2025.10.20
日時|2025年10月19日(日)13:30〜16:30
場所|東京藝術大学 第一講義室
講師|村田陽次(東京都 生活文化スポーツ局 都民安全推進部 都民安全課)
山藤弘子(地域日本語教育コーディネーター、多文化共生コーディネーター)
とびらプロジェクトの活動の拠点である東京都美術館は台東区にあります。
上野公園には毎日たくさんの観光客が海外から訪れています。また、台東区内は外国にルーツを持つ人が多く住んでいる地域でもあります。
アートコミュニケーションの活動を届ける際にも、そうした外国にルーツがある方、日本語を母語としない人たちへどのように情報を届けるか、来館した際にはどのようにコミュニケーションをとることができるかを考えています。
今回の講座では、東京都の多文化共生の推進に長く尽力されてきた村田陽次(東京都 都民安全総合対策本部)さんと、台東区在住で日本語教育のコーディネーターをしている山藤弘子さんをお迎えして、国・文化が違う人とどのようにコミュニケーションをとり共生していけるかについてお話を聞きしました。東京都の行政の取り組み、台東区での活動とそれぞれの違うお立場から現状と取り組みについて幅広くお話を聞くことができました。
村田さんのパートでは、東京都に住む外国にルーツのある方の状況と行政支援についての紹介や、日本語以外の言語を母語とする人とのコミュニケーションで英語よりも多くの外国人に伝わりやすいとされている「やさしい日本語」の考え方、使う際のコツをわかりやすい映像も交えて伺いました。「やさしい日本語」が必要とされる背景には、阪神・淡路大震災や東日本大震災震災などがあり、災害時の防災アナウンスで難しい言い回しによって伝わらなかった経験から行政やメディアの発信も見直されてきたそうです。
日本語を母語としている人にとって、話し方について普段から考える機会は少なく、改めて日本語の複雑さや、わかりにくい言い回しがあることに気づきます。また、どこの国の方にでも英語で話せば伝わるというわけでもない。ということも重要なポイントでした。
とびラーからも「やさしい日本語については、各自の母語を大切にしつつ、歩み寄るツールとなる可能性を感じた」という振り返りのコメントがありました。
村田さんからは、「やさしい日本語」は万能ではなく、お互いに理解し合えるプラットホームであり、まずはそこからはじまるということ。そこからはその時々に応じて工夫してコミュニケーションをつくる必要がある。ということも添えられました。とびらプロジェクトの活動も長く見守っていただいている村田さんからは、アート・コミュニケータの実際の活動を想定したアドバイスをたくさんいただきました。
山藤さんからは、いま接している子どもたちの状況や地域の状況を教えていただきました。日本語教室を開き、多文化共生の活動を行っている地域での事例を交えてお話ししてくださいました。
教育現場では外国ルーツの児童・生徒の増加による必要なサポートが不足していて、子ども、親、先生、それぞれの立場から困っている点を挙げていただきました。
日本語能力について、日常生活に必要な言語能力は1〜2年で習得できるが、学習するために必要な言語能力は5〜7年かかるそうだ。学校に通う子どもは日常のコミュニケーションは、比較的早く身に付く人が多いけれど、学習に必要な言語能力の習得はさらに時間がかかる。周囲の大人がその習得の違いを理解していないと、「ただ勉強ができない子という誤解や偏見が生まれてしまう」というお話は印象的で、受講するとびラーからも「自分が働く学校現場で、日本に来て数年たち日常会話は問題なく話せる外国にルーツがある子どもたちが、学習でつまづいている様子をうすうす感じていました。今回の講座で理由が初めて分かった気がしました」という振り返りのコメントがありました。
地域の多文化共生では、一過性の交流ではなく、ともに地域で暮らしている人として定期的に関わりをつくっていくことを大切にされていて、具体的な声として、日本で暮らす外国ルーツの人にとって、支援を受ける側というよりも、この先も日本に住む者として地域のコミュニティに参加し貢献したいという方も多いそう。
そうした人たちが一緒に餅つき大会やお祭りなど地域行事に参加するようになってきているというお話がありました。この呼びかけも「やさしい日本語」でチラシを作ることで、外国人住民から「初めて情報が目に入ってきて内容を受け取ることができた」「呼ばれている気がした。」という反応があり参加に繋がったそう。情報を発信する側の工夫で日本語を母語としていない人も歓迎していることが伝わるというお話でした。
これまでも、Museum Start あいうえののプログラムで、とびラーとの活動を一緒につくってきてくれた山藤さんからは、
「美術館は多様な人々が互いを認め合い、つながりを見つける場になる」ということ、「アートコミュニケーションこそ、今の社会の対立を和らげる力となる」というメッセージいただきました。
さまざまな言語を母語とする人がとびラーの中にもいたり、お仕事で外国ルーツの人と出会う機会もある方もいて、講座の最後の村田さんと山藤さんのクロストークと質疑応答の時間では、それぞれの背景からお二人のお話に対する様々な感想が交わされました。
振り返りの中では
「日本に長期滞在することになる外国にルーツを持つ方々に対して、改めて一緒に暮らしていく仲間であるという事実を再認識できた」
「どれほどオープンマインドでいるつもりでも、自分のよく知らない文化に対して「怖い」といったネガティブなバイアスを本当に持たずいられるのか。バイアスなどないと思い込んでいる時ほど、自分を省みることが必要かもしれない。」
「自分自身も、いま住んでいる地域に対するつながりを持てていないので、まずは自分が地域で行われている活動に関心を持つことから始めないと」
外国ルーツの在住者が増加している日本社会の状況で「事実に基づかない決めつけ」によって生まれる誤解や、自分で選んだわけでなくそうした状況にある子どもの状況を知ることで、いま美術館で活動をつくっていく意義について改めて共有する時間となったのではないかと思います。
「Museum Startあいうえの」のダイバーシティプログラムでは「美術館でやさしい日本語プログラム」を毎年行っています。外国ルーツの子どもたちとその保護者だけでなく、日本語話者の親子も一緒に作品を鑑賞して感じたことを身体や音、絵など言語以外の表現も使いながら伝え合います。このプログラムにもとびラーがいることで参加者一人一人の状況を見守り、子ども同士だけでなく、その保護者同士のコミュニケーションも大切にプログラムをつくっています。
今年も山藤さんにプログラムパートナーとして参加いただき、村田さんにもアドバイスを受けて準備を進めています。プログラムに向けて前提となる基礎的知識や最新の状況を知ることができました。また、とびラーの中には帰ってから自分の地域のこと、外国ルーツの方への支援活動を調べてみた人もいて、日常の中で多文化共生や、「やさしい日本語」について意識的になることができたようです。
(とびらプロジェクト マネージャー 小牟田 悠介)
2025.09.15
日時|2025年9月14日(日)13:30〜16:30
場所|東京都美術館 講堂
講師|柴田光規(川崎西部地域療育センター センター長)
普段、川崎西部地域療育センターで子どもたちの診療に携わる柴田光規さんにご登壇いただきました。
柴田さんは、元とびラーとしても活動し、任期満了後の現在では、川崎を拠点とするアートコミュニケーション事業「こと!こと?かわさき」のことラーとしても活動されています。
アート・コミュニケータの活動についてもよく知っている柴田さんに、発達に特性をもつ子どもへの支援についてご講演いただきました。
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などを総称する「神経発達症(いわゆる発達障害)」のそれぞれの症状の特性やそのときの子どもの心理的な状態について、専門的な立場からお聞きすることができました。
とびラーが伴走するMuseum Start あいうえのの学校プログラムでも、特別支援級や発達特性のある子どもたちも来館し一緒に作品鑑賞を行います。発達支援の基本的な考え方をお聞きし、迎える側にできることを知る機会をつくろうということで、今年のアクセス実践講座のテーマの一つとしました。
社会の中で子どもの「困った行動」に出会ったときの私たちの視点として、「困った行動」は実は子ども自身が困っている。対処法がわからなくてとった行動であることが多い。というお話があり、特性を理解することで、どのようなことに困っているのか、子どもの困りごとを想定し、情報の伝え方にあらかじめ工夫ができることがあることを療育センターの現場の具体的な対応を例に紹介がありました。
神経発達症の特性を持つ人たちには脳や神経の特性に由来する 独自の文化があると考える「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」についての紹介もありました。
とびラーの振り返りでは
「子どもにとって今どんな状況なのか?という目線で問題行動を見直し、否定しないで肯定的に具体的な指示を出す、視覚情報で再確認できるようにする、というのは、自閉症の子に限らず大切な関わり方だと感じた。」
「自閉症の方には、伝えたい情報に集中してもらうために、それ以外の動きを制御して混乱させないよう気をつける、というのは新たな学びだった。」
講座の後半では、東京都美術館の社会共生担当の工藤さんも登壇し、東京都美術館へ来館する際の展示室までの道のりを見通しを立ててあらかじめ知ることができる「ソーシャルストーリー」についての紹介がありました。制作の意図と大事にしているポイントを解説しつつ、ご尽力いただいた柴田さんにもコメントをもらいながら、ソーシャルストーリーのポイントと使う方の目線で解説しました。
とびラーからは
「自分自身、何の準備もなく初めての場所へ赴く際は、とても緊張しますし、初めての活動では、戸惑っていたことを思い出しました。ソーシャルストーリーをもう一度よく読んで、周りの人たちにも伝えたい」
というコメントがありました。
講座を通して、「発達障害」という子どもの状態を知ることができ、捉え方が変わることで、それぞれがこれからの対応にこれまでより少し視野を広く持って迎えることができるようになったのではないでしょうか。
柴田さんの講座の中での子どもたちの様子を表現するやさしい語り口からも、アートコミュニケータとして子どもたちを迎える際の視点を学べたような気がします。来館する子どもたちのその時の状況に寄り添って想像していくことが大事だともおもいました。
(とびらプロジェクト マネージャー 小牟田 悠介)
2025.09.15
日時|2025年9月14日(日)13:30〜16:30
場所|東京都美術館 講堂
講師|野本潤⽮(台東区立台東病院/老人保健施設千束 作業療法士 )
藤岡勇⼈(東京都美術館 学芸員)
⾦濱陽⼦(東京藝術⼤学 特任助手)
2021年から東京都美術館で始まったCreative Ageing ずっとびでは、超高齢社会に入るこれからの日本社会において、高齢者だけでなく、若い世代も一緒に創造的に年を重ねることを考えていくプロジェクトとして始まりました。
Creative Ageing ずっとびでは、認知症が気になる方とその家族に向けた「ずっとび鑑賞会」を開催しています。
今回の講師には、「ずっとび鑑賞会」でも、ご協力いただいている台東区にある台東病院の作業療法士の野本潤⽮さんにお越しいただき、認知症の理解につながる基本的な知識と、台東病院と併設する老人施設千束について伺いました。
野本さんにはこれまでにもずっとび鑑賞会の開催に向けて院内での参加者のお声がけや当日の展示会場が安全で鑑賞しやすい場づくりとなるようアドバイスをいただいています。当日までにこうした準備を重ねて認知症の方も安心して来館出来る体制をつくることができています。
今年度は、10月に2回の「ずっとび鑑賞会」を開催します。そのうちの1回は野本さんの担当する老人保健施設千束から来てもらうことになっています。今回の講座を受けて、当日のプログラムに向けてスタッフととびラー、それぞれ認知症についてと来館する老人
保健施設の様子を学びます。
認知症とは、「さまざまな病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に変化し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障をきたした状態」
ということで、認知症と軽度認知障害(MCI)を合わせると65歳の3人に1人がいずれかの認知障害があるというデータがあります。
認知症の中のアルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症といったそれぞれの症状の紹介があり、記憶障害などの症状に伴って現れる、抑うつ・不安・幻覚・妄想・徘徊・攻撃性などの様々な精神症状や行動障害=行動・心理症状 (BPSD)について詳しく伺いしました。
そうした認知症の方と接する上での心構えについて丁寧なご説明があり、接する上で前提となるパーソン・センタード・ケアという考え方の紹介がありました。認知症の人を一人の人間として尊重し、その人の人生、性格、価値観、生活歴などを踏まえて「その人らしさ」を大切
にするケアの考え方です。
その人のすべての行動には意味があると考え、「問題だとされている行動」は、身体的不快感や感情的な苦痛の表現ではないだろうかと考えることで、その人のいまの状態をよく見ることにつながります。
鑑賞会の参加者と接する上で覚えておきたい考え方です。
とびラーの振り返りでは
「野本さんがおっしゃっていた「記憶に残らないけれど楽しかったとか嬉しかった感情は残る」という言葉や鑑賞会をきっかけに家族と医療者との関係性が良くなったというお話が印象的でした。」
「とびラーとして認知症の方と関わる上で1番大切なことはその方に関心を寄せることであり、本人の思いを聴き、掘り下げていくことだと思いました。」
「先入観を持たずにフラットな視線を持ち続ける冷静さも大切だと考えました。それが余白を持つということかなと思いました。また人生の大先輩として敬意を持って対応したいと思いました。」
というコメントがありました。
後半には、Creative Ageing ずっとびを担当している藤岡さんと金濱さんからプロジェクトについて、取り組みの最新情報についてとびラーに紹介がありました。藝大美術館での認知症の方に向けた鑑賞会だけでなく、来館しにくい高齢者もオンラインで東京都美術館で開催される展覧会をとびラーと鑑賞できる「おうちで鑑賞会」や、アーティストとも協働したアクティブシニアに向けたプログラムの紹介もありました。
Creative Ageing ずっとびでは秋の鑑賞会に向けて、地域の医療者、社会福祉協議会、包括支援センターとも協働して準備を進めていきます。
(とびらプロジェクト マネージャー 小牟田 悠介)
2024.08.25
日時|2024年8月25日(日)13:30~16:30
場所|東京藝術大学 第1講義室
講師|藤岡勇人/東京都美術館 学芸員、金濱陽子/東京藝術大学
東京都美術館と東京藝術大学が取り組むプロジェクトとして「Creative Ageing ずっとび」があります。
2021年にスタートし、台東区の病院や福祉関連施設と連携しながら、アクティブシニア(元気なシニア)対象のプログラムや認知症の方や、認知症が気になる方、またそのご家族へ向けたプログラムを実施してきました。
第3回では、「Creative Ageing ずっとび」を担当する、東京都美術館 学芸員の藤岡勇人さんと東京藝術大学の金濱陽子さんから、立ち上げの経緯やこれまでの取り組みの事例についてお話しいただきました。
ずっとびのプログラムにおいて、とびラーは参加者と一緒に作品を見たり、発言を引き出したりしながら、参加者が安心した気持ちでプログラムに臨めるような場づくりを進行しています。
今回の講座ではプログラムに参加したとびラーにも登壇してもらい、参加者の様子で印象的だったことやどんな時間だったかなど、感想も交えてお話ししてもらいました。
各プログラムの詳細は、それぞれの活動紹介ページや動画でご覧いただけます。
■「動く、遺影!イェイ!イェーイ!」(2024年8月7日実施)
■「アート・コミュニケータと一緒に楽しむ おうちで印象派展」(2024年3月16日実施)
・動画
■「ずっとび鑑賞会」(2023年10月3日実施)
・動画
その話を受けて、とびラーは3人組になって自分たちが感じたことを話合いました。
後半は、台湾やイギリスでのCreative Ageingの活動事例について、藤岡さんからお話しを伺いました。
人は誰もが歳を重ねていきます。世間ではアンチエイジングという言葉も見受けられますが、とびらプロジェクトやずっとびは「歳をとること」をポジティブに捉え、さまざまなプログラムを通して、この価値観を発信していきたいと考えています。
講座の中での「創造的な活動は健康に良い」というお話が印象に残りました。高齢者に限らず、どの世代の人も創造的に、そして健やかに日々を過ごすことができたら、自分はもちろん他者の視点や価値観を肯定し、お互いに認め合える社会になるのではないかと、今回の講座から感じました。
(とびらプロジェクト コーディネータ 西見涼香)
2024.07.07
日時|2024年7月7日(日)14:00〜16:15
場所|東京藝術大学 第3・4講義室
講師|小野広祐/明晴学園 教頭
第2回は、明晴学園教頭でありNHK手話ニュースキャスターでもある小野広祐先生をお招きし、ろう文化について伺いました。
聞こえない人といっても、音声言語を身につけた後に聞こえなくなった中途失聴者、音がある程度識別できる難聴者、生まれつき聞こえなかったり、音声言語を獲得する前に失聴したろう者とさまざまであり、手話にも日本手話と手指日本語があるとお話がありました。
小野先生は普段、日本手話を使ってコミュニケーションを取っていらっしゃるとのこと。顔の動きやうなずきによって、意味やニュアンスが変わることを学びました。そして「日本手話は、音声の代わりとなる補助的なものではなく、言語のひとつ」という言葉が印象に残りました。
言語が違えば、表現も異なります。手話では相手を指差すことが多々あります。聴者が日常生活で同じことをすると失礼という考えもありますが、指差しは手話にとって大事な表現です。ゲームによって指を差すこと/指されることに慣れたり、実際に手話をやってみたりして、手話の表現やろう文化について学びを深めていきました。
とびラーの中には、ろう・難聴のとびラーもいます。
また、とびらプロジェクトと連動する「Museum Start あいうえの」では、2年にわたって聴者・ろう者・難聴者が参加するプログラム「みるラボ」を開催し、さまざまな「きこえ」の状況にあるティーン世代の参加者ととびラーが一緒に作品を鑑賞し、手話、口話、筆談、通訳、身体表現などの手段を通して「伝える、共有する」ことへの試行錯誤を重ねてきました。
とびラーには今回の学びや感じたことを色々な機会で思い出し、ろう者や難聴者とのコミュニケーションに活かしてくれたらと思います。
(とびらプロジェクト コーディネータ 西見涼香)
2024.06.30
日時|2024年6月30日(日)10:00~14:00
場所|東京都美術館 講堂
講師|又村あおい/全国手をつなぐ育成会連合会 常務理事 兼 事務局長、小牟田悠介/東京藝術大学
2024年度アクセス実践講座の第1回は、とびらプロジェクトマネジャーの小牟田さんから講座の趣旨についてのお話があり、その後、全国手をつなぐ育成会連合会 常務理事 兼 事務局長である又村あおいさんに、障害者差別解消法や合理的配慮についてご講義いただきました。
まず小牟田さんから、東京都美術館のミッションや取り組みと合わせて、とびらプロジェクトが美術館へのアクセシビリティを学び、考え、実行していこうとする背景についてお話しがありました。
続いて、又村さんからは、障害者差別解消法などの法律について伺いました。「障害とはなにか。障害理解とは」を考える時間では、社会のさまざまな障壁によって生じる「社会モデル」があることや、ヒトは歳を重ねることで視力や聴力、身体機能などが低下していくので数年後の自分の理解にもなるのではないかというお話があり、新たな気づきがありました。

また合理的配慮とは、相手との建設的な対話によって「できる」「できない」で考えるのではなく、できる範囲で対応可能な、納得の得られる配慮をおこなうことであると伺いました。
とびラーの中には、ろう者や難聴者、全盲の方がいます。スタッフやとびラーは普段から音声アプリや筆談、ときには手の感覚(触覚)を使い、彼らと一緒に対話を重ねながら、とびらプロジェクトは進んでいます。そして、東京都美術館では、特別展の休室日を利用した「障害のある方のための特別鑑賞会」を開催しています。
このような場で活動する機会が多いとびラーにとって、当事者が困りごとを申出しやすい場をつくることが大事だと気づく講座になったのではないでしょうか。
合理的配慮という言葉は聞いたことがあっても、何をどうすればいいのかわからないと身構えてしまっていましたが、とびらプロジェクトで日々おこなっているように、気軽に声をかけることから始めてみようと、今回の講座から思いました。
(とびらプロジェクト コーディネータ 西見涼香)
2024.02.25
日時|2月25日(日)13:30〜16:00
場所|東京都美術館 ASR・スタジオ
講師|小牟田 悠介
テーマ|「1年間のふりかえり」
これまでの講座の内容と、その講座を受けたとびラーからのふりかえりを紹介し、グループでシェアしました。
講座の内容についてふりかえった後は、講座で扱ったテーマ以外で
「ミュージアムにアクセスすることが難しい人たちって?」をテーマに話し合いました。
とびラーからのふりかえりを抜粋します。
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・この一年間受講してみていかに自分は狭い視野だったんだろう、社会知らずだったのだろうと打ちのめされました。無自覚な接し方を少しでも減らしてアートを楽しんでもらえるようとびラー活動に活かしたいです。
・障害への差別意識はないと思い込んでいたが、それよりもどんな困り事があるのかを「知ること」のほうが大事だと感じた。 これまでも漠然と思っていたが、この講座で具体的な足掛かりができ、自分ができることから関わっていきたいと思うようになった。
・大変気づきの多い時間となりました。また、これらの問題解決のために様々な支援を行っている方の活動も知ることができました。現状を受け止めて常に意識していかないと何も変わっていきません。これから何に取り組もうか、目指す方向性が見つかったことも大きな収穫となりました。
・毎回受講する毎にアクセシビリティに関する現状を知り、驚きでした。時間の経過とともにそれも薄れていく中で、1年をふりかえる時間は貴重でした。頭の片隅にでもアクセシビリティを意識していないと、情報を見逃したり、忘れてしまいがちだと思います。
・知的障がいを持つ方たちと街に出るとき、私はとても周囲に気を使います。一般社会への気配りは裏を返せば、一般社会側が「障がい者」を受け入れていないと感じているためだと思います。しかし今回、教室の一番後ろの席から1年間の振り返りを聞いていた時、「少なくとも私の前に座っている人たちは、もし私たちが外に出て困っていたら手を差し伸べたり、温かく見守ってくれる人たちなんだ」と思ったと瞬間、とてつもない安心感と喜びが沸き上がりました。こんなに沢山の「味方」がいるんだと思いました。 こんなにたくさんの「味方」を目の当たりにできたこと、本当にうれしく思っています。
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1年間、お疲れ様でした!
(とびらプロジェクト コーディネータ 工藤 阿貴)
2023.10.22

日時|10月22日(日)13:30〜15:30
場所|東京都美術館 講堂
講師|松見幸太郎(NPO法人 キッズドア)
テーマ|「経済格差とこどもたちの文化的状況」
MuseumStartあいうえの ダイバーシティ・プログラム「ミュージアム・トリップ」にて、数年にわたり連携を続けているNPO法人キッズドアの松見幸太郎さんからお話をお聞きしました。(キッズドアとの連携プログラムの様子はこちら。)

プログラムで子どもたちと活動するとびラーが、キッズドアの学習支援等とつながる子どもたちの文化的状況やその社会的背景について知る貴重な機会です。


「体験格差」を生み出す貧困という社会的課題の現在を知ることで、とびラーが、アート・コミュニケータや美術館・文化施設のあらたな役割にも目を向けていく時間になりました。


今後も、MuseumStartあいうえのと様々な機関との連携の中で、とびラーが子どもたちをミュージアムでの体験へとつないでいきます。
(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)
2023.09.09

日時|9月9日(土)13:30〜16:00
場所|東京都美術館 講堂
講師・テーマ|
・村田陽次(東京都 生活文化スポーツ局 都民生活部 地域活動推進課)
・「やさしい日本語」
・山藤弘子(日本語教師)
・「生活者としての外国人と共に~地域の現場から~」
多文化共生をテーマに、お二人の講師を招いてお話を伺いました。
東京都の村田陽次さんからは、多文化共生を推進する東京都の取り組みについてお話を聞きました。外国にルーツを持つ方々への支援格差の問題や「やさしい日本語」の活用について、また多文化共生をめざす東京都や全国の美術館・博物館や劇場など様々な文化施設の取り組みも紹介されました。

二人目の講師として、日本語教師で、外国人住民と台東区の地域をつなぐ活動をしている山藤弘子さんからお話を聞きました。Museum Start あいうえの のやさしい日本語プログラムでは、山藤さんを通じて台東区の外国ルーツのお子さんとその保護者がプログラムに参加しています。(やさしい日本語プログラム過去の事例はこちら)
外国人住民が、地域を支える生活者として活躍できるよう、住民同士が日常的な関わりを続けていくことの重要性について伺い、とびラーも関心をもって聞いていました。


行政の取り組みと、地元での顔のみえる距離での関わりの両方があることで、多文化共生社会へとつながっていくことをお二人のお話から感じ、アート・コミュニケータが外国人住民との日本人の関わりを美術館を拠点としてつくっていく意義を再確認することができました。
(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)
2023.08.05

日時|2023年8月5日(土)14:30~17:00
場所|東京都美術館 ロビー階第3公募展示室(「アート・コミュニケーション事業を体験する 2023」会場内)
講師|西智弘(川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター腫瘍内科/緩和ケア内科、一般社団法人プラスケア)

「アート・コミュニケーション事業を体験する 2023」の会場となった東京都美術館の公募棟展示室にて、川崎市立井田病院の医師であり、一般社団法人プラスケアで「暮らしの保健室」などの運営に携わる西智弘さんからお話を伺いました。
医療の現場で注目され始めた、「社会的孤立」という現代の病に対して、薬ではなく「地域での人のつながり」 を処方する「社会的処方」について、また、人と地域とのつながりをうみだす「リンクワーカー」というはたらきについて共有していただきました。


会場では、「アート・コミュニケーション事業を体験する 2023」にいらした来場者や任期満了したアート・コミュニケータも西さんのお話に耳を傾け、議論に参加しました。
「暮らしの保健室」がある川崎では、2024年春から川崎市と東京藝術大学が連携したアートコミュニティを育むプロジェクト「こと!こと?かわさき」がはじまります。西さんもプロジェクトに関わっており、川崎の街でもアートコミュニケータと活動をつくられていくそうです。
これからもますますアートを介したコミュニティの輪が広がっていくことが期待できるアクセス実践講座第3回でした。
(とびらプロジェクトコーディネータ 越川さくら)
川崎市のアート・コミュニケータ始動!
「こと!こと?かわさき」では、今年度からあらたにアートコミュニケータ「ことラー」を募集しています。
詳しくはこちら→https://kotokoto-kawasaki.com/