2012.06.05
とびらプロジェクト「実践講座」がついにスタートしました。実践講座とは、とびラー(アートコミュニケ—タ)として活動する上で、必ず一つは担当しなくてはならない3つのプログラム(スクールマンデー(対話を通した作品鑑賞)」、「建築ツアー」、「アクセスプログラム(障害のある方のための鑑賞サポート)」の中から1つ必須。複数選択してもよい。)を実行するのに必要となる知識や経験を身に付けるための講座です。
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今回実施されたのは「建築ツアー」の実践講座です。東京都美術館(以下:都美)は建築家前川國男(コルビュジェに師事、同じ上野公園内の東京文化会館も設計)が設計した建築物で、それ自体が非常に魅力的な作品となっており、この建物を見学して廻る企画が「建築ツアー」です。「建築ツアー」の実践講座は平日の夕方6時30分からスタートとなりますが、会社帰りや学校帰りのとびラー候補生(以下とびコー)さんが集まり、熱心に講座を受講しました。はじめに講師(学芸員)の河野さんより都美の建築物としての歴史やリニューアルオープン前に行った「建築ツアー」の様子などを紹介して下さいました。実はこの「建築ツアー」、リニューアルオープン前にも実施されており、好評を博した企画であったため、リニューアル後に結成された「とびらプロジェクト」のメインプログラムの一つとして採用された経緯があります。(以前は館長自身がツアーのガイドをされたこともあり、館長室で館長と参加者が談話していたなんてエピソードもある人気企画でした。)
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こうした経緯を踏まえつつ、河野さんが今回の実践講座のテーマとしたのは「建築を伝える とは?」でした。「建築を伝える」と聞くと少し難しそうな気がしますが、河野さんからの出題は、スライドの内容を踏まえた上で「手紙を書く」ことでした。
仲のよい友だちに手紙を送るような気持ちで、都美のことを思い起こしながら書きます。とびコーさんとなって2ヶ月がたち、みなさんリニューアル後の都美にもだいぶ馴染んできたので、なかなかのスピードで筆が進みます。
手紙が書き終わったら、河野さんから同じ机のメンバーで手紙を読みまわす様に指示がでました。手紙を読むときのポイントは、「どのような伝え方をしているか」です。自分以外の目線で都美を見ることと、その魅力をどのように伝えようと工夫しているのかを共有することができました。
お互いの手紙を読み終えたら、テーブルごとに手紙の感想を含め「どんなところに興味を持ったのか」「どんな伝え方をしていたか」について意見交換をしました。手紙を共有したことにより、更に「建築物としての都美の魅力」や「その魅力の伝え方」について感心を深めることが出来ました。
その後、話し合いをした各テーブルごと意見をまとめ、伝え方の工夫や、気付いたことなどについて発表をしました。
出てきたアイディアや感想を河野さんがホワイトボードにまとめて行きます。建築物そのものの特徴というよりは、都美を取り巻く環境や内部の設備、アメニティについての話題がたくさん出されました。ちなみに、都美の建築物としての特徴の一つに、レストランが館の中央部分に大きく設定されていることがあります。これは、設計者の前川國男がかなりのグルメで、「美術館に来て美味しいものが食べられないなんてあり得ない」とのことから、レストランを強調した設計を行ったとのこと。リニューアル後の都美も、レストランの存在は変わらず大きく扱われています。
※レストランのメニュー(とくにローストビーフ)については、別にレポートをする予定です。お楽しみに。
「どんなところに興味を持ったのか」「どんな伝え方をしていたか」を共有できたところで、河野さんから「みなさんが伝えようと思ったことの全てが建築ツアーで活かせる内容です。建築ツアーでは、皆さんに知識だけを詰め込んで頂き、ステレオタイプな解説者となって頂くことを想定していません。みなさんの見方感じ方を基に、建築ツアーをつくりあげて行きたいです」とのコメントがありました。
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そこで、再度テーブルごとに、より自分たちの伝えたいと思ったことを伝えるには、どのような工夫が必要か、より興味を持ってもらうには、どうしたら良いかについて、話し合いを行いました。
再度、話合われた内容を各テーブルごとに発表して頂き、河野さんが、ホワイトボードにまとめて行きました。最後に河野さんから「1~10のことを全てお客さんに話す必要は無ありません。もちろん話しどころの要点などは多少ありますが、今回の講座であがった意見や考えをもとに、少しでもお客さん興味を持ってもらい、お客さんが主体となるような建築ツアーを目指したいですね」とのアドバイスがありました。とびコーさんたちが考える、都美の「建築ツアー」が動きだしました。とびコーさんたちがガイドとなるのは、ちょっと先ですが、かなりお勧めな企画になること間違いなしです。乞うご期待。