2016.03.27
3月27日(日)東京都美術館のMUSEUM TERRACEにて、とびらプロジェクト5回目のオープンレクチャー「上野で語る。100人で語る。文化の杜の未来。」が開催されました。
様々な文化施設が集まる上野公園。美術館や博物館、動物園や図書館、音楽ホール、大学など、日本の多様な知と財産が集まる場所です。今回は上野公園を「文化の杜」として育てていくために、多様な人々がフラットに語り合う、ワールド・カフェの形式で対話を育みます。交流を育みながら様々な視点やアイデアを共有することで、考えを深めていきました。集まったのは、上野にある9つのミュージアムで働く人々や、上野公園に関する仕事をしている人、とびラー、上野にゆかりのある人から初めて来た人まで、約100人。それぞれの言葉で、上野への想いと未来について語ります。
スタートは17時。会場に着いたら、くじをひいて、ランダムに着席します。
司会の方によってスタートが告げられ、テーブルについたら「チェックイン」。
簡単な自己紹介と、いま感じていることや、今日の気分など、思い思いのことを話します。
互いのことを聞き合い、対等に話し合える場をつくっていくことから始まりました。
まず始めに、東京都美術館アート・コミュニケーション担当係長・稲庭彩和子さんよりご挨拶。東京都美術館×東京藝術大学の活動として「とびらプロジェクト」「MuseumStartあいうえの」の紹介がありました。
続いて、コミュニティデザイナーの山﨑亮さんによる基調講演。
テーマは「多様な人々が、異なった価値を持ち寄り、並べ、組み合わせることで生まれる未来」。
副題についていた「No community,No Life?」のフレーズに感銘を受けた人も多かったようです。
山﨑さんが各地で行ってきた活動の紹介を受け、コミュニティの在り方・作り方について考えを巡らせていきます。
講演のあいだ、参加者に渡されていたのは「ストーリーメモ」。自分が気になった部分や、大切に感じたところ、疑問に思ったところなどを書き留めておくためのツールです。
山﨑さんのお話の後、それぞれのメモを元に感想を語っていきます。
ここまでが前半の内容でした。
後半までの休憩時間では、軽食をとりながら過ごします。まだまだ議論が続くテーブルも多くありました。
くだけた雰囲気のなかで会話が進みます。
後半では、いよいよ上野の未来に焦点を当てたテーマについて話し合います。
第1ラウンドは「あなたが上野について『誇り』や『愛着』だと感じていること」。
上野の魅力とは?誇れることは?1人1人のバックグラウンドを元に言葉を紡ぎます。
ワールド・カフェでのルールは、「考えと経験をオープンにすること」「語り手の話をよく聴くこと」「それぞれのアイデアを結びつけること」「議論を掘り下げること」。
お互いの話を大切に聞きながら、自分の言葉で語り、考えを深めていきます。
テーブルにセットされていた白い紙が、みなさんのアイデアでカラフルに彩られていく様子。
第2ラウンドのテーマは「上野をもっと『誇り』と『愛着』を持てる場所にしていくためには?」
テーブルを移動して、違う場所から集まってきた人で新たに話し合いを始めます。
それぞれのテーブルで話したことをシェアしながら、様々な議論が展開していきます。
第3ラウンドのテーマは「上野がより『誇り』『愛着』を持てる未来になったとき、上野とはどんな場所になっているか」。
移動したテーブルからもとのテーブルに戻り、改めて未来の上野に思いを馳せます。
タイムアップのサイン「口を閉じて両手をあげる」が会場に行き届いたところで、語り合いの場は終了。
その後は今日のことを振返りながら、感想や疑問、気づき、今後の抱負をポストイットに書き出します。全参加者のコメントを集約したホワイトボードは圧巻!
参加した方の声からは、上野がそれぞれにとって思い入れのある場所であること、そして人々の交流・連携が今後の上野を作る要であるということが語られました。
最後に、上野「文化の杜」新構想推進会理事・東京藝術大学教授である北郷悟さんから終わりの言葉をいただき閉会です。
100人がそれぞれの観点から見た上野。語ることで共有できたビジョンや、新たに見えてきたこともあるでしょう。今回のワールド・カフェでの出会いや、生まれたアイデアは、今後どう活かさされていくのでしょうか。上野にいる人たちがつながり、ともに歩むことから未来は形づくられていきます。
2020年のオリンピック、そしてその先の未来に向けて、上野とはどんな場所になっていくのでしょうか?会場に来られなかった方も、上野の未来について考え、誰かとシェアしてみてください。
上野に来た人、いる人、これから来る人、全てのみなさんによって、上野は彩られています。未来の上野を考えていく新たな出発地点に、みなさんと一緒に立てていることを嬉しく思いました!このご縁を大切に、これからも上野を考え続けていける場が、ミュージアムであったらいいなと思っています。
(とびらプロジェクト アシスタント 峰岸優香)
2016.03.26
春は出会いと別れの季節。とびらプロジェクトも、ひとつの節目を迎えました。
3月26日(土)に行われたのは、2期とびラーの任期満了式「開扉会」。
3年間の活動期間を終えたとびラーたちが、上野からそれぞれのとびらへと進んでいく門出の日です。
開扉会の場をつくっていくのは、もちろんとびラー。
「3年目の節目を彩るプロジェクト」として、この日のために長い時間をかけて準備がすすめられてきました。
会のはじまりは、プロジェクトマネージャの伊藤さんと、東京都美術館の稲庭さんによって告げられました。ともに過ごした時間を振返りながら、美術館から社会的問題へアプローチしていくことについて考えていきます。とびラーの存在によってできたことや、生まれた活動、人とのつながり。とびらプロジェクトと連動するMuseumStartあいうえのの活動も、これまでの経験値を踏まえて変化していきました。
同じ時間を過ごし、様々な活動をともにしてきた仲間たち。これまでに作り上げてきたもの、迷い悩んだこと、来館者との出会い、成長していく子どもの様子、数えきれないほど重ねて来た話し合い。数々の記憶を思い返すと、自然に笑みがこぼれます。
3期、4期のとびラーも集い、限られた期間のなかでの活動や、任期終了後のことについて考えます。とびらプロジェクトのなかで築いた経験を、今後どう活かして行くかはそれぞれの課題です。ここでもらった種をどこに蒔くのか、どう育てるのか。これからの社会と美術館、それぞれの今後の活動をつくっていくきっかけを探る場を共有しました。
その後は、昨年任期満了した1期とびラーによる団体「アート・コミュニケータ東京」の紹介。
アート・コミュニケータ東京は任期を満了したとびラーの活動と、各所のつながりを支える一つの基盤です。楽しいプレゼンテーションにはたくさんの笑いが起きていました。
その後は場所を変え、3年間の活動拠点となった、東京都美術館の景観がみえるところへ。
いよいよ任期満了を記した「開扉の証」が授与されます。
とびラーひとりひとりの名前が伊藤さんによって読みあげられ、とびらプロジェクトの代表教員である東京藝術大学の日比野克彦さんと、東京都美術館の林久美子副館長から任期満了の証を手渡されます。
「開扉の印」に封入されているのは上野から次の場所に向かうための切符。2つ折りのカードの中には、東京都美術館・真室佳武館長、東京藝術大学・日比野克彦教授のお二人からのメッセージが書かれています。ひとつひとつが手作りです。
授与の後は、送り出すとびラーからの言葉。
3年間の感謝の気持ちと、今後の期待、そして、これからも人と人のつながりは続いていくことが伝えられました。
ここで、3・4期のとびラーから開扉するとびラーに向けてのプレゼント。2期生ひとりひとりにインタビューをして、それぞれの言葉を綴った冊子が贈られます。
インタビューの実施から執筆、企画から編集まで、とびラーらしい工夫や気遣いにあふれた一冊です。3年間の活動の記録も掲載されています。
懐かしい記憶がよみがえったり、一緒に過ごしてきたとびラーの意外な一面が見えてきたり。
続いて、開扉するとびラーからの言葉。
リハーサル無し、ぶっつけ本番!全員で声をあわせます。
旅立ちの声が揃って響きわたりました。
最後の「ありがとうございました」は、素敵な笑顔で締めくくられました。
そして、退任するスタッフからの言葉。石井理絵さんと伊藤史子さん。
とびラーとともにMuseumStartあいうえのをひっぱってきた2名にも、「開扉の印」が贈られます。
会の終盤では、東京都美術館で働く方々や、とびらプロジェクトを支える人々から祝辞が贈られました。
まず、東京都美術館より林副館長。
「文化財を通して人と人とのつながりをつくる大切さを、よく痛感します。これからもそれぞれの場所でがんばってください」
東京都美術館・山村学芸課長。
「絵を描く人だけでなく、絵を語る、楽しむ、広がりをつくる仲間が増えていったら、美術はもっと活気づいていくと思います。これからの活躍に期待しています。」
とびらプロジェクトスーパーバイザー、アーツカウンシル東京・森司さん。
「ぜひ、美術館をとびこえて活動を続けてください。ここでの経験を大事にして、歩みを止めることなく、アートの輪を広げる活動をしていってください」
東京藝術大学教授、とびらプロジェクト代表教員の日比野克彦さん。
「一つのことをやるにはどういうことが必要か、目の当たりにして学んできたかと思います。次からは自分で呼びかけて、自分なりのアート・コミュニケータ活動をしていってください」
東京都美術館アート・コミュニケーション担当係長・稲庭彩和子さん。
「一緒に歩いて来られて本当に嬉しいです。今年の開扉会では、去年とは違うビジョンが見えてきましたね。ここで蒔き、育てた種を、外に持って行ったり、温め続けたりしながら、また人と話すことでさらに育てていってほしいと思います」
最後に、東京藝術大学特任助教授・とびらプロジェクトマネージャの伊藤達矢さん。
「みなさんがここでつくったようなコミュニティを、ここから、他の場所へ広げていってください。お互いこれからも、がんばってやっていきましょう!」
その後はいつも活動するアートスタディルームでカフェタイム。
こちらもとびラーによる企画が満載のひとときでした。
これまでのワークショップに向けて作ってきたものを総動員!展覧会の思い出が詰まった道具たちで、思い思いに彩ります。
他にはとびラーが撮影したこれまでの記録映像を鑑賞したり、
とびラー考案のボードゲームに興じるスペース。一般向けにも開催された「ボッティチェリの人生ゲーム」は、大盛況でした。
最後の時間まで、話が尽きることはありません。とびラーの任期は終了しても、形を変えて人と人とのつながりは続いていきます。
本年度、次のとびらをあけたとびラーは33名。
33人のアート・コミュニケータは、これから1人1人が道をつくっていきます。
新しい所へ向かう人、今までいた所に戻る人。上野からの行き先は人それぞれです。
ここでみなさんと一緒に過ごした時間と、培ってきた体験は、全てがかけがえのない出会いに彩られていました。これからも自分らしく、アート・コミュニケータのマインドを大切に、次のとびらへ進んでいってください!
(とびらプロジェクト アシスタント 峰岸優香)
2016.03.21
とびラー考案のボードゲーム、「ボッティチェリの人生ゲーム」を実施します。
現在開催中の「ボッティチェリ展」を題材に、ボッティチェリの人生や作品を楽しく知ることができるボードゲームを制作しました。
熱狂的ボッティチェリファンの”怪盗ポッティ”によって盗まれてしまった、8点のボッティチェリ作品を取り戻すゲームです。参加者の皆さんでチームを組み、協力してゲームに挑戦してみませんか?
2016.03.19
上野公園の桜の蕾がほころび始めた3月19日。「ボッティチェリ・鑑賞・香り~聞こえない方と聞こえる方のサイレントコミュニケーション~」のワークショップが開催されました。耳の聞こえない方と聞こえる方が、美術館において、手話通訳を介した交流だけではなく、お互いの感覚を活かしながら・・・鑑賞を共有する、新しいアプローチの提案、コミュニケーションの可能性を広げる様な“体感の場”を目指しました。
◆ようこそ!東京都美術館へ
◆アイスブレイク
自己紹介の後に、アイスブレイク(初対面同士の緊張をときほぐすウォーミングアップ)!
ボッティチェリに関してのキーワードでジェスチャー当てゲーム(手を上げてヒラヒラする動作は聴覚障害者の方の「拍手」の意。いつの間にか、みなさん取り入れてらっしゃいますね)
◆展示室へ
グループごとに、実際に展示室に作品を観に行きます
◆作品鑑賞
展示室に入り、耳の聞こえない人と聞こえる人が一緒に、一つの絵を観て感じた事などを自由にボードを使いながら言葉にしていきます。
◆香り選び
作品から受けたイメージを14種類の香り(お香)の中から、選びます。
【参加者の声】
○絵が立体アートになって良かったです。脳内環境が100%満たされる?!
○香りを使ったコミュニケーションは、初めてだったので緊張もあり、少し疲れました。いかに日頃無神経だったかを実感します。
◆サイレントコミュニケーション
見た絵について、どのあたりからどのような香りや印象を感じたかを記入していきます。この際、耳の聞こえる人は発話せず、
耳の聞こえない人は手話を使わずに実施しました。
【参加者の声】
○最初は難しかったけど、だんだん話が分かると、楽しくなりました。
○戸惑いと迷いと工夫、創造の間で揺れつつコミュニケーションを考えるから、伝えていこうとするプロセスが何故かとても楽しい
◆グループごとの発表
参加者:聞こえない方9名 聞こえる方7名 計16名
◆おわりに・・・
耳の聞こえない方と聞こえる方、一人一人の違いや共通するものをアートを介して探っていくという時間でした。今回、鑑賞を深めるコミュニケーションツールとして「香り(お香)」を取り上げました。この「香り」や「サイレントコミュニケーション(手話や音声日本語を使わない)」は、とびラー達が試行錯誤しながら、独自に辿り着いた手法です。
芸術作品(アート)とは、無限の可能性を秘めていると思います。
その場で出会った人々と「香り」を通して、新たな価値を創造していくというプロセス。
その場でしか生まれない科学反応を、今後もカタチを変えながらデザインしていければと思います。
ご参加頂いたみなさま、柔らかい香りで包まれた空間をありがとうございました。
2016.03.15
2016.03.15
展覧会だけではなく、美術館の建物そのものも楽しんでほしい!
そんな思いから始まったツアー。とびラーの案内で当館をあちこち散策します。
今回は4つのコースをご用意してお待ちしております。
日時|2016年3月19日(土) 14:00 – 14:45頃(45分程度)
集合場所|東京都美術館 ミュージアムショップ前 (中央棟 ロビー階)
対象|どなたでも
定員|30名 (当日先着順)
参加費|無料
参加方法|当日13:45頃より、当館ロビー階ミュージアムショップ前で受付をします。
参加ご希望の方はお集まりください。
【当日のコース】
Aコース:「建築の見どころ、美術館の楽しみ」
Bコース:「やわらか建築ツアー 〜とびかんはなぜ,こんな形をしているの?~」
Cコース:「“とび” のこだわり発見・建築ツアー」
Dコース: 「スマホで写そう都美」*詳細は下記。
(※各コース10名程度の受付ですので、ご希望に添えない場合もあります。ご了承ください。)
◆「スマホで写そう都美」
写真撮影をしながら、建築物としての美術館の意匠や工夫について観察しましょう。また、都美ではファッション誌などの撮影も多く行われます。都美を背景にしてモデル気分を楽しむ方法もご案内します。
デジカメ・スマホともに大歓迎です。(自撮り棒や一脚・三脚はご遠慮ください。)
2016.03.05
「とびらプロジェクト オープンレクチャー」(3月27日開催)への申し込みは、
定員に達したため締切とさせていただきました。
なお、当日参加の受付・キャンセル待ちは行っておりません。どうぞご了承くださいませ。
東京都美術館×東京藝術大学 とびらプロジェクト
2016.03.01