東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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2026.05.23

 


 

日時|2026年5月23日(土)10時~15時
場所|東京都美術館 交流棟2階 アートスタディルーム
講師|青木将幸
内容|とびラーの自主的な活動には、直接コミュニケーションをとるミーティングの場のあり方がとても重要です。ひとりひとりが主体的に関わるミーティングの場をつくるために、ミーティングの理想的なスタイルや具体的な手法を、レクチャーやワークショップを通して学んでいきます。

 


 

とびらプロジェクトには、とびラー同士が自発的に開催するミーティング「とびラボ」があります。世代も職業も異なる人たちが集まり、アイデアを持ち寄りながら対話を重ねるとびらプロジェクトにとって、ミーティングは活動の土台ともいえる存在です。

 

とはいえ、「会議が好き」という人はそう多くないかもしれません。資料が配られ、スライドが映し出される。「何か意見はありますか?」と聞かれても、なかなか発言しづらく、気が付けば一部の人だけで話が進んでいる――そんな経験は、多くの人に覚えがあるのではないでしょうか。

 

今回の基礎講座では、「グッドミーティング(良い会議)」をテーマに、ファシリテーターの青木将幸さんを講師に迎えました。家族会議から国際会議まで、年間100本以上の会議進行を手がける青木さんから、会議をより豊かなものにするヒントを学びました。

 

 

青木さんがまず取り組んだのは、場をほぐすことでした。

最初に紹介されたのは、会議前の「1分間のお祈り」です。直前まで仕事や家事をしていた人が、気持ちを会議へ切り替えるための時間。実際に会場でも1分間静かに目を閉じると、鳥のさえずりが聞こえるほどの静けさに包まれ、その後の場の空気がふっと柔らかくなったのが印象的でした。

 

 

 

続いて行われたのは、「親指ゲージ」によるコンディションチェック。親指を上に向ければ元気、横なら普通、下なら少し不調というシンプルな方法です。

「仕事が忙しくて疲れています」
「今日の講座が楽しみで少し寝不足です」

高い人もいれば、低い人もいる。それを表明できること自体が、すでにグッドミーティングの土台になっています。

 

さらに、グループごとにひとり一つづつ、ストレッチを紹介し合う体験もしました。

「心の緊張と体の緊張はつながっています」

青木さんの言葉どおり、体を動かすことで場の雰囲気もほぐれていきました。

 

その後のテーマは、「会議をよくするものを持ち寄る」。

参加者は事前に「これがあるとグッドミーティングになると思うもの」を持参していました。飴やクッキー、かるた、あやとり、カリンバ(アフリカ発祥の楽器)、ぬいぐるみなど、個性豊かなアイテムが並びます。

そこで紹介されたのが、青木さんが大切にしている言葉です。

「Anyone can contribute(ここにいる誰もが貢献できる)」

アートに詳しい人もそうでない人も、大人も子どもも、それぞれの経験や視点を持っています。誰もがこの場にいてよく、何かを持ち寄ることができる。その安心感こそが、グッドミーティングの出発点なのだと語られました。

 

 

後半では、「グッドミーティングポスター」づくりにも挑戦しました。まずは一人ひとりが「良い会議」と「悪い会議」のイメージを書き出し、その後グループで共有します。

「みんなが発言できる」「目的がわかる」「話しやすい雰囲気がある」などさまざまな意見が飛び交います。

 

 

そのような意見をもとに、各グループがより良いの会議像の合意点を探り、個性あふれるポスターが並びました。

 

 

講座の最後は、参加者自身がテーマを持ち寄って話し合う実践ミーティングです。

「若者の成長意欲は本当に下がっているのか?」
「障害のある人と“一緒に”アートを楽しむには?」
「子どもにAIを使わせていいのか?」など

それぞれのテーブルでは、今日学んだ手法を取り入れながら活発な対話が行われました。

 

第4回目の今回は、ミーティングの楽しさや意義を再発見したり、理論が分かっても実践することの難しさを感じたりと、会議の奥深さを知る機会にもなりました。

基礎講座もいよいよ後半戦。今後の「とびラボ」でも、今回学んだグッドミーティングの実践がさまざまな場で生まれていくことでしょう。

 

(とびらプロジェクト アシスタント 久保田夢加)

2026.05.17

日時|2026年5月16日(土)
場所|東京都美術館

参加者(事前申込)|33名、とびラー20名

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爽やかな初夏の陽気の中、2026年度 第1回目の「とびラーによる建築ツアー」が実施されました。

新緑が美しいこの季節、心地よい風とやわらかな陽光に包まれながら、参加者の皆さんは館内のさまざまな場所を巡り、ツアーを楽しまれている様子が印象的でした。

 

今回は、ガイドとして初めて参加するとびラーも加わり、それぞれの視点や個性を生かしたツアーが行われました。

この建築ツアーは、決まったコースはなく、それぞれのとびラーが考えたオリジナルのツアーです。

ガイドごとに、違ったツアーを体験することができます。
ツアーを体験して、東京都美術館の魅力や新たな発見をしていただけたら嬉しいです。
……
次回の開催は7月19日(日)を予定しています。
みなさんのご参加を心より楽しみにしています。
*「とびラーによる建築ツアー」は、原則として、奇数月(5月、7月、9月、11月、1月、3月)の第3土曜日に開催しています。
詳細、お申し込みはこちらから。
(とびらプロジェクトコーディネータ 大東美穂)

2026.05.09


 

日時|2026年5月9日(土)10時~15時
場所|東京都美術館 交流棟2階 アートスタディルーム
講師|熊谷香寿美(東京都美術館 学芸員 アート・コミュニケーション係 係長)
内容|美術館で作品を鑑賞するということを、あらためてとらえ直します。とびらプロジェクトの活動の基礎になる、アートを「みる」とはどういうことか、ほかの人と「みる」ことで何が生まれるのかを、実感とともに学ぶことを目指します。

 


 

作品をみることや、作品を介したコミュニケーションは、全とびラー共通の活動の基盤です。

第3回基礎講座はその「作品を鑑賞する」ということについて考えました。

 

東京都美術館のアート・コミュニケータになってから1ヶ月が経ったとびラーたち。多様な属性、バックグラウンドをもつみなさんも、初対面の緊張がほぐれ、朝から和気あいあいと交流を深めていました。和やかな空気のなかで講座がスタートします。

 

美術館での鑑賞体験は、自分のなかの枠組みを広げ、思考を深める契機です。

また鑑賞は作品との間で、その人なりの意味・価値を生み出す場となります。学校の図工や美術の時間が好きではなかった人も、美術館では誰もが創造的になることができるのです。

 

講師からレクチャーを受けた15期とびラーたち。次に、館内で開催中の「第92回東光展」会場に出向き、鑑賞を深める実践を体験しました。まずは一人で会場のたくさんの作品の中からひとつの作品を選び、「自分がその作品のどこを気に入ったのか」を考えながらゆっくり鑑賞します。

 

 

続いて、3人グループで各々の気づきを共有します。

 

「誰もいない廊下、放課後の学校の静けさを感じる」

「面談の前かも?」

「そう聞くと印象ががらっと変わるね」

 

 

畑の土を描いた作品を見ていたとびラーたちは、「地面を描いているけど、くもり空の色が写っているな」と話していました。

 

「話しながらだと、ずっと見ていられるね」

「みんなでみると面白い」

 

それぞれが選んだ作品を3人で話しながらみたあとは、もう一度自分が選んだ作品をじっくりと鑑賞しました。手元のシートに気づきを書き留めながら、自身と作品との対話を重ねていました。

 

 

ランチタイムで一息ついたあとは、グループで松本竣介の《立てる像》(神奈川県立近代美術館蔵)の作品図版をみながら、「じっくりみて、発見したこと、感じたこと」、「人物はどんな表情をしている?」、「人物の左手/右手はどうなっている?」など、テーマごとに意見を交換しました。

 

最後に、その《立てる像》を題材に中学生を対象として行われたワークショップの記録映像が紹介されました。ワークショップでは、中学生たちが《立てる像》について意見を交わし、実際に自分たちでポートレート撮影を行うことで、作品や自己について理解を深めていました。とびラーたちは、この事例を通して、重層的な背景をもつ美術作品を媒介に、自分たちの内面や感覚を表現することの可能性について、考えを深めました。

 

 

<講座参加後のとびラーの振り返りより>

 最後の中学生の映像をみながら、学びの本質をみたような気がした。 アートを介することで、普段自分では気付けない自分に気付いたり、他者と関わることができたり、思いを自由に表現できたりしている子供達をみて、自然と涙が出てきた。 ああ、私のやりたいことはこれなんだと改めて熱い思いが込み上げて来た。

 

 

 

ものとの対話、人との対話を行き来することで、作品との関係、人とのかかわりは車の両輪のように豊かになっていきます。

鑑賞の実践をこれからも繰り返していくとびラーたちが、ここ上野でどのような活動を展開するのか、目の当たりにするのが今から楽しみです。

 

 

(とびらプロジェクト アシスタント 平林壮太)

2026.05.02


日時|2026年4月25日(土)10時〜15時

場所|東京都美術館アートスタディールーム

講師|西村佳哲

内容|コミュニケーションの基本は、話している相手に本当に関心を持って「きく」ことから始まります。この回では、話を「きく力」について考えます。

・「きく」ことは「相手が“自分を表現できる”時間を一緒につくる」こと

・そのためには?


この春からとびらプロジェクトに加わったとびラー15期に向けて、第2回基礎講座が開催されました。

 

西村佳哲さんによる「きく力」の講座は、とびらプロジェクト発足時から基礎講座に編成されており、とびラーのコミュニケーションの基礎として、ここでの学びを大切にしています。

とびらプロジェクトは、美術館という場所や機能を生かして、市民同士が新しい活動をつくっていくための、拠点となる存在です。とびラー同士はもちろん、美術館来館者も含め、違う年齢、違う社会的役割を担ってきた人々が、一緒に活動をしていきます。

様々な背景を持つ人々が、どうやったらみんなでうまく対話をすることができるのでしょうか。

 

 

今回の講座では、3人組のグループワークを中心に、「きく」とは何かを考えていきました。ワークを通して「きく力の7ポイント」を、とびラー各々が発見していきました。

 

 

グループワークでは「話し手、きき手、観察者」のそれぞれに役割分担をして、きき手が話し手に与える影響について、実践を通して考えていきました。ワークを積み重ねながら、少しずつ手順をふんで、対話の違いをそれぞれが体感していきます。

グループをつくったら、まずは自己紹介をします。15期のみなさんは笑顔が多く、コミュニケーションに花が咲いてました。

 

 

話し手ときき手は、それぞれ西村さんの指示にしたがって対話を行っていきました。観察者はグループでの対話を客観的に観察しながら、会話を分析していきます。対話の時間が終了したら、それぞれメモをしたり、グループで感想をシェアする時間がありました。

 

「話し手の軸を尊重したきき方ってなんだろう」

「話している内容ではなく、相手に関心を持ちながらきくためには、どうする?」

 

適宜、西村さんからの問いが差し込まれながら、3人組での対話を繰り返し行っていきました。ワークを重ねる中で、ただ相手の話を「聞く」だけではなく、「きき手」として感じたことを、表情や身振り手振りなどのあらゆる手段で「話し手」へ表現をしていくとびラーの姿が印象的でした。

 

またこのように、実践を通じて分析をし、グループで意見をシェアして考えていくというサイクルは、とびらプロジェクトでこれから15期とびラーが行っていく活動のウォーミングアップのようでした。

ワークの途中には「きく力の7ポイント」を考えるためのヒントとして、「言葉」にまつわるいくつかのトピックが紹介されました。

とびラーがこれから活動を行っていくなかで、言葉は重要な表現媒体となります。言語はコミュニケーションツールとして優れた性格をもつ反面、特有な取扱いの困難さがあることを、西村さんの経験をもとにお話ししていただきました。言葉は単語ひとつとってみても、そこに張りついている経験や意味は人によって異なったり、伝えたい事柄と同時に言葉ならざる「気持ち」が含まれていたりと、実は非常に抽象的で認識の齟齬が生まれやすいものです。そうした「ズレ」を意識して言葉を扱うことによって、「きく人」の姿勢はきっと変化するはずです。

とびラーたちも自身の経験と照らし合わせながらうなずきつつ、熱心にメモを取りながら、聞いていました。

 

 

人にとって話すとはどのような行為なのでしょうか。少なくとも「個人で完結するような単純な動作」とは違った側面が、レクチャーから伺えました。西村さんは「人が話す」ということについて、「話しながら垂直方向に起立していく」「植物みたいに育っていく」イメージを提示していました。

「話す人がいる」ということは、そこに「きく人」がいるということです。良い「きき手」がいることによって、話す人は、考えていることを言葉にしながら整理して、より思考を深めていくことができるのでしょう。

 

「きく人」がいて、より豊かなコミュニケーションが育まれてこそ、とびらプロジェクトという大樹にたくさんの新芽が芽吹きます。これからも「きく」ことを大切にしながら、とびラー、スタッフともに、素敵なプロジェクトをつくっていきたいと思います。

 

(とびらプロジェクト アシスタント 廣木花ノ子)

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