2025.12.24
第6回建築実践講座|建築を鑑賞する -見る・考える・繋がる-
日時|2025年12月6日(土) 14:00〜16:00
会場|東京都美術館 講堂
講師|頴原澄子(千葉大学大学院 教授)
「建築を鑑賞する」をテーマに第6回 建築実践講座を行いました。
身近な建物を見て、その魅力や背景を知り、大切に保存していくことについて、頴原澄子さんにお話を伺いました。
建築家の思いや建物の価値を伝えるために作られたガイドブックや、年齢を問わず楽しめる工夫などが紹介されました。
さらに、実際に建物を守るための活動の話もあり、建物を「残す」だけでなく、「知ってもらい、感じてもらう」ことの大切さを実感しました。
普段は何気なく見ている建物も、少し立ち止まって観察してみることで、新しい発見や愛着が生まれると気がつくことができた講座でした。
(とびらプロジェクト コーディネータ 大東美穂)
2025.12.21
・東京都美術館では2025年9月12日(金)~12月21日(日)に特別展「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(以下、ゴッホ展)が開催されました。これにあわせて、とびラボ活動「ゴッホをめぐるボウケン」を行いました。活動はゴッホ展閉幕までの間、全5回行いました。
・実は、ゴッホ展の前の特別展「ミロ展」から「ボウケンラボ」は誕生しました。東京都美術館でさまざまな特別展が行われる中、その作家や背景についてもっと知りたいと思いながらも、ひとりでは調べきれないまま展覧会が終わってしまうことを残念に感じていました。
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・そこで立ち上げたのがこのラボ「〇〇をめぐるボウケン」です。 とびラー同士、自分自身の興味関心を自由に調べ、シェアし合い、それぞれの興味関心の冒険が拡がる、そんなラボを目指しました。
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1.今日の興味関心を付箋へ書き出し&分類
・まず、ゴッホ展をめぐる「今日の興味関心」を数分間で各自付箋に書き出し、書いた内容についてひとりずつ付箋を出しながらシェアします。「あ、それ、私も同じことを書きました!」と声が上がることも。似た内容の付箋をまとめながらシェアしていきます。
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・この日は「ゴッホの作品」「ゴッホの人間関係」「ゴッホという人」に分類できる付箋が出てきました。
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2.各自30分の調査タイム
・ここからは、30分の時間で各自気になることを調査してまとめます。Webで検索するもよし、図録や関連書籍を読むもよし、各々のスタイルで調査&まとめを行います。特別展に関する書籍が多数ある美術情報室に行って調べるメンバーもいます。調べている間は、皆無言で黙々と調査します。
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3.シェアタイム
・30分の各自調査タイムの後は、シェアタイムです。順番に調査内容をシェアします。とびラー同士も感想を伝え、気づいたこともシェアしてコミュニケーションしながら進めます。 他のとびラーが調べたことを聞いていると、自分では思いもつかなかったテーマや視点の調査内容やまとめ方に「へぇ~。」「そうだったんだ~。」「なるほど~。」と新たな気づきがあり、「ということは、これはどうだったんだろう?」などと、さらにまた興味関心が芋づる式に掘り起こされてきます。まさに「ゴッホをめぐる知的好奇心を深めてゆくボウケン」が繰り広げられていきます。
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・このように、①今日の興味関心を付箋に出す ②各自30分の調査 ③調査内容をシェア という流れで進めるこのとびラボは、ゴッホ展の開催期間中に複数回行われており、何度も参加するとびラーもいれば単発で参加するとびラーもいます。一度だけの参加でも全く問題なく気軽に「ボウケン」できるのも魅力の一つです。
・全5回のボウケンをした今回の「ゴッホをめぐるボウケン」。ゴッホ展閉幕の12月21日に最後の「ボウケン」と解散会を行い、ラボ全体の振り返りを行いました。
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・メンバーからは、「それぞれの気になるテーマを共有できたのがよかった」「自分では気づけなかったトピックに出会えた」「調査テーマが決められていない自由さが心地よかった」といった声が上がりました。時間制限を設けた30分の調査タイムも、集中して取り組める心地よい緊張感が生まれ、短時間でも多くの発見につながり、共有にちょうどよい分量で進められたのが好評でした。また、宿題のように持ち帰るのではなく“その場で調べる”スタイルは、負担感がなく気軽に参加できるうえ、とびラー同士のリアルな会話の中で興味が広がり、その日の関心をすぐに深掘りできる点が魅力でした。「すご〜く楽しかった!」という声も多数あり、生き生きとした知的交流の喜びがその言葉に現れていました。
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・このラボを行って、とびラーの様々な視点でのゴッホ展をめぐるあれこれを今までよりも少し理解することができた気がします。ゴッホについては炎の画家、狂気の画家という表現も聞きますが、そうではないゴッホや、家族や交友関係の中の姿を知ることができ、ゴッホを以前よりも身近に感じることができました。
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・同時に、絵画への真摯な探究心や学び続ける姿勢にも触れ、あらためて多くの作品を残したゴッホと、その歩みを支えた家族に感謝の思いを抱きました。ゴッホ展というきっかけから生まれた「ボウケン」は、これからもいろいろな展覧会をめぐって続いていくかもしれません。次の「ボウケン」も楽しみです。
執筆者:寺岡久美子(13期とびラー)
情報通信系の企業で働いています。企業内ボランティア活動として、カウンセリングやメンター、社内認定講師も担当しています。とびラーになってから、アートが自分自身にぐっと身近に感じられるようになり、忙しい人たちにもアートに触れられる機会をつくりたいと思うようになりました。これからは「企業×アート」でできることを考えてみたいと思っています。好きな村上春樹さんの小説『羊をめぐる冒険』からラボ名を拝借しました。
2025.12.16
第7回 鑑賞実践講座|作品えらび・作品のシークエンス
日時|12月16日(火)10:00〜15:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))
12月16日(火)、東京都美術館 アートスタディルームとスタジオにて、第7回鑑賞実践講座「作品えらび・作品のシークエンス」を開催しました。講師は三ツ木紀英さん(NPO法人 芸術資源開発機構)です。
これまでの鑑賞実践講座では、VTSの考え方やファシリテーションの基礎、展示室での場づくり、事前準備、そして実践をふりかえる方法について学んできました。第7回は、それらをふまえたうえで、鑑賞プログラムの質を大きく左右する「作品えらび」と「作品のシークエンス」について考える回として位置づけられました。
とびラーがファシリテータとして関わる鑑賞プログラムでは、プログラム参加者と鑑賞する作品をとびラーが自由に作品を選べる場面ばかりではありません。展示室内での人数の偏りを防ぐため、プログラム担当者からあらかじめ2作品程度のシークエンスが指定されることが多くあります。とびラーには、その与えられた作品の組み合わせをどのように読み解き、対象となる鑑賞者にとって意味のある鑑賞体験として立ち上がらせていくかが、ファシリテーションの技量として求められます。
講座の前半では、三ツ木さんから、美的発達段階の考え方と、それを作品理解や鑑賞プログラムの設計にどう生かすかについてレクチャーがありました。鑑賞者は年齢や経験、背景によって、作品のどこに注目し、どのような言葉を紡ぎやすいかが異なります。作品えらびとは、「良い作品」を選ぶことではなく、鑑賞者の状態や文脈に応じて、どのような出会いをつくるかを考える行為であることが共有されました。
続いて、2作品のシークエンスを題材にしたワークに取り組みました。とびラーは、指定された2作品について、それぞれの特徴だけでなく、「なぜこの順番なのか」「この組み合わせによって、どのような見方の変化や思考の広がりが生まれうるのか」を読み解いていきます。作品単体ではなく、作品と作品のあいだに生まれる関係性に目を向けることで、展覧会全体の表す鑑賞のストーリーをも構想する視点を養いました。
ワークの中では、対象者を具体的に想定することで、どのような問いから対話を始めるのが有効かについても考えることができました。作品のシークエンスを読み解くことは、鑑賞者の背景や美的発達段階を想像し、鑑賞の場全体をデザインすることにつながっていきます。
後半では、鑑賞者を迎えるファシリテータとして、与えられたシークエンスの中で自分がどのように場をひらいていくかを具体的に考えました。第4回・第5回で学んだ展示室での場づくりや事前準備、第6回で共有したふりかえりの視点とも結びつけながら、実践につながるイメージを膨らませていきました。
第7回は、「作品を選ぶこと」また、「与えられた作品やシークエンスをどう読み解き、鑑賞の場として立ち上げるか」を考える回となりました。とびラー1人1人が、作品と鑑賞者、そして場の関係をつなぎ直しながら、鑑賞体験をデザインしていくための重要なステップとなりました。
次回はいよいよ1年間の学びをふりかえる回となります。これまで積み重ねてきた講座・実践・ふりかえりをあらためて見つめ直し、とびラーとしてのこれからの鑑賞のあり方を考えていきます。
(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)
2025.12.12

アートに少しでも興味がある、大学生・大学院生・専門学校生のためのプログラムです。
放課後、夜の美術館で過ごすひととき…
お1人でも、お友達と一緒でも大歓迎!同世代のアート・コミュニケータ(とびラー)もみなさんをご案内します。
みて、つくって、はなして 新しいアートの楽しみかたを発見してみませんか?
大学生の「放課後ミュージアム」みる・つくる・はなす
【日時】
12月19日(金) 17:30~19:15(17:15 受付開始)
【対象年齢】
18歳〜24歳くらいの学生(大学生~大学院生・専門学校生など)
【定員】
12名
※先着順。定員に達し次第、申し込み受付を終了します。
【会場】
東京都美術館
【集合場所・時間】
場所:東京都美術館 交流棟2階アートスタディルーム
時間:17:15から受付開始します
【参加費】
無料
【その他】
・展覧会の入場に学生証が必要なため、当日忘れずにお持ちください
【参加方法】
事前申込制。以下の専用フォームよりお申し込みください。
12月19日(金) 17:30~19:15(17:15 受付開始)
【申込みの際にお願い】
・定員に達した場合は受付終了と表示されます。
・申し込み完了後、「返信先Eメールアドレス」に自動返信でご案内をお送りします。必ずご確認ください。
・「@tobira-project.info」からのメールが受信できるよう迷惑メール設定をご確認ください。自動返信が届かない場合は、お申込みされた方の「お名前・電話番号」を記載のうえ【p-tobira@tobira-project.info】までご連絡ください。
・学生証をお忘れの場合は、展覧会観覧料が必要です。
・当日は広報・記録のため撮影を行います。ご了承のうえご参加ください。
2025.12.04
とびラー12期・柴田麻記です。私は社会人として働く時間を経て、今は高校生と小学生を育てる親として日々過ごしています。自身の役割や視点が変わる中で美術館との距離感も変化しました。また、とびラーとしての時間を送ることで物事の捉え方が広がりました。
そんな私が参加したとびラボ『とびラーとあそんだり、みたり』は、昆虫が成長するように、形態を変えながら続いてきたラボです。
このとびラボの前身となったのは、『とびラーと◯◯(仮)』というとびラボでした。
当初は、「とびラーが“ただいる”だけで、来館者の心が少し軽くなるといいな」という思いを持ち寄ったとびラーが集まったことが始まりです。
そのとびラボのミーティングでは、
・東京都美術館にとびラーが存在する意味とは何か
・美術館に気兼ねなく来てもらうとはどういうことか
・とびラーができることは何か?
といった問いを、話し合いを通して考えていきました。
とびラボ名を「〇〇(仮)」としたことで、来館する対象を限定することなく、様々な人を想定しながら考えることができました。
たとえば、
・学校に足が向かない子どもを、美術館に誘ってみようかなと思ったとき、誰かいてくれるといいな
・『障害のある方のための特別鑑賞会』の日ではないけど、とびラーと一緒に触図(しょくず・作品の構図やモチーフを凹凸のある線や点で立体的に表わした図版)を触りながら作品を見られたらいいな」
といった場面で、とびラーが“ただいる”ことはできないか、という想定が挙げられました。
とびラーが常駐することは難しくても、『とびラーWeek』のような期間を設けられたらいいのでは、というアイデアも生まれました。
さらに話し合いを進める中で、子どもにとって親でも教師でもない「とびラー」という第三者の存在が、親子で美術館に来る際のハードルを下げるのではないか、という視点が浮かび上がりました。
親子で美術館に行くと、親は子どもを気にかけるあまり落ち着かなかったり、子どもは興味のままに動いたことで注意されてしまい、結果としてどちらも楽しめない…。
そんな経験を持つとびラー自身の問題意識も、このとびラボの背景にありました。
そこで、『とびラーと◯◯(仮)』を一度解散し、「あそんだり、みたり」という言葉を〇〇の部分に据えて『とびラーとあそんだり、みたり』として新たにスタートしました。
『とびラーとあそんだり、みたり』は、とびラーが間に立つことで場の空気が少しゆるみ、親も子もそれぞれのペースで美術館を楽しむ時間を作りたい、という思いから始まりました。
親子で美術館に来ることに敷居の高さを感じている人に、作品鑑賞だけでない美術館の楽しさを知ってもらい、「もう一度美術館へ来てみようかな」という気持ちををそっと後押しする。
その方向性が少しずつかたちづくられていきました。
検討を進める中で、とびらプロジェクトと連動するプロジェクト「Museum Start あいうえの」のファミリープログラムや、学校プログラムと、私たちが検討しているアイデアの違いは何か、という問いも持ち上がりました。
子どもたちのミュージアムスタートを応援する、「Museum Start あいうえの」のプログラムで美術館デビューする子どもたちは確かに増えています。その参加者のうち、再訪している子どもや親子はどれくらいいるのだろうか。
このラボの取り組みで再訪につなげられるといいな…。
また、「親子で美術館に来ることの敷居の高さ」を和らげるプログラムとは、どんな内容がふさわしいのだろうか。
また反対に、「Museum Start あいうえの」ホームページを見て関心は持つけれど、プログラムへの参加までには至らない人たちに、どうすれば「美術館は気軽に楽しめる場所だ」というメッセージや情報を届けられるのか。
これらの問いは、現時点では明確な答えに至っておらず、ラボが問い続けている課題です。
このラボでは「あそぶ」という言葉についても時間をかけて考えました。
何をするか決める前に、そもそも「美術館であそぶ」とはどういう状態なのか。「あそぶ」「あそび」という言葉から、それぞれのとびラーが思い浮かべる感覚や経験を出し合いました。
一見すると掘り下げる必要がなさそうなことも、あらためて見つめ直し言葉にしていきました。そうすることで美術館で何をして、どう過ごしてほしいのかが見えてきました。
自分の気に入った野外彫刻を写真に撮る。
館内を探検する。
あるいは、ゆっくりお茶を飲んで過ごす。
美術館は、自分のペースで関われ、意味づけを急がず、ただそこにいられる場所。
このとびラボでいう「あそぶ」とは、そうした過ごし方の状態をひらくための言葉として、ラボに参加するとびラーの間で共有されていきました。
もう一方の「みる」については、せっかく美術館に来たのだから、展示室の作品とも出会ってほしい、という思いがとびラーに共通してありました。
とびラーと一緒のときだけでなく、プログラム参加後に親子だけで、再び美術館を訪れた際にも活かせる「展示室での過ごし方」を考えたい。
そこで、とびラー自身が子どもと美術館に行く際にしてきた工夫を出し合ったり、「あいうえの」の学校プログラムやファミリープログラムを振り返ったりしました。
話し合いの中で見えてきたのは、「展示の全部を全力で見なくても、作品は楽しめる」という考え方でした。そのような時間のあり方を、私たちなりの“みかた”と位置づけました。
親子でのお出かけ先として、敷居が高く感じられがちな美術館。
展示を見ることに限定しない過ごし方を提示し、親子それぞれが安心して「みる」時間をもてるようにしたい。
願わくば、それが次の親子での来館につながってほしい。そんな、少し欲張りなラボとなりました。
話し合いの結果、学校プログラムに参加した子どもが、次は親子で美術館に再訪して楽しむという流れを想定したプログラムを企画しました。
しかし、対象者へのアプローチ方法を検討する過程で行き詰まり、今年度中にプログラムの実施には至りませんでした。
一般の方に参加してもらうプログラムを立案し、実施するまでには十分な時間が必要であること。特に、対象とする参加者をどう見つけ、どう案内するかの難しさを、とびラボとして実感しました。
また、同じような関心を持って集まりながら「あそび」ひとつ取り上げても、とびラーそれぞれの考え方や想定の違いがありました。その違いに気づき合い、実現に向けて考えられたことは、このとびラボでの収穫となりました。
プログラム実施には至りませんでしたが、スタッフも加わりながら話し合いを重ねる中で、とびラボはさらに形を変えています。
『とびラーとあそんだり、みたり』は解散し、現在は、『とびラーが考える美術館を楽しむためのガイドづくり(仮)』というとびラボを新しく立ち上げました。
・展示室以外の美術館の過ごし方
・作品を見るためのヒント
をまとめたガイドブックをつくるラボです。
昆虫が脱皮を繰り返しながら姿を変えるように、私たちのアイデアも、いくつものとびラボを通して成長し続けています。
執筆:柴田麻記(12期とびラー)
以前は、テレビ番組を制作していました。現在は、愉快な高校生と小学生と過ごす主婦。私のいちばん身近なコミュニティは家族です。とびラーで得た視点を日々の暮らしの中でこっそり試す実験中。実験範囲をじわりと広げているところです。
2025.12.01
日時 |2025年11月15日(土)
場所 |東京都美術館
参加者(事前申込)35名、とびラー16名
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澄んだ青空が広がる秋晴れの中、2025年度 第4回目の「とびラーによる建築ツアー」が実施されました。
参加者と会話をしながら、一緒に東京都美術館の魅力を共有して楽しんでいる姿が印象的でした。
この建築ツアーは、決まったコースはなく、それぞれのとびラーが考えたオリジナルのツアーです。