東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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第一回基礎講座

4月11日(土)に今年度の最初の基礎講座が実施されました。
初めての講座に臨む第4期とびラーたちの表情はやや固く、プロジェクトルームに緊張感のある空気が張りつめています。
まずはスーパーバイザーの西村佳哲さんによる《「きく力」をみにつける》の講義からスタートです。
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主なトピックは、
・話を〈きかない〉とはどういうことか?
・話を〈きく〉とは? また、それによって生まれるものは?
です。

まずは導入として、5〜6分間の自由な時間をとびラー同士が3人組になって話し合います。
ただし、自己紹介禁止「はい、どうぞ(唐突に始まり、とまどうトビラー)」そして解散。

初めての3人組はとてもよい雰囲気でした。
「自分は相手の話を聞けていたのか?」「あなたは相手の話を聞いていたか?」
本人にも気付いていない、聞く事に対しての解像度を今日のWSではあげる、見方が変えて取り組んで行きます。
普段は5泊6日でやっているワークショップですが、今回はその一部分を3時間の講座の中で行います。
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「まるで聞いていないひとはいない、しかし聞いている風だけど聞いていない人はいたんじゃないか。」
「内容に意識を向けていた人が多いと思う。」

人の話を聞く作業は内容だけでなく、大きく分けると内容と態度、2種類の情報を把握している。」
「充実していると言っておきながら、充実している様子がない、など。」
「曲に例えると歌詞とメロディーに例えられる」

日常会話の中では相手の内容に意識がいきがちになってしまいます。それは果たして聞いていると言えるのだろうか?西村さんは、わかりやすい言葉でとびラーに語りかけます。

そしてまた共有。
西村さんの話が続きます。

相手が話終えていないのに、自分の話を割り込ませてしまう、という経験がある方は少なくないんじゃないでしょうか。これはある方向から見れば、他人に興味がない、関心がないということを言い表しています。

西村さんはデザイン、大学講師、ファシリテーターなど様々な仕事をしていらっしゃいます。中でもインタビューの仕事を30歳から始められたそうです。
そして教えるべき専門的な技術・ノウハウは持っていますが、その伝え方がわからないということで、コーチングを学ばれています。
コーチングの世界では有名な谷さんをフォーラムに及びした際に、その方が出した事例があります。

あるPTAの会に呼ばれた時の話です。
ある小さな子供と一緒に住宅地を散歩していた・
ある路地を抜けると市道がありそこは公園まで近道となっている。
しかしその近道に大きな犬が道を塞いでいました。
でかい、道 犬 塞がれている
とたんに固まってしまた子供。
そんな状況の時にこどもにどんな声をかけるか?

(とびらーの答え)
どうしたの?
おっきいのがいるね?
どうした?
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西村さんの答えは「怖い?」と聞くでした。
その理由は、子供はまだ、一言も怖いと言っていないし、子供は固まっただけ。
怖がっていると思っているのは、こちらの一歩的な判断だからです。
それだけではコミュニケーションにはなりません。

谷さんの最初の一言は「どうしたの?」ということでした。
子供が「怖い」と言って、岸さんは、「それだけ?」と聞いたそうです。
これは、人間の中に一種類の感情しかないということはない。ということを示しています。

上手に話を聞くのは、ぐっとクエッッションを投げる人だと思われがちだが、そうではない。
きちんと聞いてくれる人がいれば、溢れ出てくるはず。
西村さんがこう総括しました。
そしてまた共有。

続いて3人組になってのワークショップをしました。
・3人組の中でAとBとCに分かれる
・AとBで会話のやりとり、Cはオブザーバー的にその様子を見ている
・Aがスライド(指示書)を見ているときにはBはスライドを見ない、その逆もあり

1回目

指示書『1−A』
あなたは、話し手です。
あなたの「最近うれしかったこと」を、できるだけ(詳しく、)あなたの(気持ちをこめて、)
相手に伝えてください。(時間は1分半)

指示書『1ーB』
あなたは聞き手です。
相手があなたに「最近うれしかったこと」について話しかけてきますが、(うわのそら)で聞いたり、あるいは一切(相手を無視)しつづけてください。

2回目

指示書『2−A』
あなたは聞き手です。
相手が話しかけてきますが、あなたは、相手の話が途中でも、自分のはなしたいことなどを話して、相手の話の(腰を折ったり)、話を(横取り)してください。
*ポイント
聞き方が一生懸命話しそうとしている人に対して、どんな作用や影響を与えていたか

指示書『2ーB』
あなたは話し手です。
自分が今話してみたいテーマのひとつ考えてください。そのことについて、できる限り(詳しく)、あなたの(気持ちを込めて)、相手に伝えてください。

Cさんだけのグループができないように解散。
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3回目

指示書『3−A』
あなたは話し手です。
「最近腹がたったこと」について、できる限り詳しくあなたの気持ちを込めて、相手に伝えてください。

指示書『3ーB』
あなたは聞き手です。
相手は「最近、腹が立ったこと」について話しかけてきます。ここでは、どんな些細なことでも良いので相手の話を否定してください。

*ポイント
この聞き方が、話そうとしている人に対してどんな影響を与えているのか?

4回目

指示書『4ーA』
あなたは聞き手です。
相手が「最近困っていること」について話しかけてきます。多少脈絡がなくても良いのであなたはできるだけたくさんの安易な解決策を相手に示してください。

指示書『4−B』
あなたは話し手です
「最近ちょっと困っていること」について、できる限り詳しく、あなたの気持ちを込めて、相手に伝えてください。

*ポイント
聞き方が相手にどんな作用を与えているのか?

これまでのワークショップを以下にまとめると次のように大別することが出来ます。

・無視   成長し始めていたものが止まる感じ。
・横取り  これ以上展開しなくなる。奪い合いがいけないことではないが、必要な時に必要な行動がとれるとよい。
・否定   無視とは全然レベルが違う。一番極端な例は取り調べ室、えん罪が成立するが、目の前の人に受け入れてもらいたいという仮説がある。
・先回り(介入)自分の考え事の方の世界に入って行ってしまう。聞いているようで聞いていない。

午前中の講座では、「聞く」という行為が持っている力について気付きを得ました。
午後は、“自分の言葉で話す”ことについて学びます。
午前の部はここで終了です。

【午後の部開始】
テーマ「本人が”自分の言葉で話す”ことを可能にするには?」

自分が感じていること、大事にしたいことを手放さずに言葉を発せられれば、
非常に充実したコミュニケーションをとれるんじゃないだろうか、
では、どのような聞き方をすれば良いのでしょうか?

「りんご」と言葉に発した場合に、文字としては漢字、ひらがな、カタカナ、英語など。かたちとしては、つややかなもの、輪切りになっているもの、うさぎになっているものなど。

言葉は抽象度が高く、発言者/聞き手が持つイメージが必ずしも一致しているわけではありません。

安易に了解せずに「どんなりんごなんだろうか」、と相手の認識に継続的に関心をもつことが大事だ。相手の話を自分の枠組みで受け取らないこと、相手に関心をもっていないと達成できない、と西村さんはおっしゃいます。

『相手に本当に関心を持つ』ことを考えるにあたり、西村さんからセザンヌの事例をあげられました。
セザンヌはなぜ、長い年月をかけて1枚の風景画を描き続けることが出来るのか?

>>(風景を見ながら描いている絵が)自分の目で再現する事が出来ず、目に見えているものが(普通の人と)違うから

セザンヌの事例からインプット(人の話を聞くこと)の重要性を西村さんは強調されています。
話し合いのプロセスが追える人は、ファシリテーターに向いているという傾向があるそうです。逆に話し合いの内容ばかりを追いかけてしまう人は見込みがありません。

クリエイティブなチームを作るには、ユニークなアイディアが出せる、プレゼンテーションが上手い、といったことではなく、話を聞く事の出来る人間がたくさんいる組織が強いと西村さんはおっしゃいます。

最後にAppleの話を例に出して、西村さんからとびラーに対して期待の言葉を投げかけてくれました。

色々な事例やワークショップを用いて、話の中核に迫って行く西村さんの講座、大変興味深かったです。途中、ちょうど良いタイミングで質問を西村さんに入れていただき、普段は意識しない感覚(聞く事など)を揺さぶられながら、新とびラーたちは「聞く」「話す」ことを反芻していきました。

—————————第一回目基礎講座終了—————————

講座終了後は、第2期・3期とびラーが加わって、カフェ形式の交流会へと場が転換します。先輩とびラーたちのホスピタリティーに溢れた、良い雰囲気が室内に充満していきます。
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続いて東京藝術大学の講義室に移動してオリエンテーション(とびらプロジェクトスタッフの紹介、基本的な組織概要や目的・これまでの活動の説明)を行いました。この日はとびラー全員勢揃いです。
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オリエンテーション終了後は大浦食堂で懇親会! 全とびラーが入り乱れ、あっという間に時間が過ぎました。
新しいとびラーが加わって2期・3期とびラーの皆さんはとても嬉しそう。世代の違う同級生が、学年というレイヤーになっているのもとびらプロジェクトの魅力です。

ここからどんな活動が美術館の中で生み出されていくのか。乞うご期待ください!
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(とびらプロジェクト コーディネータ 奥村圭二郎)

2015.04.11

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