2022.07.02
第1回建築実践講座|「都美の歴史と建築」
日時|2022年7月2日(土) 14:00~17:00
会場|東京藝術大学 中央棟 第三講義室
講師|河野佑美(東京都美術館学芸員 アート・コミュニケーション係)
とびらプロジェクトの建築実践講座が始まりました。
まずはとびらプロジェクトマネージャーの小牟田 悠介さんよりガイダンスです。
はじめに、今年度の目標を確認します。
【建築実践講座の目標】
東京都美術館の歴史や背景を理解し、自分の感覚を手掛かりに建築を味わう力を身につけ、美術館というパブリックな建築を介して人々をつなぐ場をデザインする。
今年度は、約80名のとびラーが受講します。
第1回目は、まずは自分たちの活動の場である東京都美術館(以下、都美)の成り立ちや設計者である前川國男という人物について学び、自分の目で見て、感じて、魅力を共有する回になりました。
河野佑美さんのレクチャー「都美の歴史と建築」では、都美の開館から現在までの歴史や成り立ちについて学びます。
「私からは、こんな材料があります、というレシピをお渡しします。それを料理するのは皆さんです」
「建築ツアーは、知識を渡すためのものじゃなくて、その場の人と気付いたことをお話ししてください。知識は後から調べられるけど、お話しはその場でしかできません。」
河野さんからのお話のあとは、たっぷりと得た情報や知識をもって、あらためて都美に出かけていきます。
テーマは「100年後にも残したい、伝えたい見どころ」
いつも見ている光景が違って見えます。
それまでは「建物」として見えていた都美が、「さまざまな思いが受け継がれてきた大切なもの」に見えてきたとびラーもいるのかもしれません。
河野さんのお話を聞いてから改めて出会い直した都美。
戻ってきたとびラーたちは、出かける前とはまるで別人のように目を輝かせて
「こんな発見があった!」と口々に話し合っていました。
夢中になって冒険ノートを作成します。
それから、それぞれが見つけた「気づき」を数名でシェアします。
みんな自分のイチオシを熱く語り、大興奮です。
それぞれの冒険ノートが出来上がりました。
同じレクチャーを聞いたのに、「伝えたい見どころ」のポイントはとびラーによって違います。
”見れば見るほど、知れば知るほど、よく考えてられていると思いました。”
”たくさんの人と語り合いたいです。”
”だんだん愛が深まってきました。”
誰かが、大切だ、残したいと思うことによってその建築は大切に使い続けられます。
今日の学びを通して得た知識をそのまま語るのではなく、
じっくりとみどころを観察し、気付いたことを誰かと語り合い、咀嚼して自分の言葉にし、誰かに伝えたくなる。
とびラーによる建築ツアーや、トビカン・ヤカン・カイカンツアー、Museum Start あいうえのなどの場で、とびラーの数だけ都美の物語が語られていきます。
(とびらプロジェクト コーディネータ 工藤阿貴)
2022.02.05
第8回建築実践講座|「1年間のふりかえり」
日時|2022年2月5日(土) 15:30~16:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム
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最終回となる今年8回目の建築実践講座は、とびらプロジェクトの活動の拠点である、東京都美術館アートスタディルームに集まって1年間の学びと実践をふりかえる機会となりました。
これまでの講座や実践をキーワードからふりかえります。1年間の講座と実践を通して、”もの”としての建築だけではなく、多様な視点から「建築」について考え・学び・実行する機会があったことがわかります。
全体でふりかえった後は、参加したとびラー 一人ひとり中で芽生えた ”気づき” を確認しました。
ーー“建築を介して人々をつなぐ場” について考えたことで、どんな気づきがありましたか?
今年の講座目標である “建築を介して人々をつなぐ場” について、年間を通して気がついたこと・考えたことを思い出しながら、3人組になり共有しました。
それぞれの学びと気づきを共有したら、続いてとびラー同士で「問い」を立てて、「建築」についてさらに考えを深めていきます。
ーー問いを立てて話し合う。
「建築」をテーマに、とびラー同士で考えを深めたいことは?
講座に参加するとびラーと“建築”との関わりはそれぞれ。仕事などで専門的に建築と関わっている方から、「建築って難しそう…」と苦手意識を持っていた方、東京都美術館・前川國男建築が大好き!な方、様々な “建築” との関わり方や考え方を持ったメンバーが集まっています。
それぞれの視点で、この1年間で考えたことを「問い」と言う形で差し出し合い、ランダムの5〜6人組で約1時間じっくりと話しあいました。
・建築を楽しむってなんだろう
・建築の知識がなくても楽しむには
・美術館と芸術祭ではアートを見る場としてどう違うのか
・建築を語るとどんな場がうまれるのか
・もう一度行きたくなる建築体験とは
・公共の建築にとって居心地のよさとは
この対話の目的は、答えを出すことではありません。建築はアートであり、体験であり、文化であり、人々の営みであり、他者を想うこと、…です。
「美術館を拠点にコミュニティを育む」とびらプロジェクト、その活動の場である “建築” そのものの役割に丁寧に目を向け、考え語り合うことは、今私たちが生きる社会そのものを考えることにつながるのではないでしょうか。
今年度の建築講座もこれにて解散ですが、これからも、建築を介したアクションを共に考え実行していきましょう!
1年間、様々なシーンで共に「建築」を学び・考えたとびラーのみなさん、ありがとうございました。
(とびらプロジェクト コーディネータ 山﨑日希)
2021.12.11
とびらプロジェクト「オープンレクチャー」
第7回建築実践講座|「建築と美術館とコミュニケーション―お金で買えない「ギフト」に気づく場所とは?」
日時|2021年12月11日(土) 16:00~18:00
会場|オンライン(Zoomウェビナー使用)
講師|
佐藤慎也(建築家、八戸市美術館館長、日本大学理工学部建築学科教授)
大澤苑美(八戸市美術館学芸員)
森純平(建築家/八戸市美術館設計者、東京藝術大学建築科助教、たいけん美じゅつ場 VIVAディレクター)
稲庭彩和子(東京都美術館学芸員 アート・コミュニケーション係長、とびらプロジェクト プロジェクトマネジャー)
伊藤達矢(東京藝術大学社会連携センター特任准教授、とびらプロジェクト プロジェクトマネジャー
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『建築と美術館とコミュニケーション―お金で買えない「ギフト」に気づく場所とは?』と題し、八戸市美術館の館長で建築家の佐藤慎也さんと、八戸市美術館学芸員の大澤苑美さん、東京藝術大学建築家助教で茨城県取手市のたいけん美じゅつ場VIVAディレクターの森純平さんの三名を登壇者に迎えました。
導入では、とびらプロジェクト プロジェクトマネジャーの稲庭彩和子さんから、レクチャーのテーマとなる 「ギフト」 について、美術館の役割の変遷と共に、とびらプロジェクトでの活動を取り上げながら紹介がありました。
続いて、ゲストの3者からのプレゼンテーションとして、「八戸市美術館(2021年11月オープン)」と「たいけん美じゅつ場VIVA(2019年12月オープン)」のそれぞれの建築空間と、そこでの活動について紹介いただきました。地域の拠点となり、様々な人々が ”関わりを作ること” を目指し、そのための場が設計段階から実装されている2つの事例を通して、新たな公共建築について考える機会となりました。
後半は、とびらプロジェクト プロジェクトマネジャーの伊藤達矢さんも加わり、パネルディスカッションを行いました。前半にプレゼンいただいた2つの事例について、「ギフト」を切り口に、それぞれの視点から議論を深めていきます。その中で、八戸市美術館リニューアルの計画段階から設計プロポーザルの話題についても語られました。建物の中央に市民のための巨大な空間(ジャイアントルーム)が設置されたこの計画は、美術館が展示・収蔵・研究だけではない、豊かなコミュニケーションが生まれる地域の拠点となることを、空間として示しています。
新たな美術館の実践を聞くことで、社会関係を育む場としての美術館のあり方、そこでの活動の可能性について考える機会になったのではないでしょうか。
(とびらプロジェクト コーディネータ 山﨑日希)
2021.11.13
第5回建築実践講座|「ワークショップメイキング・1」
・ワークショップとは?構造と仕組みを考える
日時|2021年11月7日(土) 13:00~16:00
会場|オンライン
講師|稲庭彩和子(東京都美術館学芸員 アート・コミュニケーション係長)
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第6回建築実践講座|「ワークショップメイキング・2」
・美術館建築を活用したコミュニケーションを生む活動を考える
日時|2021年11月13日(土) 10:00~15:00
会場|東京藝術大学 中央棟 第三講義室
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■ オンラインレクチャー「ミュージアムとワークショップ」
11月7日のオンラインレクチャーでは、とびらプロジェクト プロジェクトマネジャーの稲庭彩和子さん(東京都美術館学芸員)より、「ワークショップの構造と仕組みを考える」をテーマに、ミュージアムとワークショップという枠組みからお話しいただきました。
社会教育施設であるミュージアムの役割とその変遷を辿りながら、ミュージアムでワークショップを実践する意味と目的への理解を深めます。さらに、とびラーがプレイヤーとして参加した、ワークショップの事例(*)を紐解きながら、活動の構造や対象者との関係性づくりについてなど、ワークショップメイキングの具体的な思考過程を知ることを通して、ミュージアムでのワークショップの仕組みを捉えていきました。
(*)Museum Start あいうえの ダイバーシティプログラム「美術館でポーズ!」
この日の活動は、くじでランダムの4人組に分かれ「お互いを知り合う」時間から始まりました。とびラーとしての「自分の強み」を付箋に書いて差し出し合い、そこにいるメンバーで何ができるのか “素材” を並べてグループの土台を作ります。
超高齢化社会の中、私たちができることはなんだろうか。
美術館は「展示を見にいく」場所だと思っている方は非常に多い。そういった方が、美術館の建築をテーマとしたワークショップに参加することで、美術館の「展覧会」以外の関わり方を知ることができる。主体的な美術館との関わりにより社会との新たな繋がりが生まれたり、建築を知ることで新しい視点に気づき、普段の光景が変わって見えたりするかもしれない。
美術館を舞台に、身近なコミュニティの枠を超えたつながり・出会いが生まれることで、誰もが生き生きと暮らせる、アートコミュニティを創造する、その一助となるようなワークショップを考えます。
最後は、グループで考えたアイディアを発表共有しました。
・春夏秋冬とび彩 散歩
・1975都美タイムトラベル
・なりきりアーキテクト …
美術館を散策しお気に入りの風景を見つけ、四季の姿を想像することを通して、美術館が居場所となる。美術館の歴史を辿りながら、自分史を重ね対話をすることで、自分と美術館のつながりを発見する。建築家になりきりそこに込められた想いを想像し、自分の言葉として語る。
…などなど、ワークショプの切り口はさまざま!
どれも、美術館への新しい視点に気づき、楽しみながら主体的に美術館と関われるアイデアでした。
前回のレクチャーで共有された美術館の役割、ミュージアムでワークショップをする意味を踏まえて、参加者を具体的に想像し、これまでの経験や価値観を問い直しするために、何が必要なのかを考え・具体的なプランにすることができのではないでしょうか。
ここまでの学びとワークを活かして、建築を介したコミュニケーションづくりの実践につなげたいと思っています。
(とびらプロジェクト コーディネータ 山﨑日希)
2021.10.16
第4回建築実践講座|「美術館を考える」
日時|2021年10月16日(土) 10:00~12:30
会場|東京藝術大学 中央棟 第三講義室
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4回目となる今回の講座では、これまでの講座での学びを”とびラーのみなさん自身の言葉”からふりかえり、これからのアクションを考える、という流れで進みました。
これまでの講座後のふりかえりアンケートの言葉を抜粋したものを一部、紹介します。
(第1回|都美の歴史と建築)
・建物があればそこに歴史があり、今に至るまで人の思いや営みが積み重なっていることに思いを新たにしました。
・建築も多くの人の眼差しを共有してこそ名作になるのだと思います。
(第2回|建築の見方・楽しみ方を知る)
・身近に建築を感じましたし、歴史や文化そして人と大きく結びついていることがわかりました。人が生きていくのに大切なものなんだ、と気づきました。
・建築を通して、そこに作られた意味や社会の仕組みなどを自 然に学んでいけることを知った。
(第3回|コミュニケーションを生む場作りとは)
・場づくりを考えるときには、その場はどんな目的で作るのかをきち んと認識しておかなければならないことに気付かされた。
・建物や仕組みそのものではなく、それらを通して社会にどんな変化 を起こしたいかをデザインされているところが、とても印象に残りました。
共に学ぶ仲間の言葉から、これまでの学びをふりかえり、これまでの講座で「一番印象に残っていること」を共有し合いました。
【問い1】実現すると「なにが」「どんな」状態になりますか?
最後は、各グループで「アイデア」と「その目的」を共有し合いました。
(とびらプロジェクト コーディネータ 山﨑日希)
2021.09.25
第3回建築実践講座|「コミュニケーションを生む場作りとは」
日時|2021年9月25日(土) 17:00~19:00
会場|オンライン
講師|宇田川裕喜(株式会社バウム代表)
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今回の講座では、株式会社バウム代表、ブランディングデザイナーの宇田川裕喜さんをお迎えしました。デンマーク コペンハーゲンのオフィスから、オンラインでご登壇いただき、「コミュニケーションを生む場作りとは」をテーマに、事業事例の紹介、オンラインでのワークショップ、デザインのプロセスについてお話しいただきました。
事業事例として京都市京セラ美術館のカフェ「ENFUSE」、丸の内仲通りアーバンテラス等を紹介いただきました。洗練されたアウトプットに加えて、コンセプトやそこに至るまでのプロセスを伺い、その場所やその周囲にいる人々の活動や気持ちに注目をして、人の動きを軸にした場のデザインを学びました。
オンラインワークショップでは「コンセプトを考えるワーク」として、4〜5名でのグループワークを実施しました。提示された課題に沿って、”具体的な誰かのための場” について、グループで検討しながら話し合いを進めます。
最後に、グループワークの内容を紐解きながら、デザインのプロセスを実践的に学びました。
(とびらプロジェクト コーディネータ 山﨑日希)
2021.08.28
第2回建築実践講座|「建築の見方・楽しみ方を知る」
日時|2021年8月28日(土) 10:00~12:00
会場|東京都美術館 講堂
講師|倉方俊輔(建築史家、
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建築実践講座の2回目は、建築史家の倉方俊輔さんにお越しいただきました。
建築の専門家の視点から”建築を見る”ことの価値、また、
「イケフェス大阪」の事例では、そこで暮らす市民が ”建築” に主体的に向き合い、生き生きと関わる様子を紹介いただく中から、その土地の特徴や、ひいてはその地域の持つ文化性といった目に見えないものまで紐解いていきます。また、小学校低学年のこどもを対象とした建築ツアーの事例からは、よく見ること、そして考えることを通して、世代や文化を超えた建築の鑑賞について伺いました。最後には、参加者と講師による質疑応答を行いました。
人々が楽しみながら建築や文化と関わり合う活動を紹介いただき、とびらプロジェクトでの活動にも引き付けて考えを深めることができたのではないでしょうか。
(とびらプロジェクト コーディネータ 山﨑日希)
2021.07.03
第1回建築実践講座|「都美の歴史と建築」
日時|2021年7月3日(土) 9:30~12:30
会場|東京藝術大学 中央棟 第三講義室
講師|河野佑美(東京都美術館学芸員 アート・コミュニケーション係)
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全8回の講座の初回となる今回は、
初めに、建築実践講座の年間目標を確認します。
東京都美術館の建築の歴史や背景を理解し、
自分の感覚を手掛かりに建築を味わう力を身につけ、
美術館というパブリックな建築を介して人々をつなぐ場をデザインする。
今年度は、約50名のとびラーが講座の中で共に ”建築” を学び合います。講座目標の中で、気になったキーワードに関して2〜3人のグループで共有し合い、互いの関心を知り合います。
とびラーになるまで建築には全く興味がなかったという方から、建築を専門とする方まで、とびラーのみなさんの”建築”との関わり方はさまざまです。講座の中では、とびラー同士での対話と共有を挟み、お互いを知ることで、ひとりではできない学びや発見が生まれることを期待しています。
続いて、河野佑美さんのレクチャー「都美の歴史と建築」では、東京都美術館の歴史や成り立ちを学びます。
現在の東京都美術館の姿を設計した建築家・前川國男の生い立ちや、建築に込められた想いやがこだわりが、当時の写真と、実際の素材サンプルなどと共に共有されました。
普段の活動で、何気なく過ごしている場所・使っているものに込められた、建築家のこだわりや大切にされてきた時間を知ることで、都美の新しい魅力が見えてきます。
エントランスの天井の着色に実際に使用された「インド砂岩」のサンプル。色へのこだわりも都美建築の見所のひとつ。
レクチャーの後半は、「100年後にも遺したい!伝えよう、ここが見どころ!」をテーマに、都美を観察するワークを行いました。
実際に都美へ出掛けて行き、レクチャーの中で出てきた話題を切り口に、素材やデザイン、色などに注目をして、都美建築の中で印象に残った点を探し、じっくりと観察します。
最後は、発見したことをノートにまとめ、「とびラー専用掲示板」でお互いに見せ合いました。
自分の発見を自分だけのものにせず、言葉にして発信すること、その “誰か” の発見から新たな気づきを得たり、思いがけない出会いにつながることがあります。発見の輪が広がり共感を呼び、都美の建築を介したコミュニケーションが生まれ、建築の新しい価値となるのではないでしょうか。
建築に込められた意思を理解して、言葉にする。愛着を感じ、大切に使い続ける。私たちの活動そのものが都美建築を100年先の未来に遺すことと地続きなのだ、と気がつく機会となったのではないでしょうか。
東京都美術館の歴史や背景を知り、自分自身の感覚を頼りに発見と発信をする、都美 ”建築”の魅力に触れた1日となりました。
今日の講座での学びを軸に、それぞれの視点での都美建築の見どころや楽しみ方を追求し、「とびラーによる建築ツアー」や「とびラボ」などでの、来館者との建築を介したコミュニケーションの実践へとつなげて欲しいと思っています。
(とびらプロジェクト コーディネータ 山﨑日希)
2021.01.09
第8回建築実践講座|「一年間のふりかえり」
日時|2020年1月9日(土) 13:30~15:30
会場|zoom(オンライン)
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昨年6月から開催されてきた建築実践講座も本日でラスト。今回は講座全体のしめくくりとして、これまでの活動をふりかえり、アート・コミュニケータとして建築を介して取り組めることをあらためて考えました。
講座の流れ
はじめに、初回から前回までの講座の概要と、その実践の場となった建築プログラムをおさらいします。つづく「こども向け建築ツアーメイキング」の企画発表では、前回の講座で考えたツアーの内容や、その企画に至るまでのプロセスをグループごとに紹介。次に「建築を介して人々をつなぐ場をデザインする」ため、これから自分が取り組めることをまずは一人で考え、続いて少人数グループで話し合い、最後にそれぞれグループで出たアイデアをチャットで全体に共有します。そして最後に、建築実践講座に携わってきたスタッフから、チャットに対するレスポンスや、今年度のふりかえりが寄せられました。
講座の様子
〇一年間のふりかえり|ほとんどオンラインで開催された今年度の建築実践講座。第2回目の講座では、PARC(任期満了をしたアート・コミュニケータが立ち上げたNPO)のメンバーをガイド&サポート役、基礎講座を終えたばかりの9期とびラー3名を参加者役とする模擬建築ツアーの様子が生中継されました。
〇グループワーク報告会|「おむすび階段」「かまぼこ天井」など、東京都美術館の見どころに与えられた特徴的なニックネームに注目して組み立てられた建築ツアープラン「都美に名前をプレゼント」は、よく見ることを軸に、”名付け”という方法で発見の言語化を促すプログラムです。この企画は今年3月下旬の「Museum Start あいうえの」のプログラム「上野へGO!リアル」で実施される予定です。
〇これからを考える|「”建築を介して人々をつなぐ場をデザインする”ために、これからアート・コミュニケータとしてできること」を、3、4人組で話し合います。このグループのメンバーは、今年度の講座やプログラムを通じて、「建築は人を抜きにしては語れない」ことに気がついたそうです。
〇フィードバック|建築実践講座に携わってきたスタッフから受講したとびラーへコメント。熊谷香寿美さん(東京都美術館)は、とびラーから寄せられた「建築は、その場にいるだけで、コミュニティに入れてくれる懐の深さがある」という声が印象に残ったといいます。
まとめ:今年度の建築実践講座と建築プログラム
今年度の建築実践講座は、新型コロナウイルス感染症予防のため、前回をのぞいてほとんどの回がオンラインで開催されました。さらに学びの実践の場となるプログラムも中止/延期あるいはソーシャルディスタンスの確保など、感染症への対策を徹底したうえで実施されています。このような状況下で、自分たちができることはなにか?とびラーもスタッフも試行錯誤を重ねながら、新たな建築プログラムのカタチを探り続ける一年となりました。
オンライン配信のとき、講座に参加するとびラーは東京都美術館(以下、都美)という建築空間の外から参加することになります。とりわけ今年度から活動する9期とびラーは、前年度までとは異なり、都美の空間を直に体感しないまま都美の建築と向き合うことになりました。
そのような状況でも、都美の建築プログラムを体験してもらおうと企画されたのが、第2回の模擬建築ツアーの配信でした。
このような流れの前後で、とびラーは都美の建築を題材とする「とびラボ」の数々を立ち上げ、コロナ禍でも建築を味わおうとオンラインでのミーティングを交えながら活動してきました。
とびラー同士で、都美館建築の気になるポイントを探求する「都美館伝説・なに?なぜ?なんで!」、とびラー同士で建築ツアーを体験し合う「とびラー向け建築ツアー」、スケッチを描くことで都美を見る目を共有しあう「都美を描くラボ」などなど。様々な方法でとびラー同士での”建築を味わう”探究がなされました。また、年度の後半にはとびラー外の方に向けた活動も多く提案されています。
本年度の建築実践講座を担当した山﨑日希さん(とびらプロジェクト)いわく、本日までに開催された今年度の建築系「とびラボ」は11個。昨年度は合計3個であったことを踏まえると、コロナ禍で展覧会が中止になったりする中で、常に変わらずにあり、人々を受け入れる建築への熱・関心の高まりが感じられます。
これまでとは異なるコロナ禍での建築実践講座や建築プログラムでの体験が、今後の活動にどうつながっていくのか。
これからのとびらプロジェクトの動向、そして任期満了する7期とびラーの活躍からますます目が離せません。
8ヶ月間ありがとうございました!
(東京都美術館 インターン 久光真央)
2020.12.12
第7回建築実践講座「こども向け建築ツアーメイキング」
日時 |2020年12月12日(土) 13:00~15:30
会場 |東京藝術大学 中央棟 第三講義室、zoom(オンライン)
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12月12日のお昼過ぎ、第7回目となる建築実践講座が開催されました。実践講座の参加者がオンライン以外の場に集合できたのは本年度初!しっかりと感染症対策を行いながら、これまでの実践講座や建築プログラムでの学びの集大成ともいえる建築ツアーメイキングに取り組みました。
講座の流れ
今回は、「参加したひとが“自分の力で建築を見る”ことができるようになる」ことを目指す、子ども向け建築ツアーをつくるワークを行いました。前半は、東京藝術大学の会場に集まった9グループとオンライン参加の1グループに分かれ、企画を考えます。まずはそれぞれで付箋にアイデアを書き出し、それからグループごとにメンバー同士でアイデアを共有しながら話し合うことで、段階的に企画を組み立てていきます。後半は、ほかのグループの企画に目を通し、それぞれの意見を交換し合いました。ここでのレスポンスを踏まえながら、グループごとに企画をあらためて見直し、プランを調整しました。
講座の様子
〇ひとりでアイデアを出す時間|まずは付箋にアイデアを出します。水色の付箋に建築ツアーの「テーマ」、ピンク色の付箋にツアーで「伝えたいこと」、そして黄色の付箋に「自分の強み」が書かれています。
〇企画書①「ツアープランを考える」|グループでそれぞれの付箋を出し合い、ツアーのテーマを設定します。そして、ツアーをどのような体験にできるのか考えながら、具体的なプランを練っていきます。
〇検証:全員で見合う|ひとつのグループにつき一人のとびラーがテーブルにとどまり、他のチームのとびラーたちに自分のチームが組み立てたプログラムをご紹介。テーブルに立ち寄ったとびラーは、そこから気づいたことを黄色の付箋に書き込み、その企画へのレスポンスとして付箋をテーブルに置いていきます。
〇企画書②「ツアープランを磨く」|グループごとに再集合。ほかのグループの企画やもらったコメントを踏まえ、ツアープランの内容をさらに磨き上げていきます。
〇発表:企画書を見合う|最後に、それぞれで各チームの企画書を見合います。ここでも黄色い付箋を用いてコメントを書き込みます。
まとめ:リアルでもオンラインでも!ともに学び合える場を目指して
今回とくに印象に残ったのは、会場の人々がオンライン参加のメンバーとも積極的に交流できるよう工夫を凝らしていた点です。本日の講座は、受講者とスタッフが同じ場所に集まることのできる貴重な機会でしたが、ブログ執筆者は都合によりオンラインで参加しました。「今回は一方的に会場の様子を観察することになるのかな」。そんなふうに思っていたのですが、建築実践講座の運営スタッフ、そして会場のとびラーたちがリモートの参加者のことも気にかけてくれたおかげで、オンラインでの参加者同士、さらには会場にいる人ともコミュニケーションを取りながら建築ツアーのメイキングに取り組むことができました。
〇オンライン参加者によるツアーメイキングの様子|とびラー3名とインターン1名で、GoogleのJamboardやスプレッドシートのようなツールを使いながら、建築ツアーのプランを組み立てていきました。
グループの企画を見合う時間には、会場にいるとびらプロジェクトアシスタントの原さんが配信用スマートフォンのレンズ越しに、それぞれの企画書や紹介の様子を見つめることができました。「このグループの企画は……」「こういう紙を使って、みんなで模型を作ったり……」会場の参加者たちは、身振り手振りを交えながら他のグループのメンバーに企画の内容を伝えています。話し手にイヤホンのマイクを近づけると、多くの方がレンズに目線を合わせながら企画をご説明くださいました。さらに、会場の参加者のなかには、オンライン参加者の作った企画書が映し出された画面を熱心に見つめてくださった方もいたそうです。
わたしは会場である東京藝術大学の第三講義室に行けませんでしたが、その場のメンバーがオンライン参加者の存在を意識しながらワークを進めてくれたおかげで、自分もその場の一員なのだと認識できました。オンラインでもリアルでも、ともに学び合えるように。今年度のとびらプロジェクトでのオンラインツールを活用した取り組みの数々が、このような共通認識に支えられた「場」としても実を結びつつあるのではないか?そのように感じることのできた回でした。
(東京都美術館 インターン 久光真央)