東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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Archive for 9月 10th, 2012

2012.09.10

午前中の多田小学校の皆さんを見送った後、続けて午後には足立区立青井中学校1年生のみなさん66名が来館されました。

 

美術館での滞在時間が1時間少ししかないという非常に短いスケジュールではありましたが、学芸員やとびラー候補生(以下:とびコー)のみなさんが一丸となり、出来る限り充実した鑑賞体験をしてもらう為に工夫をこらして対応させて頂きました。展示室の入口から出口まで、まずは一通りザッと案内をさせて頂きました。これで、生徒のみなさんもこの展覧会がどのくらいの規模なのかを掴むことができます。つぎは、グループ鑑賞へと移ります。絵の前に座って気持ちを落ち着かせてから鑑賞に移ります。

 

4グループに分かれて、それぞれのファシリテータ(稲庭、武内、河野、三ツ木)のもとでじっくりと作品を鑑賞して行きます。絵の中で起こっていることをそれぞれ言葉にしながら、感じたこと、思ったことを共有して行きます。今回も生徒のみなさんには、つぶやきをメモしておくことの出来るシートを渡してあります。

 

グループでの鑑賞が終わった後は、個々人での鑑賞に移ります。絵の前に座り込んで、じっくり見ることは、混雑する平日では到底できませんが、休室日を利用したスクールマンデーなら、こうした鑑賞体験が可能なのです。小中学生のみなさんが、絵と対峙し、ゆっくりとその世界観へ入って行くには、静かな環境と少しのサポートが必要なのではないかと思います。東京都美術館は小中学校の先生とともに充実した鑑賞教育の場をつくりあげて行きたいと考えています。

 

あっと言う間の時間でしたが、名画と対峙したこの体験を通して、何かを感じとってもらえていれば幸いです。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

2012.09.10

東京都美術館(以下:都美)がリニューアルオープンしてはじめて学校単位での鑑賞授業が行われました。スクールマンデー<対話を通した作品鑑賞>は都美のアートコミュニケーション事業の一貫である「先生とこどものためのプログラム」の一企画として実施されており、普段は来館者が多く学校単位での鑑賞が難しい特別展を休室日に特別開室し、鑑賞教育の実践の場としています。学芸員やアートコミュニケータとして都美で活動をするとびラー(現段階ではとびラー候補生:以下とびコー)が中心となり、こどもたちとの対話を中心に、自由な発想を引き出しながら、主体的に鑑賞できるようなお手伝いをします。本日お越し頂いたのは、中野区立多田小学校(以下:多田小)の6年生のみなさん48人です。はじめに担当学芸員の稲庭さんから展示室内でのルールやマナーについてお話がありました。

 

展示室に入るとまずは1フロアずつ自由に作品を鑑賞して行きます。実は多田小のみなさん、都美に来る前に、どんな作品が展示されているのかを予習して来ています。予習と言ってもお勉強ではなく、「どんな作品に出会えるのかな?」「本物の作品ってどんなだろう」と、美術館に来る前にワクワク感を持ってもらう為の心の準備です。遠足にしても、お祭りにしてもそうですが、本番よりも本番を迎えるまでの心の中の時間が充実していればしているほど、素晴らしい体験につながる可能性が大きくなります。そのため、多田小のみなさんに都美へお越し頂くまでには、何度も担任の先生と学芸員とで連絡を取り合いながら、事前の準備をさせて頂きました。その甲斐あってみなさん、予め自分が凄く見たいと思っていた作品の前に立って「あったあった!」と嬉しそうにお話をしていました。もちろんこの日は休室日、他のお客さまはいません。作品の前で自由に感想を語り合っても大丈夫です。

 

まずは、個々人でじっくり鑑賞しますが、こどもたちには「つぶやきシート」というプリントを配布してあります。気になっていた作品の前で、気付いたことをメモしてゆきます。少し思ったことを言葉にすることで、自分が思っていたことを再確認することができるからです。これは、こともたちが絵の世界にゆっくりと入って行くためのきっかけとしての「つぶやき」でもあります。「絵画を鑑賞する」ような行為、つまり、動きもない、音も無いモノを前に、見つめることを切り口としながら、自分の心の中に入って行く体験は、こどもたちの日常の生活の中ではなかなかありません。絵を鑑賞することは、絵を通して自分と対話することでもあります。そして、鑑賞すること(鑑賞を通した教育とは)は、「素晴らしい絵を拝見すること」「絵の意味を正しく理解すること」に治まる体験ではありません。鑑賞教育とは、絵の素晴らしさを教える教育ではなく、目の前のモノに素晴らしさ(価値)を感じとれる心を育てる教育を意味しているのだと思います。「素晴らしい絵」があるから人の心に感動があるのではなく、感動する心があるからこそ、「素晴らしい絵」が残されるのだと考えます。つまり、その絵を素晴らしいと思う心の素晴らしさを育む機会が、いつもとは少し違った自分たちだけの美術館での体験なのです。

 

個々人での鑑賞のあとは、4班に分かれてグループで鑑賞します。グループ鑑賞ではVTSの鑑賞方法を用いながら進められました。ファシリテータは学芸員の稲庭さん、武内さん、河野さん、それにスクールマンデー実践講座で講師を担当されている三ツ木さんです。(とびコーさんはサポートに入ります。)
はじめは、どんな風に作品の前に立ってよいか分からなかったこともだちも、ファシリテータの「この絵の中でなにが起こっていますか?」という質問をきっかけに、次第にこどもたちの「つぶやき」は大きな声へと変わって行きました。

グループ鑑賞では、こどもたちが絵の中で起こっている出来事を一つひとつ言葉にして紡ぎだして行きました。思わず立って説明をするくらい夢中になる子もいました。ちょっとお話することが苦手な子は、他の同級生の意見を聞いて、自分のつぶやきをメモするなど、それぞれのやり方で参加をしている様子でした。見る→発見する→共有する→個々人の感想として心に蓄える→(見る)、グループでの鑑賞ではこうしたサイクルによって一人で鑑賞するのとは違った深まりを体験することが出来ます。

 

グループでの鑑賞が終わると、もう一度個々人での鑑賞に移ります。

 

こどもたちは、もう一度美術館へ来る前から出会うことを楽しみにしていた絵の前に立ちます。最初のぎこちなく「つぶやいた」言葉とは違った思いが自然に心の中に湧いてきて、それをさりげなく隣りの先生につぶやいている様な様子が伺えました。真珠の耳飾りの少女との会話はどんなだったのでしょうか。

 

展示室での鑑賞を終えて、アートスタディルームへ。今日の体験を振り返ります。

 

グループで鑑賞したときと、一人で鑑賞した時の違いなどの感想をメモします。そして、もっと興味を持ったことがあったら、ここから先は自分で調べてみましょうと先生からの宿題が出されました。
都美で実施するスクールマンデーは、学校の希望(人数、学年、滞在時間など)によってその都度先生方と相談しながら実施されます。この体験がこどもたちにとってよい思い出となれば何よりです。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

 

 

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