東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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Archive for 10月, 2025

2025.10.27

東京都美術館で開催された「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(会期:2025年9月12日(金)~12月21日(日))にて、展覧会の休室日にあたる10月27日(月)に「障害のある方のための特別鑑賞会」を実施しました。

当日は、とびラーとアート・コミュニケータ東京(任期満了したアート・コミュニケータの団体)が連携し、館内のさまざまな場所で来館者お一人お一人が安心して過ごせる環境を整えていきました。


展覧会入り口で来館者を迎えるアート・コミュニケータ

今回の特別鑑賞会でも、ミロ展に引き続き、とびラーが「とびラボ」で発案したアイデアが行われました。案内状のデザインや、手元のiPadで拡大画像を明るく見ることができる工夫、また、東京都美術館が制作した触図(しょくず・作品の構図やモチーフを凹凸のある線や点で立体的に表わした図版)を用いた鑑賞サポートも行われました。事前の準備段階から複数のとびラーが関わり、来館者が展覧会に出会うための入口をつくってきました。


案内状のデザインを紹介しながら参加者とコミュニケーション


iPadに入れた作品画像を手元で拡大して細部を見やすくサポート

触図を用いての鑑賞サポートでは、アート・コミュニケータが来館者と一緒に作品を鑑賞します。アート・コミュニケータは作品に描かれているものを説明したり、作品から受ける印象をお話しします。同時に、来館者の指先を触図にふれさせながら、構図や質感をイメージしてもらいます。

触図《種まく人》の前でも、多くの声が交わされました。まず多かったのは、触ることによって作品の全体像が立ち上がる驚きです。

ロービジョンの参加者からは、
「本物は会場が暗くてよく分からなかったけれど、触図だと木の太さや種をまく男の姿がよく分かる。見やすい」
という声が聞かれました。

また、触図を使ったアート・コミュニケータとの会話から、作品の細部に気づいていくことも多くあります。

「太陽はうすく赤くなっているのですか?色はどういう感じですか」

「青い袖を着ているんですね。種をまく手はどちら?」

「右手ですね。土に向かっている。左手は袋を持っている…あ、持っているのが分かります」

など、触図を起点に、色・身体の向き・動作が具体的なイメージとして共有され、鑑賞が深まっていきました。


触図に触れながら、《種まく人》の作品を鑑賞する様子

鑑賞会後のアンケートには、「安心して、ゆっくり鑑賞できた」「人混みを気にせず美術館に来られた」という声が多く寄せられました。


アート・コミュニケータについても、「そっと声をかけてくれた」「一緒に見てくれた」「新しい気づきがあった」といった感想が並び、鑑賞をともにつくる存在として受け取られていたようです。

とびラーから寄せられた当日のエピソードの中には、印象的なやりとりがいくつもありました。

《種まく人》の前を行ったり来たりしている来館者の方がいました。
「見づらいですか」と声をかけると、
「違うのよ。ほら、こっちから見ると絵の具がきらきらして、きれいでしょ。」
そう言って、右側に連れて行って教えてくださいました。
来館者の方の笑顔も、きらきらしていました。

説明する側・される側などの関係ではなく、作品の鑑賞を分かち合う時間が、自然とそこに生まれていました。

また今回は、慣れない移動や人混み、周囲の視線、音、光等の混在により不安やストレスを感じた際に気持ちを落ち着かせたい方のために、「カームダウンスペース」や「センサリーキバッグ」(イヤーマフやセンサリートイなどが入ったバッグ)を導入しました。また、お声掛けが苦手な方にスタッフやアート・コミュニケータが気がつけるようにするための目印(白紙の名札)も用意しました。

すべての方に安心して展覧会を楽しんでいただくための模索は続きます。

特別鑑賞会は、一度きりの特別な日ではなく、皆さまと美術館との関係の入口となる1日です。
この日のご来館をきっかけに、今後も皆さまとのご縁が続いていくことを願っています。

 


次回は、2026年2月9日(月)、東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやきにて開催を予定しています。

次の鑑賞会でもみなさまにお会いできるのを、アート・コミュニケータ一同楽しみにしています。

(とびらプロジェクトコーディネータ 越川さくら)


「障害のある方のための特別鑑賞会」は、東京都美術館の特別展ごとに1回ずつ開催しています。
詳細、お申し込みはこちらからどうぞ:https://www.tobikan.jp/learn/accessprogram.html

2025.10.20

 


日時|2025年10月19日(日)13:30〜16:30
場所|東京藝術大学 第一講義室
講師|村田陽次(東京都 生活文化スポーツ局 都民安全推進部 都民安全課)
         山藤弘子(地域日本語教育コーディネーター、多文化共生コーディネーター)


とびらプロジェクトの活動の拠点である東京都美術館は台東区にあります。
上野公園には毎日たくさんの観光客が海外から訪れています。また、台東区内は外国にルーツを持つ人が多く住んでいる地域でもあります。
アートコミュニケーションの活動を届ける際にも、そうした外国にルーツがある方、日本語を母語としない人たちへどのように情報を届けるか、来館した際にはどのようにコミュニケーションをとることができるかを考えています。

 

今回の講座では、東京都の多文化共生の推進に長く尽力されてきた村田陽次(東京都 都民安全総合対策本部)さんと、台東区在住で日本語教育のコーディネーターをしている山藤弘子さんをお迎えして、国・文化が違う人とどのようにコミュニケーションをとり共生していけるかについてお話を聞きしました。東京都の行政の取り組み、台東区での活動とそれぞれの違うお立場から現状と取り組みについて幅広くお話を聞くことができました。

 

 

村田さんのパートでは、東京都に住む外国にルーツのある方の状況と行政支援についての紹介や、日本語以外の言語を母語とする人とのコミュニケーションで英語よりも多くの外国人に伝わりやすいとされている「やさしい日本語」の考え方、使う際のコツをわかりやすい映像も交えて伺いました。「やさしい日本語」が必要とされる背景には、阪神・淡路大震災や東日本大震災震災などがあり、災害時の防災アナウンスで難しい言い回しによって伝わらなかった経験から行政やメディアの発信も見直されてきたそうです。

 

日本語を母語としている人にとって、話し方について普段から考える機会は少なく、改めて日本語の複雑さや、わかりにくい言い回しがあることに気づきます。また、どこの国の方にでも英語で話せば伝わるというわけでもない。ということも重要なポイントでした。

とびラーからも「やさしい日本語については、各自の母語を大切にしつつ、歩み寄るツールとなる可能性を感じた」という振り返りのコメントがありました。

 

村田さんからは、「やさしい日本語」は万能ではなく、お互いに理解し合えるプラットホームであり、まずはそこからはじまるということ。そこからはその時々に応じて工夫してコミュニケーションをつくる必要がある。ということも添えられました。とびらプロジェクトの活動も長く見守っていただいている村田さんからは、アート・コミュニケータの実際の活動を想定したアドバイスをたくさんいただきました。

 

 

山藤さんからは、いま接している子どもたちの状況や地域の状況を教えていただきました。日本語教室を開き、多文化共生の活動を行っている地域での事例を交えてお話ししてくださいました。

 

教育現場では外国ルーツの児童・生徒の増加による必要なサポートが不足していて、子ども、親、先生、それぞれの立場から困っている点を挙げていただきました。

日本語能力について、日常生活に必要な言語能力は1〜2年で習得できるが、学習するために必要な言語能力は5〜7年かかるそうだ。学校に通う子どもは日常のコミュニケーションは、比較的早く身に付く人が多いけれど、学習に必要な言語能力の習得はさらに時間がかかる。周囲の大人がその習得の違いを理解していないと、「ただ勉強ができない子という誤解や偏見が生まれてしまう」というお話は印象的で、受講するとびラーからも「自分が働く学校現場で、日本に来て数年たち日常会話は問題なく話せる外国にルーツがある子どもたちが、学習でつまづいている様子をうすうす感じていました。今回の講座で理由が初めて分かった気がしました」という振り返りのコメントがありました。

 

地域の多文化共生では、一過性の交流ではなく、ともに地域で暮らしている人として定期的に関わりをつくっていくことを大切にされていて、具体的な声として、日本で暮らす外国ルーツの人にとって、支援を受ける側というよりも、この先も日本に住む者として地域のコミュニティに参加し貢献したいという方も多いそう。

そうした人たちが一緒に餅つき大会やお祭りなど地域行事に参加するようになってきているというお話がありました。この呼びかけも「やさしい日本語」でチラシを作ることで、外国人住民から「初めて情報が目に入ってきて内容を受け取ることができた」「呼ばれている気がした。」という反応があり参加に繋がったそう。情報を発信する側の工夫で日本語を母語としていない人も歓迎していることが伝わるというお話でした。

これまでも、Museum Start あいうえののプログラムで、とびラーとの活動を一緒につくってきてくれた山藤さんからは、

「美術館は多様な人々が互いを認め合い、つながりを見つける場になる」ということ、「アートコミュニケーションこそ、今の社会の対立を和らげる力となる」というメッセージいただきました。

さまざまな言語を母語とする人がとびラーの中にもいたり、お仕事で外国ルーツの人と出会う機会もある方もいて、講座の最後の村田さんと山藤さんのクロストークと質疑応答の時間では、それぞれの背景からお二人のお話に対する様々な感想が交わされました。

 

振り返りの中では

「日本に長期滞在することになる外国にルーツを持つ方々に対して、改めて一緒に暮らしていく仲間であるという事実を再認識できた」

 

「どれほどオープンマインドでいるつもりでも、自分のよく知らない文化に対して「怖い」といったネガティブなバイアスを本当に持たずいられるのか。バイアスなどないと思い込んでいる時ほど、自分を省みることが必要かもしれない。」

 

「自分自身も、いま住んでいる地域に対するつながりを持てていないので、まずは自分が地域で行われている活動に関心を持つことから始めないと」

外国ルーツの在住者が増加している日本社会の状況で「事実に基づかない決めつけ」によって生まれる誤解や、自分で選んだわけでなくそうした状況にある子どもの状況を知ることで、いま美術館で活動をつくっていく意義について改めて共有する時間となったのではないかと思います。

 

 

「Museum Startあいうえの」のダイバーシティプログラムでは「美術館でやさしい日本語プログラム」を毎年行っています。外国ルーツの子どもたちとその保護者だけでなく、日本語話者の親子も一緒に作品を鑑賞して感じたことを身体や音、絵など言語以外の表現も使いながら伝え合います。このプログラムにもとびラーがいることで参加者一人一人の状況を見守り、子ども同士だけでなく、その保護者同士のコミュニケーションも大切にプログラムをつくっています。

 

今年も山藤さんにプログラムパートナーとして参加いただき、村田さんにもアドバイスを受けて準備を進めています。プログラムに向けて前提となる基礎的知識や最新の状況を知ることができました。また、とびラーの中には帰ってから自分の地域のこと、外国ルーツの方への支援活動を調べてみた人もいて、日常の中で多文化共生や、「やさしい日本語」について意識的になることができたようです。

 

(とびらプロジェクト マネージャー  小牟田 悠介)

2025.10.13

 

 


 

第5回 鑑賞実践講座|ファシリテーション事前準備

日時|10月13日(月・祝)13:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))

 


 


10月13日(月・祝)午後、東京都美術館 アートスタディルームとスタジオを会場に、第5回鑑賞実践講座「ファシリテーション事前準備」を開催しました。講師は三ツ木紀英さん(NPO法人 芸術資源開発機構)です。

 

 

第5回は、第4回で学んだ展示室での場づくりをふまえ、鑑賞の実践に向けて、作品の魅力にどのように近づき、どのような準備を行うのかを学ぶ回として位置づけられています。鑑賞の場は、当日のふるまいだけでなく、ファシリテータが事前にどれだけ作品と向き合っているかによって大きく左右されます。この回では、その「事前準備」に焦点を当てました。

 

講座の前半では、VTSのファシリテーションに向けて行う作品研究の考え方についてレクチャーが行われました。作品研究というと、作者や制作年代などの情報を集めることを想像しがちですが、ここではその前にまず、作品をよく見て、鑑賞者が何を感じ、何を語るのかを想像すること、そしてその発言の裏付けとなる、より客観的な要素を作品の中から丁寧にたどることの大切さが共有されました。

 

また、鑑賞者が作品を見るときにもつさまざまな視点のバリエーションを想定し、視点を整理・分類しておくことで、作品の全体像や魅力をファシリテータ自身がつかんでおくことの重要性も確認されました。

 

 

続いて、グループに分かれて作品研究のワークを行いました。参加者は、作品画像を前にしながら、形や色、構図、モチーフなどに目を向け、気づいたことを言葉にしていきます。個人での観察と、グループでの共有を往復することで、ひとりでは気づかなかった視点や、見方の広がりを体験しました。

 

 

後半では、先ほどのグループワークで行った作品研究を、一人で行いました。とびラーからは、グループワークと違い、自分一人で作品をみる際には、視点の広がりや深さを自分自身で生み出す必要があるため、より難しさを感じたという声が聞かれました。VTSのファシリテーションには、ファシリテータ自身の鑑賞体験の豊かさも重要であることが、実感を伴って共有されました。

 

 

第5回は、ファシリテーションを「その場でうまく進める技術」として捉えるのではなく、事前にどれだけ作品に近づき、準備を重ねているかが鑑賞の質を支えていることを学ぶ回となりました。

次回の第6回では、ファシリテーションのスキルを高めるために不可欠な、実践のふりかえりに取り組んでいきます。

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2025.10.01

日時  |2025年9月20日(土)
場所  |東京都美術館

参加者(事前申込)30名、とびラー16名

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まだまだ暑い日が続き、涼しくなるのが待ち遠しい9月。
そんな中、2025年度 第3回目の「とびラーによる建築ツアー」が実施されました。

東京都美術館を建築した前川國男や歴史についてお話しした後、東京都美術館の特徴や見どころの紹介をしました。

この建築ツアーは、決まったコースはなく、それぞれのとびラーが考えたオリジナルのツアーです。

 

ガイドごとに、違ったツアーを体験することができます。
東京都美術館の魅力や新たな発見をしていただけたら嬉しいです。
……
次回の開催は11月15日(土)を予定しています。
みなさんのご参加を心より楽しみにしています。
*「とびラーによる建築ツアー」は、原則として、奇数月(5月、7月、9月、11月、1月、3月)の第3土曜日に開催しています。
詳細、お申し込みはこちらから。
(とびらプロジェクトコーディネータ 大東美穂)

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