東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

第1回目基礎講座:今年もはじまりました!

2014.04.12

今年も「とびらプロジェクト」の基礎講座がはじまりました。
今回は初回基礎講座ということもあり、1・2期とびラーに新規(3期生)のとびラーも加わって大にぎわいでした。約150人近い人数でしたので、会場は東京藝術大学の講義室を利用しました。
テーマは「とびらプロジェクトを知る・語る」です。
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講座は3つのプレゼンテーション(とびラーへの期待や、プロジェクトの抱える課題など)を講師陣が行い、その内容についてとびラーが話し合い、考え、レスポンスをするという趣向で進めらました。
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全体の司会進行は西村佳哲さん。はじめのプレゼンテーションは、森司さんと、日比野克彦さんです。

 

日比野さんと森さんからのプレゼンテーションではとびラーに「3年間の任期が終わったあとはどうする?」という問いかけでした。新規で入ってきたばかりのとびラーはいきなり任期終了後のことについて聞かれてびっくりしたかもしれません。しかし、終わりや、限りある時間を意識することは、プロジェクトを進める上でとても大切なこと。1期2期3期、それぞれのとびラーが交ざり合うように3人組をつくり、話し合いました。

 

話し合ったあとは、個々人の思いや考えたことを、葉書に書いてポストに入れます。この葉書(レスポンス)をもとに、とびらプロジェクトは進行してゆきます。

 

続いてのプレゼンテータは近藤さんです。近藤さんは藝大の助手として関わっていますが、昨年度の活動を振り返って、複数の組織が連携することの難しさや、コミュニケーションの大切さについてお話をしてくれました。

 

実感のこもった説得力のあるプレゼンテーションで、皆さん真剣に聞いていました。もちろんこの近藤さんのプレゼンテーションにも、とびラーのみんさんは葉書でレスポンスをしました。

 

最後は稲庭さん。稲庭さんは来年東京都美術館で開催予定の展覧会をふまえて、『キュッパのはくぶつかん』という絵本を題材に、展覧会に関するアイディアを募りました。

 

『キュッパのはくぶつかん』原作者のオーシル・カンスタ・ヨンセンさんも、これから何度か来日なさるとのこと。楽しみですね。

 

稲庭さんのプレゼンテーションが終わって、とびラーのアイディアは、「稲庭」と書かれたポストにたまってゆきました。来年の展覧会にこの箱の中のアイディアが反映される、かもしれません(笑。

 

最後はフリートークの時間です。みんなにこの場で伝えておきたいことや、自分が思っている大切なこと、ちょっとしたお知らせなど、スタッフもとびラーも発表したい人が発表するスタイルです。

 

10人以上のとびラーやスタッフがお話をしました。

 

基礎講座が終わったあとは、東京都美術館のアートスタディルームへ。少しお茶をしながら、進行中のいろいろな企画の話し合いをしたり、新しく入ってきた3期のみなさんと改めて自己紹介をしたりしていました。

 

夜は、新年度最初の懇親会です。場所は東京都美術館内のレストラン「IVORY」です。

 

余興でとびラーオリジナルの紙芝居も上演されました。
いよいよ、今年度のとびらプロジェクトも本格始動です。どんな展開が待ち受けているのか、とてもたのしみです。

基礎講座の打ち上げ

2013.06.22

実践の計画を立てる:基礎講座6回目(最終回)

2013.06.22

 

 

とびラーの働き方と活動の評価について:第5回基礎講座

2013.06.08

まなざしを共有する:第4回基礎講座

2013.05.25

きく力について考える:3回目基礎講座

2013.05.11

3回目の基礎講座が開催されました。講師は西村佳哲氏。テーマは「きく力について考える」です。

 

「とびらプロジェクト」の基礎講座は「やり方」を教える講座ではないので、来館者の前で上手にお話ができる「話し方」などの講義はありません。アート・コミュニケータ(とびラー)に必要なのは、発信力より受信力、相手の意見や気持ちを受け止めることのできる力、すなわち「きく力」だと考えています。

 

そこで、今回の基礎講座は「きく力」をキーワードに進められました。講師の西村さんのお話を聞くだけではく、とびラー同士でコミュニケーション取りながらの講座となりました。そして、「きく力」(受信力)の話から、プロジェクトを進めてゆく上で必要となるさまざまな心構えや予備知識の話へと講座は展開して行きました。

 

今回の西村さんのお話でとても興味深かったのが、「80%=20%の法則」です。80%の成果は20%の活動エネルギーよって生まれるという説で、「パレートの法則」としても広く知られています。
この「80%=20%の法則」を、プロジェクトの成長課程に当てはめると、とても面白い見方ができます。
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「80%の成果は20%の活動エネルギーによって生まれる」と仮定すると、
1、80%の成果は20%の時間で達成できると考えられます。
2、また逆に残り20%の成果を生むには、全体の80%の時間を費やさなくては成らないとも読み取ることができます。
縦軸を質(成果)、横軸を時間として、この状況をグラフにするとスライドのような曲線が描かれます。そして、質(成果)が凡そ80%に到達したところを分岐点としてとらえ、時間軸から見る前者を1、時間軸から見る後者を2として、それぞれの特性を分析すると以下の様に解釈することができます。
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1、80%の質(成果)をあげる20%の時間 = トライ&エラーを繰り返して急激にイメージが実態化される期間(創造的成果が問われる期間)
2、残り20%の成果を詰める80%の時間=丁寧に仕事を整理してプロジェクトの制度を高める期間(生産的成果が問われる期間)
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これについて西村さんは、こうした曲線を辿らず進行するプロジェクトもあり得る、しかし、高い成果を残すプロジェクトにみられる成長曲線は、このスライドにあるような曲線をたどるプロジェクトであると言います。その理由は、1、2の両方の状況が顕在化していることがプロジェクトにとって理想的であるからだとのこと。
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この、1「創造的成果が問われる期間」と2「生産的成果が問われる期間」とが顕在化することの重要性については非常に納得でした。創造的な発想をバネに失敗を恐れず進行しなくては成らない1の時期と、積み上げた成果をキチンと価値付けてゆく2の時期、確かにどちらもないとよいプロジェクトにはなりません。
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もう一つの興味深いポイントとしては、1と2転換期(80%地点)を「壁」として捉えることができるところです。創造的な取組みに注力し、急激に成長したプロジェクトであっても、ある時からその成長が伸び悩む時期が訪れます。
それを「壁」という言葉で表しますが、実はのこ「壁」は仕事への意識を変えるタイミングであると解釈することができます。「やり方を変える」「求める成果を変える」など意識を変えることで、その「壁」は越えることができるばかりか、プロジェクトの完成度をさらに高めチャンスとなり得るのです。

各々どのように西村さんの話を「きいた」のかを共有したながら講座は進められました。

 

コミュニケーションを取りながらの講座は、自分だけの解釈の枠を越えて、さらに深い理解へと導いてくれます。

 

午後はコミュニケーションについて考えるワークショップを行ないました。こちらは、昨年の基礎講座でも実施された内容なので、詳しくは「H24基礎講座2回目」をご覧下さい。基礎講座も3回目を修了し、全6回の基礎講座も折り返しとなりました。とびラー2期生もどんどん成長しております。どんどん加速してゆきます!
(とびらプロジェクト・マネージャ 伊藤達矢)

上野公園にでかけよう!:基礎講座2回目「あさっての美術館を考える」

2013.04.27

2回目の基礎講座のテーマは「あさっての美術館を考える」でした。講師はアーティストの日比野克彦さんです。
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講座がはじまると日比野さんからとびラーに課題がだされました。
【課題】:東京都美術館と上野公園内にある他の文化施設が連携することで出来る新しいアイディアをグループで考えなさい。
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東京都美術館(以下:都美)の中で考えていてもはじまりません。そこで、早速とびラーは10グループに分かれて、都美を基点に、東京国立博物館、国立科学博物館、国立西洋美術館、上野動物園、国際こども図書館、東京藝術大学美術館へとリサーチに向かうことになりました。

こちらのグループは上野動物園へ。久々の動物園!というとびラーもいたようです。

 

こちらのグループは、国立科学博物館へと向かいました。上野公園には多くの文化施設が集積しています。どの文化施設も日本を代表する素晴らしい文化施設ばかりです。そうした文化施設の持つ可能性を、これまでとは違った視点で確認する。そして、上野公園を自分のホームグラウンドにして行く。アート・コミュニケータとしての経験値を高める大事なステップです。

 

外の文化施設だけでなく、基点となる都美も合わせてじっくりとリサーチした後は、基礎講座の教室(都美のアートスタディルーム)に戻り、文化施設を連携させることでできる新しいアイディアについて各グループ毎に話合いが行なわれました。

 

今回の基礎講座は、新たに入ったとびラー2期生と1期生の混合チームで進められて行きました。じっくりと話し合ってアイディアをまとめてゆきます。

 

日比野さんが見てまわります。

 

知り合って間もないとびラーも講座を通して徐々に打ち解けてきたようです。

 

最後は、各ブループ毎に考えたアイディアを発表しました。

 

個性的なアイディアがいくつも発表されました。例えば、動物園で「迷子にならないための迷子札」が発行されているというリサーチから、美術館では「迷子になるための迷子札」をつくってはどうかなど、非常に興味深いアイディアが生まれていました。作品を通してイメージの世界へ迷い込む、そんな美術館の持つ不思議な場所の印象を上手に捉えたアイディアでした。とびラーがファシリテータになって、都美だけではなく東京国立博物館や西洋美術館に迷い込む「金曜夜のナイトツアー」なんあったら楽しそうですね(勝手な妄想です)。こうした一つ一つのアイディアに日比野さんか適切なコメントを入れて行きます。「んーー25点(笑)」という厳しい突っ込みもありましたが、和やかな雰囲気で講座が進められて行きました。

 

講座が終わったあとは、カフェ「SAVORIYA リアル」が開店。お茶やお菓子は持ち寄りで、ミーティングの続きをしたり、何気ない話をしたりと、気ままなコミュニケーションの場となりました。2年目を迎えた「とびらプロジェクト」も徐々にあたたまってきました!
(とびらプロジェクト・マネージャ 伊藤達矢)

新規とびラー55名が新たに加わりました!!:基礎講座1回目

2013.04.13

4月に入り「とびらプロジェクト」も新年度を迎えました。新たに55名のとびラー(アート・コミュニケータ)が加わり、昨年度からの継続とびラー71名と合わせると、「とびらプロジェクト」は126名もの大所帯となりました。そして、126名のとびラーを対象とした全6回に渡る基礎講座が昨年度同様にスタートしました。
昨年末に募集したH25年度とびラーの募集状況は、定員40名に対して199名の応募があり、倍率は凡そ5倍となりました。応募して頂いた方々の高い熱意をひしひしと感じ、選考は難航を極めました。一次選考(書類選考)、ニ次選考(面接)の経過の中で、出来る限りご応募頂いた方々の気持ちに答えようと定員を15名増やしました。選考の基準は、幅広い年齢層の参加、男女のバランス、様々な仕事や経験・価値観のバランス、活動できる曜日のバランス、アート・コミュニケータへの感心の高さなど、様々な視点から総合的に判断させて頂きました。そのため個々人の能力というよりは、全体のバランスが重視され、結果的に「ご縁あった皆様」という印象となっております。改めてお応募頂いた全ての皆様に感謝を申し上げます。

H25年度第一回目の基礎講座は「とびらプロジェクト」で活動を行なうためのガイダンスとなりました。スタッフの紹介をさせて頂いた後に、東京都美術館アート・コミュニケーション係長の稲庭学芸員より東京都美術館(以下:都美)の歴史やアート・コミュニケーション事業の目指すものなどのお話がありました。続いて僕、伊藤達矢(東京藝術大学特任助教/とびプロジェクトマネージャ)から、東京藝術大学の歴史と「とびらプロジェクト」の概要についてお話をさせて頂きました。

 

午前の部の最後は、東京藝術大学特任助手でとびらプロジェクトコーディネータの近藤美智子さんより今後の具体的なスケジュールや活動する上でのルールなどについてお話がありました。

 

午後は継続して活動しているとびラーがH24年10月~H25年3月までの活動の報告をしました。イベントとして公表されている「紙芝居プロジェクト」や「スケッチボードでGO!!」、また都美内にて活動を展開する「建築マッププロジェクト」館内情報紙「とびリア」、美術情報室の書籍を特別展と合わせて紹介する「ライぶらり」の発行経過などなど、たくさんの「とびラボ」から生まれた活動の報告がありました。

 

熱のこもったプレゼンで、新しく入ってきた55名のとびラーにも分かり易くこれまでの活動を紹介できたのではないかと思います。

 

とびラーが昨年度つくったさまざま印刷物も配布されました。

 

新規とびラーのみなさんは初回にもかかわらず、相当量の情報に少しびっくりされたかもしれません。。。でも、まずは基礎講座からゆっくりと入って行って頂ければと思います。

 

とびラーの活動紹介の後は、新しいとびラーも継続したとびラーも自己紹介を兼ねて前後左右の席4~5人でとびラーのプレゼンについての感想を共有する時間となりました。

 

最後は僕から新年度の新しい取り組みについてお話をさせて頂きました。今年度は活動の範囲を広げて、いよいよ本格的に「コミュニティーの形成を目指すプロジェクト」の本丸に向かおうと考えています。126名のとびラーとともに、「とびらプロジェクト」まだまだ成長し続けます。
(とびらプロジェクト マネージャ 伊藤達矢)

基礎講座の打ち上げ

2012.06.23

基礎講座最終回が終わった後、夕方6時から、東京都美術館内にあるレストランIVORYにて、基礎講座の打ち上げを兼ねた懇親会が催されました。全6回に渡る基礎講座も全て終了し、とびらー候補生(以下:とびコー)同士もかなり仲良くなりました。なかなか厳しい基礎講座だったと思います。みなさん大変お疲れさまでした。

 

以前、このブログでも紹介した「とびら楽団」のみなさんも登場しました。演奏して頂いた曲はNHKみんなのうたでおなじみの「メトロポリタン美術館」です。東京都美術館も東京メトロポリタンミュージアムなので。とびコーの時田さんがつくってくれた衣装とお揃いの青いターバンを身につけたとびら楽団の演奏は、とびらプロジェクトがはじまってからこの2ヶ月間の充実した活動を象徴しているかの様でした。

 

こちらの「真珠の耳飾りの少女」はマウリッツハイス美術館展の担当学芸員の大橋さん。かなり似合ってます!また、タイミングをみてとびコーさんが全員揃う会を是非開催したいですね。これからは実践講座です。みなさん頑張りましょう。(伊藤)

基礎講座6回目「実践の計画を立てる」(最終回)

2012.06.23

全6回の基礎講座もついに最終回を迎えました。今回の講師は学芸員の稲庭彩和子さん、河野佑美さん、大橋菜都子さん、それと僕、伊藤達矢です。はじめに、稲庭さんと僕からもう一度東京都美術館(以下:都美)の目指すアートコミュニケーション概要についておさらいさせて頂きました。

 

最終回だけあり、みなさん何時にも増して真剣に受講されていました。

 

この4月から6月にかけて行われた基礎講座の期間中に、とびラー候補生(以下:とびコー)のみなさんには、「スクールマンデー(学校連携:対話を通した作品鑑賞)」、「建築ツアー」、「アクセスプログラム(障害のある方のための特別鑑賞会サポート)」のプログラムの中から必ず1つ以上選択して頂き、今後の活動の大きな方向性を決めて頂きました。選択したプログラムについては、該当するプログラムの実践講座を8割以上出席し、次年度からはそのプログラムのリーダー的存在になって頂くことを強く推奨しています。

 

そこで、それぞれのプログラムの特色を共有するために、それぞれの担当学芸員さんにプログラムの詳細を説明をして頂きました。はじめは「建築ツアー」担当学芸員の河野さんから。建築ツアーは既に実践講座がスタートしており、このブログでも紹介済ですが、コルビュジェに師事した日本を代表する建築家前川國男の作品である東京都美術館を紹介するツアー企画です。ステレオタイプの建築ガイドではなく、とびラーひとりひとりがつくるオリジナリティー溢れる建築ツアーを目指しています。

 

続いて、「アクセスプログラム(障害のある方のための特別鑑賞会のサポート)」については大橋さんからご説明を頂きました。都美では「障害のある方のための特別鑑賞会」を年に3回予定しています。休館日を使い、障害のある方にも安全に安心して作品を鑑賞してもらえる日をとびラーがつくります。初回の「障害のある方のための特別鑑賞会」はフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が展示されるマウリッツハイス美術館展です。

 

最後は「スクールマンデー(学校連携:対話を通した作品鑑賞)」担当の稲庭さん。小中学校と連携した鑑賞教育の実践の場として都美を開くプログラムです。普段は来館者が多いため、鑑賞教育の実践が難しい特別展を、休館日を活かして特別開館し、VTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)を中心とした対話型鑑賞教育を実施します。

 

「スクールマンデー(学校連携:対話を通した作品鑑賞)」、「建築ツアー」、「アクセスプログラム(障害のある方のための特別鑑賞会サポート)」はとびらプロジェクトの活動を支える3本柱となるプログラムです。そして、自分が選択したプログラム以外の活動であっても、人手が足りないときや、力を合わせなくてはならないとき、凄く興味のある内容のときなどは、プログラムの枠を超えて参加することをお勧めしています。

 

午前中の基礎講座は、この3本の主要プログラムの説明に加え、メーリングリストや「とびらプロジェクト掲示板」「本日のホワイトボード」などの専用情報共有システムについて確認したところで終了しました。とびらプロジェクト関係者以外の方でこのブログをご愛読頂いている方がいれば、きっとホームページ上のバナー「とびラー専用掲示板」にお気づきになった方もおられるかと思います。クリックすると「とびらプロジェクト掲示板」「本日のホワイトボード」の2つのバナーがでてきますが、残念ながら、ここから先はとびコーさんでないと見ることができません。実はこの先のシステムはとびコーさん同士のミーティングの記録がホワイトボードの写真ごとアップされていたり、ミーティング後の感想などや追加事項などがアップされていたりします。既に想像を超えて活発な活用が展開されています。

 

午後は、僕のファシリテートのもと、現在進行中の数々の新規プロジェクトのプレゼンテーションを担当のとびコーさん自身からして頂きました。楽器が出来るとびコーさんが集まり演奏を行う「とびら楽団」、新聞やブログなどを通して都美と芸大の情報共有と発信を目指す「とびら情報部」、とびラーの活動を支える為の都美のマップ作成と知識の共有を考える「マップ&マニュアル」などなど、とびコーさんの目線ならではの企画が既に10個以上立ち上がっています。一つ一つの企画を丁寧に発表して行くと、思わず助け合える企画同士を発見できたり、質問に答えているうちに新しいアイディアが生まれたりと、非常に実のあるプレゼンテーションの時間でした。

 

一つ一つの企画はまだ芽を出したばかりで、実現できるか否かはとびコーさんらの頑張り次第なところもありますが、とびらスタッフ一同、出来る限りとびコーさんたちをサポートして行きたいと思います。

 

また、そういった思いもある一方で、僕はプロジェクトマネージャとして、とびコーさんたちが自分たちの視点から生まれた活動をきっかけに、思いや理想をお互いに語り合うこと(共有すること)の方が、とびらプロジェクトの成長過程にとって非常に重要なプロセスであり財産だと考えています。(それを可能にするのが「きく力」なのです。)

 

年齢も職業もバラバラな凡そ90人のとびコーさんたちを繋いでいるのは、アートというプラットホームです。もちろんアートでなくとも、多様な人々の価値観を乗せるプラットホームは存在すると思います。しかし、性別や年齢、職業や価値観を軽やかに越境し、広くフラットに包み込むことの出来る類希なフレームはアートをおいて他に見当たらず、比類ない可能性を持ったフレームだからこそ、アートはコミュニティーに変換可能な媒体として機能できるのだと思います。(時代を超えた普遍的な魅力や価値がアートには内在しているからこそ、きっとこれだけの大きなフレームになりえるのでしょう。)

 

そして、アートをプラットホームとすることで、多種多様なとびコーさんたちが協調し合い、信頼関係を積み上げることこそ、とびらプロジェクトの”背骨”をつくることに繋がると思っています。

 

よく「芸術(アート)は社会の背骨である」とか、「芸術(アート)は社会にとって漢方薬のようにじんわり効能を発揮する」といった例えられ方をします。それは、芸術(アート)が人々の多種多様な価値観を抱える大きなプラットホームになることよって、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本:多様な人々が関わり合い、関係性を築くこと自体が社会の資本となり得るという概念)が、高い水準で社会(コミュニティー)に蓄えられた状態を指し示したものに他なりません。

 

とびらプロジェクトにとっても、このソーシャル・キャピタルの蓄積は至上命題です。異なった価値観に対して理解を示し、年齢や立場を超えた信頼を築くこと、そしてなによりも問題やリスク、困難や失敗をも共有することのできる関係を構築して行くことができなければ、本当の意味でとびらプロジェクトにソーシャル・キャピタルが蓄えられたとは言えません。

 

そして、これはとびコーさん同士で終わる話ではなく、都美で働く様々な業種の方々との間にも是非とも蓄えて行きたい資本であると思っています。つまり都美の中にソーシャル・キャピタルを蓄えて行きたいと考えています。むしろ、今年のとびらプロジェクトの活動の本質はそこにあると思っています。ソーシャル・キャピタルを蓄え、都美というコミュニティーに強靭な背骨をつくってゆかなければ、「美術館を拠点に、アートを介したコミュニケーションを促進し、オープンで実践的なコミュニティーを形成」する社会装置としての美術館の姿など到底夢のまた夢。。。とびコーさんにかかる期待はますます大きくなるばかりですが、大丈夫、このメンバーなら成し得てくれることでしょう。なぜなら「対話をすることの粘り強さと、誠意をもって接する力」を持つ方々をとびラー候補生として選出したつもりだからです。(休館前に障害のある方々の特別鑑賞会のボランティアを長らくされていた方々にも、そうした資質は共通していると感じて、ひとまとまりのとびら候補生となって頂きました。)

 

最後はこれからとびコーさんたちが企画を進行させて行く上での、テクニカルなアドバイスをさせて頂きました。はじめは、講師の西村さんが「とびらプロジェクト掲示版」に書き込みした内容のおさらい。その後は僕からのアドバイスです。意気込みをしっかりと推進力に変えて行くために必要な幾つかのポイントです。ちょっと気を付けておくだけで、結果は大きく変わるかと思います。

 

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■西村さんからの3つの言葉
1)どんなプロジェクトも、最初の時点で終わり方というか、解散イメージを共有しておくと良いです。

「××××が達成できたら解散」
あるいは時限制で「いついつで自動解散」とか。
解散のときを迎えても「まだやろう!」という感じがあったら、あらたに「その2」を始めれば良いです。
2)底の見えないかかわり合いがつづいてしまって、
なんとなく自然解散というか蒸発? みたいな経験は、
その後のかかわり合いにあまりいい影響を与えないので、
終わり方や解散イメージは、
最初に共有しておくと良いと思います。解散はその都度、楽しくやるといいと思います!
3)「提案や投げかけをして、あとは反応待ち」という形に、なるべくしない。
自分たちで出来るところまでやる。
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■伊藤からのミーティングを行う上での3つの注意事項+1
1)イメージを数量化する(スケジュールや金額を具体的にする)
2)ミーティングはタスク(仕事)に変えて終わる
3)仕事の量と成果の回収のバランスを考える(とびらプロジェクトの場合は必ずしもそうではないですが、
その書類つくらなくても結果は一緒だったよね、なんてことよくあります。つくったことに満足しても仕方ないのです。。。)
+1)そして最も大事なこと
抱えきれない! とつらくなるまえに仕事をシェアする。
黄色信号を「出す」「受け止める」ことが最も大事です。
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最後の基礎講座が終了した後は、各自が進行する幾つもの企画のグループに別れ、夕方までミーティングが自主的に行われていました。素晴らしい! 写真は、障害のある方向けのアクセサビリティーの確認のために、車椅子に乗って館内を視察している様子です。
全6回に渡る基礎講座もこれで終了しました。これから実践講座へと進んで行きます。
さー!これからが本番です。(伊藤)

 

 

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