2016.01.29
2016年1月29日に第64回東京藝術大学卒業・修了作品展で、「なりきりアーティスト」を開催しました。
「なりきりアーティスト」とは、藝大生が制作した作品を、ワークショップ参加者が作ったと仮定し、コンセプトや作品タイトルを語ってもらうワークショップです。今回がはじめての実施となりましたが、最年少は幼稚園の年長さん(!)から大人、日本語学習中の外国籍の方まで、8名のさまざまな“なりきりアーティスト”の皆さんに参加していただきました!
この日、外は冷たい風が吹いていましたが、都美術館内は藝大生や来館者の皆さんの熱気が充満していました。作品から発せられるエネルギーが溢れ出ています!
さて、開催告知を見て応募してくださった参加者の皆さん。とびラーとの自己紹介が済んだら、それぞれの作品のもとへ出発です。そうです、作品のもとへ行くまでは、自分の担当作品がわかりません。さらに、担当作品は公正にクジ引きで決められるので、私たちとびラーも、誰がどの作品を担当するのかはわからないのです。
ひとつの作品に対して、一人か二人のなりきりアーティストさんと、案内とびラー、そして作品を作った張本人である藝大生がいます。藝大生と案内とびラーが鑑賞のサポートに入り、寄り添っていきます。この時間は、作品のコンセプトやタイトルを考える時間です。
1.どうしてこの作品をつくったのですか?
2.みんなに見てもらいたいポイントはなんですか?
3.作品のタイトルは?
この3つの質問に沿いながら鑑賞し、深く作品に入っていきます。
ひとりでじっくりと深い鑑賞に入っていく方や、
とびラーとのお話の中で見出していく方。それぞれの方法でじっくりと、深く鑑賞します。
お子さんたちもじっと作品を見つめていきます。
藝大生の皆さんもその様子をじっと見つめています。
20分の鑑賞時間があっという間に終わり、いよいよ作品発表の時間です。
なりきりアーティストの皆さんは、もう一度全員集合し、みんなで最初の作品、油画科の展示室に移動します。
最初の作品は、壁一面に作者のモチーフが広がっているような作品。
少し緊張されながらも、“自分の”作品コンセプトを、なりきりアーティストさんがお話しします。
様々なモチーフから、ご自分の記憶や母の思い出の断片を辿っていくなりきりアーティストさん。とびラーや藝大生の大人さんもその発表を聞き入ります。
小学生のなりきりアーティストさんも、自分が発見したモチーフを中心に発表しました!
続いては、日本画科の部屋へ移動し、お二人の発表です。
”ご自分の”作品の出来栄えに大満足されたようで、自信に満ち溢れた発表です。
発表を聞いている皆さんに、作品に近づいてもらったり、離れて観たり。作品の見方にもこだわりがあります。
作品に漂う悲しみや、登場人物への想いを語るなりきりアーティストさん。優しく紡いでいくストーリーに、みんな真剣に聞き入る。
“自分のコンセプトに似てる”と語る藝大生の竹内さん。
続いては、先端芸術表現科へ。
発表の冒頭、藝大生を”お兄ちゃん”と呼び、新たな展開を呼び起こしたなりきりアーティストさん。
急遽“なりきりお兄ちゃん”になった藝大生の田中さん。
ユニークな発表で、和やかな空気が流れました。
そして最後は、彫刻科の展示室へ移動。
最年少のなりきりアーティストさん。“ヒーローが変身する瞬間みたい”と語りました。おお、カッコイイ!
“歯で成形されたような手“を独特な表現で語るなりきりアーティストさん。
“肉体は滅んでも、歯は残る”、”手で触り、歯で味わう”など印象深い言葉がたくさん飛び出しました。
メモをとりながら聞き入る藝大生の中本さん。
*
8名のなりきりアーティストさんの発表は、これにて終了。皆さん、素晴らしい発表でした!藝大生もとびラーも、参加者の皆さんのなりきりっぷりに圧倒されました。自慢げに作品を発表される様子は、”ほんものアーティスト”のようで、展示室を通りがかった方が藝大生と見間違えるほどです。
作品とじっくり対峙した皆さんの言葉や解釈は、偽りもなく本物ですから、間違いでも見当違いでもありません。
皆さん、素晴らしいアーティストでした。そして、発表をしっかりと受け止めてくれた藝大生の皆さん、ありがとうございました。
また、いつか、「なりきりアーティスト」でお会いしましょう!
執筆:アート・コミュニケータ(とびラー) 太田 代輔
アートを介したコミュニケーションに惹かれ、実践の場を求めてとびラーになる。
多彩な人々やアートとの出会いが楽しい3年目。とびラー卒業後もアート・コミュニケーションします!
2016.01.29
2016年1月29日 とびフェス初日の朝一番に、第64回東京藝術大学卒業・修了作品展にてベビーカーツアーが開催されました。
天気予報は雨のち雪の大荒れ。そんな中を6組の参加者の皆さんが集まってくれました。
ベビーカーや抱っこ。赤ちゃんとママの来館スタイルはいろいろです。集まった方ととびラーは、お天気が悪いのにありがとう、お子さん何ヶ月ですか?ここまで来るの、大変だったでしょう!といった会話で皆さんが集まるのを待ちます。おむつ替えや授乳室の場所もご案内します。
集合場所には、ベビーカーツアーバッグを提げたとびラーが皆さんをお迎えしています。もちろんメンバーの手作りです。硬い素材でお子さんが怪我をしないようアイデアを出し合い、試行錯誤して出来上がりました。
親子二組に、とびラー二人が寄り添います。
まずはご挨拶。
お子さんの年齢の近いお二人は、すぐに打ち解けていました。
授乳やおむつ替えが済んだら、それぞれのチームに分かれて展示室へ。
エレベーターを待つ間も話が弾みます。
いよいよ展示室内へ。
ベビーカーも荷物もとびラーがサポートします。ママは赤ちゃんとじっくり作品を鑑賞。
もちろん、赤ちゃんの発言にもみんなで耳を傾けます。ふむふむ、なるほど!
おねむになった赤ちゃんを抱っこして、建築模型を鑑賞。このグループは、偶然おふたりが建築模型の作成経験者。「これつくるのに○○日くらいかかるね!」 とびラーはおふたりの話に興味津々です。もちろん抱っこの間は、とびラーがベビーカーをお預かりします。赤ちゃんはちっともぐずることなく、ママの抱っこで安心しています。
立体作品も、みんなで囲んでそれぞれの角度から鑑賞。ひとりで見るのとは違う発見がたくさんあります。
どうなってるんだろうね?これ、なんだろうね?なんて近づいてみます。
少し前まで自分たちもこうだったね。
立体作品が多くベビーカーでの移動が大変な展示室内も、とびラーがいるので大丈夫。
ベビーカーツアーでは、特にプログラムはありません。とびラーと赤ちゃんを連れた皆さんが一緒に展示室をまわりながら、作品を介しておしゃべりします。
赤ちゃんがいることでちょっと遠のいた美術館、とびラーがサポートすることで美術館をより近くに感じていただこう。そして、ちょっとでも美術館でリフレッシュしていただこう、という目的で始まりました。今回も、赤ちゃんと美術館に来るのが初めてというママがいらっしゃいました。最初は緊張していたお顔も、終わるころには満面の笑顔。そんなデビューの日にご一緒できて私たちも幸せです。ママの笑顔のおかげで、赤ちゃんたちもみんな笑顔で過ごしていました。
このベビーカーツアーをきっかけとして、お子さんとのお出かけ先に美術館も仲間入りできることを願っています。
執筆:とびラー二期生 工藤阿貴(男児二人と暮らす母ちゃん)