東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

【開催報告】『トビカン・モーニング・ツアー』

2021.09.17

開催報告「トビカン・モーニング・ツアー」

2021年4月と8月の第2水曜日の朝に、東京都美術館の建築を巡るプログラム「トビカン・モーニング・ツアー」を行いました。これは新型コロナウィルス感染症の拡大によるいわゆるコロナ禍がきっかけで生まれた新しいプログラムです。

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■ 新しいプログラムをつくる

以前から東京都美術館で開催されていた土曜日の「とびラーによる建築ツアー」と、夜間延長開館時の「トビカン・ヤカン・カイカン・ツアー」といった建築ツアーは、これを目指して遠方から来館する方もいる人気のプログラムでした。

しかし、コロナ禍の2020年度、東京都美術館でいくつかの展覧会が中止あるいは延期され、館そのものが休館する時期もありました。建築ツアーも中止が相次ぎました。

そのような状況下で、新しい生活スタイルに合わせて何か形を変えた建築ツアーを行えないか?と考えてみると「平日の朝に開催するプログラム」にたどりつきました。リモートで仕事をするワークスタイルの広まりとともに、必ずしも週末や夜間でなくとも余暇時間を取れる人が増えたり、混雑を避けた時間帯を選んで行動する人が増えたり、といった行動パターンの変化が背景にあります。

ツアー自体も、完全予約制にする、少人数での開催にする、ガイドは無線機を使用して話す、というように安全に留意した運営に変更しました。緊急事態宣言の発出などで中止せざるを得ない回もありましたが2021年4月からようやく実施が叶いました。

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■ 朝の魅力発見!

こうして始まった「トビカン・モーニング・ツアー」は今まで紹介してこなかった東京都美術館(トビカン)の建築の魅力がつまっていました。

それは朝の光で見えてきた魅力です。公募棟(正門を入って左の建物)では東からの光がその輪郭を際立たせ建物の形を意識させてくれます。ここの外壁仕上げは1975年の竣工時からのオリジナルの打込みタイルですが、陽を受けて形や焼き色のグラデーションもくっきりと見ることができます。同じ壁面には大きなガラス窓を持つ休憩スペースもあり、その奥深くにまで光が差し込むことで室内の赤・緑・黄・青の壁の色が際立ち、空間の大きさも感じられます。また朝の時間には、ガラス張の中央棟では、後ろに広がる上野公園の木々をはっきりと見ることができ、設計者前川國男の意図した外部空間とのつながりを体感することができます。

これまでの建築ツアーは午後や夕方に開催されていたので、朝のトビカンの魅力は私たちとびラーにとっても新たな発見でした。

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■ ツアーと参加者の様子

平日朝のプログラムは初回から人気を博し、募集定員はすぐに埋まりました。建築ツアーはガイドによってツアー内容が異なるため、これまで体験された方のリピート参加という嬉しい例もいくつかありましたが、参加しやすい時間帯だからと初めて参加された方も多かった印象です。

実際のツアーは参加者3名ととびラー2名の5名チームで行います。30分間というコンパクトな時間のツアーですが皆さん朝のトビカンの魅力をとても楽しんでいただけたようです。

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■ 美術館も来館者もとびラーも「つなげていく」

今回ご紹介した「トビカン・モーニング・ツアー」のように、世の中の変化や私たちのニーズにあわせて「とびラーによるプログラム」はまだまだ変化していきます。この他にも開催日時にバラエティを持たせたプログラムは増え、またオンラインで配信するプログラムも生まれました。展覧会が再び開催されるようになってからは、プログラムの題材も建築だけでなく、展覧会の作品だったり、野外彫刻だったりと様々です。こういった動きは、より多くの年齢層、多様なライフスタイルの人の来館の機会を増やしているように感じています。

いずれのプログラムも美術館という場(あるいは存在)をつかってアートを介して人と人、人と作品、人と場所がつながる瞬間を作ることを目的としています。コロナ禍で「つながる」ことが薄れてしまった状況で、少しずつまた「つながる瞬間」に立ち会えるようになり、私たち自身も勇気やエネルギーを得ています。

 

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■ トビカン・モーニング・ツアーは次回10月開催

トビカン・モーニング・ツアーはただいま10月13日(水)開催に向けて準備中です。

今後も偶数月の平日午前中で継続開催を目指していきます。

お時間のある時にぜひ参加してみてください。

▶︎参加申し込みはこちらから!

 

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執筆:河野さやか

色々な目的や興味を持ってさまざまな人が集まってくる美術館という場に興味がある8期とびラーです。 美術館に来たあの人はどんな体験をして、どんな話をして、何を食べて過ごすのか?それはこれからの人生にどうつながっていくのか?また美術館の中を自由に行き来して、思い思いに過ごす人たちが見られる時を待っています。

【開催報告】オンライン藝祭を楽しむ「藝祭にON-!」

2021.09.05

アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)がこれからゼミ*として立ち上げたグループ「Flatart(フラッタート)」は、オンライン藝祭をZOOMで楽しむプログラム「藝祭にON-!」を9月5日(日)に開催しました。

Flatartは、学校や社会になじめない若者が、アートに触れ、その過程で保護者・先生以外の大人と繋がることで、一歩踏み出すきっかけとなる機会をつくることをめざしています。今回のプログラムは、東京藝術大学のオンライン学園祭「藝祭」を舞台に、若者、藝大生、とびラーがアートを中心に囲んで出会う場をつくりたいと考えて企画したものです。

 


 

日曜日の昼下がり、約30名の参加者がZOOMに集まりました。参加者は、若者の社会参画を支援しているNPO法人サンカクシャが運営する居場所を利用している中学3年生から20歳までの若者5名、東京藝大の学生6名、サンカクシャのスタッフおよびボランティア、そしてとびラーです。

 

 

 

とびラー考案の “アートリーディング”

 

プログラムの初めには、初対面での緊張を解くアイスブレイクとして、とびラーが“アートリーディング”と呼んでいるオリジナルのアクティビティを行いました。アートリーディングは、占いの体裁を取りながら一つの作品を一緒にみて対話することで、話しやすい空気をつくると同時に、じっくり絵を観察することで、その後の作品をみる姿勢を生み出す活動です。

 

まず、とびラーが占い師役、相談者役となってデモンストレーションをおこないました。途中で、相談者役の大学生とびラーの通信環境に不具合が生じ、ZOOMから消えるというハプニングも起こりましたが、その場を占い師役とびラーがうまくまとめ、結果的に緊張が和らぎました。

 

デモの後は、8〜9人のグループ3つに分かれ、アートリーディングをおこないました。占い師役として完璧な役づくりをしたとびラーが、今後の進路や「ゲームをやめられない」などといった若者ならではの相談を受けた後、オンライン藝祭に展示されている作品を一緒にみながら対話し、愛あるアドバイスを導き出すことで場を和ませました。参加者はユニークな扮装をしたとびラーの姿に緊張をほぐされつつ、自分の関心事を中心に話をしたので、初対面でも臆することなく会話が進みました。

 

オンライン藝祭を共に楽しむ

 

アートリーディングで打ち解けた後、藝大生がオンライン藝祭のサイトをパソコンの画面上で共有しながら案内しました。多様な展示作品や、藝祭名物のお神輿・法被、藝大生の手作り商品が販売されているアートマーケットなどを覗きながら、藝大生本人の作品やお互いの気に入った作品をみて、感想を伝え合いました。

 

グループ2の1コマ:藝祭委員のデザイン科 渡邊さんならではの丁寧な藝祭ツアー

 

グループ3の1コマ:日本画専攻 藤原さんの作品「ヒマワリ」をグループで鑑賞

 

また、自室にある作品や、3Dプリンターがある制作スペースを見るなど、物理的な距離を超えることができるオンラインならではのコミュニケーションを通じて藝大生の生活を垣間見ることができました。サンカクシャの若者からは、制作に関することや、コロナ禍のキャンパスなど共通の話題について質問があり、同世代ならではの共感も生まれました。

 

グループ1の1コマ:彫刻科 水上さんの自室におかれた木彫作品

 

 

芸術を学ぶ学生たちの制作・研究活動に触れる

 

その後、全体に戻り、簡単なストレッチ体操と休憩を挟んで各グループの様子を報告しあった後、3人の藝大生から自身の作品や画材、いつも持ち歩いているスケッチブックなどを紹介してもらいました。

 

大学院ガラス造形研究室のクリスティーナさんは、グループ展に参加しているつくば市のギャラリーからの中継で、ガラスビーズをつなげて焼いた美しい器を紹介しながら、制作過程や素材、技術的な試行錯誤のお話をしてくれました。母国チェコと日本のガラス造形の違いという研究テーマにも触れていただきました。

 

 

デザイン科3年の渡邊さんは、持ち歩いているデザインのネタ帳に描かれたスケッチを紹介しながら、ネタの9割は採用しないことなどを教えてくれました。スケッチは臨場感、動きが伝わる描写で、デザインを学ぶ渡邊さんの思考の過程を覗くことができました。

 

 

大学院日本画専攻の藤原さんは、作品の前で、日本画の画材である岩絵具や膠、下絵を見せながら、制作方法をわかりやすく説明してくれました。1ヶ月後の個展に向けた大作も紹介していただき、皆で訪ねたいと盛り上がりました。

 

 

それぞれ異なる分野の貴重なお話に、チャット欄には続々と質問が寄せられ、時間があっという間に過ぎ、ぜひ、またの機会に続きをうかがいたいという声が聞こえました。

 

約2時間のプログラムでしたが、名残惜しい雰囲気の中、次はリアルでお会いしましょうという言葉とともに終わりました。

 


 

オンラインでつながる

 

当初はコロナ禍の今だからこそ、本物のアート作品を通した対面での出会いの場をリアル会場での藝祭でつくりたいと考えていましたが、藝祭がオンラインのみの開催となったため、オンライン開催に切り替えました。参加者全員でオンライン藝祭を楽しんで、対面でのプログラムにつなげていくことを目的としました。

 

パソコンを通して初対面であるサンカクシャの若者、藝大生、とびラーがどこまでコミュニケーションできるのか不安がありましたが、とびラーによる場づくりと、サンカクシャの若者と藝大生の同世代の親近感から会話が広がり、「もっと話したかった」「また参加したい」という感想をもらいました。この繋がりを大切に育てていきたいと思います。

 

オンラインでは体温は感じられませんが、一方で距離の壁を克服できることに、普段出会えない人と人がつながる可能性、特に社会から孤立しがちな若者にとって新しい世界への入り口となる可能性を実感しました。

 

 

世代や環境を超えてつながる

 

Flatartは、若者がアートを通して保護者でも先生でもない第3の大人と出会う場をつくることをめざしていますが、今回は、藝大生の参加により、若者同士がつながる機会にもなりました。

 

サンカクシャのスタッフの方からは、

「若者たちが、同年代もしくは少し上の方々の頑張る姿、楽しそうな姿、大学生っぽい姿を見ることができたことは、将来自分はこうなりたい、こういう人達もいるのか、自分とはちょっと違うかな、など、色んな発見を若者に与えたと感じます。」

とコメントいただきました。同世代でも普段なかなか出会うことのない人と共通の体験をすることが、お互いの世界を少し広げ、新しいものの見方につながると思います。これは、私たちもアート・コミュニケータとして大事にしていきたいことです。

 

また、コロナ禍では、一見元気そうに見える若者も孤立に陥りやすい現状があると思います。今回参加の藝大生からも、

「藝大生の人間関係は意外にも閉じられています…もっとたくさんの人と気軽に交流できる機会が増えればと感じました。」

という感想をもらいました。Flatartとして、今後も機会をつくっていければと思います。

 

 

アートを通じてフラットに出会う「gift x giftな場」

 

活動グループ名のFlatartには、アートを通したフラット(対等)な立場での出会いの場をつくりたいという願いが込められています。発起人の8期とびラー中嶋弘子さんと筆者の、“支援”ではなくアートを通して共通の経験をすることでお互いが何かを受け取る場をつくりたいという想いからスタートしました。支援する・されるといった関係ではなく、お互いに何かを受け取り合う関係が生まれる場を「gift×giftな場」と私たちは呼んでいます。今回のプログラムづくりは、集まったとびラーで、それは実際にどんなことが起こっている場なのかをじっくり話し合い、具体的なイメージにしていくことから始めました。多様なバックグラウンドを持ったメンバーが個々の考えを共有しながら、全員でビジョンを描けたことが、プログラム内容や当日の場の充実へとつながりました。

 

当日、私たちとびラーは、サンカクシャの若者が積極的に質問する様子、藝大生が真摯に創作・研究活動に取り組み、それを伝える姿、そして若者・藝大生・とびラーが作品へのまなざしを共有しながら笑顔で対話する場面から、それぞれの心に残るgiftを受け取りました。

 

最後になりましたが、本企画について相談した際に「やりましょう!」と即決で協働してくださったNPO法人サンカクシャの皆さま、それぞれ準備をして楽しい時間を一緒につくってくださった藝大生の皆さまに心より感謝します。

 

*これからゼミとは、3年の任期満了を前にしたとびラーが、任期満了後のアート・コミュニケータとしてどのように活動を展開していくかを考え、その準備を進めるための取り組みです。

 

 

執筆:水上みさ(8期とびラー)

アートや美術館とは無縁の世界から、ふとしたきっかけと勢いでとびラーになり、新しい扉を開きました。これからも、ここで出会った仲間と何かを生み出していきたいと思います。

2021鑑賞実践講座④|「展示室で学ぶ場づくり 〜スペシャル・マンデーに向けて〜」

2021.08.30

第4回鑑賞実践講座|「展示室で学ぶ場づくり 〜スペシャル・マンデーに向けて〜」

日時|8月30日(日) AMチーム 9:30〜13:00 / PMチーム 14:00〜17:30
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、ギャラリーA・B・C、講堂
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)、鈴木智香子、石丸郁乃(Museum Start あいうえの)
内容|
・「スペシャル・マンデー」の事前〜当日〜事後の流れを学ぶ
・会場を知る
・作品に近づく事前準備(作品研究グループワーク)
―――――――――――――――――――――

第4回の講座では、とびラーが活動する「Museum Start あいうえの」の学校プログラム「スペシャル・マンデー」に向けて、実際の展示室の中で、鑑賞の場づくりについて考えました。また、Visual Thinking Strategies(ビジュアルシンキングストラテジーズ:複数の人で対話をしながら作品を鑑賞する手法。略称:VTS)のファシリテーションのための事前準備についてグループワークを通して学びました。

感染症予防対策のため、とびラーは午前チーム/午後チームに分かれて講座に参加しました。

 

まず、「Museum Start あいうえの」のプログラム・オフィサーである鈴木智香子さんから、「スペシャル・マンデー」の概要と、事前授業〜当日の展覧会鑑賞〜事後授業まで行うプログラムの流れについて説明を聞きました。

 

 

そして、9月に実施する「スペシャル・マンデー」で学校の子どもたちと鑑賞する「Walls & Bridges 世界にふれる、世界に生きる」展の展覧会会場へ。展示室の動線を確認しながら、実際の作品の前で鑑賞の場を作るイメージを持ちました。

 

「Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる」 東京都美術館 ギャラリーA・B・C(会期:2021年7月22日~10月9日)

 

 


 

 

アートスタディルームでは、VTSファシリテーションの事前準備として、作品研究の方法をグループワークを通して学びました。

 

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2021鑑賞実践講座④|「展示室で学ぶ場づくり 〜スペシャル・マンデーに向けて〜」

2021.08.30

第4回鑑賞実践講座|「展示室で学ぶ場づくり 〜スペシャル・マンデーに向けて〜」

日時|8月30日(日) AMチーム 9:30〜13:00 / PMチーム 14:00〜17:30
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、ギャラリーA・B・C、講堂
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)、鈴木智香子、石丸郁乃(Museum Start あいうえの)
内容|
・「スペシャル・マンデー」の事前〜当日〜事後の流れを学ぶ
・会場を知る
・作品に近づく事前準備(作品研究グループワーク)
―――――――――――――――――――――

第4回の講座では、とびラーが活動する「Museum Start あいうえの」の学校プログラム「スペシャル・マンデー」に向けて、実際の展示室の中で、鑑賞の場づくりについて考えました。また、Visual Thinking Strategies(ビジュアルシンキングストラテジーズ:複数の人で対話をしながら作品を鑑賞する手法。略称:VTS)のファシリテーションのための事前準備についてグループワークを通して学びました。

感染症対策のため、とびラーは午前チーム/午後チームに分かれて講座に参加しました。

 

まず、「Museum Start あいうえの」のプログラム・オフィサーである鈴木智香子さんから、「スペシャル・マンデー」の概要と、事前授業〜当日の展覧会鑑賞〜事後授業まで行うプログラムの流れについて説明を聞きました。

 

 

そして、9月に実施する「スペシャル・マンデー」で学校の子どもたちと鑑賞する「Walls & Bridges 世界にふれる、世界に生きる」展の展覧会会場へ。展示室の動線を確認しながら、実際の作品の前で鑑賞の場を作るイメージを持ちました。

 

「Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる」 東京都美術館 ギャラリーA・B・C(会期:2021年7月22日~10月9日)

 

 


 

 

アートスタディルームでは、VTSファシリテーションの事前準備として、作品研究の方法をグループワークを通して学びました。

 

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2021建築実践講座②|建築の見方・楽しみ方を知る

2021.08.28

第2回建築実践講座|「建築の見方・楽しみ方を知る」

日時|2021年8月28日(土) 10:00~12:00
会場|東京都美術館 講堂
講師|倉方俊輔(建築史家、大阪市立大学大学院工学研究科准教授)

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建築実践講座の2回目は、建築史家の倉方俊輔さんにお越しいただきました。

建築の専門家の視点から”建築を見る”ことの価値、また、倉方さんが2014年から取り組まれている、生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(通称:イケフェス大阪)での取り組みを題材に、建築と市民の関わり、建築から生まれるアクティビティについてお話いただきました。

 

 

「イケフェス大阪」の事例では、そこで暮らす市民が ”建築” に主体的に向き合い、生き生きと関わる様子を紹介いただく中から、その土地の特徴や、ひいてはその地域の持つ文化性といった目に見えないものまで紐解いていきます。また、小学校低学年のこどもを対象とした建築ツアーの事例からは、よく見ること、そして考えることを通して、世代や文化を超えた建築の鑑賞について伺いました。最後には、参加者と講師による質疑応答を行いました。

人々が楽しみながら建築や文化と関わり合う活動を紹介いただき、とびらプロジェクトでの活動にも引き付けて考えを深めることができたのではないでしょうか。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 山﨑日希)

【開催報告】『発見をわかちあおう ~イサム・ノグチの作品を辿る~』

2021.08.24

■ ■ 参加者ととびラー それぞれの発見の道 ■ ■

 

 

2021年8月24日(火)、東京都美術館で開催中の「イサム・ノグチ 発見の道」展(会期:2021年4月24日(土)~8月29日(日))にあわせて、とびラー発のプログラム【発見をわかちあおう ~イサム・ノグチの作品を辿る~】を実施した。

 


 

「ようこそいらっしゃいませ!」
「『イサム・ノグチ展』の入場予約はお済みでしょうか?」
「テーブルAにお座りください」

 

午後1時開始のプログラムを前に、アート・コミュニケータ(通称:とびラー)がにこやかに参加者をお出迎え。会場となるアートスタディルーム(ASR)は東京都美術館の交流棟2階に位置する。

 

 


 

■ コロナ禍中のプログラム開催 ■

 

コロナ禍中の開催であったため、感染予防対策を万全にと準備していた。ソーシャルディスタンスを考慮し、スペースに余裕をもった参加者人数の受け入れであったが、日に日に増える感染者数に申し込んでくださった方々は果たして来館くださるのだろうか・・迎え入れるとびラーの心配をよそに、参加者ほぼ全員が揃いプログラムがスタートした。

 

 

「コロナ禍に足を運んでくださって、本当にありがとうございます!」司会者の声が弾む。「東京都美術館に初めていらっしゃった方は?」半数ほど手が挙がる。「2回目?」「3回目の方は?」パラパラと手が挙がっている。10回以上にも一人!初めての方も、リピーターの方も、来館くださったことがただただありがたい。

 

 

「発見をわかちあおう ~イサム・ノグチの作品を辿る~」と題されたプログラムは、イサム・ノグチの作品と出会い、よりよくみることができるように、また自分自身の自由な感じ方のみならず他の参加者とお互いの気づきや発見を対話により共有できるように計画した。プログラムは以下の3部構成となる。

 


 

■ よくみるためのプログラム構成 ■

 

冒頭第1部、彫刻作品の鑑賞の手がかりを得るパ―トでは、作品をみるためのヒントとなるように石を使った。参加者同士が知り合うためのアイスブレークと自己紹介を兼ねて、様々な色や形の石から好きな石を一つ選んでもらう。どこに惹かれたのか?なにを感じたのか?ざらざら、すべすべ、つるつるなどの手触りや、石そのものの温度、手にした時の重さなどを感じてもらう。

 

 

加えて、イサム・ノグチ作品《不思議な鳥》をいろいろな角度から撮った写真4枚をグループで見ながら、見つけたこと感じたことを共有しあった。みる角度が違うと同じ作品でも全く違った感じを受けることに、参加者も驚いていた。

 

 

続いて第2部、展示室でいよいよ本物の作品に出会う時間。第1部で得た鑑賞のヒントをベースに、ワークシートを使っての個別鑑賞となった。コロナ禍中でなければ、作品を目の前にVTS(Visual Thinking Strategies 和訳:対話による美術鑑賞)という手法を用い、参加者と一緒に対話ができたはずだった。しかし展示室での話し合いは難しい状況だった。代わりに、第一印象や、近づいたり離れたり、違う角度からみて感じたこと、思ったこと、発見したことを、絵でもスケッチでも自由にワークシートに書き込んでもらい、展示室を出てから参加者同士で対話する時間を取ることにした。

 

 

参加者は、各グループのファシリテーターが事前に選んでおいた2作品を展示室で観察しワークシートにメモを記入する。時間は1作品10分を目安としていた。一人静かにじっくりとひとつの作品に向き合う経験は、滅多にない貴重な体験と考えていた。その2作品以外にも、様々なイサム・ノグチの作品を楽しんでもらえる贅沢な第2部となっていた。

 

第3部は、展示室での鑑賞を終えてアートスタディルーム(ASR)に戻り、グループで発見したことを共有する時間。どんな気づきがあったのか、どのように感じたのか、これまでの鑑賞と違いはあったのか? ワークシートのメモをみながら話し合うチームもあった。メモをみなくても次から次へと感想が出てくる参加者も多く見られた。イサム・ノグチ作品のエネルギーに触発されたかのように、どのグループの話し合いにも熱がこもっていた。

 

 

第3部の終わりには、テーブルに広げられた模造紙に、それぞれが発見したことを付箋に書いて貼りだしていった。AからEグループが鑑賞した2作品は異なるため、他のチームがどの作品を鑑賞しどんな発見があったのかを、参加者全員で共有するためだ。テーブルを順々に巡る時間も活気に満ちていた。「これはどういうことですか?」「確かに!」「えっ!そんな見方が!」など質問や感想が飛び交い、短い時間での全体共有も充実したひと時だったことが伺えた。

 

 


 

■ よくみるとは? ■

 

時間を少し戻そう。イサム・ノグチ・・名前は聞いたことがあったが、これ!といった作品はすぐに思い浮かばなかった2020年6月、同期のとびラーの呼びかけで実施した「とびラボ:イサム・ノグチ発見研究所(IDL)」で、イサム・ノグチの生涯と作品をとびラー同士が研究し学びあった。

 

日本人の父とアメリカ人の母のもとに生まれたイサムは、二つの祖国どちらにも受け入れられず孤独な幼少期・青年期を過ごす。さらに両親の祖国が戦争で敵国となるという辛い体験を経ながらも、フランス、アメリカ、そして日本での様々な出会いを通して、彫刻のみならず舞台美術やプロダクトデザインなど様々な分野で大きな足跡を残した芸術家だ。

 

特定の作風や素材に留まらず次々と新しい作品を制作し、晩年期には石の彫刻作品や大地の彫刻とされたランドスケープデザインにまで、あらゆることに挑戦した人。勉強会を重ねるうちに私の中にはいかなる苦境にも屈せず前向きに生きるイサム・ノグチ像が浮かび上がっていた。

 

同時に、とびラーになって2年と数か月。私の中には「よくみるとはどういうことだろう?」「よい鑑賞とは?」「眼差しを共有するとは?」そんな疑問が常に頭の中で渦巻いていた。実際にイサム・ノグチ展が始まってから何度も展示室に足を踏み入れながらも、抽象立体彫刻をどう鑑賞してよいものやら難しさを感じていた。

 

 

■ だれのためのプログラムなのか? ■

 

本プログラムを開催した「とびラボ」は、2021年1月、イサム・ノグチの彫刻作品を愛する9期のとびラーが発起した。プログラム内容を検討するに段階においては、ラボメンバーからも様々なアイデアが出ていた。

 

造形ワークやVTSを通して感じ方に正解は無いことに気づき、自由なイマジネーションで彫刻やインテリアを楽しんでもらいたい。他の人との対話によって観察力を深めたい。参加者の年齢層のターゲットをシニア層、学生、一般と分けて、共感やコミュニケーションを活性化させたい。参加者自らの「発見」を促したい。

 

思いはどんどん膨らんでいったが、本当に参加者のためのプログラムなのだろうか?私たちの思いを実現するだけのプログラムになっていないか?

 

 

■不協和音■

 

3時間のプログラムに「造形ワークを取り入れることは、目的とテーマに沿っていないのでは?」とのアドバイスがスタッフからもあがった。だれのために?どんな体験を?今一度目的に立ち返る必要があった。しかしながら、何度もミーティングを重ねたがなかなか結論がでないまま硬直状態が続いた。

痺れを切らしたメンバーがひとり去り、ふたり去り・・なんと最後に残ったコアメンバーはたったの6人という有様だった。ラボの目指す所はどこなのか?参加者にどういった体験を持って帰っていただきたいのか・・なぜ纏まらない。先が見えないミーティングが続き、メンバー内にも不協和音が鳴り響く。開催日が迫っているにも関わらず実施内容がまとまらず焦りが生じていた。メンバーのほぼ全員がフルタイムで働いているため、ミーティングも仕事から帰宅後の深夜に及ぶことも度々だった。

 

オンラインでのミーティングの様子

 

 

■参加者の<よくみる>へ■

 

果たして、実施に至るのだろうか・・だれもがそんな危惧を抱いていたはずだ。だが、一人として諦めない。とにかくなんらかの共通点を見出して実施させるのだ、との思いだけは持ち続けた。

そんな硬直状態から抜け出せたのはトライアルで石を使ってみた日だった。もっとシンプルにいこう!石の彫刻作品をよくみてもらおう!そのためには、実際に石に触ってもらい、彫刻を様々な角度からみてもらう時間をもとう!実施日まで僅か1か月と少しを残して、各々が拘っていたやりたいことから、参加者に体験してもらいたいことへと急転換を果たしたのだった。

方向性が決まった後は、更に怒涛の日々が待っていた。タイムスケジュール、広報文、広報文に併せたビジュアル、準備物、ファシリテーションの練習、全体の司会、スライド、ワークシート、各グループの作品の絞り込み、展示室でのルートの確認・・とびラー全体への毎回のミーティングのお知らせと議事報告も欠かせない。朝に夕にメンバーが手を動かし、一つひとつクリアーしていった。

 


 

 

■ 共有の喜び ■

 

 

いささか赤裸々な内輪話に紙面を割いてしまったが、本番当日に戻ろう。作品を<よくみる>をテーマに据えた本番。プログラムの流れの中で、参加者が<みる>ことに集中し、他者の<みた>ことにもまなざしを注いでいく過程を、アート・コミュニケータは<みていた>。

 

一心に作品と向き合う参加者を。一つの作品を様々な角度や距離から眺め、クリップボードに挟んだワークシートに書き込む姿を。作品の前に佇み作品と対話し作品からの声を聴くかのようにじっと動かない後ろ姿を。ワークシートに詳細に書き込まれたスケッチを。誰かの発言にじっと耳を傾け頷く仕草を。そんな見方があったのだ!という驚きの表情を。熱のこもった発言の共有を。付箋に書かれたそれぞれの発見を。そして発見を共有しあえた喜びを!

 

 

■ 感じ方は自由 ■

 

 

語られた言葉と、語られなかった言葉。「みること」そして「みたもの」は、人それぞれ。なにをみるか、なにをみたか、なにを感じるか、なにを感じたかも十人十色だった。

 

「彫刻作品が苦手でしたが、面白いと思うことができた」
「参加された方々の発言から、違う見方ができた」
「自分一人だと気が付かないことも、みなさんと共有することで新たな気づきがあった」
「長い間埋もれていた土の下から掘り出された遺跡のようだった」
「石の彫刻は、坐禅みたいだなと思う」
「石なのにあたたかい」
「なんだか懐かしい気持ちになった」
「いろんな方法(道具)で石の表情の違いを出せるんだなぁ。石の世界、奥が深い」
「石の塊の中に、円空仏の様に魂の入ったものが宿っているように感じられた」
「宇宙を感じた」

 

こんな言葉が並ぶアンケートを読んで、実行メンバー一同、本当に実施できたんだ!楽しんでもらえた!そして、テーマとして掲げていたとおり作品をとてもよくみてもらえた!ほっとすると同時に、やり終えた充実感に胸が熱くなった。

 

 

■『発見の道:参加者』■

 

「《無題》は無限大!」と記してくださった参加者Uさん。後日お話を伺うと、「いままで《無題》に対して少し無責任で否定的に感じていましたが、あの日以来《無題》に対して慈愛を感じています。」

 

無題であるからこそ見る人の解釈を無限に広げ、見る人と見られる作品の間により豊かなやり取りが生まれるのかもしれない。

 

「《発見の道》という作品を観ることを通して、自分がぐるぐるとまわってながめる、その動線がまさしく“発見の道”だと感じた。作品との関わりに、自分が“参加”できた感覚があって嬉しかった。事前にみなさんと対話していたからこそ」と記してくださった参加者Sさん。

 

《Void》を鑑賞したKさんはこう綴る。「Void(虚)」などと言っている場合ではない。柔らかに出現したその扉は、まだ地中から全貌を現してはいないものの、充分に妖しく異世界へ誘う。横から見たときにしかわからない、縦方向のレムニスカート(永遠を示す∞)を秘めたその異世界への入り口をくぐれば、もう知らなかった昔には戻れないだろう。この《Void》の前では踵を浮かせることしかできない、一歩を踏み出す覚悟がまだないのだ。しかし、そこはエンデの示唆した虚ではなく、がらんどうでもないのだろう。くぐったら最後、深く深く沈んでいく予感がする、グレーの霧の中へ。あたたかな、そして何も弾かれることのない、グレーの世界へ。」

 


 

■『発見の道:とびラー』■

 

新型コロナウィルス感染症の発生以来、展示室内で作品を目の前にして対話をしながら鑑賞することができなくなった。展示をみた後、ご飯を食べながら、お茶を飲みながらのおしゃべりも出来なくなった。感じたこと、思ったことを共有できる場がどれだけ貴重な場であったかを強く感じていた。本プログラムでは、作品を目の前に対話することは叶わなかったが、別の場で、みたこと、感じたことを共有し、ともに発見をわかちあうことができたプログラムだったと自負している。

 

「人と人」「人と作品」「人と場所」をつなぐ活動をしているアート・コミュニケータとして、この日は様々なつながりをダイレクトに感じ、その醍醐味に触れることのできた貴重な一日となった。「眼差しを共有」し「ともに在る」ことが出来た時間だった。

 

「とびラボ」チーム  打ち合わせの様子

 

 

そして、その場を実現するために、なにがあっても諦めなかったラボメンバー。リハーサルや当日のプログラムをサポートするために駆けつけてくれた仲間の面々。毎回のミーティングに参加し貴重な意見をくれたメンバー達。温かく見守り、応援してくれた多くのとびラーとスタッフ。

 

本番にいたるまでの紆余曲折、右往左往。「発見をわかちあおう ~イサム・ノグチの作品を辿る~」このとびラボの過程において、時に声を荒げ、時に沈黙し、時に反目し、時におおいに笑いあった仲間たち。性格も、好みも、得意なコト、苦手なコト、バラバラなメンバーが、お互いを認め合い、信頼のおける仲間としてそれぞれを見出していった “発見の道” でもあったのだ。

 

 

写真:黒岩由華(9期とびラー)、他

 


執筆:卯野右子(8期とびラー)
みているようでみていない、きいているようできいていない。
「みること」 そして 「きくこと」
みる、見る、観る、診る、視る、看る・・
きく、聞く、聴く、訊く・・
目や耳だけでなく、意識をむけるとみえてくる。
音や声がきこえ、気配や命を感じ、響いてくる。
世界は美しさにみちあふれている ー そんなことを教わったラボでした。

 

【開催報告】出会いが広がる探検TURN!

2021.08.19

2021年8月17日火曜日から19日木曜日までの3日間、東京都美術館の第1・第2公募展示室で開催された「TURNフェス6」において、とびらプロジェクトで活動している「とびラー」と一般社団法人アプリシエイトアプローチ(アププ)※1の上田と大川の進行で、来場者と一緒に鑑賞するプログラム「出会いが広がる探検TURN!」を実施しました。

期間中はとても暑い毎日で、時には通り雨の後晴れ間に虹がかかる夏らしい空も広がっていました。3日間を通してのべ30名の方が参加しました。みなさん、ありがとうございました。

 

「出会いが広がる探検TURN!」とは、とびらプロジェクトで活動するアート・コミュニケータ(とびラー)と一緒に「TURNフェス6」を鑑賞し、発見した気づきや感想を共有しあう参加型プログラムです。東京都美術館の中にあるアートスタディルーム(ASR)に集合しグループに分かれてまずはご挨拶。探検のための特製の「地図」を受け取ったら、展示室ではひとりでじっくりと探検するように一人で鑑賞しました。地図には「仲良くなりたい作品や作家を発見してくる」と探検のテーマが書かれています。それぞれが地図とテーマをもって鑑賞したあと、再び集合してとびラーと一緒に展示室で発見したことについての感想を共有しました。

 

「TURNフェス6」の「TURN」(※2)とは、障害の有無、世代、性、国籍、住環境などの背景や習慣の違いを超えた多様な人々の出会いによる相互作用を、表現として生み出すアートプロジェクトの総称です。2015年、東京2020オリンピック・パラリンピックの文化プログラムを先導する東京都のリーディングプロジェクトの一つとして始動した後、2017年度より、東京2020公認文化オリンピアードとして実施しています。「TURNフェス」は「TURN交流プログラム」や「TURN LAND」を実施する多様なアーティストや交流先との活動が一堂に集まるフェスティバルです。作品展示やワークショップ、オリジナルプログラムなど様々なコンテンツを通じて体感できる場です。今年で6回目の開催となりました。

 

◆3日間の様子はこちら◆

▲親子で仲良く鑑賞。

 

◆1日目【8月17日<火曜日>15:00〜16:30】初日は参加者11名をとびラー8名で迎えました。高校生1名・中学生2名・小学生2名と子供たちが多く参加しました。

◆2日目【8月18日<水曜日>14:00〜15:30】参加者8名をとびラー6名で迎えました。参加者は大人7名に幼稚園児1名でした。

◆3日目【8月19日<木曜日>14:00〜15:30】最終日は、全員大人の参加者11名をとびラー8名で迎えました。

▲今から向かう展示の概要を聞いています

 ▲小さなグループ毎に簡単な自己紹介をしています

▲手旗信号を体験中!「ソーシャルディスタンスを確保しながらコミニュケーションをとる方法として、会場には手旗信号が用意された。PARC (パーク)(特定非営利活動法人アート・コミュニケーション推進機構)企画」

 

参加者のみなさんは、これまでにとびらプロジェクトの他のプログラムに参加したことがある方や東京藝術大学の履修証明プログラムDiversity on the Arts Project (通称:DOOR)の受講生、初めての参加の方々、親子での参加など様々で、中にはすでに一度会場を回ってから参加した方もいました。みなさんの集合した時のわくわくした表情が印象的でした。

 

 

▲興味のある作品のところで立ち止まり真剣に見入ってます。

 

 

展示室ではみなさん自由に移動しながら一つ一つの作品をじっくりと鑑賞していきます。作家さんとの会話を楽しむ方、じっくりゆっくりと会場を周り心に残る言葉を拾っている方など、それぞれに楽しんでいた様子です。90分のプログラムの中で展示室での鑑賞時間は50分ほどでしたが、どの方もしっかりと向き合って鑑賞していたので、みる時間がとても足りないという声が上がるほどでした。また、初めての方でもリラックスして参加者同士で和気あいあいと展示室を巡る姿も多く見られました。

 

▲展示室へ探検に入ります。「気まぐれ八百屋だんだんと野口竜平|だんだんひらき、だんだんつつみ」の展示エリアにて。

▲作品に触れて感じてみる。「TURNラボ」の展示エリアにて。

(左上)音声を聴きながら作品を空想してみる。「TURNラボ」の展示エリアにて。

(右上)体験型の展示、いろいろやってみる。一体なんだろう?「TURNラボ」の展示エリアにて。

(左下)キャプションから作家のメッセージを感じ取っているのでしょうか。

(右下)作家さんに説明を聞いたり。「TURNラボの展示エリアにてアーティストの富塚絵美さんと」

▲糸電話も体験してみます。聴こえるかな?「近くで話さなくてもコミニュケーションをとる方法として、会場には糸電話が用意された。 PARC (パーク)(特定非営利活動法人アート・コミュニケーション推進機構)企画」

(左)展示作品をじっくりと鑑賞「丸山素直|エベレスト・インターナショナル・スクール・ジャパンとの旅」

(右)TURNで発せられた言葉の数々が書かれた「TURN NOTE」。文章だけど音符?音が流れてくる不思議な展示。「井川丹|TURN NOTE」

▲世界中の人々が撮った月の写真。作家の渡辺さんに作品のお話を伺っています。「アイムヒア プロジェクト|渡辺 篤「同じ月を見た日」」

 

アートスタディルームに戻ってからの感想共有では活発な意見が交わされたり、いろんな気づきについて話したりとどの日も話が尽きない様子でした。展示をみて感じた思いを一生懸命言葉にしたりその言葉に他の参加者が耳を傾けたりしているシーンが各グループで繰り広げられ、充実した時間を共有している様子がとても楽しそうでした。

あるグループから出てきた「コミュニケーションのお風呂みたい」という言葉がTURNをとてもよく言い表せているようで、しっかりと鑑賞してきたことが言葉に現れていると思いました。また、他の方の話を聞いて自分が気付かなかった視点に気付き、もう一度見たいと、プログラム後に展示室へ戻る方もいて嬉しく思いました。

最終日、前日参加した親子がこの日も展示室を巡っているのを発見し、それもまた嬉しい気持ちになりました。

<参加者のみなさんからの感想をピックアップしてご紹介します。>

  • 気付きが非常に多く大変勉強になった
  • 見えない感動がみなさんの言葉で立ち上がってきました。
  • 自分と違う人の着眼点を学べて楽しかった。
  • 自分だけでは見過ごしてしまいそうなところに、きっかけや視線を向けることができ良かったです。

  • 聴くのはもちろん、話すのもその展示を自分の中でかみくだいて言葉をつむいだため、より解釈や見方が広がった。
  • 色々な作品があって楽しかった。「このオペラが見えない、、、」「手旗信号」が気になった。
  • とても久しぶりに「感覚」を感じたように思います。非日常だけどつながっているような、、、。つい頭が思考優位になってしまうので、私にとって大事な機会になりました。
  • おもしろすぎた♡すごかった

3日間のプログラムを実施できたことは、私たちにとって本当に良い経験となりました。今回のプログラムの内容について検討していく中で難しかったのはコロナ禍でコミュニケーションをとりながら鑑賞を深めるプログラムを実施する点でした。過去のプログラムのように、展示室で参加者ととびラーがゆっくりと作品を見ておしゃべりをしながら巡るわけにはいかず、展示室では一人で鑑賞をしてもらうこととなりました。この一人での体験をどうすれば深く感じる鑑賞体験にしてもらえるだろうかと思案しました。TURNフェスはキャプションでは伝わりきれないアーティストたちの想いもあることが多く、そのことを一人で巡ってもキャッチできるような仕掛けはないかと考えました。「一人で展示室をめぐる、、、楽しく巡ってほしいよね、、、TURNフェスって何が起こるかわからないジャングルって感じもあるね。」考えあぐねた末に「探検!」というワードが閃きました。というわけで、「探検」というワード、そして今回のTURN2021のテーマ「出会いが広がる」をかけ合わせ、ジャングルのような展示室を探検しながら、出会いが広がるといいなという思いで、プログラム名を「出会いが広がる探検TURN!」としました。

TURNフェスでは多様なアーティストとその交流先との活動が表現されています。探検する心で展示室を巡ると新たな出来事や人との出会いが広がるだけでなく、自分自身の気持ちと新たな出会いがあるかもしれません。そんな体験の場になるといいなぁと願いました。探検のためにはその目標となるテーマが必要です。そのテーマは鑑賞体験の場をより充実してもらうための大事な仕掛けとなっていて、テーマを共有する地図があるといいね。というアイデアから地図を用意したり、とびラーさん達はどんな風に参加者の探検を支えると良いかなど相談を重ねてプログラムを作っていきました。

 

「探検TURN!」の実施までにとびラーのみなさんとの準備会を2度開催しました。最初の準備会は8月9日の月曜日に行いました。開扉(カイピ)とびラー(※3)である私たちにとっては久しぶりのアートスタディルームでの活動ですし、現役とびラーの方々に初めて会うことに期待でドキドキしていました。とびラーさん達とプログラムの目的・内容・役割を共有するためには、本番同様のリハーサルを行った方がより理解が深まると考え、その日開催していた別の展覧会でトライアルも実施しました。その後、プログラムをより良い形で開催できるようにブラッシュアップを重ね、8月17日開催当日の朝にも準備会を行いました。みんなで会場をゆっくり周り、展示内容を理解したり会場の雰囲気を把握し動線を考えたり、参加者とどんなふうに巡ろうかとイメージを膨らませつつ、グループに分かれてお互いに意見を出し合いながら実施に向けた「作戦会議」を行いました。こうした準備会に加えて、「とびらプロジェクト」オリジナルのコミュニケーションツールである「掲示板」も利用して、当日までみなさんで話し合いが続きました。

たくさんのみなさんと協力しあって開催できたこのプログラム、参加者のみなさんが満足そうな笑顔で帰っていく姿にもホッとしましたが、それ以上にこのプログラムに関わって良かったと言ってくれたとびラーのみなさんの笑顔も忘れられない思い出となり、開扉とびラーの私たちにとっても忘れられない”出会いの広がった”夏になりました。

 

※1  一般社団法人アプリシエイトアプローチ(アププ)は3年間の任期を終えた(開扉カイピ)とびラーが中心となり、2018年に立ち上げられたアートコミュニケータによる活動団体。

※2『TURN』についての詳細は下記のウェブサイトをご覧ください。

https://turn-project.com

 

※3  開扉とびラー=3年間のとびらプロジェクトを任期満了したとびラー。とびラーが3年の任期を終えることを、「新しい扉を開く」意味を込めて、「開扉(カイピ)」と呼んでいます。

執筆:上田紗智子・大川よしえ(アートコミュニケータ「元とびラー」)

2021鑑賞実践講座③|「ファシリテーション基礎(2)」

2021.08.15

第3回鑑賞実践講座|「ファシリテーション基礎(2)」

日時|
A日程 8月2日(月)9:30〜16:30
B日程 8月15日(日)9:30〜16:30
会場|オンライン
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)
内容|
・映像を使ったファシリテーション分析
・Visual Thinking Strategies ファシリテーション実践
―――――――――――――――――――――

 

 

第3回は、前回に引き続き、NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)の三ツ木紀英さんから、Visual Thinking Strategies(ビジュアルシンキングストラテジーズ:複数の人で対話をしながら作品を鑑賞する手法。通称:VTS)におけるファシリテーションの基礎を学ぶ2回目です。

 

今回も、たくさんのとびラーが参加するため、A/B 2つの日程に分けてオンラインで行いました。

 

 

展示室で、実際にVTSの手法を用いて子どもたちが作品を鑑賞する映像を視聴し、その中でファシリテータがどのような振る舞いをしているかについてより詳細に分析していきました。

 

前回とびラーのみなさんが自ら発見したキーワードに、今回新たに発見したVTSファシリテーションのポイントが追加され、ファシリテータの振る舞いの全容が見えてきました。

 

 

後半は、発見したファシリテーションのポイントをもとに、実際にVTSのファシリテーション実践を行いました。

 

2日間に渡って集中的にVTSファシリテーションの基礎を学ぶ「VTS合宿」でした。
とびラーのみなさん、お疲れ様でした!

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2021鑑賞実践講座②|「ファシリテーション基礎(1)」

2021.08.14

第2回鑑賞実践講座|「ファシリテーション基礎(1)」

日時|
A日程:7月26日(月)9:30〜16:30
B日程:8月14日(土)9:30〜16:30
会場|オンライン
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))
内容|
・鑑賞体験
・ファシリテーションのポイント観察
・Visual Thinking Strategies ファシリテーション実践

―――――――――――――――――――――

 

 

第2回からは、NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)の三ツ木紀英さんを講師に迎え、Visual Thinking Strategies(ビジュアルシンキングストラテジーズ:複数の人で対話をしながら作品を鑑賞する手法)におけるファシリテーションを学びながら、作品をよりよく観察することや、アートを介したコミュニケーションの場づくりについて考えていきます。

 

第2回と第3回は、とびラーのみなさんから、通称「VTS*合宿」と呼ばれるほど濃密なファシリテーションの基礎を学ぶ2日間です。多くのとびラーが参加するため、A/B 2つの日程に分けてオンラインで行いました。

 

*VTS=Visual Thinking Strategiesの略称

 

 

講義は、レクチャーと実践を交互に行いながら進められました。

 

とびラーは、ファシリテータと一緒に作品を鑑賞しながら、「ファシリテータが場づくりのために何をしていたか」についてその場で気づいたことをキーワードにまとめました。

 

そのキーワードを元に、講師の三ツ木さんがリアルタイムでレクチャーを組み立てていくライブ感あふれる講義となりました。

 

 

後半では、前半で発見したファシリテーションのポイントをもとに、何人かのとびラーのファシリテーションでVTSの実践を行いました。

 

1日を通した長時間の講座でしたが、途中でリフレッシュするために休憩や体操をはさみながらとびラーの皆さんも笑顔で参加していました。

 

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

【開催報告】『おいでよ・ぷらっと・びじゅつかん』

2021.08.11

【開催報告】『おいでよ・ぷらっと・びじゅつかん』

 

2021年コロナ禍の夏休み、8月11日にとびラーによるプログラム「おいでよ・ぷらっと・びじゅつかん」を開催しました。

お盆休みの昼下がり、東京都美術館アートスタディルームでとびラー10名が、学校がしんどいと感じているこどもとその保護者をお待ちしていました。

 

◼️どんなプログラム?

「おいでよ・ぷらっと・びじゅつかん」は、小学3年生から中学生までの年齢の、学校に行ってる子も、行きにくいと感じている子も、たまに行ったりしてる子も、行っていない子も、みんなが対象です。

「社会」の中には、学校だけじゃなくて、いろんな場所があるよ、「自分の居場所」のひとつに「美術館」があるよ、ということを伝えたいと考えました。とびラーとの活動を通して、美術館という場所を知ったり、心地のいい過ごし方に出会ったりすることで、こどもたちが好きな時に”ぷらっと”美術館へ来られるような回路を作りたい、そんな想いを同じにするメンバーでプログラムをつくりました。。

こどもととびラーがペアになって、美術館をおさんぽするように巡りながら、こども自身の関心に沿って美術館での過ごし方をみつけていく、オーダーメイドのプログラムです。

とびラーは、美術館への好奇心を育むアートカードなどのツールを用いながら、こどもの関心に耳を傾けて活動に寄り添います。

 

◼️ようこそ!とびラーとの出会い

一組、また一組と、それぞれのペースで、こどもと保護者の方がアートスタディルームにきてくれました。受付時間を13:30〜14:30と1時間とることで、それぞれのペースで無理なく来てもらえるように設定しています。

わたしたちとびラーは美術館まで足を運んでくれたことを、「ようこそ」とむかえました。消毒と受付を済ませた後に、本日一緒に活動をするとびラーと出会います。

当日を安心して迎えられるよう、こどもが好きなこと、苦手なことなど知っておいてほしいことを申し込みの時にお聞きしていました。そして、開催日の10日前には事前のお知らせとメッセージ付きのとびラーの写真を送っていました。

 

◼️お互いを知り心をほぐす時間

おさんぽにでかけるまえに、アートスタディルームで、お互いの心をほぐす時間をとりました。

本日の「お気に入りボード」に気に入ったアートカードなどをのせていきます。どのへんが気に入った?とお話をすることで、こどもの関心に耳を傾けながら、美術館さんぽへのワクワク感を高めていきました。

 

 

この日は、東京都美術館で開催中の「イサム・ノグチ 発見の道」展もおさんぽの行き先のひとつです。

心をほぐす時間の中に、石を介してお話をする、という活動も取り入れました。

色や形、手触りなどひとつとして同じもののない、複数の石の中から、自分の好みのものを選び、その石を紹介し合うことで、お互いのことを知り合いながら、「イサム・ノグチ展」での石や金属などの抽象彫刻と出会うための準備をします。

 

 

初めは緊張していたこどもも、お互いの好みを知り合ううちに、少しずつ心がほぐれてきたら、アートスタディルームを出発して、いよいよ美術館の中に出かけていきます。

◼️おさんぽ探検に出発!

これからの時間は美術館の中で「お気に入り」をみつけます。作品でも場所でもOKです。みつけたらiPadで撮影をします。

とびラーと相談をしながら行き先を決めていきます。

さあ、こどもと伴走とびラーのふたりで美術館をおさんぽ探検です!

 

東京都美術館内をおさんぽしていますね。このペアももう一組のペアも「イサム・ノグチ展」にも足を伸ばしました。

◼️来てくれたことに感謝

一方アートスタディルームでは、また一組、そしてもう一組とおむかえしていました。

 

中には、人混みや初対面の人が苦手というお子さんもいらして、おさんぽには行かないというケースもありました。

わたしたちのプログラムに興味をもって申し込んでいただけたこと、勇気を出してここまで来てくれたこと、少しの時間でも一緒にお話しできたことが、わたしたちとびラーにとっても、とても貴重な時間となりました。

用意しておいた「おいでよ・ぷらっと・びじゅつかん」特製パスポートと今回は「ミュージアム・スタート・あいうえの」の「ミュージアム・スタート・パック(こどもたちが上野公園にある9つのミュージアムを楽しく活用するために開発されたスターター・キットです。)」をその使い方の紹介とともにお渡ししました。特製パスポートは本物のパスポートそっくりで、裏表紙のねこの消しゴムスタンプや東京都美術館の記念スタンプをこどもに押してもらい「楽しかったな、また美術館に来たいな。」と思ってもらえるように願いをこめて作成したものです。

 

これからも、美術館や上野公園に遊びに来てほしいな、という私たちの想いを伝えました。この日は、おさんぽには出かけませんでしたが、美術館の正面入り口の側にある「記念スタンプ」を押してくれました。

初めての場所で、初めて出会うとびラーにドキドキしながらも、美術館へきてくれて本当にありがとうございました。

 

 

◼️保護者もおさんぽ

さて、こどもたちがでかけていた間、保護者はどうしていたかといいますと、保護者担当のとびラーが、美術館の過ごし方のひとつのお楽しみとして、館内のおさんぽにおさそいしました。わたしたちとびラーは、美術館の中にある、魅力的な場所や空間、過ごし方、楽しみ方をしっています。

 

 

こどもととびラー、保護者ととびラー、それぞれが同じ時間に東京都美術館をおさんぽします。このプログラムで大事にしたことのひとつとして、こどもはこども、大人は大人、それぞれの時間を過ごしてもらいたい、ということがありました。

こどもだけではなく、保護者も美術館での過ごし方や楽しみ方と出会い、お互いに今日の出来事を報告しあうことで美術館がより身近に感じられるようになったり、「また行こう」と思ったりするきっかけになって欲しいと考えていました。

 

 

とびラーは1年目の基礎講座で人の話を「きく」ことをできるよう学んでいます。

とびラーと一緒に過ごすことで、お話しながら、保護者も美術館の「お気に入り」がみつかるとうれしいです。

 

 

◼️おかえりなさいからのお楽しみ

おさんぽからアートスタディルームに戻ったら、まずは一息ついて、歩いてきた感想をお話しました。

 

おさんぽで見つけた「お気に入り」の写真をiPadで確認します。撮ってきた写真の中で1番のお気に入りをチェキプリンタ(iPadから出力できるインスタントプリンター)で印刷しました。

かわいい手のひらサイズの写真です。

出力を待つ間、今日の記念として、特製パスポートに「日付スタンプ」ととびラーお手製「おいでよスタンプ」も押しました。

 

とびラーも、先に用意していた自分の「お気に入り」写真を「お気に入りボード」にのせて、お互いの「お気に入り」についてお話しました。はじめのワークの石についてもふりかえってお話していました。

「どんな場所が気に入った?」 写真で今日のおさんぽをふりかえって話しているときに、別行動だった保護者には席に戻って、お子さんがどんな時間を過ごしたか感じていただきました。

 

さいごに、これからも上野公園のミュージアムを楽しんで欲しいという想いを込めて、あいうえのの「 ミュージアム・スタート・パック」をお渡ししました。ミュージアムへ行ったら、冒険ノートに気になるものを書いたり、貼ったりすることができます。これからも自分だけの「お気に入り」を探してほしいと思っています。

今日は、とびらプロジェクトのとびラーによる「おいでよ・ぷらっと・びじゅつかん」にお越しいただき、本当にありがとうございました。

 


 

わたしたち「おいでよ・ぷらっと・びじゅつかん」のメンバーは、学校がしんどい、自分がそうだった体験やお子さんに付き添ってきた体験談、はたまた先生や社会の中の大人として見守ってきた経験など、それぞれの立場からのお話をきき合い、とびラーとして美術館でどんな時間を過ごすのが好きなのか、思い出話も含め共有しました。その共有した時間が、このプログラムの軸となりました。美術館の楽しみ方を知っている親でも先生でもない大人であるとびラーが社会の中でこどもたちに関われる形を考えました。

とびラボとして「この指とまれ」したことは、あいうえのなどでこどもと一緒に活動したワークショップでの経験が大きく影響しています。また、いろいろなとびラボを通して共通体験してきたとびラー同士の信頼にも背中を押してもらいました。今までのとびラーがつくりあげてきたことがつながって、このとびラボに集ったメンバーだからこそのプログラムができました。

 

今回の実施にあたって、とびらプロジェクトやとびラーから広報したことにより、さまざまな方面から激励や共感の声をたくさんいただきました。次につなげていきたいです。

 

門田温子とびラー9期

プログラム開催中の写真/黒岩由華とびラー9期

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