2012.11.26
日本橋小学校の皆さん59名がスクールマンデーにやってきました。スクールマンデーは特別展の休室日を利用した、対話形鑑賞の実践の場です。まずは、学芸員の稲庭さんから展示室内でのマナーや本日の流れについての説明がありました。
時々気になった作品が友達と一緒になることもあります。そんな時は隣り同士何となくお話をしてみます。「つぶやきシート」で少しだけ心の準備が出来ていれば、お互い作品について言葉を交わすことも自然にできるようになり
個別の鑑賞が終わった後は、グループ鑑賞の時間となります。VTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジー)の鑑賞方法を用いながら、一つの作品をグループで鑑賞してゆきます。「つぶやきシート」でウォーミングアップした成果もあり、いろいろな感想が積み上げられて行きました。
とびラー候補生(以下:とびコー)のみなさんも、VTSのファシリテータとして活躍して頂きました。もちろん対応は完璧でした。
2012.11.26
休室日を利用して行なわれる、対話による鑑賞教育スクールマンデー。本日は荒川区立第三峡田小学校5年生(25人)6年生(16人)の皆さんでした。「メトロポリタン美術館展」前のエントランスで、僕(伊藤)から展示室内でのマナーや本日の流れについて説明をさせて頂きました。
「メトロポリタン美術館展」は絵画だけではなく、彫刻やタペストリー、食器や写真まで、幅広い作品が展示されています。多種多様な素材と形状の作品を鑑賞するには、こうした自由に使える鑑賞アイテムが非常に効果的です。
こちら、児童の描いたエジプトの<猫の小像>のスケッチ。凄い上手です。奥は<聖餐用ハト>のスケッチ。手を動かして、形を確かめながら鑑賞することで、作品が持つ素材の魅力や、洗練された造形的美を、作者の視点をも顧みながら鑑賞することができます。
個々人で「どうぶつボード」を使って鑑賞した後は、学芸員の河野さんやとびラー候補生(以下:とびコー)がファシリテータとなってグループで鑑賞して行きます。VTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジー)の手法を用いながら、一人ひとりが感じたことをグループて共有することで、個人の視点では見つけることのできなかった、気付きやより深い理解を得ることができます。
2012.11.19
12月10日の「障がいのある方のための特別鑑賞会」に向けて、とびラー候補生(以下:とびコー)による実践講座が開かれました。今回の「障がいのある方の為の特別鑑賞会」の舞台は「メトロポリタン美術館展」です。
前回実施した「マウリッツハイス美術館展」での特別鑑賞会も完璧な対応をみせたとびコーの皆さんですが、今回はさらに特別鑑賞会でのサポートを充実させることと、無理の無い効率的な運営方法を両立たせるため、これまでとびコーさんたち自ら運営方法の研究を進めてきました。シフト表や注意事項、実際のシュミレーション全てがとびコーのみなさんで考えた内容です。誰かが決めて、この通りに動いて下さいということではなく、現場に立つ本人たちの手によって運営方法がブラッシュアップされて行くところが「とびらプロジェクト」らしさだと思います。
2012.11.17
写真は企画展示室を見下ろしている様子です。都美を設計した建築家の前川国男は、設置される照明の場所や種類、強弱だけでなく、光を受け止める壁や柱の質感にもこだわりをもっていました。都美の壁や柱は「ハツリ加工」という工法で仕上げられています。「ハツリ加工」とは、コンクリート製の壁や柱の表面を、職人の手仕事によって粗めのテクスチャーを付けて行く加工のことを言います。この「ハツリ加工」によって生まれる効果は、視覚的にも暖かみが生まれ、かつ壁や柱の存在感をより引き立てるだけでなく、そこに照らし出された光までもが柔らかく、空間に滲む様な印象ををみるものに与えることができます。都美のコンクリート部分の相当面積がこの「ハツリ加工」が施されています。
こちらは秋本さんのガイドツアーの様子。2年前の改修工事前の都美と今の都美を模型を使いながら説明しています。
こちらは淵上さんのツアー。みなさん、定期的に研究・練習日を決めて、建築ツアーの内容をブラッシュアップしています。次回の建築ツアーは1月19日(日)。お申し込みはこちらから皆さんのご参加をお待ちしております。(とびらプロジェクト マネージャ 伊藤達矢)
2012.11.12
休室日を利用した鑑賞教育の場、スクールマンデー。本日は慶応義塾幼稚舎6年生の皆さん36名が来館されました。はじめに学芸員の稲庭さんより、本日の流れや展示室でのマナーなどについて説明がありました。
展示室に入ると、まずは全員で2階の最後のフロアまで一気に進みます。展覧会全体のボリュームを確認できたところで、個別鑑賞の時間となりました。みなさんなにやらメモをとっている様子。実は、今回の授業には展覧会で作品を鑑賞するだけではない、課題が用意されています。それは、子供たち一人ひとりが、自分のお気に入りの作品を1点決め、その作品の音声ガイドを作成することです。36人分の作品のガイドが集まれば、子供たちからみた素晴らしい展覧会の側面が浮き彫りになることでしょう。
ゆっくり作品を鑑賞して、自分なりに感じたことをメモして行きます。もちろんキャプションの言葉だけでは十分ではありません。なぜこの作品を選んだか、どこに魅かれたのか、どんな風にみえたのか、誰かに教えてあげたい気持ちや、聞いてもらいたい言葉など、たくさんの要素を一つにして行かなければなりません。
個々人で作品鑑賞をした後は、とびラー候補生(以下:とびコー)2人と子供たち2人で4人一組になり、グループで鑑賞して行きます。それぞれが最も番気に入った作品を一つ決め、とびコーさんともう一人の同級生にその作品の素晴らしさを伝えます。とびコーさんもVTSで培った対話力を活かしながら、対話を通して、子供たちとともに鑑賞を深めて行きました。
2012.11.05
今回の「スークールマンデー(対話を通した作品鑑賞)」実践講座のテーマは「対話による鑑賞の実践と記録について VTS実践」です。ついにVTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジー)の実践に入ります。今日は午前・午後と通しての実践講座、気合いが入ります。講師はNPO法人芸術資源開発機構のアートプランナーである三ツ木紀英さんです。
はじめに、VTSを再度おさらいする意味も込めてDVD「Thinking through Art 」(イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館)を鑑賞しました。
続いて講師の三ツ木さんから、VTSを行なう上で必要な「3質問&7要素」についてお話を頂きました。ここで午前の部終了。
午後は二組に別れてVTSの実践に入りました。とびラー候補生(以下:とびコー)のみなさんは、これまで何度となくVTSを見てきましたが、ファシリテータとして実践するのは今回がはじめてとなります。ちなみに、VTSの実践では、たんにファシリテータの練習を行なうだけでなく、1)ファシリテータ役、2)講師役、3)記録役と、必ず1回のVTSに3つの役割を分担することになっています。VTSが終了したあと、2)の講師役は、
2012.10.22
「アート・コミュニケーション・アーカイブ研究 東京都美術館とアート・コミュニティー『造形講座』と『自主造形講座』そして『とびらプロジェクト』」が開催されました。これは、1978年から10年間に渡り東京都美術館(以下:都美)にて行われた「造形講座」と、「造形講座」が廃止された後にその受講生たちがたちあげた「自主造形講座」の歴史を、残されたアーカイブ資料をもとに再考し、現在行なわれている「とびらプロジェクト」との接点を見いだすことから、アート・コミュニティーの本質を考えることに主眼が於かれたアーカイブ研究会です。
続いて、「造形講座」担当学芸員だった河合さんより、当時の様子についてお話を頂きました。当時の「造形講座」は、日本の美術館の教育普及活動としては非常に先鋭的な試みであり、また美術館教育の歴史に於いても注目される優れた試みであったとのこと。その特徴としては、一方的に情報を伝えるレクチャーではなく、学び手が主体的に参加するワークショップの手法を取り入れた最初の美術館教育であったことが報告されました。
そして、当時このワークショップを牽引していたのが及部克人先生(現 東京工科大学教授)でした。講座は、週2回を5週間(午後6時から9時まで)、計10日間1セットという密度の濃い講座ながらも、定員の60名(昼の部30名、夜の部30名)はすぐに埋まり、抽選となるほどの人気を博した企画であったそうです。こうした活動は1986年まで(10年間)継続しますが、その後、東京都現代美術館の設置に伴い、都美内の第一アトリエに東京都現代美術館の設置準備室が置かれると、ワークショップを行うアトリエ面積が少なくなり、教育普及活動も次第に収束したとのこと。しかし驚くべきは、この「造形講座」の受講生らが、講座廃止後に都美で行なわれていた活動を自主的に引き継ぎ、美術館外でおこなう「自主造形講座」を立ち上げ、凡そ5年間にも及ぶ活動を展開したことでした。
「造形講座」で及部先生と共に講師をされていた米林雄一先生(東京藝術大学名誉教授)にも、当時の講座の様子を振り返って頂きました。米林先生は彫刻を専門とされており、「造形講座」に於いてもさまざまな立体作品の指導なのどをされていました。印象的であったのは「造形講座」の講師を勤めたことが、その後の自分の人生にも大きく関わってきたとのコメントでした。人と人とを繋ぐ役割の大切さを「造形講座」を通してより深く感じられたとのこと。米林先生のその後の藝大での研究や活躍に反映されていったお話を伺うことができました。
後半は、当時の「造形講座」の受講生だった方々にご登壇いただきました。受講生の視点からみた「造形講座」と「造形講座」が廃止になってから「自主造形講座」を立ち上げた経緯や、ご苦労された点など赤裸々に語っていただきました。
聞き手は茂木一司先生(群馬大学教授)と僕(伊藤)です。受講生だった方々へのインタビューという形で進めさせて頂きました。
2012.10.12
まずは日本画専攻のアトリエ。静かで落ち着いた雰囲気の中、大学院生が古典作品(国宝)の模本の制作をしていました。テーブルにはたくさんの資料と、色見本などが置いてあります。
実物の複写を見ながら丁寧に描き込んでいきます。学校で実物を見ながら制作することは出来ませんが、所蔵場所まで脚を運び色などの細かな調整も行うそうです。デスクに収まる程のサイズでも、完成までに1~2年要するとのこと。本当に緻密な作業で、緊張感のあるアトリエの雰囲気が印象的でした。
次に油画専攻のアトリエへ。油画専攻は日本画専攻と同じ絵画棟にあります。アトリエへ入るとまず目に入るのが白壁に飾られた沢山の絵。アトリエを共有する数人の学生たちがここで制作をしています。このように大きな作品を学校で制作する学生もいれば、学校以外の自宅などで制作する学生もいるそうです。アトリエを共有しながらも、画材を広げ、資料を広げ、それぞれがそれぞれのスタイルを持っている様子でした。
次は版画専攻を見学。油画専攻の学部3年生から選択し所属することができます。版画は、木版や銅版をはじめ様々な技法があり、実習を通して基礎的な技術を習得します。こちらは木版の制作風景、鮮やかな色合いが素敵です。
次に工芸科へ。こちらもまた彫金をはじめ漆芸、陶芸などの細かい分野に分かれ伝統技法を学びます。写真は鍛金専攻の工房、大きな機械が立ち並びます。講師の方からどのような加工に使われるのかを説明をしていただきました。彫刻科と扱う素材は近いですが、工芸科では伝統的な工芸技術の継承を主体とした教育の取り組みがなされているそうです。
学生作品を資料として見せていただきました。一枚の金属板が壷や動物へと形を変えるのだから不思議です。「例えば金属を叩いて形をつくるとき、失敗すると1からやり直しなのですか?」と質問すると、「直しが利くようにまずはざっくりと大きく形をとっていき、徐々に細かく手を入れて行きます。動物の目鼻のように一発で決めなければならないポイントもあります。」とのことでした。出来上がった作品と扱ったことがなければ想定しづらい制作の過程とを見比べることができ、とびコーのみなさんも驚いた様子でした。
最後はデザイン科のアトリエへ。機材、工具が多く置かれていた彫刻科、工芸科からは一転、とてもスタイリッシュな空間です。
ちょうど授業内で制作した作品の展示が行われていました。チョコレートメーカーのロゴやポスター、パッケージの様々なアイディアがずらっと並んでいます。このような課題や実習を積み重ね、卒業時には学生それぞれが自らの表現を作品として発表します。
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今回は2時間程のツアーの中で多くのアトリエや工房を見学しましたが、残念ながら全ての学科を見学できた訳ではありません。まだまだ藝大には魅力的な学科がたくさんあります。1月の藝大卒展はそんな藝大の魅力を一度に見ることのできる、たまと無い機会です。今からとても楽しみです。
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とびらプロジェクトでは今回のツアーをきっかけに、藝大卒展に向けて卒業作品を制作している学生を取材し、随時ブログにて公開していきます。出来上がった作品だけではなく制作の過程や作者の顔を追うことで、これまでよりもさらに藝大卒展を身近に、また藝大そのものを魅力的に感じて頂ける様にしたいと思います。最後に、各学科の教育研究助手のみなさま講師の皆様、懇切丁寧に学科内の案内と説明をして下さり、誠にありがとうございました!(とびらプロジェクト・アシスタント 大谷郁)
2012.10.12
今日のとびランチは、東京藝術大学の大浦食堂です。ご紹介したいメニューは藝大名物の「豆腐ともやしのバター焼き丼」、通称「バタ丼」です。約40年前からある藝大伝統の味です。写真は、トッピングで卵を入れた「卵入バタ丼」。おもいっきり七味をかけて、少しソーズを垂らすといい感じです。
2012.10.06
とびらプロジェクトも始動してから6ヶ月が過ぎました。基礎講座が終わり、実践講座へ進み、とびラーのアイディアからさまざまな活動が生まれました。活動があまりにも急速に成長し、そのバリエーションも多様なため、ここらで一度総会を開き、とびラー候補生(以下:とびコー)同士が自分たちの活動を振り返り、今後の活動の指針を再確認することを目的に、「働いてみたとびラー」と題した総会が開かれました。講師は左から西村佳哲学さん、稲庭彩和子さん、僕(伊藤達矢)です。
はじめに西村さんから「なんのためのアートコミュニケーション」という問いが提示され、この半年の活動を再度とびコーさん同士が再確認し合うことから総会は始まりました。
3人一組になり、この半年の活動について、成果や反省を含め自分たちが感じたことを話合いました。とびらプロジェクトがはじまって半年間、とびコーのみなさんも無我夢中で走って来たというのが正直なところだと思います。しかし、このまま走り続けるのではなく、少し立ち止まって「何のためのアートコミュニケーション」なのかを考えることで、今後の活動をより意味深いものにして行ければと思います。ただ、この「何のためのアートコミュニケーション」という問いには、正解はありません。むしろ、それはとびらプロジェクトを運営するスタッフも一緒に考え続けてゆかなければならないテーマであるとも思います。そして「何のためのアートコミュニケーション」という問いは、とびらプロジェクトに関わる全ての人の中に千差万別に、個々人それそれ違った答えで深められることを期待しています。とびらスタッフやとびコーさん個々人の解釈がより多様なアートコミュニケーションの在り方を体現するきっかけになるのでは無いかと思います。
午後は、とびコーさん自信から各々が担当したプロジェクトについて発表して頂きました。恐らくとびらプロジェクトの全てを体験した人はスタッフを含めて一人もいないのでは無いでしょうか。そのため、自分が参加できていなかったプロジェクトについては、あまりよくしらないというとびコーさんもたくさんいます。
こうした発表の機会は、とびらプロジェクトのエネルギーを共有するのにとても大事な場となりました。発表は20組以上に及び、密度の濃い共有の場となりました。
今回の総会にはとびコーさんからさまざまなアイテムの配布もありました。写真は館内の情報がつまったとびラー&館内職員専用のマップ。内容をまとめるところから、デザインするところまでとびコーさんの丁寧な作業によって完成されたものです。
こちらは、とびコーさんの名刺、全員分あります、こちらも名刺プロジェクトのとびコーさんによって作成されました。これを使ってどんどんとびコーさんも地域進出して頂ければと思います。
これは、これまでの半年間をまとめた「とびらすごろく」とびコーさんの一喜一憂がまとめられ、見る人が見たら涙がでそうです。