2016.01.17
「外国語を話す方々にも、都美を楽しみ、親しんでいただきたい!」という思いを持った とびラーが 集まって議論を続けています。
「この辺で、生の声を聞いてみたいよね?」ということで、トライアル鑑賞会を実施するに至りました。 コミュニケーション方法は、“易しい日本語”で。 「英語圏の人は英語で応対できた方がベストだけど、私達とびラー側のハードルが上がっちゃう…」、 「英語だけでなく、中国語やフランス語も必要なのかも?」、
・・・、 という議論の末、今回はこの方法に行き着きました。先ずは対象者を日本在住の人に絞ってみようということでもあります。
鑑賞に選んだ舞台は、書の「感じる漢字―⻄川寧・⻘山杉雨・手島右卿を中心に」に決定。常設展を持たない都美において、数少ない所蔵品を味わえる展覧会です。 「漢字って結構海外で流行っているから、興味持ってもらえるのでは?」という意見の一方、 「日本人でも楽しみ方を知っている人は少ないので、鑑賞は難しいかも・・・。」と様々な期待と不安が 入り交じる中での実施でした。
準備には、鑑賞会の運営・スケジュール決めから、下見、担当学芸員さんへの相談、鑑賞作品の情報収集などなど。そして、参加していただくお客さんは、とびラーネットワークを活用してお友達に声をかけていただいて集めることに。
いよいよ当日。打ち合わせと会場設営を終えたところで、続々と会場のアートスタディールーム(以下 ASR と表記)に、とびラーの友達・会社の同僚・親戚の方々がいらっしゃいました。出身の国・地域も 様々で、アメリカ1名、タイ1名、台湾2名と日本人の旦那さん1名の計5名です。
お客さんをお迎え中(左)と、トライアル開始(右)@ASR
自己紹介でお互いの緊張をほぐしつつ、今回の鑑賞会の趣旨を伝えていきます。日本在住でアジア系の 人が多かったせいか、日頃から漢字に慣れ、習字のご経験もあったりと、書をご存知の方ばかりでしたの
で説明もすんなり理解して頂けたようです。
いざ展示会場のギャラリーBへ。下見のときとは違い、一般来場客の方々が予想外に多くて戶惑いながらの運営でしたが、肝心の鑑賞とそのリサーチをすることができました。
「感じる漢字―⻄川寧・⻘山杉雨・手島右卿を中心に」を鑑賞中@ギャラリーB
「うーん、この作品はどうしても文字として読んでしまうので鑑賞という考えに切り替えられないなぁ。」
という作品がある一方、
「グラフィックデザインをみるように楽しめるよ!人によっていろいろな見方ができるね。」
「余白が素晴らしい。面白い。」
「文字の配置をあえて崩しているのが面白い!趣味でやっているハンコ作製はきれいに見えるよう配置
を崩すことがあるけど、それに似ていますね。」
などなど。コミュニケーションには”易しい日本語”に加え、通訳とびラーを介した中国語となりました。 我々が期待していた以上に、書の楽しみ方を「感じ」ていただいたようです。もしかしたら日本人以上な のでは?と思うコメントも多くいただきました。
ASR に戻り、お習字ワークショップも合わせて実施しました。展覧会の体験を文字で表現してみよう
というものです。
お習字ワークショップの様子@ASR
さすがに最初の一筆を躊躇なさっていたものの、とびラーの書き始めを皮切りに、次々とかいていただ けました。気に入った字を書く人、作品に感化されて描く人。その人それぞれの思いを形にしていただき
ました。
最後にトライアルの感想と共に、外国語を話す方々の目線で「日頃上野について/都美について」など
について感じてらっしゃることを伺いました。
トライアル後の聞き込み調査中@ASR
◆感想として、
「(書には)絵に負けない作品があることを知りました。」 「一般的な書だけでなく、いろいろな作品があって楽しめた。(対話による)鑑賞方法も珍しく、話すの も聞くのも書くのも良かった!」
「異なる文化の方と感想を共有できるのは楽しかった。」 「鑑賞後にすぐに誰かに感想を話したくなるタイプなので、今回のように誰かと一緒に鑑賞しながら感想 を言い合えるのはいい体験だった。」
◆日本語でのコミュニケーションについて、 「アートなど文化的なことを(母国語でない)日本語で表現するのは難しい。」 「深く知りたいときは、やはり母国語の方が良いですね。」
◆都美へのアクセスについて、
「(都美を含めて)ミュージアムには何度か見に来ていますよ。」 「上野公園の展覧会表示が分かりにくいかな。旅行客は、まず上野に来てからどこに行くか考える人もい るので、HP もですけど案内表示も分かりやすくすると良いと思います。」 「ツアーをできる人を呼んで、ツアーを企画するのも良いかもしれませんね。」
などなど、私達には普段気が付かなかった大変有意義なコメントをいただけました!
最後に全員で Say cheese!
集合写真@ASR
トライアルにご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!学びあり、笑いありのとても充実した時間を過ごさせていただきました。
良かったこと、もっと考えなければならないことが、徐々にはっきりしてきたように思います。今回の トライアルでの経験を活かして、次の活動へつなげていこうと思います。ご期待ください。
終了後の振り返り@ASR
執筆:小高隼介(アート・コミュニケータ「とびラー」)