことが、あらためてよく分かりました。

 

•軸となる場所や事柄は始めから完璧でなくとも関わった人達と緩やかなつながりで変化していってもいい、という考えかたがあることに気がつけました。

 

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(とびらプロジェクト コーディネータ 西見涼香)

 

【開催報告】野外彫刻を楽しむ 2024

2024.10.13

 


 

執筆者:藤原裕子

 

はじめに

東京都美術館には「野外彫刻」が10作品展示されています。 東京都美術館の貴重な常設展示ですが、 東京都美術館には何度も来ているのに、こんなに野外彫刻があると気がつかなかった」という声を時々伺います。野外彫刻は、日差しの変化により映り込む色が変わり、 季節の など移り変わる自然を背景に、日々異なる表情を感じることができる魅力的なアートです。また、東京都美術館の野外彫刻は、抽象的な形状だからこそ、鑑賞する人ごとに解釈の幅が広がります。私たちは、このような魅力的な野外彫刻について、自然光の下で風を感じながら鑑賞の発見や楽しみを分かち合いたいという思いで、このとびラボをスタートしました。

 

 

 


 

 

1、工夫したこと

鑑賞会当日まで実に6ヶ月、14回 とびラボを開き、とびラーで議論を重ねて準備してきました。

ミーティングでは、野外彫刻を鑑賞する楽しみをさまざまな来館者と共有していくために必要な工夫について考えました。そして特に以下の4つのポイントを、プログラムに落とし込んでいきました。

 

(1) 散歩を取り入れた鑑賞

野外彫刻は土や木陰、風、天気など周りの環境も含めて作品であると考えました。目の前の作品に向き合うだけではなくて、美術館の屋外空間の全体で楽しんでほしいと考えました。そのため、スタート後すぐに対象の野外彫刻に向かうのではなく、まずは散歩しながら日差しや他の野外彫刻を眺め周りの環境を楽しんで、その後に今回取り上げる野外彫刻の前に立ってじっくり鑑賞するプログラム構成にしました。

 

(2)野外彫刻を対話型鑑賞で楽しむ

おしゃべり鑑賞なのか作品解説なのか。野外彫刻の魅力をより楽しむにはどのような方法がよいか。最も効果的な鑑賞の在り方についても何度も議論しました。東京都美術館の野外彫刻は、抽象的な形状だからこそ、それぞれの解釈の幅が広がります。そこで今回は、彫刻の詳細をガイドがお伝えする形式ではなく、参加者同士で鑑賞を楽しむ対話型鑑賞(VTS)を取り入れることにしました。

(*VTS:Visual Thinking Strategiesの略。複数人の対話を通して作品により深く鑑賞する方法。)

 

(3)アイスブレイクー「小さな立体を作るゲーム」

プログラム当日、スタート時は、参加者の方々はまだ緊張しています。そこで、実際の作品を鑑賞する前に頭と心のウォーミングアップをするため、シンプルな形でさまざまな素材を組み合わせて小さな立体を作るゲームから始めます。完成したら参加者みんなでそれぞれの作品を、360°さまざまな角度から見合います。 ”いろいろな方向から見る”立体作品の楽しみ方を練習するとともに、緊張がほぐれて安心して発言できる場の雰囲気が生まれます。

 

(4)対象者

世代を超えてより幅広い鑑賞となるように“子どもと大人の視点の違いを味わってほしい”という考えから、幅広い年齢層を対象にした場づくりと時間配分を想定しました。そのため小学校低学年の子どもでも参加しやすいプログラムの所要時間を検討し、内容を精査しました。

 


 

 

 

2、実施当日の様子

2日間に分け、小学生以上を対象にそれぞれ約15名の定員で参加者を募集してプログラムを行いました。

 

 

 

(1)実施概要

2024年10月5日(土)、13日(日) 14:00〜15:30

 

 

 

(2)鑑賞会の流れ

⚫︎小さな立体を作るゲーム

まず室内で小さな立体を作るゲームを行います。アートスタディールームでグループに分かれ、それぞれのテーブルに置かれた立体物を3つ選びます。そして木材や石などさまざまな素材でできた立方体、球、円柱などを組み合わせてその人なりの“立体作品”を作ります。参加者の緊張をほぐすために、スタート時には気軽な「ゲーム」として紹介し、それぞれの立体が完成してからそれを「作品」と呼ぶことで、参加者に自然と鑑賞の意識が芽生えるように、細かな言葉使いにも注意しました。最初は緊張していた参加者の方々も、どの素材のどんな立体物を使おうか考えているうちに笑顔が出てきました。楽しみながら素材を選び、絶妙にバランスをとって積み上げようとしたり、横に並べたり、組み上がったものも逆さにしたり裏から見たり。色々な工夫を楽しんでいる様子が見られました。

完成したら、他の参加者のものを鑑賞します。同じ素材を使ったのに個々に異なる“立体作品”ができており、他の人から見た印象と制作者の作った意図が異なることに驚いたり、面白く思ったり。印象が変わったり、影も作品の一部だと気づいたり。「なるほど」「へえ~」「そう見えるんだ」などのつぶやきも出てきました。自ら選んだ素材の理由を説明しながら、自分の意図にあらためて気付いたりして、好奇心いっぱいの笑顔があふれる場となりました。「小さな立体を作るゲーム」を通して、たった3つの立体物を組み合わせるだけで多様な連想がうまれることを楽しみ、また360°さまざまな角度から観ることで新しい発見が生まれることにも気がついたところで、いよいよ野外彫刻の鑑賞へと向かいます。

 

同じ立体を反対方向からみてみると・・・。

 

 

 

 

 

⚫︎野外彫刻の鑑賞

その後、みんなで外に出て、散歩しながら野外彫刻の鑑賞を行います。今回実施した2日間は、あいにくの雨に見舞われた日と晴天の日で、それぞれまったく違う鑑賞体験となりました。散歩のように自然や建物を眺め歩くこと自体を楽しみながら、野外彫刻を観察し、対話を交えた鑑賞に入っていきます。とびラーが厳選した2作品を囲んでじっくり鑑賞しました。雨の日は、野外彫刻の表面に光る水滴や雨音、湿った匂いを楽しむことができました。雨の中で連想した野外彫刻の気持ちなど、様々な発想を共有できました。また、晴れの日には、反射する光のまぶしさや映り込む色の違いなどから、参加者同士の会話が止まらなくなるほど。反射した光が、四方に伸びていくようでありながら途中で角度を変えている様子を見て「人生のようだ」とつぶやく方もいらっしゃいました。彫刻に反射する光を人生の道筋に見立てていらっしゃるようでした。

素材が金属の彫刻は、晴れた日には青空や草花の緑、タイルの茶色が映り込みますが、曇りや雨の日はグレー一色で、見え方が全く異なります。雨の日には、《イロハ》の表面には水が溜まったり、《堰》は雨水の流れる音を見聞きすることもあります。 参加者同士の多様な発想を互いに楽しみながら、笑顔で活発な会話がつづく鑑賞をすることができました。

 

 

《イロハニホヘトチリヌルヲワカヨタレソツネ・・・・・・ン》(最上壽之、1979年)を鑑賞する参加者ととびラーたち。

 

 

《三つの立方体 A》(堀内正和、1978年)を鑑賞する参加者ととびラーたち。

 

《三本の直方体 B》(堀内正和、1978年)

 

 

 

(3)参加者同士の鑑賞体験のふりかえり

鑑賞を終えて、アートスタディルームに戻り、チームごとに鑑賞内容を共有しました。参加者の方々は笑顔いっぱいで、充実した鑑賞時間だったことが伝わってきました。これまではあまり気づかなかった野外彫刻の鑑賞が実はとても楽しいものだったと、新たな発見を嬉しそうに共有してくださる声が多く聞かれました。ご夫婦で参加された方は、お互いの発想が新鮮だったようで、鑑賞後もひとしきり会話がはずんでいらっしゃいました。

雨の日の鑑賞について参加者の方々がどう感じられたのか、とびラーたちは少し心配をしていましたが、「雨の日ならではの鑑賞ができて、楽しかった」「逆に貴重な体験だった」と、ポジティブに楽しんでいただけた様子で、参加者の方々に笑顔をいただけてほっとしました。天候に左右されてしまう屋外での活動ですが、天候の心配を抱えながらも今回の野外彫刻ラボを敢行して良かったと嬉しい気持ちになりました。

 

 

 

 

 

(4) 鑑賞後の参加者の感想 (アンケートから抜粋)

・東京都美術館には何度も来ているのに、こんなに彫刻があると気づかなかった。

・他の人と一緒に鑑賞して、そういう見方もあるのかと知り、面白かった。どんな見方をしてもいいのだと思った。

・自分から出ることのない視点や意見を聞くことができ、新鮮に感じた。

・他の参加者の方、とびラーの方との交流から、凝り固まっていた考えや視点が一気に解放されたような気がした。

・鑑賞とは個人的なものだと思っていたので、他の人の意見を伺うのは新鮮だった。

・“じっくり見る”、“他の人の見方を「きく」”は、対人間にも応用できること。あらゆる立場、年齢の方に参加してもらったら、社会がいい方向へ向かうのではないかと思った。

・「小さな立体を作るゲームは、わずか1分ほどで誰でも選べる素材でも、何かしらの作品としてのストーリー性や達成感が得られた。これは簡単なことではなく、素材選びや形が非常によく考えられていた。

 

【雨の日ならではの感想】

・雨の日に屋外で美術作品を鑑賞できることは滅多にないので、特別感があった。

・天気による(野外彫刻の)素材の変化を見ることができた。

・排水溝に流れる水の音が、水琴窟のようで良い音色だった。

 


 

 

3、まとめ

計画段階で目標としていた、「さまざまな年代の人が参加することにより生まれる視点の違いを楽しむ」「作品だけでなく屋外の環境全体で味わう」、そして「野外彫刻の楽しみ方を体験し、野外彫刻への関心を高める」という狙いは、しっかり達成されたように感じます。

 

(1)とびラーの感想

長きに渡る準備を経てついに迎えた本番当日。美術館の清掃スタッフさんがプログラム実施場所でもある東門付近で、蜘蛛の巣を取り払ったり銀杏の実を掃き集めたり、念入りに清掃してくださっている様子を目にしたメンバーは、感謝と晴れやかな気持ちでスタートを切ることができたといいます。屋外で活動し周りに向ける視野を持つと、この美術鑑賞の場は、作品だけの力だけではなく実にたくさんの人の手で作られ運営されていることに気付かされます。そうやってみると、自然の中、土の上に置かれた作品1つを取っても、見せ方が計算されていて、そしていろいろな方向から時間をかけてじっくり観察する意義を感じられるし、それを多くの人と共有したいと考えた今回の試みは意義深いものなのだと背中を押された気持ちです。とびラーが企画運営するプログラムも、美術館やとびらプロジェクトの関係者、参加してくださる一般の方、そしてとびラーの仲間たち、多くの人との関わり合いの上に成り立っていることを感じ、この時間をより深く学びと味わいのある機会にしたいと感じました。

参加したとびラーからは、「野外彫刻は館内の美術作品とは扱い方も見せ方も見方もまるで違う。自然や天気もそうだが、もっと周りの虫や花や太陽も、空間にあるあらゆるものが作品の一部、鑑賞の対象、心を豊かにする要素なのだと感じることができた。」「自分がモノを見ている位置を変えただけで、見えるものが変わること。自分の世界が広がっていくことに気づいた時のわくわく感。心を広げ視野の解像度が上がっていく満足感を知った。」という感想が聞かれました。

 

(2) 企画、ファシリテーターとしてのふりかえり・改善点

私たちは、野外彫刻を鑑賞するラボが今後も、形を変え発展しながら続いていくといいなと考えています。そのためにも改善点をはっきりさせ、次の「野外彫刻ラボ」をより充実させるべく、参加メンバーでふりかえりのミーティングを開きました。

他の鑑賞者の妨げにならないように、散歩型鑑賞のコース取りや鑑賞時の声かけ、また対話中の声量など引き続き配慮が必要だと感じました。また、秋に入っているとはいえ長時間の屋外活動では、熱中症や害虫対策については、今後も注意が必要です。雨天の活動では傘が登場するため、美術館内には持ち込めない傘を傘立てから出したり入れたりをスムーズに誘導する算段も必要です。

 


 

 

 

 

 

執筆者:13期とびラー 藤原裕子

 

 

 

それまでは全く意識していなかった野外彫刻だったのに、鑑賞体験の日に「目からウロコ」体験をしました。それからは興味関心がむくむくと湧き上がってきて、その味わい深い魅力的な世界を楽しんでいます。関心をもって調べるほど新しい発見が湧き上がってきて、世界がどんどん楽しく豊かになっていきました(進行中)。そんな素敵な体験をひとりでも多くの方と共有できたら嬉しいな。

 

 

 

 

2024建築実践講座⑤|東京藝術大学が考えるキャンパスデザインとは

2024.10.12


第5回建築実践講座|「東京藝術大学が考えるキャンパスデザインとは」

日時|2024年10月12日(土) 10:00〜15:00
会場|東京藝術大学 第1講義室
講師|君塚和香(東京藝術大学 特任助教)


 

今回の講座は2部構成で、午前は東京藝術大学 特任助教の君塚和香先生による講義でした。

君塚先生は建築士として設計の仕事に携わるかたわら、東京藝術大学キャンパスグランドデザイン室で藝大キャンパス内の建物や環境の再構成・構築を担っていらっしゃいます。

東京藝術大学と上野公園や周辺地域とのつながり、公共空間とパブリックスペースの考え方や開き方について、過去・現在・未来とお話いただきました。東京藝術大学の住所は「上野公園」であり、上野公園の一部でもあるという視点で語られるお話が印象的でした。

 

 

 

そして午後は、君塚先生が中心となって推進している、藝大と公道との間にある柵を植栽に変えるプロジェクト「藝大Hedge」を体験しました。
とびラーは、藝大上野キャンパスの芸術未来研究場と国際子ども図書館との境界約100mに700本以上(18種類)の苗木を植えました。

 

 

 

午前の講座をふまえて実際に植栽することによって、実感を持って公園の一部であり、大学と外の境界を意識し、公共空間に関わる体験になりました。

市民も参加できる「藝大Hedge」のお世話係に参加するとびラーもいて、君塚先生の主導で藝大生も一緒に植物のお手入れをしています。

 

今回植えた苗木が大きくなる頃には、とびラーは開扉していることでしょう。これからも上野に来て、この周辺環境の変化を見続け、感じてほしいなと思います。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 西見涼香)

 

2024鑑賞実践講座⑤|「ファシリテーション事前準備」

2024.09.30


 

第5回鑑賞実践講座|「ファシリテーション事前準備」

日時|2024年9月30日(月)13:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)
内容|ファシリテーション事前準備(グループ作品研究、個人作品研究)

 


第5回の講座では、Visual Thinking Strategies鑑賞(VTS)のファシリテーションをするための事前の準備について知り、複数人のグループワークと個人ワークを通じて理解していきました。

VTS鑑賞では、まずファシリテータ自身が作品を事前によくみて、味わい、作品から立ち現れるテーマや魅力を掴んでおくことが重要です。事前の作品研究では、時間をかけて丁寧に作品をみながら、テーマや魅力を読み解いていきます。

まずはグループでの作品研究。

お互いの視点を聞き合い、それぞれの意見を主観的意見と客観的意見に分類し、作品から見つけられる根拠や主観的解釈を補完してマッピングしながら、作品研究シートを作成していきます。

つぎに、個人での作品研究です。

普段ファシリテータとして事前準備をする際は、担当する鑑賞作品をそれぞれが自分で準備する場面が増えていきます。

そのため、事前にひとりで作品の魅力やテーマに近づけるように練習することも重要になります。

こちらも、時間をかけて作品研究の練習を行いました。

今後、とびラーは多くの作品に関わっていきます。それぞれの作品に対して、観点を整理し、それぞれの観点の関わりを分析し、作品に近づく体験を積み重ねながら、鑑賞の場をデザインする視点を育ててもらえたらと思います。

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2024建築実践講座④|前川國男邸から見える前川建築

2024.09.29


第4回建築実践講座|「前川國男邸から見える前川建築」

日時|2024年9月29日(日) 9:30〜12:00
会場|江戸東京たてもの園
講師|早川典子(江戸東京たてもの園 学芸員)


 

第4回建築実践講座は、東京都小金井市にある江戸東京たてもの園で実施しました。

東京都美術館を設計した建築家・前川國男の自邸が、江戸東京たてもの園に移築されています。

 

 

前川自邸のリビングにて、江戸東京たてもの園 学芸員の早川典子さんにお話を伺いました。建築デザインのお話だけでなく、生前の前川がどのようにこの家を使っていたのか、また学芸員が、移築や保存をするにあたり行った工夫や努力など非常に多くのエピソードをお聞きすることができました。

 

たてもの園には、多くの復元建造物があります。とびラーは、30件ある建物の一つひとつを鑑賞し、それぞれが発見したことを互いにシェアしながら学びを深めていました。

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

 

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