2018.01.19
アート・コミュニケータ(とびラー)が、東京藝術大学卒業・修了作品展をご案内します!
学生生活の集大成である作品があふれる藝大キャンパスや東京都美術館をとびラーと「おさんぽ気分」で巡ってみませんか?
みんなで作品をみて感想を共有してみたり、藝大生とお話して作品のコンセプトや思いに触れてみたり。新しい発見や出会いを一緒に探しに行きましょう!
藝大生やとびラーと交流を楽しみたい方、ご参加をお待ちしています。
昨年度の「藝大卒展さんぽ」の様子はコチラをご覧ください。
日時|
①2018年1月28日(日)14:00〜15:00
②2018年1月29日(月)14:00〜15:00
③2018年1月31日(水)14:00〜15:00
④2018年2月1日(木)14:00〜15:00
会場|東京都美術館・東京藝術大学「第66回 東京藝術大学 卒業・修了作品展」会場
参加費|無料
対象|どなたでも
定員|各日定員5名程度(先着順・定員に達し次第受付終了)
(※1月28日(日)のみ10〜15名程度)
★参加方法|当日のプログラム開始10分前より、下記集合場所にて受付を行います。
★集合場所|東京都美術館 LB階(ロビー階) 総合案内横 藝大卒展インフォメーション
※広報や記録用に撮影・録音を行います。ご了承ください。
※受付は先着順にて対応し、定員に達し次第締め切ります。
※作品の解説は行いません。
2018.01.07
10月から1月にかけて東京都美術館で開催された「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」。この展覧会を題材に、「いろいろとび缶バッジ:ゴッホの毛糸玉~ゴッホの色選びを毛糸でやってみよう~」を実施しました。
日時 平成30年1月7日(日) 11時~15時
場所 東京都美術館 交流棟2Fアートスタディルーム
このプログラムは、ゴッホが毛糸玉で配色研究をしていたことから着想し、同展のメインとなる作品5点に使われている色の毛糸を用意しました。参加者はその毛糸を再構成して缶バッジを作ります。ゴッホの配色研究を追体験することで、鑑賞を深めようというプログラムです。
当日は、冬晴れの日曜日。そして会期末ということもあり、展示室は朝から大賑わい。その熱気とともにワークショップも大盛況でした。参加者は大人160名、子ども50名。合わせて210名の皆さんが楽しまれました。これから当日の様子をご報告します。
★ワークショップへのご案内
「ゴッホ展」の展示室と離れた場所で、このワークショップを実施しているため、展示室出口と美術館のエントランス付近で、とびラーが案内をします。ワークショップのちらしを配ったり簡単な説明をしたりと、会場に足を運んでくださった皆さんとの会話がスタートします。
毛糸の写真の看板に足を止めてくださったり、とびラーが付けている毛糸のスタッフバッジに目をとめてくださったりして、興味を持たれた方もとても多かったです。会場であるアートスタディルームに向かう際も、とびラーと一緒に展覧会のことやワークショップのことを話題に、会話が弾みました。
2017.10.06
7月から10月にかけて開催された「ボストン美術館の至宝展 – 東西の名品、珠玉のコレクション」にて、「とびからポストん!Tokyo⇄Boston」を実施しました。
このワークショップは、普段はあまり美術館に足を運ばない大学生を対象に、展覧会を通したとびラーとの鑑賞体験や、ボストンに住む学生との交流を通じて、より作品鑑賞を多様に楽しんでもらうことを目的とした企画です。ボストンに留学経験のある大学生とびラーを中心に企画し、実施に至りました。
参加した4名の大学生からは、「美術の知識がなくても楽しめた」「ひとつの作品をじっくり鑑賞したり、いろんな見方をすることができた」などのうれしい声を頂きました。
ここでは開催した当日の様子を報告します。
10月6日(金)、小雨が降っており、すこし肌寒い日でした。金曜日の夜間開館の時間を利用し、展覧会をゆったりと楽しめる夕方に会場へと向かいます。まずはロビーで、とびラーが参加する大学生をお出迎えします。
到着した学生はASR(アートスタディールーム、とびラーの活動拠点)に移動し、到着を心待ちにしていたとびラーたちと「はじめまして」のご挨拶。今回はとびラーの知人から参加者を募り、異なる大学から4名の学生に参加して頂きました。全員が集合したところでいよいよ開始。
とびラーの挨拶から始まり、「とびからポストん!」の目的や今日の流れの説明。そして今回の展覧会出展作品が所蔵されている「ボストン美術館」の紹介動画を見ます。
日本の美術館と比べると、建物の大きさも、展示室の広さも、天井の高さも全く異なります。ボストン美術館の広大さを感じて、学生もとびラーも驚きをかくせません。作品たちは、ここから遥々東京にやってきてくれたのですね。
今回はAとBの2グループに分かれて活動します。各グループの構成は大学生2名ととびラー3名。まずはグループごとに軽く自己紹介をし、オリジナルの「ポストんカードゲーム」で交流を深めます。
各グループの机には、トークテーマカードと「ボストン美術館の至宝展」出品作品が印刷されたアートカードがあります。トークテーマカードには簡単なお題が書いてあり、それに合う作品を、アートカードのなかから自分なりに選んで発表し合うというゲームです。
「友達に似ている作品は?」という問いに対して涅槃図を選び、「古着が好きな友達なので、こういう細かい刺繍のほどこされたロングスカートを着ていそう。」と語ってくれる人も。カードゲームを通して、少しづつお互いのことを知ることができました。
ゲームで盛り上がりつつも、そろそろ展示室へ移動する準備に取り掛かります。学生は机上にある6枚のアートカードの中から、展示室でじっくり見たい作品をひとつ選びます。学生それぞれが、版画や絵画作品から1点を選んだところで、いよいよグループごとに展示室へ移動。
まずはグループ全員で、事前にとびラーが選んでいたおすすめの作品をひとつ鑑賞します。
Aグループは日本美術の中から水墨画を、Bグループはフランス美術の中から油画の作品を鑑賞。各自で作品を好きな位置からじっくりと見て、どのように見えたかを共有し合います。参加学生たちは、色使いや輪郭のぼやけ方について技法を考察したり、作品に描かれている人の目線の先には何があるのか、どんな気持ちなのかなど、絵の中のストーリーを想像したり、様々なところに着目して鑑賞していました。次に、学生ととびラーで2人組になり、先ほどASRで選んだ作品をじっくりと鑑賞します。「近くで見ると何が描かれているか分かりにくい作品は、5mくらい離れて見るとよくわかる」という発見があったり、「この絵は自分をどのような気持ちにさせてくれるのか」をとびラーと語り合ったり、学生ひとりひとりが自分のペースで作品と向き合います。
ASRに戻り、ひと休み。お茶とお菓子を味わいながら、展示室でのそれぞれの体験を共有します。
そしていよいよ、ボストンの学生との交流にうつります。まずはボストンの学生が送ってくれたメッセージビデオを鑑賞。ボストン美術館にある作品の中から、お気に入りの1点を選び、ポストカードを使いながら紹介してくれています。
映像の後には、ボストンの学生から実際に届いたポストカードが登場。映像の中で紹介していた作品の裏に、自己紹介やその作品を好きな理由について書いてもらっています。思いのこもったポストカードを、参加学生たちも真剣に読みます。
さて次は、私たちがボストンの学生に向けてポストカードを届ける番です!先ほど鑑賞した作品から好きな作品を1つ選び、そのポストカードにメッセージを書きます。
どのように言葉にしようか悩みつつ、作品への思いを英語で綴りました。
そしてボストンの学生と同様、ポストカードを持ってビデオメッセージを撮影。緊張しつつも、自分がこの作品をどのように見たのか、作品についてどう思ったのかなどを、素直に言葉にしてくれていました。
参加学生が書いたポストカードと撮影したビデオメッセージは、後日ボストンの学生たちに宛てて送られました。とびラー企画としては初の、海外交流を交えたワークショップでした。参加学生が今後も自分な発想で、作品鑑賞を楽しんでもらえると嬉しいです。また展覧会で日本に来ている作品たちがボストン美術館に戻ったとき、ボストンの学生たちが私たちからのメッセージを思い出しながら、その作品を鑑賞してくれることを願います。参加してくれた学生のみなさん、そしてご協力頂いたボストンの学生のみなさん、ありがとうございました!
執筆:宮﨑有里(アート・コミュニケータ「とびラー」)
駅伝の強い大学に通う運動不足の学生、通称ゆりえる。好きな画家はルネ・マグリット。アートプロジェクト等を勉強中です!
2017.09.24
「ボストン美術館の至宝展」の会期中である2017年9月24日(日)、「ボストン美術館展で世界の作品を集めよう!トレジャーコレクティング」を午前の部と午後の部、2回実施しました。
このプログラムは、とびラーによるオリジナルゲームをしながら世界中の作品を集め、美術館開館を目指すという内容です。世界中の作品をコレクションしているボストン美術館の百科事典的な魅力、参加者同士の好きな作品を共有することによって、人それぞれの視点の違いに気づいて頂くことを目的としました。ゲームを行うことによって、身近になった作品を、改めて展示室で見る面白さに気づくだけではなく、作品についてはもちろんのこと、美術館やコレクションへの興味を深めて頂きたいという思いから、企画しました。
ゲームは、「ボストン美術館の至宝展」に展示されている作品を使ったとびラーによるオリジナルゲームです。参加者が2チームにわかれ、アートカードを使って好きな作品について話をした後、オリジナルゲームで世界の作品を集めて自分たちだけの美術館の設立を目指します。
総合司会のとびラーから、本日の説明が行われます。
2017.09.09
東京藝術大学にて開催された「藝祭2017」。その中日にあたる9月9日(土)、とびラーによる「藝祭さんぽ」を開催しました。
とびラーと来場者で藝祭を巡り、作品や作者に親しむ「藝祭さんぽ」。さんぽのような気軽な感覚で、ゆったり楽しく会場をめぐり、人や作品との出逢いを楽しむ1時間です。
今年はテーマ別に6つのコースをご用意し、各チームのとびラーがおすすめの場所をツアー形式でめぐります。それぞれ異なった視点から藝祭の魅力に触れる、バラエティに富んださんぽとなりました!
6コースのタイトルはこちら。
ここから各チームの様子を、少しずつ紹介します。
◉A.はじっこすみっこ先端ツアー
とびラーに加えて、先端芸術表現科の在学生・ロウ ジェリンさんがナビゲーターとして登場。
「先端ツアー」と称して、さまざまな表現方法の作品をみていきます。途中でロウさんの作品や活動を紹介する時間もありました。
◉B.食べ歩き!食い倒れ?ツアー
藝祭は展示や公演だけでなく、模擬店もとってもハイクオリティ!
まるで吉祥寺にあるカフェのようなおしゃれな屋台、
アイルランドのビールと音楽の生演奏が楽しめる即席アイリッシュパブ、
ゲルの中で前衛的な音楽パフォーマンスが行われるライブハウス・・・
今年も個性豊かな模擬店がたくさん立ち並びました。
このコースではその魅力と裏側に迫ります。
参加者のみなさんは好きなものを選んで買うだけでなく、
メニューの考案や屋台のデザインといった開店に至るまでの準備、
模擬店メンバーの普段の学生生活についてなど、
藝大生たちのお話に興味深く聞き入っていました。
◉C.ゆったり、まったり、のんびりツアー
一つひとつの作品をじっくり見つめるコースです。
彫刻作品を色々な角度から味わい、制作した藝大生にそのお話をうかがいました。
◉D.藝祭わっしょいツアー
藝祭名物となっている、各科の一年生が制作する「神輿」。
その迫力に圧倒されながら、完成にいたる秘話や苦労話を制作チームから聞き、その魅力を存分に味わうコースです。
◉E.とびラー特選☆おすすめツアー
まず金工棟の展示「うるしっ子」へ。ひとりずつ好きな作品を選び、感じたことを話し合ってみます。さらに、制作した藝大生とのお話しを通して、一気に作品を身近に感じられるようになりました。
彫刻と工芸の2人展「ここのね」では、彼らの作品に共通する優しさを感じとった人も多かったようです。また、独創的なパフォーマンス「おく」に観客として立会い、その作品に込められた思いの深さに触れました。
◉F.ふれる感じる思考ツアー
国際芸術創造研究科(GA)にてキュレーションを学ぶ学生がナビゲートに加わるコースです。総合工房棟の素材置き場(!)を見るところからスタート。
学生たちの普段の課題の様子や、今回の藝祭で展示している作品についてなど、様々な切り口からお話しを聞いてみます。こちらでは建築科と声楽科の学生が一緒に展示していました。音楽の学生が美術校地で作品展示をするのはめったにない事例だとか!
藝祭は、普段は取手や横浜で制作している学生たちと、上野で会える貴重な機会でもあります。身近な素材や題材をテーマにした作品から、インタラクティブに関われる映像作品など、バリエーションに富んだ濃い時間を駆け抜けました!
どのコースも、「さんぽ」の終わりには、出会った藝大生たちへのメッセージを書いてもらいます。
参加者のみなさんによってつづられた、あたたかいメッセージは、とびラーを介して藝大生のもとに届きます。
今回のさんぽに参加していただいた方からは、「一見何をあらわしているのか、全くわからないと感じた作品でも、作者と話してみると、自分も同じような体験をしていたり、『その気持ちわかるなぁ』と共感できることもありました!」というコメントを頂きました。同じ時間、同じ空間を共有できるからこそ、作品をきっかけに知り合えるのは素敵なことですね。今回の「藝祭さんぽ」でも、そんな些細だけれど、豊かな体験がみなさんに訪れていたらいいなと思います。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!
執筆:服部美香、東濃誠(アート・コミュニケータ「とびラー」)
撮影:原田清美(アート・コミュニケータ「とびラー」)
編集:峰岸優香(とびらプロジェクト アシスタント)
2017.08.20
「TURNさんぽ」を開催しました。
TURNフェス3は、2017年8月18日(金)~20日(日)の3日間開催、会場には20人以上のアーティストが滞在していました。アーティストは、「できごと」を作品にしています。福祉施設との交流で生まれたできごと、来館者と一緒に生み出すできごとが、東京都美術館の中で重なり合っていました。「どこから見ようかな?何をみたらいいのかな?」と戸惑っている方たちのためにアート・コミュニケータ(とびラー)と一緒にお散歩する気分で展示室をめぐり、アーティストの話を聞いたり、おしゃべりをしたり。いろんな出会いを一緒に楽しみ、30分程度の短い時間で展覧会を楽しんでもらうのが「TURN」さんぽです。会場各所にある映像作品などは、簡単にご紹介するのみとし、短い時間でも体験していただけるよう工夫しました。開催期間中1日1回行った「TURNさんぽ」の模様をダイジェストでご報告します。
入り口から展示室に入ると、まずは東京大学先端科学技術センター「アルテク」のブースです。テーブルに並んだ電子機器が目に止まります。日常のつまずきを支援する「アルテク(=身の回りにあるテクノロジー)」について、様々な紹介がされています。例えば、教科書をiPadで撮影すると文章を読み上げてくれるソフトや、身体の一部を動かすだけで、照明のオンオフができるシステムなどを、参加したみなさんは熱心に試されていました。
「苦手をフォローしてくれるテクノロジーをもっと日常的に使用し、学習障がいのある人やこどもがもっと楽しく学べるようになるといいなと思います。決められた方法以外での学び方を小中学校でも取り入れてほしいです!」
建築家の馬場正尊さんによる「知覚のライン」。会場の一番初めから終わりまで、壁の下から70センチほどの高さに設置された出っ張りです。それを指先でさわりながら、次の展示室へ移動して行きます。
暖簾をくぐると、まず壁一杯の作品に圧倒されます。山縣良和さんの「ここのがっこう」の作品と、障がいのある方のアートで知られている「しょうぶ学園」の作品、そして二つの施設の 交流によって生まれた作品が、部屋全体に混ざるように展示されています。
そして、続いての展示室はアーティスト山城大督の「《まっしろな絵本》キックオフ・フォーラム」でした。
社会福祉法人きょうされん洗びんセンターにお勤めの高橋さんの日課は、全国の高速道路地図を独自のスケールで丁寧に書き写していくこと。毎日新しい紙を足しながら、きれいに折りたたんで行きます。そして1年が終わると、また最新の道路地図を購入し新しく書いていく、それをもう30年間も続けています。そして、「まだその地図全体を広げたことがなかった!」のだそうです。この写真展示は、きちっと折りたたんだ高速道路を高橋さんが東京体育館で広げるプロジェクトを写真家の川瀬一絵さんがドキュメントしたものです。
川瀬さんは、手振りを加えて「高橋さんが地図を開く、その瞬間のエネルギー」を感じた、と語られました。
高橋さんはなぜ道路? 絵の順番はどう管理していらっしゃるの?とか、みなさんとはちがうところが気になって、機会があったら、聞いてみたいと思いました。
続いてはノンバーバルの部屋!アーティストの富塚絵美さんとマダム ボンジュール・ジャンジさんによる空間。「中ではしゃべってはいけない!」部屋にはいる入口でまずそう説明があります。戸惑いながら少し暗い展示室にはいると、スタッフが「鯛の形をしたシールに今やりたいこと書いて!」とジェスチャーで教えてくれます。書いたらこの「やり鯛」シールを胸に貼ります。あなたは「お腹がすいているのね!」「そうか、眠たいんだ!」。「今やりたいこと」をきっかけに、隣の人とこんなアイコンタクトが始まりました。またある所では寸劇が始まったり。
幸運なグループは、1日に数回披露されるマダム ボンジュール・ジャンジさんのパフォーマンスに遭遇。ハイヒールにターバン、背中の羽。目の大きさも4倍になるジャンジさん。気がついたらドラッグクイーンと呼ばれていた彼女の、圧巻ながら音がないパフォーマンスに、私達はピンク色の手袋をはめて参加し、一緒に踊ることができました。
次の展示室に移って、しばらくしてから「喋っていいんだ」と気がつく人、ピンク色の「やり鯛」を貼ったまま歩いている人、靴を脱いだまま裸足で出てきた人もいて・・とてもリラックスできる空間でした。後から聞いたのだけれど、ノンバーバルな部屋には、耳の聞こえない人だけでなく、様々な背景をもった方もいた、とか。
富塚絵美さんたちが創り出した、知らないうちに混ざり合う居心地のよさを堪能しました。
ノンバーバルのブースは自分のカラの固さを強く感じました。言葉に頼っていることを改めて感じさせられました。
大西健太郎さんと板橋区立小茂根福祉園のブースに行くと、専属のサポートスタッフが、「風あるき-宙にのぼる」について説明してくれました。まず目にはいるのが、スノコの上に照明をキラキラと反射させている大きなフィルム。つぎに目に入るのが下から高い天井までつづいているリール。採寸台のような大机など。「2人か、3人でグループになってください。」「一人がフィルムの上でポーズをとり、他の人がそこに色鉛筆で型を取っていきます。」「交代して「ひとがた」を取り合います。重なっても構いません。むしろ重なることで面白い形になります。」「今度は協働して自分の好きな線をハサミで切って一つの型を切り出してください。出来上がった姿を想像してくださいね。」「これを「みーらいらい」と呼んでいます。」「凧のように骨をつけて、リールに吊るしてハンドルを回せば、天井まで登って行きます。」「みーらいらいは、天井付近にある照明でキラキラ光り、重なり合った人型が宙を舞います。」
大西健太郎さんは、さんぽの参加者をスノコの上に案内してくれました。そして車座になり静かに話し始めました。「風あるきとは、重い障害をもった小茂根福祉園の人たちと車椅子で散歩をするとき、他者によって切り取られた自分のひとがたを宙にかざして、陽の光や木陰、空や風になびかせながら歩く行為です。」「小茂根でみーらいらいをつくる時は、まず、車椅子からこうやって身体を抱えて2人で介助しながら、フィルムに降りてもらいます・・・そして、好きなポーズを3つ決めてもらい、その人の型をうつし取ってとっていきます。」
最後は交流スペースの、身体をすっぽりと沈められる椅子に座り、参加者のみなさんにはカードに感想を書いていただきました。
素で接していただいたので、こちらも未知の世界に構える事なく触れることができました。/ 30分という短い時間でしたが、TURNの雰囲気を体感できました。また、ゆっくりと見てみます。/ 説明を伺わないとわからないことが多かったので、ツアーは有意義でした。/ 会場全体が初めつかめなかったので、さんぽで大まかに回れてよかった。/ 他の参加者の方、作家さん、ワークショップでお話いただいた皆様、アートコミュニケーターの皆様とcommunicateできたことが、本日の収穫でした。
参加者とコミュニケーションしている時「東濃さんにとってTURNって何ですか?」と聞かれました。「運動体、ムーブメントだと思っています。TURNに参加することで今自分が抱えている様々な殻を破っていきたいと思っています。」と正直に答えると、肯いてくれました。「TURNフェスをもう一度見て回るのに助けとなります。」との感想をいただき解散しました。
執筆:東濃誠(アート・コミュニケータ「とびラー」)
2017.07.31
今日はキッズデー!いつもは大人たちで賑わう展示室も、この日ばかりはこどもたちのためのとっておきの一日。
自由に動き回って作品を観たり、時には作品の前で座っておしゃべりしたり、とびらボードにスケッチしてみたりと、展示室の中はとても穏やかな時間が流れています。
●『誰か美術館を知る大人がこどもと友達のように一緒にいてくれたらなぁ。』という願いを叶えたい。
「とびとびスペシャル」はキッズデーでみなさんをお迎えしたプログラムの一つです
このプログラム名はとび(東京都美術館の愛称)でとびラーと一緒に過ごす時間を楽しんでほしいと名づけられました。
こどもと美術館に出掛けることに不安を感じている親子にも、美術館を楽しんでもらいたい。そんな思いからかたちづくられていった「とびとびスペシャル」は、実は私達とびラーにとってもたくさんの温かい出会いや出来事が詰まったプログラムとなっていきました。
どのように「とびとびスペシャル」が当日を迎えたのか、その様子をご紹介いたします。
「どんな家族にも美術館を楽しんでもらいたい」
色々な経歴を持ったとびラー達やスタッフが呼びかけに応えプログラムの検討がスタートしました。中には小さなこどもを持つママとびラー達もいて、時には赤ちゃんを囲んでのミーティングもありました。
どんな親子がきてくれるだろうか…
障害があっても無くても楽しめるプログラムにするにはどうしたらいい?
専門家ではない私達にもできることって何?
美術館の面白さ、本物の作品を感じるたのしさを味わってもらいたい!
もしも……想定しない事が起こった時にはどうする?
そんな様々な疑問をひとつひとつ検討していきました。
様々なこどもとの関わり方を知るために勉強会を行いました。職場でこどもや、障害を持った人々と関わってきたとびラーからはその経験をきき、また開扉したとびラー達には過去に行われたプログラム「のびのびゆったりワークショップ」(障害の有無に関わらず参加できるプログラム)について話をきき事例を共有していきました。
「こどもに障害があっても無くても、向き合い方は何も変わらない」「こども一人ひとりのペースや気持ちを大切にしたい」このような声をもとにして、こどもへの寄り添い方を大切にプログラムの大筋が決まっていきます。
当日は幾つかのツールは用意しつつも、予定はこどもと相談し決定することにしました。
今回の「とびとびスペシャル」は事前申し込み制。安心して来館してもらいたい、という思いから手作りの「招待状」をお送りしました。
待ちに待った当日です。ここはみなさんをお迎えするASR(アートスタディルーム)です。直前の最終のミーティングを行っています。
ようこそ!東京都美術館へ。
午前と午後で合計10組の親子をお迎えました。
お送りした「招待状」を手に持って来てくれたこどももいました。
チーム毎に、こどもたちはとびラーと相談しながら流れを決めていきます。アートカードを見て「どんな作品が待っているかな」、「気になった作品を展示室に探しに行こうね」と一人ひとりに声を掛けながら展示室にいく心の準備をします。こどもたちに人気の「とびらボード」も使いながらおしゃべりします。
いよいよ、出発です。
世界中からやってきた古代から現代の作品たちがみんなを待っています。
少しまだドキドキしながら展示室に向かいます。
展示室では一緒に作品を観ておしゃべりが弾みます。
気になる作品の前では立ち止まって「とびらボード」にスケッチ。
よく見て描く事で、さらに作品をよ~く見ている様子。
「とびらボード」にはこんなスケッチもありました。
こどもが作品に引き寄せられ輝くような瞳で作品と向かい合い、一人ひとりのペースで過しています。
そして、最後にもう一度ASR(アートスタディルーム)に戻って展示室での様子をおしゃべりしながら振り返ってみます。
また「きみもコレクター」キットで自分だけのオリジナル美術館を作ってみたり…。
「とびらボードでGO!」でとびらボードに描いた絵をポストカードに仕上げたものに色塗りをしたりしました。
そして、とびとびスペシャルオリジナルの「思い出カード」を作ります。
表紙には消しゴムハンコの得意なとびラーが彫ったボストン美術館の作品がスタンプされています。
右下には、「とび」の正門にある銀の玉も隠れていて、表紙をめくると「とび」のイラストが!
「思い出カード」は家に帰っても時々美術館のことを思い出してほしいなと用意しました。そして、たくさんのオリジナルカードができ上がっていきました。
参加された保護者の方からは次の様なお声をいただきました。
「こどもが美術館に興味を示すか不安でしたが、こどもがひとつひとつの作品をじっくり観てたくさんお話ししてくれる姿にびっくりしました。」
「想像以上に楽しめて親子それぞれにゆっくり観ることができました。」
私たちとびラーもそれぞれの持ち味を生かして、一人ひとりに寄り添って伴走し、そして本物の作品を前に素直に反応し好奇心で目を輝かせていくこどもたちの姿から、温かな気持ちを感じた一日になりました。
キッズデーに向けて数か月にわたり準備を重ねていく中で、広がっていった人とのつながりや出来事、そして参加してくださったみなさんの笑顔から、「とびとびスペシャル」がプログラムとして育まれて行きました。
「とびとびスペシャル ボストン美術館」へお越しいただきありがとうございました。また、お会いしましょう!
執筆者:大川よしえ(アート・コミュニケータ「とびラー」)
アートによって紡ぎだされる人と人とのつながりや心の動きの面白さに魅了されています。
執筆協力:中嶋加寿子(アート・コミュニケータ「とびラー」)
2017.06.18
【日時】2017年6月18日(日)13:30~16:00
【会場】東京都美術館アートスタディルーム、東京藝術大学COI拠点
「アート筆談deコミュニケーション」と題して、「バベルの塔」展でトライアル開催しました。「バベルの塔」にまつわる、旧約聖書の「創世記」の物語――言葉(言語)が異なることで、コミュニケーション手段として使えなくなり、人々は大混乱に陥った――でのエピソードに対して、「言葉だけに頼らないコミュニケーション」を探求しました。
参加者は、とびラーと、さまざまな国籍の耳の聞こえない方たちです。
ワークショップの目的は、言語や文化の違いがある耳の聞こえない人たちと、言葉でコミュニケーションが取れないという状況下で、作品を通して一緒に絵を描くことで生まれる人とのコミュニケーションの取り方、自分の人との距離の取り方の傾向などを発見することです。また、言葉以外の方法で、コミュニケーションし、ひとつになる体験をすることで、言葉が違ってもコミュニケーションが成立すること、言葉とコミュニケーションは全くイコールではないことなどについて深く考えるきっかけになるように構成しました。
まずは、挨拶とワークショップの概要説明を行います。耳の聞こえない方とのコミュニケーション方法について、紹介をしていきます。※手話通訳と要約パソコンの文字支援付き。
【アイスブレイク】
①「塔」のイメージを表現しよう
さまざまな塔の写真(エッフェル塔・モンサンミッシェル・太陽の塔など)の中から1つの塔を各自選んでもらい、体で表現してもらいます。グループメンバーが一斉に実施し、順番に何の塔を表現したのか当てていきます。
②サインネームをつけよう
2人組になり、白い紙に相手の似顔絵を描いてもらいます。可能な範囲でパッとひらめいた印象や、こんな名前のイメージというものも書いてもらいます。そして、参加者それぞれに「サインネーム(ニックネーム)」をつけます。「サインネーム」とは、手話で表現するそれぞれの方のニックネームのことです。
③東京芸術大学COI拠点「立体バベルの塔」へ移動し、作品鑑賞
鑑賞時は、筆談を使ってコミュニケーションをします。
④2つのメインワーク「みんなのバベル」
アートスタディルームに戻り、ワークの説明をします。
各自で「バベルの塔」に住むとしたら、どこにどんな部屋に住みたいかを考えてもらい、A3サイズの紙に自由に書いてもらいます。それを、グループ内で共有してもらいます。パステルなどの画材、A3用紙と模造紙を使って表現します。
次に、グループで1枚の白い大きな紙に協力してバベルの塔の完成図をイメージし描いていきます。そこでは、1枚の絵を協力して完成していくためには、十分なコミュニケ―ションを取る必要が出てきます。描き方のルールなどは各グループ自由です。ここでは、手話通訳は行いませんでした。
それぞれのグループが、それぞれの方法で、コミュニケーションをとりながら、ワークを完成させていきました。耳の聞こえない人がとびラーに手話を教えたり、耳の聞こえない方々のリードでワークが進んで行っているようにも見えました。
⑤グループごとに作成した「作品」を発表しよう
「作品」をグループごとに、発表します。どんなルールで描いたか、各グループ内で生まれた印象的なコミュニケーションなども発表してもらいます(手話通訳つき)。
⑥最後の全体写真
ご協力くださった耳の聞こえない参加者のみなさま、スタッフ、とびラー、
ありがとうございました。
執筆者:瀬戸口裕子(とびラー・アートコミュニケータ)
2017.01.22
週末にご家族でお出かけしようとした時、どこに行きますか?公園、動物園・・・でも美術館は敷居が高いなぁと思われる方もいるかもしれません。この企画は、美術館をパパとこどものお出かけの場所にしてもらおう!子育てをきっかけに大人達にも美術館が身近に楽しめる場所になったらいいな、という思いから始まりました。
今回、とびラーでトライアル企画「パパトコ・ミュージアム」を開催しましたので、その様子をお伝えします。今回の企画は、東京都美術館から近い、国立西洋美術館の常設展を親子で鑑賞してもらい、その結果を絵本にまとめるという内容です。とびラーの紹介で、3組のパパとこども達、ママも併せると9人の方々に参加いただきました【こども4人(1才2人、4才、6才)/大人5人】。
まずは東京都美術館に集合。とびラーからの挨拶、企画の目的や流れをお話した後、自己紹介タイムです。
そして、国立西洋美術館に行く前の予習として、紙芝居をしました!紙芝居の中では、パパとこどもが国立西洋美術館に行きます。そこで見つけた9つの作品を紹介しながら、とびラーから「絵の中に何を見つけたかな?」「この絵は何に見えるかな?」と問いかけていきます。「桃を見つけた!」「赤い丸は地球?梅干し?」こども達も元気に参加してくれました。紙芝居は、参加者の皆さんにこれから鑑賞する作品を楽しんでもらうきっかけにしていただければと思って作ったものです。
次に、いよいよ鑑賞です。参加者の方々は、親子3組がそれぞれとびラーと一緒に国立西洋美術館に行き、作品を楽しみました。国立西洋美術館では、紙芝居で紹介された作品を見つけて、駆け寄っていくこどもも。初めて見る作品もたくさんあります。こども達が作品を見てどんな反応をしてくれたでしょうか・・・大人にとって意外な反応もたくさんありました。
そして鑑賞を終えて、再び東京都美術館に戻ってきました。皆さんそれぞれ一休みしながら感想を話されています。鑑賞後、絵本づくりで使いたい写真を5枚程選んでもらい、メールで送信していただきました。
休憩後、パパとこども達で鑑賞を振り返り、絵本づくりを行いました!こども達が作品を見た時の感想も取り入れて、作品や鑑賞時の写真、また一言を書いたアルバム形式の絵本を作成していきます。宗教画を選ぶこどももいます。「この杖がかっこいい!」
最後に、パパとこどもで作った絵本を、参加者の皆さんの前で発表しました。
彫刻もありました。困っているのかな、「いい子、いい子」と頭をなでてあげる子も。
大好きな果物も見つけてくれました。
皆で行った記念写真も絵本に。
トライアルを振り返って、参加したパパ達からは、「最初の紙芝居でこども達が作品に興味を持ってくれた」「絵本を親子で話しながら作ることができて良かった」「こどもが作品を見た時の反応が楽しかった」「美術館を親子のお出かけ場所にできるかも」との感想をいただきました。終わった後、参加してくれたこども達が絵本を大切に抱えて、喜んで持って帰ってくれた姿が印象的でした!
今回はトライアルでしたが、参加してくださった方々、本当にありがとうございました!鑑賞の前後に紙芝居と絵本づくりをすることで、パパもこどもも興味を持ってくれたり、鑑賞を親子で楽しむきっかけになったり。企画したとびラーの私達にとっても、パパ達、こども達の思いもよらない作品の見方を教えていただき、また素晴らしい絵本づくりに感動し、楽しい時間となりました。今後も美術館をもっと色々な方々に楽しんでいただけるよう、様々な企画に活かしていければと思います。
執筆:松山大美(アート・コミュニケータ(とびラー))
とびらプロジェクトに参加して1年目、多様な方々との出会いに感謝しています!
2016.11.20
「よく見て話して」は、何かのきっかけで都美にやって来た人達ととびラー達が共に過ごすことで、美術館を訪れた経験をより豊かなものにしていただくための活動プログラムです。
プログラムの実施
11月20日(日曜日)千葉県の長生村から37名の方々が「ゴッホとゴーギャン展」を見学に来ることになり、プログラム「よく見て話して」を実施することになりました。
参加者の特徴
参加者の中には「ゴッホとゴーギャン展を見たい」という人達ばかりではなく、「見学会ツアーに参加して美術館に行ってみたい」という人達もいます。また、「初めて美術館に行くのに、一人で行くより村の見学会ツアーの方が安心」という人達や、「友達に誘われたから」という人もいます。
年齢層はこれまでのとびラボに見られなかったご高齢の方々です。
(40歳代2名、50歳代3名、60歳代9名、70歳代20名、80歳代3名)
その他、いくつかの特徴があります。
・広報誌による募集なので、参加者同士知らない人も多い
・夫婦8組、親子1組を含む
・男性10名、女性27名
・美術館デビュー7名、これまで都美を訪れたことがある15名
参加者に合ったプログラムを考える
今回、長生村の企画の主旨は「展覧会見学会」なので、作品鑑賞をメインに新たな体験の機会を作るプログラム内容にしました。また、年齢の高い方の参加申し込みが多かったので、移動時間に余裕を持たせたスケジュールを考えました。
「作品鑑賞の前に、学芸員さんによるゴッホとゴーギャン展の見どころについてのレクチャーを受ける」、「少人数のグループに分かれて作品鑑賞と振り返りを行う」などの体験活動を盛り込みます。
また、都美のある上野公園内の文化施設を知っていただくため、とびラーによる「上野公園ツアー」をプログラムに加えることにします。
プログラム内容を伝える
プログラムにスムーズに参加し充実した鑑賞の時間を持つために、村から都美に向かう移動時間に参加者の皆さんに鑑賞の準備をしていただきます。大きな文字で見易く作った資料を使い、プログラムの内容を具体的に伝えます。展示室でのルールについてやさしく書いた資料を使い、初めての方でも躊躇することなく展示室に入れるように説明をします。これまで美術館に行ったことのある方でも、見易い資料です。
展覧会の図録を、事前に見ることはあまり無いことですが、全員に展覧会の図録を回覧して、これから行われるプログラムへの興味や作品鑑賞意欲が高まるよう工夫をします。
また、今回のプログラムでは18名ものとびラー達が一緒に活動することを伝え、これによってプログラムへの期待感と親近感が生まれたと思います。
また、終了後にアンケートへの記入をお願いし、体験を振り返る機会としていただきます。
時間通りに池田家上屋敷表門近くに到着し、6名のとびラーが長生村の皆さんをお迎えしました。
お天気も良く、参加者にとっても、とびラーにとっても、新しい体験の始まりです。
アートスタディルームに到着すると、すでに移動中に伝えてあったグループに分かれていただき、とびラー達と対面していただきました。
今回のプログラムのスペシャルの1つ、学芸員による「ゴッホとゴーギャン展の見どころ」のお話を聞きました。短い時間でしたが、分かり易く盛りだくさんの内容で、参加者もとびラー達も話に引き込まれていました。ゴッホやゴーギャンが、あたかも自分たちの知り合いだったかと錯覚するほど彼らを身近に感じたのではないでしょうか。レクチャーがあることを事前に知らせたことと、最適な資料を用意したことによって、鑑賞に向かうための貴重な時間になりました。
4,5名のグループに分かれて展示室に向かいます。
その前に、とびラー達から参加者に鑑賞方法について2つの提案がありました。
1つは「お気に入りの作品をみつけてくること」、もう1つは「指定された作品をよく見てくること」です。
鑑賞後それぞれについて話をする時間を持つことを伝え、新たな活動の説明をしました。
これについても、事前に知らせてありましたが、参加者に少し緊張した様子も見られました。
鑑賞時間は1時間ほど予定していましたが、展示室に向かうのに手間取っているグループがありました。どうやら、トイレタイムが原因のようです。移動時間は余裕を持ったつもりでしたが、いろいろな場面で予想以上の時間がかっていました。
さらに、この日は「家族ふれあいデー」が催されていて来場者が多く、展示室に行列ができ、最終グループは予定を20分近く遅れた入室になってしまいました。展示室内も混雑していて、混雑した展示室でのとびラーの伴走について課題を残しました。
鑑賞後に、作品についてみんなで話をするということは、参加者にとってはおそらく初めての経験です。作品について誰もが話をしてくれるかと心配がありましたが、活発な話し合いが行われました。参加者から積極的にとびラーに話しかける姿も見られました。
鑑賞、話し合いの後は、気持ちを切り替えて、上野公園にある文化施設を巡るツアーに出かけます。10名程の4つのグループで行動します。ツアーガイドとびラーによる「上野公園ツアー」はとても興味深い内容です。
参加者の年齢を考えてゆったり巡る25分間のツアーは、作品鑑賞とは違った美術館の印象となり、参加者ととびラーとの間でも様々な会話が生まれました。上野公園ツアーから全員が戻ったところで、今回のプログラムは終了しました。
プログラムを終えて
いただいたアンケートの中には、「以前のように自由な活動のほうが良かった」、「展覧会だけゆっくり見ていたかった」いう意見もありましたが、「ゴッホやゴーギャンの本物の作品を見ることができて感激した」、「展示室でとびラーさんと一緒だったので安心でした」、「見どころの説明を聞いて鑑賞が深まった」、「作品の感想を受け止めてくれてありがたかった」、「いろんな意見が聞けて、絵の中の物語を見たようでした」「知らない人同士でも意見が多く出るものだと感じた」「話をすると絵の印象がいつまでも残るような気がする」「今までにない体験で、また参加したい」「美術館、公園、アートに親しみました」など、プログラムに参加して得た新たな体験を喜ぶ意見もいただいました。
混雑した展示室での過ごし方や、移動時間の設定などについての反省課題もありましたが、それによって、私達とびラーが考えるプログラムと参加者が参加しやすいプログラムとの違いも見えてきました。
また、地域や年齢に関わりなく、展覧会で作品を見たときのたくさんの気付きは、聞く人がいることによって豊かに表現されていくものだと、改めて知らされました。
文 : とびラー4期 中島惠美子