東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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Archive for 8月, 2012

2012.08.13

とびラー候補生(以下:とびコー)がさまざまなちまたのランチをリサーチする「とびランチ」がスタートしました。記念すべき第一回目は、我らが東京都美術館1階にあるIVORYです。今回はとびらスタッフも同行しました!(毎回行く可能性もあります。)

通常のコースメニュー数種に加え、マウリッツハイス美術館展にちなんだスペシャルメニューも用意されています。どれにするか相当迷います。結局、ブランチコースとマウリッツハイス美術館展スペシャルメニューを手分けして注文することになりました。ちなみに、マウリッツハイス美術館展スペシャルメニューは、オランダ・フランドルの郷土料理を洗練された技法で仕上げた、展覧会期間だけの特別コースです。

 

マウリッツハイス美術館スペシャルメニューの前菜は”ベネルクス風 ニシンマリネ アンディーブサラダ添え”。素朴な風合いながら、後味のすっきりとした一品です。

 

IVORYのコースメニューの顔と言えば何と言ってもローストビーフ。シェフが丁寧にナイフを入れてくれます。
(マウリッツハイス美術館展スペシャルメニューにはローストビーフはありません。)

 

食べてみて下さいとしか言いようがありません。相当美味しいです!

 

こちらは、マウリッツハイス美術館展スペシャルメニューのメインディッシュ ”オランダビールで仕上げた牛肉のカルボナート フランドル風”濃厚かつトロッとしたお肉が素晴らしい!

 

ともて幸せなひと時です。

 

マウリッツハイス美術館展スペシャルメニューのデザートを紹介。青いターバンを巻いた「真珠の耳飾りの少女」をイメージした”パンプリンのミルクアイス添え 真珠とラピスラズリと共に”。
マウリッツハイス美術館展スペシャルメニューは9月17日まで。まだの方は是非ご賞味ください。
ごちそうさまでした。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

2012.08.12

及部克人先生をお迎えして、「再現!造形講座『谷中極彩過眼図絵』」と題したワークショップが行われました。今回のワークショップを開催するきっかけは、1978年より10年間、東京都美術館(以下:都美)を拠点としたワークショップ「造形講座」が継続的に開催されていた歴史に端を発します。これは当時の美術館の教育普及活動としては非常に先鋭的な試みであったそうです。そして、当時このワークショップを牽引していたのが及部克人先生(現 東京工科大学教授)。週2回を5週間(午後6時から9時まで)、計10日間1セットという密度の濃い講座ながら、定員の60名はすぐに埋まり、抽選となるほどの人気を博した企画であったそうです。
この70年代後半から行われた「造形講座」での活動を、及部克人先生ご本人のファシリテートのもと、参加者が実際に体験してみることで振り返り、コミュニケーションとアート、そして身体と地域性について考察を進めることを目的として、今回のワークショップは展開されました。
今回のワークショップの参加者は、とびラー15人(希望者多数で抽選となりました)と、群馬大学でワークショップの研究されている茂木一司先生、郡司明子先生、それに当時及部先生と一緒に「造形講座」で講師をされていた武蔵美術大学の斎藤啓子先生、加えて各大学の学生さん、それに何と当時「造形講座」を受講されていた一般の方々を含めた15人、合計30人が対象で実施されました。

はじめは「おおきなわ」というワークショップからスタート。まずは、手をつないで輪になります。しかし、及部先生が合図をしたら、今まで触れていたところでない場所で、隣りの相手と繋がらなくてはなりません。

 

繰り返して行くと、徐々におかしな格好になってきます。いろいろな形のポーズが組み合わさると、身体という素材を使った空間表現にも捉えられます。絵や彫刻が主流のアートとして認識されていた時代に、一般の方々を相手にこれをやるのはかなりアバンギャルドだったのではと想像します。

 

繋がることでさまざまな形が生み出されることを体験した後は、「大切な布」をつかったワークショップに移ります。参加者には事前に「大切な布」を持参してお越し下さいとお伝えしてありました。そして、思い出のある「大切な布」を広げて、円陣に座ります。

 

一人ずつ、布に込められている思いを語って頂きました。彼女が手に持っているのは、彼女のおしゃれ感覚に大きな影響を与えた、古着屋で買ったラルフローレンのスカートとのこと。布の紹介が終わったら、みんなで布を隣りから隣りへと手渡しで触れて行きます。お話から得た布の印象と、触ってみた感触が一体となった時、その布に込められた思いを、少しだけ共有できたような気持ちになれます。

 

布に込められている思いを語ったり触ったりした後は、それぞれがその思いを「三行の詩」でまとめます。いろいろな思い出が持ってきて頂いた布に込められています。本当にみなさん「大切な布」を持ってきて頂きました。

 

そしてなんと、みなさんの「大切な布」をクリップや安全ピンで繋ぎ合わせて、オブジェ?のように組上げて行きます。もはや素材が繋がるという域を超えて、そこに込められている記憶が形を紡ぎだすような作業に感じられました。

 

続いて、「三行の詩」は1行ずつビリビリと切り離されます。

 

参加者は自分の詩の中から1行だけ選び、他の参加者のものと順不同に並べます。すると、今度は「大切な布」の記憶の断片を結びつけることで生まれる、一風変わった詩が生まれました。これを「群読」してゆきます。声をそろえて強調して読むところ、反復するところ、一人で読むところなど、相談しながら、詩を読むリズムをつくってゆきます。

 

最後に「大切な布のオブジェ」を舞台として、「群読」に「おおきなわ」でやったような身体表現を加えれば、前衛的な演劇へと集約されて行きます。初対面の参加者同士がわずかな時間で意思の疎通を行い、それぞれの身体や記憶の片鱗から浮かび上がる表現の糸口をコミュニケーションを通してたぐり寄せ、声や形を共有する表現体験へと結実させて行くプロセスは大変魅力的に感じられました。

 

ここで少し、体を動かすワークショップを休憩して、「NPO法人たいとう歴史都市研究会」から椎原晶子さんを講師にお迎えして、東京都美術館と東京藝術大学に隣接するまち「谷中」の歴史についてお話をして頂きました。
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江戸時代、谷中一帯は江戸の鬼門にあたり、今でも寛永寺や大小さまざまなお寺が見受けられます。また、今でも昭和の香りのする古き良き東京の下町を忍ばせ、「まち歩き」のスポットとなっています。

椎原さんのお話で大変興味深かったことを一つ。江戸には”いろはにほへと・・”でグループ分けされた「まち火消し」がいました。谷中一帯は「れ組」の所管であったそうです。明治になり「まち火消し」がなくなると、「れ組」の方々は、美術館の作品展示運搬業に転身していったとのこと。谷中のまちと上野のお山にある美術館とのつながりは意外なところからはじまっているのだなぁ~とびっくりしました。

 

椎原さんから、谷中の歴史と美味しいお店を教えてもらった参加者は、早速まちに繰り出して行きます。谷中を見学しながら、ランチを食べて、グループごとに親睦を深めます。

 

東京藝術大学からほど近いところに、老舗カフェ「カヤバ珈琲」があります。とびらスタッフはここでランチです。

 

店内はそれほど広くはありませんが、昭和の雰囲気と、おしゃれなでボリューミーなメニューが楽しめるお勧めスポットです。稲庭さんはハンバーグランチセット、近藤さんはハヤシライス。どちらも美味しそうです。

 

お腹がいっぱいになった後は、「旧平櫛田中邸」へ。椎原さんから教えていただいた通り、一般公開されていました。

 

平櫛田中は旧東京美術学校の教授だった方で、日本を代表する木彫家でもあります。この旧平櫛田中邸は、平櫛田中がまだ木彫家として世に出ていなかったころ、仲間の日本画家などが寄付を募り、彼の創作活動を支援する目的で、住居件アトリエとして建てられたそうです。

なので、平櫛田中もその気持ちを汲み取り、自分のアトリエとしてだけ利用するのはなく、よく弟子を呼んで指導し、アトリエの壁には天井まで届く大きな本棚を置き、いつでも閲覧できるようにしていたとのこと。
そんな平櫛田中のアトリエは、今では一般に公開され、イベントによっては写真のようにまったりと午後のひと時を過ごすコミュニティスペースとして活用されています。

 

玄関先では丁度、韓国人アーティストのユ・カンホさんのワークショップが開催されていました。丸太をのみで削って、椅子をつくっています。とびらプロジェクトアシスタントの大谷さん、のみ捌きなかなか上手いね。

 

谷中散策を終えて再び都美へ。みなさんランチを食べながら、午前中のワークショップのことや、谷中のことなど色々話合ってきた様子でした。早速、及部先生のワークショップ午後の部再開です。二人組になって向かい合い、床に置かれた白い紙の上に、毛糸を垂らしてお互いの似顔絵を描きます。毛糸は上から垂らすだけ、画面に触れてはいけません。

 

難しい!と思いきや、凄い! 結構似てくることにびっくりしました。

 

続いて、「一筆描き自画像」鏡は使いません。自分の顔の記憶を頼りに一本の線でぐいぐい描いて行きます。

 

上手ですね。良く描けてます。

 

なんか、似てます。(笑)

 

次はまた二人組になり、今度は手元を見ないで、お互いの顔を描きます。一通りできたら、描いてもらった自分の顔について、グループごとに感想を発表して行きました。
しっかり観察して、形をとらえて、丁寧に描いてゆかなければ、思ったようには描けない、わけではない、ということが分かりました。むしろ、感じた印象をストレートに出すことで、ものの本質に近づくことができる様な気持ちに感覚をシフトさせてくれるワークショップでした。
感じた印象をストレートに出すことは簡単な様で、実はすごく難しいことだと思います。ですが、それは出す力がないから難しいのではなく、普段の思い込みや、習慣、知性がそれを阻害しているからなのかもしれません。そこで、それらの機能を一時的に停止状態にさせるプロセスを描くという行程に組み込むことで、感覚をストレートに出し易くする、そうした配慮がこのワークショップには含まれている様に感じました。

 

記憶や印象を形にする感覚が少し身に付いたところで、次のワークショップに移ります。5色の布と毛糸、それに谷中散策の途中でもらったチラシや地図などを使い、谷中散策を形にしてゆきます。

 

これは、三軒間というスペースでお昼を食べようと向かったチームの中の一人の作品。店の前まで行ったのに、営業時間になっておらず、入れないで立ち尽くすグループ一同を表現しているそうです。

 

一人ひとりがそれぞれ感じた谷中のイメージや、散策での出来事などが次々に形になって行きます。そして、グループごとに他のメンバーが何をイメージしてつくったのかを互いに聞き合いながら、テーブル上の作品の配置を考えて行きます。自分のイメージと隣りのイメージの関係を繋ぎあわせることで、谷中散策に抽象的な形が与えられて行きました。
このテーブルの上には、個々の記憶であり表現でもある作品がそれぞれが独立して有りながらも、他の作品との関係性が意識されることによって、共通の体験を表す一つの作品ともみることができます。不特定多数のメンバーで一つの価値観をつくりあげるのではなく、あくまで個人のパーソナリティーを尊重した上で、個々の繋がりから全体像を見いだす重要性と可能性がこのワークショップに内在している様に感じました。また、そうしたことは普段のコミュニケーションの基本であるにも関わらず、日常に於いてそれが成り立つコミュニティーをつくることの難しさに対する言及と一つの提案が、一日かけて行われた一連のワークショップのストーリーであった様にも思われました。
きっと、はじめてこのテーブルの上にある作品を見た人は、それがなんであるかを理解することは難しいでしょう。しかし、今回のワークショップの一連の流れを体験した人たちには、それが単なる表面的な造形美ではなく、参加した個々人の潜在的な感性により引き出された、言語では表すことができないリアリティーを内包した造形物として理解できたのではないかと感じます。
そして僕が及部流ワークショップを体験した最後の感想としては、その極意は恐らく、この一連の体験を一概に分析できない程の多様な切り口と、理解寸前で寸止めさせる絶妙な終わり方にあるのではないかと勝手に思っています。ワークショップの食後感としては、・・・・心地よいもやもやな後味をひく体験って感じでした。
そしてそれこそが「谷中極彩過眼図絵」なのでしょうか? 及部先生〜。

 

ワークショップが終わったあとは、インターンの真砂さんに、「造形講座」について研究発表して頂きました。
みなさんお疲れさまでした!

(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

2012.08.10

とびらプロジェクトマネージャの伊藤達矢です。
 東京都美術館(以下:都美)のアクセシビリティのさらなる充実を願って、「アクセシビリティ調査報告書」の作成がとびラー候補生(以下:とびコー)によって進められていました。8月10日には「アクセシビリティ調査報告書」が提出され、とびコーさんの視点が一つの形となりました。ここでは、アクセサビリティ調査班による報告書の作成についての記録を紹介致します。
「アクセサビリティ調査報告書」作成の過程や内容についての記述はとびコーの平野文千さんです。
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リニューアルした都美には、念願のエスカレーターに「誰でもトイレ」等々が完備。これらは、リニューアルオープン以前から実施されていた「障がいのある方のための特別鑑賞会」に参加していた私たちにとっては夢のような設備です。しかし、まだ利用者の視点が入る余地があるのではないかと感じられ、リニューアル間もない都美に足しげく通う我々とびコーが、まずは調査確認を行おうということになりました。

 

そして、宮山さんが中心となり2012年6月9日、「アクセサビリティ」について初めての会合がもたれました。

 

一つひとつ丁寧に確認する為に、6月23日の基礎講座最終回後に館内を車いすを使って移動してみました。

多くのとびラー候補生の方々の参加によって、地図上にはチェックの山、山、山。この皆さんから頂いたご指摘をどうまとめるか・・・。空閑、辻、山木、平野がプロジェクトに本格的に参加。6月29日には“溜池山王会議”がもたれました。

お恥ずかしいくらい拙い初めのペーパーです。でも、これが次への第一歩。調査を箇所を写真撮影、その結果をまとめ、冊子にすることがプロジェクトの大枠として決定しました。

 

そして、冊子作成へと作業が進みました。館内のアクセシビリティーに加え、辻さんが「都美館HPアクセス情報補足案」として作成しました。

空閑さんが冊子の編集を行いました。8月上旬ついに完成しました!

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左から宮山、山木、空閑、平野、辻。プロジェクトを終えた感想をメンバーが語っています。
宮山「『障害のある方のための特別鑑賞会』と言う素晴らしい催事を実施している大好きな都美が新装になっていざ出掛けてみようと身障者のお出掛けバイブル ホームページを開けてみました。残念なから欲しい情報が得られませんでした、と言うことからこれをなんとかと開始したプログラムです。始まったはよいのですが新しい都美システムにうまく乗れない宮山に伊藤さんからの矢のごとき指導。これを平野さんがコンダクターになりPC得意と漏れ聞いた空閑さんが纏め役に。怒涛のごときメール作戦であっと言う間にHP案を作った辻さん。そして山木さん、4名の方々が拾って形にしてくださいました。今後は折角調査した事案を いかに生かすかスタッフの皆さまにご協力頂くべく努力致します。有り難うございました。」
山木「リニューアルオープンした都美、そこに生まれたアートコミュニケーショングループ=とびラーが ピカピカになった館内を車いすで探検してこんなところ、あんなところを見て感じたことを冊にしました。これから色々な活動に活用していただければ幸いです。多くの館内の方にご協力頂きました。ありがとうございました。」
空閑「美術館内、美術館への『アクセシビリティ』について、敢えてネガティブな視点を持って指摘することで結果を出す本プロジェクトには、参加当初、多少の戸惑いもありましたが、『とびラー』という立場でこそ出来ることなのではないか?と気づき、宮山さん始め他メンバーに啓蒙、触発されながら貴重な体験をさせて頂きました。みなさま、ありがとうございました!具体的な反映は既に実行に移されたもの、これから『バリアフリー』から『アクセシビリティ』の発想に転換している世界の流れに乗って、出来あがった調査報告書がTokyo Metropolitan Art Museum(ここは敢えて英語で!)の更なる進化の一助になり得たなら、素敵ですね 。」
平野「『アクセサビリティ調査報告書』は、皆さんと新しい都美館を回って頂いたご指摘をもとに、ますます“やさしい都美”を目標に掲げて作成した冊子です。 皆様、ありがとうございました。」
辻「来館される方たちの、すこしでもプラスになるようなお手伝いをできれば嬉しいと思っています。私の突然の思いつきにもかかわらず、お仲間のみなさんが手を差し伸べてくださりなんとか形になりました。これからも楽しみつつ、かかわっていけたらいいなと思っています。」

 

2012.08.10

アクセスプログラム4回目は、「障がいのある方の為の特別鑑賞会」当日のサポート体制をより具体化させるための日となりました。まずは、杉山貴洋先生(白梅学園大学准教授)の指導のもとチーム編成。凡そ40名のとびラー候補生(以下:とびコー)が4班に別れ、展示室での鑑賞サポートはもとより、美術館の敷地内での誘導サポートも担当します。

 

展示室内や美術館の敷地内で、人的なサポートが必要と思われる場所は予めピックアップしてあり、各担当の班が持ち場を守ることになりますが、どのようなローテーションを用いて、起こりうるだろう不測の事態に備えるかは、それぞれの班の現場判断に委ねられています。自分たちで決めた現場対応の布陣であるからこそ、様々な局面にも柔軟に対応することができると考えています。

 

一度現場に立ったら、トラブルに対する迅速な対応や的を得たサポートは、各自の適切な判断でしか成し得ません。みなさん真剣に話し合っている様子です。

 

最後は、杉山先生から現場で知っておかなければならない知識についてアドバイスを頂きました。考えられる準備は全てしました。「障がいのある方の為の特別鑑賞会」がご来場下さるみなさんにとって良き日になる様に、とびらプロジェクト一同、力を合わせて行ければと思います。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

2012.08.05

「マウリッツハイス美術館展」の作品が展示されている企画棟の1 階、2階には、見晴らしの良いラウンジがあります。作品を観たあとに、カラフルな椅子に腰を下ろしてひと息ついたり、買ったばかりのカタログをさっそく広げる人も。大きなガラス面からは、東京都美術館(以下、都美)の正門から入口に向かう人の波も見えます。
「なんだ、あれ?」
「青いターバンがいっぱい…コスプレ?」
おや、正門周辺の様子がいつもと違うようです…早速、見に行ってみましょう!!

正門から、にぎやかな旋律が聞こえてきます。どこかで聴いたことがある懐かしいメロディ。演奏しているのは、とびラー候補生(以下、とびコー)有志で編成された「とびら楽団」です。団員はフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」と同じ青いターバンを巻いています。美術館入口で青ターバンがライブ演奏という予想外の出迎えに、暑さの中、足を運んでくさったお客様の顔も思わずほころびます。

演奏曲は、NHK「みんなのうた」でおなじみの「メトロポリタン美術館」。この曲はもともとニューヨークのメトロポリタン美術館を舞台とした物語をモチーフにしていますが、都美もTokyo Metropolitan Art Museum であり、秋にはニューヨークのメトロポリタン美術館展が開催される縁もあって、最初のレパートリーに決定したのでした。

楽団結成は5月末。演奏が好きな人、歌なら歌えるという人…経験不問、やりたい人全員ウェルカム!カスタネット、サックスから旅先で買った打楽器まで、楽器はすべて持ち寄りでスタートしました。8月まで2ヶ月あったとはいえ、平日は学校や仕事があるメンバーが多いため、自主練習と数回の合同練習で当日を迎えましたが、その演奏は、お客様を笑顔にするには十分なものでした。

楽団を横目に歩みを進めると、今度は楽団とは別の青いターバンの集団がいます。
「顔の向きはそのまま!視線をこっちに!」
「そうそう!はいっ、撮ります!」
撮るって…いったい何を???見ると、お客様が青いターバンを着けて大きな額縁から顔を出してにこやかにカメラに収まっていました。旅先で、歴史上の人物の等身大看板の顔がくりぬかれたところから顔を出して写真を撮ったこと、ありますよね?仮にそれを「顔出し」と呼ぶとします。その顔出しを更に進化させ、マウリッツハイス美術館展の目玉作品、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」でやってみよう!というとびコー発案企画「あなたも『真珠の耳飾りの少女』プロジェクト」だったのです。

ターバンをつけて撮影なんて、本当はやりたくても人前では恥ずかしいかもしれない。誰かがサクラで並ぼうか、という声もありましたが、始めてみると「やってみたい」というお客様があっという間に列を作りました。写真映えする手作りの衣装、リアルな額縁、フェルメールに扮した企画発案者(とびコー)・小野寺伸二さんの目線指導付きの撮影に、有料サービスかと思い込み「おいくらですか?」と聞く人もいたほどです。もちろん、全て無料です。とびらプロジェクトはプライスレスな活動です。

このプロジェクトも当初は、額縁はどうする?衣装はどうする?…と「どうする?」だらけでしたが、とびコーがそれぞれの特技を生かして、ひとつひとつクリアしていきました。見てすぐに「フェルメール!」とわかる色と質感のターバンを何枚も縫った時田薫さん、額を原寸大で下書きから描き、模様をグルーガン(スティック状の樹脂を溶かして接着させるもの)で立体的に作った山近優さんをはじめ、多くのとびコーの手と汗が、オリジナルの「真珠の耳飾りの少女」を観た人もがっかりさせない“ホンモノらしさ”を作りあげたのです。

鑑賞を終え、涼しい会場から出た途端に吹き出す汗。そうだ、外はこんなに暑かった…そんな時、思わず手が出るプレゼントも用意されていました。展覧会のチラシを再利用したエコな「うちわ」です。美術館にあるチラシは色やデザインが美しいものが多く、「次はこれを観に行こう」と持ち帰ったり、印象に残った展覧会のチラシはいつまでもカタログに挟んでとっておくことがあります。そんなチラシも、残念ながら、配布期限が過ぎれば配ることはできません。とても残念です。「カワイイデザインのチラシなのに、無駄にしたくない」、そんな想いから「チラシ de うちわ」プロジェクトがスタートしました。

何度も試作を繰り返し、形を決めるまでに長い時間をかけました。とびコーの手で1 枚1 枚心をこめて仕上げたうちわ。嬉しいことに、用意した100 枚は次々にとびコーからお客様の手に渡りました。実は、うちわをゴミにしないように回収ボックスも用意していましたが、その箱に戻されたうちわはわずか数枚でした。残暑が厳しい今年の夏、今日もどこかで小さな風を送っていることでしょう。

 

とびコーのアートコミュニケータ研修が始まってからおよそ4ヶ月。この日初めて、研修の合間を縫って取り組んできた企画を来館者に向けて発信しました。1時間という短い時間でしたが、お客様の「作品を鑑賞する」という当初の目的に、ささやかなサプライズとなったのではないでしょうか。お客様の笑顔や、「次回はいつやりますか?」という声に、手ごたえを感じたとびコーも多いことでしょう。うちわの配布は規模を拡大して8 月15 日のシルバーデーでも実施。別のプロジェクトの準備も進んでおり、とびコーの都美デビューはこれからも続きます。

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最後に、本日の「真珠の耳飾りの少女」です!

ご来場、ご参加ありがとうございました。

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とびラー候補生:筆者:山本明日香(やまもと あすか)
千駄木で夫と2人暮らし。15 年勤めた民放テレビ局を数年前に退職。会社の仕事にかまけて出来なかったことに少しずつ挑戦中。美術以外で気になるテーマは、うつわ、テキスタイル、リフォーム、ニュージーランド、そして食。食べて鍛える「舌の筋トレ」歴10 年。
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2012.08.03

とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢です。
東京都美術館(以下:都美)では、とても魅力的な人々がたくさん働いています。そこで、都美で働く人々の横顔を、このブログで時々紹介して行きたいと思います。「とびの人々」2回目は、ミュージアムショップ店長の永田愛さんです。そして「とびの人々」は、とびラー候補生(以下:とびコー)のインタビューによって進められます。今回の記事をまとめてくれたのは、とびコーさんの山本明日香さんです。
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「マウリッツハイス美術館展」の来場者は既に40 万人を越え、猛暑の中、入場待ちの都美の敷地外まで伸びる日もある。クーラーの効いたロビーに入ると、まず目に入るのが、明るい光が差し込むミュージアムショップ。ここでも、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のポストカードを手にした人の列が出来ていた。定番のポストカードはもちろん、アクセサリーや、江戸切子を始めとする日本の伝統工芸品、上野の街にちなんだグッズまで、目移りしてしまう。
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都美のリニューアルオープン以来最も忙しい時期を迎えたミュージアムショップを率いるのは、店長の永田愛さん。永田さんは、ショップを単純に「買ってもらう場所」ではなく、「いるだけで楽しい場所」にしたいと話す。
[永田]「お客様が欲しいものは何だろう」。スタッフと一生懸命考えて商品を選びます。ただ、「欲しいだろうな」と予想出来るものだけでは、平凡なラインナップになってしまう。たとえ売れなくても「都美のショップにこんなものが売っていたよ!」と誰かに伝えたくなるような、「魅せる」、「楽しませる」品物も意識して選ぶようにしています。
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永田さんは京都の美大で染色を学び、自身も作品を制作していたが、たまたま人に頼まれて販売の手伝いをした時、「品物を仕入れて販売する」という仕事に大きな充実感を得る。故郷の熊本の現代美術館のミュージアムショップから販売の仕事をスタートし、住まいを東京に移してからも、ここ都美で店頭に立つ。地方の美術館と都美では何か違いはあるのだろうか。
[永田]この美術館は、特別展だけではなく、ほぼ1週間単位で公募展が開催されるという他にはない特徴があります。このため、来場者の数が本当に多く、年齢層もとても幅広いと感じます。書道の公募展がある時期は、書道関連の品物を、絵画作品が多い時期は、絵画関連の書籍を増やすなどの工夫もしています。
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常設の作品が無く、週単位で展示内容が変わる美術館。売る側からすれば、さぞかし販売戦略を練りづらいだろうと想像するが、永田さんは「それもお店の個性」と考えている。
[永田]もちろん、中心は年齢層の高いお客様ですが、その方だけに受ける品物にはしません。逆に、都美のリニューアルを機に、若い人だけが手に取る品物を並べたら、以前から通ってくださっているお客様が楽しめません。特定の人だけではなく、都美に来るすべてのお客様が、ひとつでも「おもしろい!」と思えるモノと出会えるよう、幅広い品揃えを心がけています。お客様にはお店で「自分には関係ないモノばかり」と“疎外感”を感じてもらいたくないのです。
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改装後の店舗には新しい試みの場所も作った。都美のある上野にちなんだオリジナル上野グッズの販売や、特別展に関連した書籍を集めて「ライブラリー」として紹介するなど、期間限定のイベントスペースだ。
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[永田]小さい規模でもワークショップなど、お客様が参加できるイベントもやってみたいです。学芸員や、とびラーのおすすめ商品なども紹介できたら楽しいですね。
疎外感なく、アートを身近に感じてもらうために何を提供するか。発信するか。販売という方法は持っていないものの、私達ととびコーも永田さんと同じテーマで春から活動を始めた。「自分達スタッフだけではなく、美術館に関わるさまざまな人たちと一緒にアートの魅力を発信してゆきたい」という永田さん。これからのとびコーの活動の力強いパートナーになってくれるはずだ。
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とびラー候補生:筆者:山本明日香(やまもと あすか)
千駄木で夫と2人暮らし。15 年勤めた民放テレビ局を数年前に退職。会社の仕事にかまけて出来なかったことに少しずつ挑戦中。美術以外で気になるテーマは、うつわ、テキスタイル、リフォーム、ニュージーランド、そして食。食べて鍛える「舌の筋トレ」歴10 年。
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2012.08.02

とびらプロジェクトマネージャ伊藤達矢です
とびらプロジェクトで活動開始前から既に伝説かと噂される「あなたも真珠の耳飾りの少女プロジェクト」から中間報告が入りました。
記述はとびラー候補生(以下:とびコー)の小野寺伸二さんです。
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東京都美術館の来場者に笑顔を、小さな思い出を持って帰ってもらう。そんなプロジェクトをやりたいと思ったのが「青タープロジェクト」の始まりです。そして直近の企画展である「マウリッツハイス美術館」展のチラシを見ていて思いついたのが“顔出し看板”でした。よく観光地やテーマパークなどに置いてある、人物の絵の顔の部分だけがくり抜いてあり後ろから顔を出せる立て看板みたいなアレ。穴から顔を出しただけで、その人物に早変わり、というアレです。看板の絵にしたいのはもちろん、ヨハネス・フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」。展覧会の目玉作品です。
 企画としては決して目新しいものではありません。でも、ちょっと新鮮で魅力的な“顔出し看板”にできるのではないかと思いました。元の作品そのものがとても魅力的なのはもちろんですが、昨今の「フェルメールブーム」のような状況の中、肖像画としては、いまやダ・ヴィンチの「モナリザ」に次ぐくらいの知名度になっている作品であること。そして、振り返った瞬間の表情を作ることが、多くの“顔出し看板”が真正面向きの中、異色の存在であること。この2点からです。看板は額縁の部分まで作り、来場者は持参のカメラやケータイでそれを撮れば来場者にとってもらえば記念になるし、その様子を周囲で見ている人にも楽しいと考えました。
 幸いなことに大作ではないので真似して作りやすそうです。そして、公開が夏休み中になることもよいタイミングだと思いました。あまり準備期間はないけれど、この世にこれ以上“顔出し看板”にぴったりの作品もタイミングもないようにさえ思えました(笑)。これはもうやるしかないと、とびらプロジェクトの掲示板に参加募集をアップしました。題して「青タープロジェクト参加者熱烈募集!!!!」。「青ター」とは「真珠の耳飾りの少女」の別名「青いターバンの少女」の略である。その段階で、単に“顔出し看板”をやるのではなく、とびら楽団を交えて、衣装も作り、賑やかなものにしようと提案しました。5月31日のことです。
 とにかくミーティングをやろうということになり、初めてのミーティングが行われたのが6月2日。どんな感じかとザックリ考えてみるような段階。衣装に関してとびコ−の越川さんが、テルテル坊主のようなスタイルで、足は男女とも黒タイツ姿、みたいなことを提案するので、私はとびらプロジェクトマネージャーの伊藤さんと顔を見合わせ、背中に冷や汗を感じたのでした。

■ミーティングに参加したとびコー越川の証言■

「そうですね。衣装というのは、青タースタッフと、青ターを周りで盛り上げるとびら楽団のコスチュ—ムのことです。確かにテルテル坊主の様な上からかぶるマントとタイツを提案しました。マウリッツハイス展が始まる6月30日までもう1ヶ月切っていると言う状況と、コスチュームなんて作れる人材がいるのか?という心配がその理由です。マント型なら、フリーサイズだし、縫うのも簡単でなんとかなりそうだと思いました。タイツはただの私の趣味です。」

 

 続く6月3日、私は出席できませんでしたが、この日もミーティングがあり、ここで衣装はターバンだけにしてはどうかとなったようです。
 6月15日、この日、とびコ−の時田さんが衣装用のターバンを作ってきてくれたことで大きく流れが変わりました。ターバンが面白い。着けてみると、女性は誰でも意外なほど似合ってきれいなんです。男性はどことなくカレーショップの店員風なのが、情けなくも楽しい。穴から顔を出すのではなく、来場者にターバンを着けてもらったら、額縁の中で写真を撮ってもらう。それでいいのではないかという意見が出ました。確かにターバンは魅力的。それを来場者に体験してもらうのも楽しそう。でも、実際にターバンの装着をしたり、管理をするようになったら、壁穴方式に比べてさまざまな負担が増えるのではないか。それを予感して、私自身は多数決にも参加できないほど迷いましたが、結果はターバン方式に決まりました。ただ、ターバンそのものの形式は、管理や装着の手間を考えて、実際に布を巻くのではなくヘアバンド形式にしました。
■ミーティングに参加したとびコー田中の証言■
「僕はこの日、とびラボで何をしているのか全く知らぬまま、アートスタディルームに向かいました。ドアを開けて中に入るや否や、真っ青な布を頭にクルクルと巻かれてしまい…。あれが生まれて初めての女装経験でした。青ターに参加したのは、後にも先にもその1回ぽっきりでしたが、一生忘れられない良い思い出です。」
 7月15日、とにかく8月5日にそれらのチェックを含めて、通し練習のようなことを行い、流れ次第では本番実施に入ってしまおうということが決まりました。わかりやすく言うと「ぶっつけ本番」だと思います。ちっとも練習ではありません。ちなみに、この時点で肝心の額縁はまったく出来上がっていませんでした。
 8月の1日・2日で額縁を作ることになりました。材料はスチレンボードとホットボンド。実は額縁をなるべくきっちり作るというのは当初から重要なポイントだと考えていました。しかし、もはや時間がありません。そこで、額縁の設計として、平面状の作るのに簡単なものと、作るのにちょっと手間がかかる立体感が出るものの2種類を提案したのですが、その場にいた人たちは、よりによって作るのが面倒なほうを、当然のような顔をして選ぶのでした。額の模様は本物そっくりとはいかないけれど、かなり複雑なものにしました。しかも、私の希望で、額縁の模様の中には「フェルメール」と「ローストビーフ」の文字をこっそり入れておくことになっているのです。しかし、とびコ−の山近さんの職人的な技と「秘密工作部隊」の活躍で、かなり複雑な模様を実現することができました。多くの人の協力を得て、ついに額縁完成へと至ったのです。初「青ター」実施3日前のことでした。
■額縁作りに参加したとびコー長井の証言■
「初めは文化祭準備のノリで賑やかにスチレンボードを切り出していましたが、模様をトレースするあたりから、皆、寡黙になってきました。「間に合うのか?」額縁を見ると今もホットボンドの溶ける臭いがよみがえります。熾烈を極めたのは、金色スプレー塗布作業で、新装都美を汚してはならぬと屋外退去を命じられました。屋外作業では、蚊の大群に襲われ、足に10匹位黒い蚊が止まっているのを見た時は卒倒しそうでした。よくぞ完成、感無量です。」
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今回の執筆にあたっては以下の3名のとびコーさんたちに協力してもらいました。越川さくら・田中進・長井靖子。
 
【もっと面白い(はずの)後半に続く】
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とびラー候補生:筆者:小野寺伸二(おのでら しんじ)
児童書用になぞなぞの問題を作ったり、クロスワードパズルを作ったりしている。企画は好きだが、実施は苦手。

 

2012.08.01

とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢です。
東京都美術館(以下;都美)では、とても魅力的な人々がたくさん働いています。そこで、都美で働く人々の横顔を、このブログで時々紹介して行きたいと思います。「とびの人々」第一弾は、美術情報室で働く、重住優さん(美術情報室チーフ)と、奥田真弓さん(美術情報室サブ・チーフ)です。そして「とびの人々」は、とびラー候補生(以下:とびコー)のインタビューによって進められます。今回の記事をまとめてくれたのは、とびコーさんの阪本裕一さんです。

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<美術情報室>

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都美1階アートラウンジ。佐藤慶太郎の銅像を横目に自動ドアを抜けて、奥の廊下へと進んで行くと、書斎のような小部屋があります。ここは<美術情報室>と呼ばれ、開架図書4500冊・閉架図書35000冊、アーカイブ資料1200点を含めれば、約40000点の資料を保管している都美の“情報センター”です。美術情報室の運営は、図書館流通センター(以下:TRC)が担っており、世界の美術をフィーチャーした書棚の立ち並びがわれわれの目を惹きつけます。
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今回は美術情報室で働く重住優さんと奥田真弓さんのお二人の女性にお話を伺うことができました。
インタビューの場所はとびらプロジェクトの拠点、都美交流棟2階の<プロジェクトルーム>。部屋のホワイトボードはイラストと文字でびっしりと埋まり、黒い壁面はメッセージ入りのカラフルな付箋が貼られ、ひろい窓からは上野の森の緑風が吹く、アイディア溢れる一室です。インタビュアーはとびラー候補生の山本明日香と阪本裕一。そしてとびらプロジェクト・マネージャの伊藤達矢さんとコーディネータの近藤美智子さんを交え、和やかな雰囲気で会話ははじまりました。
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< 写真:重住優さん(美術情報室チーフ) >
──まず、重住さん、奥田さんのお二人が都美の美術情報室で働くきっかけは何だったのですか?
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[重住]TRCは公共の図書館を多く運営していますが、都内の美術館の図書室を運営するのは、ここの都美がじつは初めてなんですね。それで、社内でここの情報室で働く人員募集がありまして。私は3年間新宿の早稲田の公共図書館で勤めていたのですが、美術に興味があったので、「是非!」という志望を出したのがスタートでした。いま、ここの美術情報室は私をふくめて6人のスタッフがいますが、みんな自分から都美の仕事を嘱望してやってきています。
[奥田]はい。私の場合も、もともと専門的な仕事をしたいということを常々社内で相談していたところ、「都美どう?」と声をかけてもらったのがきっかけでした。
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──みなさん自ら望んでこちらへ働きに来られているのですね!ところで、美術情報室は公共図書館とは違った機能をもっていると思いますが、実際働いてみてどんな感想をもっていますか?
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[重住]美術情報室は扱っている対象が美術だということが大きな特徴です。当然、専門知識の勉強や他のミュージアムの情報を学習したり、新たにやるべきことが山程ありました。新しいことを憶えるのは大変ですが、今はやり甲斐を感じています。
[奥田]図書室の機能としては閲覧のみというのが大きな違いですね。公共図書館の場合は予約・貸出・返却の流れがあり、それに延滞というのが普通に加わりますから(笑)
[重住]そういえば、ご年配のお客さまが多いことには正直驚きました。ですから、今までの公共図書館よりも丁寧な対応を心がけていますね。例えば、都美の建物はちょっと複雑なので、一緒にその場所までお連れする場合もありますよ。
[奥田]館内でお客さまをお連れする機会はけっこう多いですね。
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──なるほど。じつはとびラーも美術館と来館者のみなさまをつなぐ存在でありたいという方針をもっています。そのあたりで、マネージャの伊藤さんからは何かご質問はありますか?
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[伊藤]都美には《“コレクション”より“コネクション”》というフレーズがありますね。“コレクション”は都美の収蔵作品数が少ないという現実、一方で“コネクション”は人と人とのつながりから都美で何かを創発させようという美術館の姿勢を、それぞれ意味しています。“コネクション”の考えは、おそらく在来の美術館のもつそれとは異なるものだとおもいます。で、とびラーはその“コネクション”の役割の一端を担っているわけですが、われわれとびらプロジェクトと美術情報室のみなさんで何か“連携”できそうなことはありますか?
[重住]個人的に思いついたことですが、都美のわかりやすいマップなどを作成してくれたら嬉しいかなとおもいます。
[奥田]マップは是非ほしいですね。
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プロジェクトルームの四角いテーブル。「じつはいまとびラー候補生でこんなものを作っているんです」と近藤さんが一枚の紙を二人に差し出しました。それは、現在作成中の“とびラー目線”による都美のマップでした。重住さんと奥田さんは感嘆して、作成途中のマップをじっくり見たあと、さらに熱心に美術情報室の展望を語ってくれました。
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──美術情報室は来館者にどんな“利用”をされていってほしいですか?
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[重住]私たちは美術の情報を発信していきたいとおもっています。いま、私たちが力をいれているのは閉架図書35000冊
をお客さまに閲覧していただけるよう『目録』をつくっていることです。『目録』は情報室に置くようにしています。そしてお客さまが『目録』から閲覧したい本をお届けできるような仕組みを整えているところです。
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──『目録』づくりは大変そうな作業ですね。しかし、利用冊数が増えるということは、図書室としての機能は拡大しつつありますね。
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[奥田]そうですね。またアーカイブ資料(館資料など)の利用拡大にも着手しています。今後、美術情報室が図書室の領域を越えていければとおもっています。
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──美術情報室が“情報交換の場”となるといいですね。さて、お二人にとって、とびラーのイメージ、またこれからのとびラーに期待していることがあれば教えてください。
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[重住]とびラーさんは都美と一般の来館者とをつなぐ大切な役目を担う人なんだろうとおもいます。ところで、プロジェクトはすごく盛り上がっていますよね。
[奥田]今までのボランティアとはちょっと違う動きをされているなぁと感じます。
[重住]たとえば“とびラー通信”のような冊子を発行してくれたらぜひ読んでみたいですね。たまに「私もとびラーになりたいのですが・・・」というお客さまがいらっしゃったり、館内の職員でとびらプロジェクトのブログが話題に上ることもありますよ。

 

 <写真:奥田真弓さん(美術情報室サブ・チーフ) >
^^
重住さんは、学生時分、翻訳の研究に明け暮れ、スランプに陥ったとき駆け込む場所が大学の図書館だったそうです。一方、奥田さんは本のかたちや質感や重さに愛着を持ち続けてきたそうです。そんな書物と縁(ゆかり)のあるお二人に最後の質問として『とびラーにおすすめしたい本は?』とリクエストを出しました。後日、ある一冊の本の紹介がプロジェクトルームに届けられました。
『立体で見る/美術がわかる本』ロン・ファン・デル・メール&フランク・ウィットフォード著(福音館書店)という仕掛けブックです。手に取ってみると、まさに《アートのとびら》を体現するかのような書物でした。この本のように、とびラーも、“コネクション”の力で、美術館の領域を飛び出してアートの価値を届けられるとよいですね。

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とびラー候補生:筆者:阪本裕一(さかもと ゆういち)

現在、台東区で育児に没頭しながらアート・コミュニケーター活動へ奔走する。とびらプロジェクトを街づくりの一環として認識。0歳と100歳のヒトが同等に遊べるようなミュージアム計画を野望している。趣味は相撲観戦。白鵬、日馬富士と同級生。

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