東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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Archive for 10月, 2012

2012.10.22

「アート・コミュニケーション・アーカイブ研究 東京都美術館とアート・コミュニティー『造形講座』と『自主造形講座』そして『とびらプロジェクト』」が開催されました。これは、1978年から10年間に渡り東京都美術館(以下:都美)にて行われた「造形講座」と、「造形講座」が廃止された後にその受講生たちがたちあげた「自主造形講座」の歴史を、残されたアーカイブ資料をもとに再考し、現在行なわれている「とびらプロジェクト」との接点を見いだすことから、アート・コミュニティーの本質を考えることに主眼が於かれたアーカイブ研究会です。

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会のはじめはアートコミュニケーション担当係長の稲庭さんから、本会の趣旨や1978年当初からの「造形講座」の概要や流れについてお話を頂きました。

 

続いて、「造形講座」担当学芸員だった河合さんより、当時の様子についてお話を頂きました。当時の「造形講座」は、日本の美術館の教育普及活動としては非常に先鋭的な試みであり、また美術館教育の歴史に於いても注目される優れた試みであったとのこと。その特徴としては、一方的に情報を伝えるレクチャーではなく、学び手が主体的に参加するワークショップの手法を取り入れた最初の美術館教育であったことが報告されました。

 

そして、当時このワークショップを牽引していたのが及部克人先生(現 東京工科大学教授)でした。講座は、週2回を5週間(午後6時から9時まで)、計10日間1セットという密度の濃い講座ながらも、定員の60名(昼の部30名、夜の部30名)はすぐに埋まり、抽選となるほどの人気を博した企画であったそうです。こうした活動は1986年まで(10年間)継続しますが、その後、東京都現代美術館の設置に伴い、都美内の第一アトリエに東京都現代美術館の設置準備室が置かれると、ワークショップを行うアトリエ面積が少なくなり、教育普及活動も次第に収束したとのこと。しかし驚くべきは、この「造形講座」の受講生らが、講座廃止後に都美で行なわれていた活動を自主的に引き継ぎ、美術館外でおこなう「自主造形講座」を立ち上げ、凡そ5年間にも及ぶ活動を展開したことでした。

 

「造形講座」で及部先生と共に講師をされていた米林雄一先生(東京藝術大学名誉教授)にも、当時の講座の様子を振り返って頂きました。米林先生は彫刻を専門とされており、「造形講座」に於いてもさまざまな立体作品の指導なのどをされていました。印象的であったのは「造形講座」の講師を勤めたことが、その後の自分の人生にも大きく関わってきたとのコメントでした。人と人とを繋ぐ役割の大切さを「造形講座」を通してより深く感じられたとのこと。米林先生のその後の藝大での研究や活躍に反映されていったお話を伺うことができました。

 

後半は、当時の「造形講座」の受講生だった方々にご登壇いただきました。受講生の視点からみた「造形講座」と「造形講座」が廃止になってから「自主造形講座」を立ち上げた経緯や、ご苦労された点など赤裸々に語っていただきました。

 

聞き手は茂木一司先生(群馬大学教授)と僕(伊藤)です。受講生だった方々へのインタビューという形で進めさせて頂きました。

 

最後に、当時の受講生だった方々と、講師だった及部先生、林先生、担当学芸員だった河合さんとで当時を振りました。印象的だった話としては、講座廃止後、受講生であった面々で「ルノワール」という喫茶店に集まり、喧々諤々と美術館の外で自分たちの手でつくり上げる「自主造形講座」の定期的な開催に向けて会議を重ねたそうです。
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こうした、モチベーションは、都美が主催した「造形講座」のプログラムが魅力的であったというだけでなく、講座に参加した個々人が、講座での出来事を「自分」という物語の大切な一部として心の中に位置づけていたからに他ならないのでは無いかと感じました。「造形講座」で得た人との出会いと、体験を通したコミュニケーションは、参加者にとって、大切な財産となり、参加者それぞれの心に「小さな物語」を残していったのではないでしょうか。

 

研究会終了後の様子。2階のアートスタディールームには、「造形講座」に参加されていた受講生や、講師が持っていた資料などが展示されました。30年後の今「造形講座」にまつわる数々のアーカイブがのこされているのはまさに奇跡だといっても過言ではありません。これは、美術館が主導的役割を果たして保存したアーカイブ資料ではなく、「造形講座」の講師や受講生たちが、個々人の意思で保存した資料たちの集積です。この資料をもとにこの研究会は次週10月29日へと続きます。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤 達矢)

2012.10.12

とびらプロジェクト・アシスタントの大谷郁です。
1月末に開催される東京藝術大学卒業修了作品展(以下:藝大卒展)が藝大上野校地と東京都美術館(以下:都美)の2会場で行われます。今年はとびらプロジェクトも藝大卒展と連携することから、とびラー候補生(以下:とびコー)限定「東京藝術大学アトリエ・工房の見学ツアー」が行われました。ツアーガイドはとびらプロジェクト・マネージャの伊藤とコーディネータの近藤、それに美術学部教務係長の田野邊さん、同じく教務係卒業修了制作展担当の萬代さんです。
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年度末の藝大卒展はとびコーさんが活躍する次なる大舞台となりますが、お隣にある藝大生の実態を実はあまり知りません・・・。藝大生は普段どのようなところで制作しているのでしょうか?どんなキャンパスライフを送っているのでしょうか?・・・知りたい! そこで、作品の生まれる現場を見に行こう!そして、藝大卒展の魅力を発進するきっかけを掴もう!という試みです。普段は教員・学生でなければなかなか入ることの出来ない場所であり、プロジェクト・マネージャの伊藤(助教)ですら自分の学科以外の授業中のアトリエには入ったことが無いというまさに聖域です。しかし、今回は美術学部の特別の計らいでツアーが実現しました。さー、いざ藝大のアトリエ・工房へ!

まずは日本画専攻のアトリエ。静かで落ち着いた雰囲気の中、大学院生が古典作品(国宝)の模本の制作をしていました。テーブルにはたくさんの資料と、色見本などが置いてあります。

 

実物の複写を見ながら丁寧に描き込んでいきます。学校で実物を見ながら制作することは出来ませんが、所蔵場所まで脚を運び色などの細かな調整も行うそうです。デスクに収まる程のサイズでも、完成までに1~2年要するとのこと。本当に緻密な作業で、緊張感のあるアトリエの雰囲気が印象的でした。

 

次に油画専攻のアトリエへ。油画専攻は日本画専攻と同じ絵画棟にあります。アトリエへ入るとまず目に入るのが白壁に飾られた沢山の絵。アトリエを共有する数人の学生たちがここで制作をしています。このように大きな作品を学校で制作する学生もいれば、学校以外の自宅などで制作する学生もいるそうです。アトリエを共有しながらも、画材を広げ、資料を広げ、それぞれがそれぞれのスタイルを持っている様子でした。

 

次は版画専攻を見学。油画専攻の学部3年生から選択し所属することができます。版画は、木版や銅版をはじめ様々な技法があり、実習を通して基礎的な技術を習得します。こちらは木版の制作風景、鮮やかな色合いが素敵です。

 

次は彫刻科の工房。金属や石や木材を加工する機械の大きな音が響き渡ります。石を研磨したり、金属を繋いだり、大きな木を彫ったりと作業も様々。私には何に使用するのか一見わからない機材や工具で溢れる工房でした。
学生たちの格好も危険を伴う作業に適したものになっています。ちなみにお昼休みは、制作の合間を縫って作業着のまま学食に来る工事現場のお兄さんのような学生も大勢います。一般大学には見られない少し変わった光景です。

 

次に工芸科へ。こちらもまた彫金をはじめ漆芸、陶芸などの細かい分野に分かれ伝統技法を学びます。写真は鍛金専攻の工房、大きな機械が立ち並びます。講師の方からどのような加工に使われるのかを説明をしていただきました。彫刻科と扱う素材は近いですが、工芸科では伝統的な工芸技術の継承を主体とした教育の取り組みがなされているそうです。

 

学生作品を資料として見せていただきました。一枚の金属板が壷や動物へと形を変えるのだから不思議です。「例えば金属を叩いて形をつくるとき、失敗すると1からやり直しなのですか?」と質問すると、「直しが利くようにまずはざっくりと大きく形をとっていき、徐々に細かく手を入れて行きます。動物の目鼻のように一発で決めなければならないポイントもあります。」とのことでした。出来上がった作品と扱ったことがなければ想定しづらい制作の過程とを見比べることができ、とびコーのみなさんも驚いた様子でした。

 

最後はデザイン科のアトリエへ。機材、工具が多く置かれていた彫刻科、工芸科からは一転、とてもスタイリッシュな空間です。
ちょうど授業内で制作した作品の展示が行われていました。チョコレートメーカーのロゴやポスター、パッケージの様々なアイディアがずらっと並んでいます。このような課題や実習を積み重ね、卒業時には学生それぞれが自らの表現を作品として発表します。
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今回は2時間程のツアーの中で多くのアトリエや工房を見学しましたが、残念ながら全ての学科を見学できた訳ではありません。まだまだ藝大には魅力的な学科がたくさんあります。1月の藝大卒展はそんな藝大の魅力を一度に見ることのできる、たまと無い機会です。今からとても楽しみです。
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とびらプロジェクトでは今回のツアーをきっかけに、藝大卒展に向けて卒業作品を制作している学生を取材し、随時ブログにて公開していきます。出来上がった作品だけではなく制作の過程や作者の顔を追うことで、これまでよりもさらに藝大卒展を身近に、また藝大そのものを魅力的に感じて頂ける様にしたいと思います。最後に、各学科の教育研究助手のみなさま講師の皆様、懇切丁寧に学科内の案内と説明をして下さり、誠にありがとうございました!(とびらプロジェクト・アシスタント 大谷郁)

2012.10.12

今日のとびランチは、東京藝術大学の大浦食堂です。ご紹介したいメニューは藝大名物の「豆腐ともやしのバター焼き丼」、通称「バタ丼」です。約40年前からある藝大伝統の味です。写真は、トッピングで卵を入れた「卵入バタ丼」。おもいっきり七味をかけて、少しソーズを垂らすといい感じです。

 

僕としてはまさに青春の味。たまに無性に食べたくなります。人によっては、卒業後に家でもつくるようになり、今では家庭の味になったという程、藝大生とは縁の深い一品です。
今回はコーディネータの近藤さん、アシスタントの大谷さん、とびラー候補生のみなさんと一緒に食べに行きました。みなさん、、美味しかったかな?(近藤さんは何か考え込んでいる様子、そして心配そうにみんなが見つめていますが、、、。)藝大を卒業した数々のアーティストたちの思い出の味、藝大美術館にお立ち寄りの際には、是非ご賞味下さい。ただし、販売は13時からですのでお気を付けて。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

2012.10.06

とびらプロジェクトも始動してから6ヶ月が過ぎました。基礎講座が終わり、実践講座へ進み、とびラーのアイディアからさまざまな活動が生まれました。活動があまりにも急速に成長し、そのバリエーションも多様なため、ここらで一度総会を開き、とびラー候補生(以下:とびコー)同士が自分たちの活動を振り返り、今後の活動の指針を再確認することを目的に、「働いてみたとびラー」と題した総会が開かれました。講師は左から西村佳哲学さん、稲庭彩和子さん、僕(伊藤達矢)です。

 

はじめに西村さんから「なんのためのアートコミュニケーション」という問いが提示され、この半年の活動を再度とびコーさん同士が再確認し合うことから総会は始まりました。

 

3人一組になり、この半年の活動について、成果や反省を含め自分たちが感じたことを話合いました。とびらプロジェクトがはじまって半年間、とびコーのみなさんも無我夢中で走って来たというのが正直なところだと思います。しかし、このまま走り続けるのではなく、少し立ち止まって「何のためのアートコミュニケーション」なのかを考えることで、今後の活動をより意味深いものにして行ければと思います。ただ、この「何のためのアートコミュニケーション」という問いには、正解はありません。むしろ、それはとびらプロジェクトを運営するスタッフも一緒に考え続けてゆかなければならないテーマであるとも思います。そして「何のためのアートコミュニケーション」という問いは、とびらプロジェクトに関わる全ての人の中に千差万別に、個々人それそれ違った答えで深められることを期待しています。とびらスタッフやとびコーさん個々人の解釈がより多様なアートコミュニケーションの在り方を体現するきっかけになるのでは無いかと思います。

 

午後は、とびコーさん自信から各々が担当したプロジェクトについて発表して頂きました。恐らくとびらプロジェクトの全てを体験した人はスタッフを含めて一人もいないのでは無いでしょうか。そのため、自分が参加できていなかったプロジェクトについては、あまりよくしらないというとびコーさんもたくさんいます。

 

こうした発表の機会は、とびらプロジェクトのエネルギーを共有するのにとても大事な場となりました。発表は20組以上に及び、密度の濃い共有の場となりました。

 

今回の総会にはとびコーさんからさまざまなアイテムの配布もありました。写真は館内の情報がつまったとびラー&館内職員専用のマップ。内容をまとめるところから、デザインするところまでとびコーさんの丁寧な作業によって完成されたものです。

 

こちらは、とびコーさんの名刺、全員分あります、こちらも名刺プロジェクトのとびコーさんによって作成されました。これを使ってどんどんとびコーさんも地域進出して頂ければと思います。

 

これは、これまでの半年間をまとめた「とびらすごろく」とびコーさんの一喜一憂がまとめられ、見る人が見たら涙がでそうです。

 

最後はアートコミュニケーション担当係長の稲庭さんと西村ささんからコメントがありました。
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稲庭さん>
「理論で伝えきれないものを大事にして行くのが、アート・コミュニケーションではないかと思います。とびらプロジェクトを通して作品を鑑賞する上でも、今後活動を行なってゆく上でも、とびラーを含め関わった来館者が『自分はこういう風に思う』とそれぞれの感じ方を表明し合い、共有出来る場を育んで行きたいと思っています。こうした各自の感じ方を直接共有するのは、時間や手間がかかることかもしれません。むしろ、テキストを用いた意思の伝達の方が効率の良い最短距離の意思疎通(コミュニケーション)と理解することもできます。しかし『なんとなくこんな感じ、、、』といったイメージ(感性)の共有を対話やその場の暖かみを通して紡いで行くことには、テキストでは補うことができない程の奥行きを感じます。そうした奥行きの存在こそが、『言葉にはうまく置き換えられない大切なもの』に輪郭を与えてくれるのはないでしょうか。今はまだ、アートを通して自分の価値観を表明したり、共有できたりする場所は少ないですが、とびらプロジェクトを通して、もっとそうした場や機会を増やしてゆければと思います。」
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西村さん>
「武蔵境にある図書館『武蔵野プレイス』ってしっていますか?これまでの図書館は住宅地の奥になり、働く人に導線にはあまり乗っていませんでした。しかし、この『武蔵野プレイスは』駅の前にあり、夜10時まで開館しています。しかも1階はカフェになっています。今全国の図書館が少しずつ変化を遂げようとしています。これまでの図書館は図書の収蔵が主であり、そこに来る人も自分の欲しい本を見つけて借りて行く言わば消費者的でありました。しかし、今の先進的な図書館は従来の図書館としての機能は保つつも、人々が図書館に訪れたことがきっかけになり、何かの活動がはじまったり、自分の人生に新しい展開がみえたりと、様々な可能性を創造する『場づくり』としての図書館の姿をつくることがが試みられています。そのため、本の並べ方もいわゆる図書館的な分類法ではなく、本屋さんの様な『出産』というジャンルの後には『孫育て』といったジャンルがくる様に、活用する人の目線で並んでいます。また、ただ本を借りる/読むスペースではなく、市民の活動がスタートするための『止まり木的な空間』や、『ミーティングルーム』などが多数設置されています。更に地下2階に降りて行くと、小中高生のための場所があります。ここでは、図書館であるにも関わらず、カップラーメンをつくることのできる給湯場があったり、クライミングウォールがあったりと少し不思議な空間になっています。実は『武蔵野プレイス』が出来る以前は、授業が終わった後の小中高生に行き場がありませんでした。そのため塾や部活の無い子供たちは、武蔵境にあるイトーヨーカドーの地下に集まることが多かったそうです。この、行き場の無い子供たちに図書館という行き場を与えたのが『武蔵野プレイス』でもありました。こうした様に今では、公共文化施設の役割はどんどん変化してきています。こうした期待の一旦はとびらプロジェクトに、都美ももかかっているのではないかと感じます。」
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稲庭さん、西村さんから、今後の展望を示唆するようなコメントを頂きました。まだまだ美術館では図書館の様な軽やかさを打ち出すことは難しい側面もありますが、施設の利便性に異存するのではなく、活用する人の側に主体性を持つことを基本とするのがとびらプロジェクトらしさであれば、とびらプロジェクト流のやり方で、こうした社会的な期待にも答える方法を今後見い出して行きたいと感じました。これからがとびらプロジェクトの本番です。この半年間の成果を土台に引き続き頑張りましょう
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

 

2012.10.06

キヤノンより寄贈された高精細複製品の「群鶴図屏風(尾形光琳筆)」をとびラー候補生(以下:とびコー)のみなさん向けに公開しました。これまで、少しずつ進めてきた「綴プロジェクト」、徐々にとびコーのみなさんの心に浸透してきるいる様子。

 

屏風は見る角度や明るさによって見え方に大きな違いが生まれます。それだけに奥深く魅力的です。

 

この屏風を使ってどんな鑑賞プログラムやワークショップができるか、ここから先は、とびコーさんからアイディアが出てくる事を待ちたいと思います。じっくり考えて、気持ちの中で何かが生まれ、他のメンバーと共有できるアイディアが出てくるまで、もう少しかかるかな。。(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

2012.10.05

とびらプロジェクトマネージャ伊藤達矢です。

音楽でとびらプロジェクトを盛り上げてくれている「とびら楽団」から活動報告が届きました。

とびラー同士のコミュニケーションデザイン活動の一環として発足した「とびら楽団」。純粋に音楽を楽しむだけでなく、イベントの盛り上げ役としても出番をいただきました。そんな盛りだくさんの3か月をメンバーが振り返ります。

記述はとびラー候補生(以下:とびコー)の淵上幸吉さん、林久美子さん、佐藤史さん、松澤かおりさんです。

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■楽団発足と練習(5月26日)
「えっ?美術館に楽団?そんなのあり?」「あって、いいじゃん! やろうじゃん!」(佐々木学芸員の口ぐせがどうも移ってしまったようで!?)という一声から始まったとびら楽団。日本の美術館史上初の(はず)楽団が産声をあげました。楽器経験は一切問わず、サポーター大歓迎、出入りも自由、要すれば誰でも入団可という楽団の誕生です。ということで、この呼びかけに集まったとびラーは約20名。リコーダーにピアニカあり、マラカスにカスタネットあり、ウクレレに、木琴、ウッドベースにテナーサックス、もちろんボーカルもありと多種多彩。きっと参加したメンバーの本心は、「おいおい、これで音出したらいったいどうなるの?」と、みんな不安だったはず。そんな楽団の最初のチャレンジ曲は、NHKみんなの歌の『メトロポリタン美術館』。何と準備された楽譜は、ボーカルとピアノ伴奏譜のみでパート譜なし。「ねえねえ、私、どこ吹いたらいいの?」「トライアングルは、どこで鳴らしたらいいの?」そんな質問を無視して、何はともあれ音出ししてみようということで、5月26日に、都美の裏手の公園の木立の中、肩に力の入った伊藤さんの指揮のもと、初・野外練習を実施。公園の木々達も、あまりのハーモニーのすばらしさ??に、幹をねじらせたとかいないとか、前途多難の出発と相成りました。
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しかし、ここはとびコー。20人いれば何とかなるもので、パート譜がないなか、オリジナルの音源を何回も聞いての音作り。そして特訓すること2回、その甲斐あって、あの都美の裏手での練習はまぼろしだったのかというほど、楽団の音も、そしてリズムの乗りも見違えるほどにレベル急上昇しました。さあて、6月23日のとびラー懇親会でデビューの結果はいかに?(淵上 幸吉)

■デビュー(5月23日)
6月23日(土)、基礎講座最終日であるこの日の懇親会にて、とびら楽団は記念すべきデビューを果たしました。とびらプロジェクトの皆様へ、初のお披露目公演です。 デビュー公演(?)にむけた最後の練習は懇親会直前。演奏はもちろんおじぎのタイミングにいたるまで入念なリハーサルを行い、不安と期待のなかいざ会場へと向かいます。そして会場にはうれしいサプライズが待っていました。駅伝の沿道応援さながら、楽団を応援するちいさな三角の旗を持ったとびコー(とびラー候補生)さんたちがたくさん! 心づよいバックアップを得て、楽団員のやる気もさらにぐぐぐと高まります。出番まで、緊張で気もそぞろな歓談とお食事タイムをしばし過ごし、いよいよそのときがやってきました。
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楽団員はバックヤードに集合、6月末から始まるマウリッツハイス美術館展にちなみ、とびコー時田さんが制作してくださった『真珠の耳飾りの少女』のターバンを身に着け、お互い照れながらも青いターバンの少年と少女に変身です。(※この衣装は「青タープロジェクト」用のものをお借りしました。)
そしてむかえた本番。
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指揮者には、これまた時田さん作のかわいい衣装に身をつつんだアシスタントの大谷さん。曲目は大貫妙子さんの『メトロポリタン美術館』です。わたしたちのレパートリーはこのたった一曲。されど、少ない練習期間のなか、みんなであれこれ模索しながらかたちにした大切な一曲です。とびコーさんたちのあたたかい声援と歌も加わり、演奏はさらに盛り上がりをみせ、なんとアンコールまでいただきました。(ありがとうございました!)

 

とびら楽団はみなさんの応援のもとひとつになり、かたちになりました。みなさんの楽しい思い出となっているとしたら、とびら楽団デビュー公演は大成功だったのではないかと思います。(林 久美子)

 

■“とびら記念日”(8月5日)
楽団、青タープロジェクト(青ター)、うちわプロジェクトが一同に会し、とびコーと来館者の方々との交流を生んだ、まさに「とびらプロジェクトの記念日」に相応しい日となりました。当日の楽団員の参加人数は「あなたも真珠の耳飾りの少女プロジェクト」チーム・チラシdeうちわプロジェクトを兼任しているメンバーも含めて、10人以上。中には初参加となるとびコーもいました。楽団としては、懇親会以来の久々の音合わせとなりましたが、それ程かしこまった感じもなく、各々が楽しく音を出せていたように感じました。指揮者の出だしの合図があるわけでもなく、誰かの“音出し”をベースに、それぞれが“乗っかって”、“重なって”いくような演奏です。

 

ただ1つ悩ましいことといえば…そう、その場に居た誰もが感じていた「レパートリーが1曲」という精神的重圧。自然と次の楽曲選びの話題が挙がり、次曲候補をとびラー専用掲示板で募集する運びとなりました。(佐藤 史)

 

■“とびらゴールドデー”(8月15日)
8月15日(日)はとびら楽団2度目の演奏。シルバーデーで多くのお客様が来館される中、青ター開催・・・いや、開幕?楽団は少人数ながら唯一のレパートリー曲『メトロポリタン美術館』を演奏しました。この日は正面エレベーター前で行列のお客様に向かっての演奏。炎天下、次第に息は上がり、間も持たなくなり・・・ここで新しい風を!と初めて『カントリーロード』に挑戦しました。練習時間もなかったため、どうかな?と心配しましたが、お客様からはなかなかの反応。そして、どうしても楽器の少ない寂しさを感じていた頃、団員から「歩こうか!」の声。かくして、これまた初の鼓笛隊が都美館前を行進しました。

 

後ろではとびラー扮するフェルメール隊長が率いる青ターが、プロのようなトークと手際で「少女」をプロデュース。楽団は「あなたも真珠の耳飾りの少女プロジェクト」と一体となれた1日でした。以後はブログにある通り、暑い夏を乗り切ったのでした。(松澤 かおり)

■とびら楽団のこれから
とびら楽団の今後としては、次回の企画展であるメトロポリタン美術館展でも、演奏の機会をいただけると聞いています。そこでこその『メトロポリタン美術館』です。さらにアメリカにちなんだレパートリーを増やし、練習にも力を入れていきたいです。確かにディレッタントの集まりという限界はありますが、「できないことを数えてため息をつく」のではなく、「できることからやってみる」そんなスタンスから生まれる交流もあるのではないでしょうか。今後も、アートを介したコミュニケーションを実践するプロジェクトとして、とびら楽団を続けていきたいです。(玉井 あや)
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■とびラー候補生:執筆
淵上幸吉(ふちがみ こうきち)
美の殿堂・都美でサックスを演奏するという前代未聞の快挙(?)を成し遂げる。テナーサックスとジャズをこよなく愛す。
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林久美子(はやし くみこ)
東京の下町在住。会社員。好きなミュージシャンは芳垣安洋さんと高田漣さん。楽団ではピアニカ担当。
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佐藤史(さとう ふみ)
楽団ではピアニカ担当。7年間ピアノを習っていたが、その記憶がほとんどない。密かに複音ハーモニカを練習中。
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松澤かおり(まつざわ かおり)
一男一女の母。趣味はピアノ演奏。好きな作曲家はドビュッシー。楽団ではピアニカ担当。楽譜を管理するライブラリアンでもある。
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玉井あや(たまい あや)
脱OL後、一念発起して美術史を学ぶために復学。楽団ではリコーダーおよび雑用団長を担当。最近リコーダーアンサンブルに目覚める。

 

 

2012.10.05

とびらプロジェクトマネージャ伊藤達矢です

真夏のマウリッツハイス美術館展に並ぶ長蛇の列をクールダウンした「チラシdeうちわプロジェクト」から夏の活動報告が届きました。

記述はとびラー候補生の越川さくらさんです。

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■事の始まり
「今度のマウリッツハイス展では、一日に1万人の人が来るらしい」

 思えば「チラシdeうちわプロジェクト」はこの一言から始まりました。リニューアルした東京都美術館(以下、都美)の最初の特別展である「マウリッツハイス展」は入場者数の予想も桁外れのものでした。「夏の暑い中、お客さんが何時間も並ぶのか!?」「なんとかしなければ!」血気盛んな(?)とびラー達が色めき立ちました。長蛇の列対策プロジェクトが立ち上がり、瞬く間に数十ものアイデアがとびラー専用掲示板を埋め尽くしました。整理券配布、ファストパス、フリーペーパー配布、紙芝居、グッズの販売、椅子設置、伝言ゲーム、などなどなど…。
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それらのアイデアを引っさげ、早速ミーティングです。きっと今までにない画期的な長蛇の列対策が生み出されるに違いない!夢は膨らみます。しかし、2日間の集中ミーティングの終わりかけた頃、私たちは大きな無力感に襲われていました。私たちにできることがほとんどない事に気がついたのです。
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ミーティングの始め、私たちは数々のアイデアを“にぎやかし系”(列に並んでいる間にエンターテイメントを提供して楽しんでもらう)と、“おもてなし系”(暑い中列に並ぶ苦痛を軽減する)とに分類しました。そして、長蛇の列対策プロジェクトでは、主に“おもてなし系”の企画を実行する事にしました。“にぎやかし系”はとびラーの得意とする所らしく、絵から顔を出して写真撮影をする企画、「あなたも真珠の耳飾りの少女」プロジェクトなどがすでに走り出していたからです。
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しかし、“おもてなし系”の企画はそのほとんどが私たちとびラーの手に余るものでした。それもそのはず、数々の展覧会を開催している都美や朝日新聞社のスタッフさん達が、その経験から必要な策はすでに講じていらっしゃったのです。それに、もてなすからには来る人全員をケアしなければ!と気負っていたせいでもあると思います。落胆する私たちは「それでも、私たちらしく、私たちにできる事をやろう」と、とあるスローガンを思いつきました。
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「とびラーは、あなたの待ち時間を全力で応援します!」という言葉です。
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このスローガンを思いついた途端、みんなの中で何かが変わりました。とびラーが“ボランティアさん”なのか、“単なるおもしろい人たち”なのか、そんな定義もまだ何も見えていない頃です。それでも“私たち”は力及ばないまでも“全力で”来場者の方々を“応援したい!”のです。やりたいからやる。やれる範囲でやる。楽しくやる。そんなイメージを、その場のみんなが共有できた瞬間だったように思います。
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不思議な事にその瞬間、一つのアイデアが頭に浮かびました。
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「うちわ、作ってみる?」
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 はい。普通ですね。暑いから、うちわ。普通すぎます。でも、普通のうちわじゃないんです。あるものをリユースしたうちわ。そのあるものとは、どこの美術館にも必ずあって、とても大事だけれど、ある期間が過ぎてしまったら廃棄するしかないもの…そう、チラシの登場です。こうして、チラシdeうちわプロジェクトが始まりました。

■ミーティング!ミーティング!ミーティング!

1、コンセプトを考える
―チラシを半分に折って、厚紙の持ち手を付け、うちわにする―
このシンプルなアイデアは、他のとびラー達からも温かく迎えられました。
「いいじゃん!これ!簡単だし。エコだし」
「そういえばチラシって配布期間が終わってしまったものが余ってるはずよね」
「涼しい涼しい!いいね、これ。へー、こんなのでうちわになるんだね」
大好評です。メインメンバー4人も集まり、さあ後は作るだけ!のはずが、チラシdeうちわプロジェクト、略してうちPはこの後なんと5回もミーティングを重ねる事になります。
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始め、私たちはまずうちPのコンセプトについて話し合いました。
①   来館者に涼をとってもらいたい[cool]
②   配布期間の過ぎたチラシを有効活用したい[re-use]
③   来館者ととびラーとのコミュニケーションツールとしたい[communication]
④   チラシを美術館の歴史と捉え、そのデザインも大切に有効活用したい[re-design]
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といった項目が上がりました。
しかし、ここでいくつかの疑問が生じました。
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・  [re-use]の観点から、新たなゴミとなってしまう可能性のある「持ち手部分」 を新しく作らなければいけないことへの疑問。
・  [re-design]の観点から、半分にしたチラシに持ち手をつけると、大体の場合、メインとなる図像が逆さまに使用されてしまうという欠点。また、あまりにも元々のチラシの情報(展覧会名など主に文字情報)がはっきり見えすぎてしまうと、持ち手部分にある情報との食い違いがおこり、見る人に混乱を招くのではという懸念。
・  [communication]の観点から、当初は対面のワークショップで来館者自らうちわを作ってもらう実施方式が検討されていたため、ホッチキスの使用は危ないかもしれないという危惧。
などです。そこで、チラシを利用した新たなうちわのアイデアが検討されました。
2、折り紙方式
その新しいアイデアとは、折り紙方式のうちわです。この折り紙方式にはモデルがあります。ある本でたまたま見つけた「四万十新聞バッグ」がそのモデルです。
この新聞バッグは高知県出身の梅原真さん(梅原デザイン事務所)が、ふるさとの高知県で始められた活動です。四万十川の流域で販売する商品は、全て新聞紙で包もうという「ラストリバーのこころざし」、「モッタイナイ×オリガミ」などのコンセプトのもとに新聞でエコバッグを作る試みです。 中でも、私が一番共感したのは「考え方」を伝える。という点でした。折り紙のすばらしい所は「折り方と四角い紙さえあれば、誰でも、いつでも作れる」という事だと思います。それを、古新聞を使いバッグを作ることに活用し、さらに「環境を汚さない」という「考え方」を伝える活動です。この活動は今や全国に広がり、海外にも「折り方」と「考え方」を輸出しているとの事。これを知ったとき私は、コレだ!と思いました。チラシを「折り紙」する事でうちわができたら…上記の問題点が全て解決し、更にうちわに新たな価値が加わります。
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しばらく、実際にチラシを折りながら考えていましたが、そうすぐに良い折り方が見つかるはずもありません。四万十新聞バッグの折り方を最初に考えたのは四万十川流域に住むおばちゃんだったそう。私たちも誰かに聞いてみよう!聞きたい事を90人の仲間達にすぐ聞けるところが、とびらプリジェクトの良い所。早速、掲示板で呼びかけます。「うちわの折り方募集中!」するとやっぱり出ました色々なアイデア!もの作り大好きな小学生(とびラーのお子さん)や、折り紙大好き!なとびラーさんから折り方のアイデアが色々と寄せられました。
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しかし残念ながら、今回この折り紙案は実施まで漕ぎ着けませんでした。
・  ワークショップ形式の場合:(お客さんが)暑くて折り紙をしてくれる余裕がない。
・  作って渡す場合:制作時間がかかりすぎる。
・  「折り紙」としては面白いが、「うちわ」としては涼しさの点で問題が残る。
等がその理由です。
けれど、この折り紙案はメンバーの間でも想いが強く、次の機会があればまた挑戦したいと思っています。
3、持ち手のデザイン
この辺りから、実施方法はできあがったうちわを配る方式。うちわは厚紙の持ち手つき。持ち手は8×8cmの正方形を斜めに使用する。ということとが徐々に決定してきました。次は、持ち手部分の厚紙に印刷する内容の検討に入ります。メンバーの新倉さんの作ったデザインを元に5回目のミーティングです。このミーティングには、今までホワイトボード上でうちPの動きを見守っていたとびラーも参加してくれました。外からの新鮮な空気が、少し視野が狭くなっていた私たちにもう一度、このうちPの意義を再認識させてくれました。
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①   使用期間の過ぎたチラシを有効利用して、来館者に涼をとってもらうこと。
②   とびラーの存在を知ってもらう名刺代わりとすること。
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その2つが最終的なうちPの目標となりました。小さな持ち手の中で、最低限この2つをどう伝えていくかを考え、使う言葉やデザインを考えました。
作る!そして配る!
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作業
持ち手部分をボール紙に印刷したものが出来上がってくると、後はひたすら折ってホチキス留めすれば完成です。とびラー掲示板に「うちわ作りのお手伝い募集!」と募集をかけると十数名のとびラーが集まってくれました。ワイワイお話をしながら折っては留め、折っては留め、うちわ1000枚が2時間で出来上がりました。あとは配るだけ。さて、パッと見ただけではうちわと分からないこの“チラシdeうちわ”。来館者の方々は、果たして受け取ってくれるのでしょうか…。
<表>
<裏>
■実施
実施日は8月15、水曜日。暑い盛りのシルバーデーを選びました。シルバーデーとは、65歳以上の方が無料でマウリッツハイス展を鑑賞できる日です。7月のシルバーデーには120分という待ち時間ができてしまっていました。来館者の待ち時間を応援するならこの日をおいて他にないという日です。
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「どのくらいの人がうちわを受け取ってくれるんだろう」試行錯誤の末出来上がった“チラシdeうちわ”をやっと来館者の方に届けることができるという喜びと、一抹の不安を胸に、うちわの入った箱を抱え、屋外に長々とできた行列へと向かいました。しかし、いざ配り始めるとそんな不安は吹き飛んでしまいました。列に並んでいた来館者の多くが“チラシdeうちわ”を欲しがってくれたのです。ご自分で扇子をお持ちの方の中にも「私にも貰えますか」と手を伸ばしてくださる方もいます。結局とびラーは5名様ずつ位の幅広の列の中に入り込み、間を縫ってほとんどの方にお配りする程の好評ぶりでした。「こんにちは!とびラーです!」「うちわをどうぞ!」と言いながら、あっと言う間、40分程で全てのうちわを配り終えてしまいました。
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後から「公園を歩いている人がみんなチラシのうちわをヒラヒラさせていて不思議な光景だったよ!」という嬉しい報告も耳にしました。
本当に一瞬のできごと。一瞬の”上野公園チラシdeうちわジャック”です。
念のため用意したうちわ回収ボックスにも、返却されたうちわは20枚ほどでした。
その他
◎プロジェクトの進め方について
うちPが始まる直前まで、私たちはとびらプロジェクトの基礎講座をうけていました。そこでは人の話を「きく力」、ミーティングの進め方など、プロジェクトを進める実践的な方法をこれでもかというほど叩き込まれました。だからまず、やってみたかった。実際にプロジェクトをやってみたいという想いがとても強かったです。「きく力」を研ぎすまし、「居合わせた人がすべて方式」で、最小単位3人が、イメージを共有しあい、各ミーティングをタスクに変える習慣をつければ本当にプロジェクトが進行するのか。そして、その試みがどんなに小さいものでも、それがとびラーの足跡となり波紋となり、私たち自身が「新しい公共」となり得るのか。「自ら行動する実験台になってやろう」という気持ちは今も変わっていません。
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またうちPはミーティング以外でのメンバー間でのやりとりをweb上のとびラー専用ホワイトボードで行うことにこだわりました。正直、メールでのやりとりの方が早いのですが、進捗状況をネット上にアップしておけば、他のとびラーたちの途中からの参加も可能だと思い、情報公開に留意しました。この事で結果的に、活動が自動的にアーカイブされ、今この活動報告を執筆するにあたっても役立っています。
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◎他館でのうちわを使った取り組みの調査
•新江ノ島水族館 一回200円でオリジナルうちわを作ることが出来る。まず背景3種類を選び、うちわを作った後、好きな深海の生き物のシールを3つ選び、貼って完成。
•井の頭自然文化園 園内をクイズ形式でスタンプラリーで回り、全てのスタンプを押すとゴールでうちわをもらえる。厚紙のみを使用したエコなデザインのうちわ。
新江ノ島水族館うちわ  井の頭自然文化園うちわ
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■むすび
作ったのはただのうちわでした。
配れたのはたったの1000枚でした。実現できたことよりも、諦めたことの方が多かったと思います。しかし、このプロジェクトを終えた事で、私たちの中に何かとても確実なものが降り積もりました。とびラーとは何なのか?まだ答えのでない疑問に私たち自身がヒントをもらったような気がしています。また、私たちが本気で取り組んだ結果を来館者の方々が興味を持って受け入れてくれた事。この事は今後、私たちが様々な活動をしていく上で大きな自信になると思います。
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※参考資料
しまんと新聞ばっぐ 公式サイト http://shimanto-shinbun-bag.jp/
新江ノ島水族館 公式サイト http://www.enosui.com/
井の頭自然文化園 公式サイト http://www.tokyo-zoo.net/zoo/ino/〈チラシdeうちわプロジェクトメインメンバー〉
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越川さくら、鬼澤舞、新倉千枝、山中麻未
その他沢山のとびラーにご協力頂きました。

とびラー候補生:筆者:越川さくら(こしかわ さくら)
夫と3才の娘、2匹のフェレットと共に東京都三鷹市に在住。

 

2012.10.05

とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢です。
マウリッツハイス美術館展の会期中に好評を博した「紙芝居プロジェクト」の活動報告がまとめられました。
記述はとびラー候補生の山中麻美さんです。
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この紙芝居プロジェクトは、都美に来られたお客様に、都美で行われている展覧会をより親しみやすく、楽しく鑑賞してもらいたい、という願いから生まれました。記念すべき第1作目は、現在開催中のマウリッツハイス美術館展を題材にした物語、「都美子のタイムトラベル」です。この紙芝居で楽しみながら作品の背景を学ぶことによって、美術の面白さを子どもから大人まで実感していただけると嬉しく思います。
マウリッツハイスがスタートしたと同時に生まれた紙芝居プロジェクト。夏休みの上演を目標に、毎週打ち合わせを行い、物語を練り上げていきました。大人の方にも楽しんでいただくため、豆知識を豊富に盛り込んだ内容となっています。企画展を見るのが初めての人だけでなく、美術通の人にも楽しんでいただけるような内容づくりを心がけました。そのため、メンバーのひとりひとりが企画展をじっくりと鑑賞し、フェルメールが生きていたオランダの時代、文化、歴史について勉強を重ねました。
これが、「都美子のタイムトラベル」全16枚のイラストです。イラストに起こす前に、ラフ画を皆さんと制作して、何をどこに配置するのか、コマ割りを細かく決めていきました。その後、メンバーの大学生2人で手分けして制作しました。なので、よーく見ると、前半と後半で微妙にタッチの違いがあるのです。皆さん気づきましたでしょうか?
第一回目のお披露目は8月19日、佐藤慶太郎アートラウンジで行われました。前座と紙芝居合わせて15分程度、14時と15時の2回の上演です。初公演でしたが、たくさんの方に見ていただき、ラウンジのソファに座っていらっしゃるお客様も耳を傾けてくださっていました。また子どもたちは、おまけで披露した、真珠の耳飾りの少女のターバーンの色が変化してゆくパフォーマンスに、とても喜んでいる様子でした。
2回目は講堂前にイスを置き、ゆったりとしたスペースで紙芝居を上演することができました。呼び掛けにはチラシも配布し、この日は前回よりたくさんの方に興味をもってもらえたのではないかと思います。講堂前の上演では大人の方が多く、ショップへと上がる階段に座って鑑賞しているお客様も目立ち、私たちメンバーも、とても手ごたえを感じる1日となりました。
私たちの今後の夢は、他の美術館や小学校、図書館で出張紙芝居を行うことです。そして美術のおもしろさを、紙芝居を通してもっと多くの人に知ってもらい、この活動がアートと人とをつなぐ架け橋になればいいと思っています。また、全国の図書館で私たちが作った紙芝居を置いてもらい、いつでも手に取って見られる環境ができれば、とても理想的です。しかしこの紙芝居プロジェクトの活動はまだ始まったばかり。次のメトロポリタン美術館展も今から少しずつストーリーを考え始めています。
皆様、今後の活動にもご期待ください!
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とびラー候補生:筆者:山中麻未(やまなか あさみ)
現在、武蔵野美術大学 芸術文化学科に所属。今年挑戦したいことは、アートに関するボードゲームや絵本、おもちゃを作ること。趣味は週1での美術館巡り、恐竜の化石の鑑賞やプラネタリウム。

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