2012.07.28
建築ツアー実践講座の3回目が行われました。とびラー候補生(以下:とびコー)のみなさんには、前回の講座の宿題であった「ツアーコースをつくる」で、各自考えたツアーコース案を事前に担当学芸員の河野さんへ提出していました。今回は、提出されたコース案の中から河野さんが3案を選び、実際に3人のとびコーさんが模擬ツアーを行いました。これまで学んだツアーの組み立て方や方法、都美の歴史や建物の特徴等を踏まえ、自分なりに都美を伝えていきます。
口頭の説明だけでなく、スケッチブックを利用してわかりやすく示したり、前年度までの改修工事で出た外壁の破片の実物を見せてくれたり、それぞれのツアーには工夫が凝らされており、なるほどと思わせる場面もありました。
内容は都美の特徴である赤レンガのようなタイルの外壁についてはもちろん、館内のつくりにまで及んでいます。
実際にツアーコンダクターのお話を聞きながら建物の中を回ると、都美の色々な場所の雰囲気を肌で感じられ、参加者自らが発見したり気づくこともあります。
模擬ツアーの後は全員で今回のツアーの良かった点、改善点などについて話し合いました。今後は、各自が考えたツアーや実際に模擬ツアーを行っての反省などを活かし、建築ツアー実践に向けてコースや内容を練り上げていきます。
さて、どんなツアーが出来上がるのでしょうか、ご期待ください。
(とびらプロジェクトアシスタント 大谷郁)
2012.07.23
「スクールマンデー(対話を通して作品を鑑賞)」の実践講座がスタートしました。この講座では、NPO法人芸術資源開発機構のアートプランナーである三ツ木紀英さんを講師としてお招きし、実践的な取り組みを交えながら「作品を共に味わう『鑑賞』」について学んでいきます。
まず、「スクールマンデー」担当学芸員の稲庭さんから、この実践講座の概要や小中学校における美術鑑賞教育の現状についてのお話がありました。
スクールマンデーとは、東京都美術館(以下「都美」)が、この平成24年4月のリニューアルを機に始められた学校の先生やこどもたちのためのプログラムで、普段は来館者も多いためなかなか行うことが難しい学校での鑑賞を、休室日に特別に開室し実践します。また、このプログラムはこどもたちとの対話を軸に、自由な意見や考えを持って周りと共有しながら、こどもたちが主体となって鑑賞できるようにサポートします。
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近年、小中学校の学習指導要領が改訂され、小学校の図画工作、中学校の美術の授業で、美術館などと連携を図りながら鑑賞活動を行う事が以前にくらべて明確に示されるようになりました。そのため美術館側でも、よりよい鑑賞の機会を学校と連携しながら生み出していきたいと考えているのです。その具体的なプログラムの一つが「対話」を通した鑑賞の授業です。対話を通した鑑賞は、生徒が10名ぐらいずつグループになり対話をしていくため、生徒の数に合わせた、対話を助けるファシリテータが必要になります。このファシリテータ役を近い将来とびラーがすることをめざし、現在とびラー候補生(以下「とびコー」)は今年度14回の実践研修を積み重ねるのです。
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そしていよいよこの講座の実践的な内容へ。講師の三ツ木さんより、対話を通した作品鑑賞の中心となるVTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)についての簡単な概要説明がありました。
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このVTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)とは、美術史の知識に頼らず、作品をよく見ることからはじめ、「これは何だろう?」と一人ひとりに考えることを促し、様々な意見を引き出しながら作品の見方を深めていく方法です。鑑賞者の「観察力」「批判的思考力」「コミュニケーション力」を育成する効果があり、ニューヨークの近代美術館(MoMA)の教育部長であったフィリップ・ヤノウィン氏と認知心理学者のアビゲイル・ハウゼン氏が開発し、広めたものです。日本へは90年代から、この元となっている対話を通した鑑賞スタイルが紹介されてきました。誰かと話をしながら作品を見ていくことは、私たちも日常からしている自然なことのようですが、それを単なる「会話」ではなく、意見が積み重なっていく「対話」にしていくところがこの手法のポイントと言えます。
概要説明の後は、実際にVTSを体験。スクリーンに映された絵画や彫刻作品をじっくり見て、気づいたことや発見したことを進行役の三ツ木さんのもと自由に発言していきます。描かれているモチーフについてや作品から受ける印象など、様々な意見が飛び交いました。
3つ目に鑑賞した作品は、現在都美にて開催している「東京都美術館ものがたり」にも出品されている岡本太郎の「森の掟」でした。スクリーンでの鑑賞の後は、実際に展示室へ移動し本物を鑑賞。スクリーンとは違った発見も多くあったようで、鑑賞後の意見共有でも様々な意見が出ました。
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アメリカで開発されたVTSですが、アメリカは国土が広く、なかなか美術館に行くことが出来ないという人も多くいます。そのような状況の中で生まれた作品鑑賞が、今回行ったようにスクリーンへの投影やスライド等を利用する方法です。スライドで出来ることも沢山あるが、実物を前にするとより深く鑑賞出来るということを実感しました。
VTSを体験した後は、具体的な方法等について等、より詳しい概要の説明がありました。
このVTSを行うにあたって要となるのが、鑑賞の進行役であるファシリテーターです。ファシリテーターは鑑賞者に問いかけをしながら、上手くその場の流れをつくり意見の共有を促していきます。例えば、鑑賞者が子供である場合、言葉がまだ拙く意図が伝わらないとこもあります。発言の真意を汲み取り言い換えたりすることで、他の人との意見の共有がされやすくなります。また、ファシリテーターが行う大事なことの一つとして「中立性を保つこと」があります。VTSはひとつの「正解」ではなく「思考する」ことを学ぶプロセスを重視しています。あがった意見を断定するのではなくひとつの可能性として扱うのです。大事なのは自分の意見をまず言う事で、作品について考えることを個々の中で育つようにします。そしてまた、鑑賞の最後は意見をまとめたり要約するという事はしません。もやもや感が生まれそうですが、ファシリテーターの進行のもと、自分の意見を客観的に言葉にすることで認識し、他の人の意見も受け止めると、さらに自ら今目にしているものの意味を生成したい!つまり自ら「知りたい」「わかりたい」という内発的な思いが鑑賞者の内側に育っていくようになります。さらには、その内発的な思いが強まれば、もやもやとした疑問を他人に答えを求める形で投げ出さないで自分の中に持ち続ける「自ら考え続ける力」も育まれていくのです。
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アートは言葉にするには難しい分野でもありますが、他の人の考えを聞く事、また、自分の感じたことを言葉にして誰かと共有できたという充足感は、考え学び続ける力や観察すること、またコミュニケーション能力を育んでいきます。講座の最後には3人一組になって今回の体験や意見を共有しました。
とびコーのみなさんは14回の講座の後に、こどもたちと対話をする実践の場に立ちます。美術館に来るのは初めてという生徒も大勢いるでしょう。とびラーさんが対話による鑑賞のファシリテータとして活躍し、こどもたちと一緒に充実した時間を過ごす、その日が今から楽しみです。
(とびらプロジェクト アシスタント 大谷郁)
2012.07.13
2回目のアクセスプログラム(障がいのある方の為の特別鑑賞会サポート)実践講座は、白梅学園大学准教授の杉山貴洋先生を講師に迎えて「チームワークとアクセシビリティー」というテーマで行われました。
はじめはグループ編成からスタート。ただしワークショップ形式で編成が行われます。スタッフがとびラー候補生(以下:とびコー)の背中に7色のシールのいずれかの色を貼ってゆきます。とびコーさんは自分の背中に貼ってあるシールの色は知りません。全員の背中にシールが貼られたら、とびコーさんたちは声を出さずに、相手の反応を伺いながら、また、周囲のとびコーさんにジェスチャーで合図を出しながら、同じ色同士のグループにまとまるように動きます。グループが出来たら一列になって着席。この何気ないワークショップの効果で、グループが編成されたきには既に意気投合できる雰囲気も出来上がっていました。ちょっとした工夫でチームワークをつくる導入となるのだなと関心しました。
続いて、「早並びゲーム」。編成されたグループ対抗で行います。最初は「手の小さい順」にとびコーさんが整列し直します。早くできたら順から全員揃って着席。その後「名前の五十音順」「自宅から東京都美術館までの時間順」と続きます。実はこのワークショップ、ゲーム感覚で自己紹介を自然にする為の手法とのこと。
予め配られていた(個別の顔写真付き)シートに、各自のゲームでの答えを記入してゆくと、自己紹介カードが出来上がります。チームワークをつくるワークショップの手法を体験することはとても楽しく、こうした経験はこれから小学校との連携などで役立ててゆけそうですね。
2012.07.05
アクセスプログラム(障がいのある方の為の特別鑑賞会サポート)の実践講座がはじまりました。初回、「マウリッツハイス美術館展」特別鑑賞会は8月27日(月)に予定されています。今回の講師は学芸員の大橋さん。「マウリッツハイス美術館展」の担当学芸員でもあります。はじめに、大橋さんから展示室内でのマナーや、これからはじまるアクセスプログラムの実践講座の概要について説明がありました。
本日は休館日(月曜日)。誰もいない展示室で、実践講座が進められました。まずは導線の確認をしながら、大橋さんに作品の解説をして頂きました。
展示室内にある長いエスカレーター。普段は1時間~2時間待ちで大混雑している館内ですが、今日はひっそりしています。
2012.07.01
壁プロジェクトは、アートプロジェクトルームの壁を使って、共通の話題にコメントを足していくとびコーやとびらスタッフ同士のコミュニケーションの場としてスタートしました。 8月までに、質問として「とびラ―としてやりたいこと、考えたいこと」「どうしてもやめられないこと」と、3分以内に絵を描く「壁美術館」として「自転車」「夏と言えば思いつくもの」というテーマがあげられました。壁プロジェクトが起こっている場所であるプロジェクトルームは、スタッフのみならずとびらプロジェクトに関心のある外部の方が打ち合わせ等で出入りする場です。活動の動きやとびコーの気持ちが、目に見える形で伝えることができる場にしようと日々模索中です。
筑波大学芸術専門学群美術科洋画コース所属。「アートの力で病院の空気をおいしく」をモットーに筑波大学附属病院などで活動中の「アスパラガス」プロジェクトに所属。「アートワークショップ」「コトづくり・場づくり」「つながること」に興味関心を持って、たくさんのことを吸収・模索中。また、どこか人の気配を感じるシロクマなどもふもふした動物を描くことを好み、ささやかな展示活動などを行って いる。
2012.07.01
6月3日に行われた基礎編に引き続き、平田オリザさんのワークショップ応用編が開催されました。今回はとびラー候補生(とびコー)さんに加え、学芸員の稲庭さん、佐々木さん、田村さんも一緒に参加されました。
2012.06.23
基礎講座最終回が終わった後、夕方6時から、東京都美術館内にあるレストランIVORYにて、基礎講座の打ち上げを兼ねた懇親会が催されました。全6回に渡る基礎講座も全て終了し、とびらー候補生(以下:とびコー)同士もかなり仲良くなりました。なかなか厳しい基礎講座だったと思います。みなさん大変お疲れさまでした。
以前、このブログでも紹介した「とびら楽団」のみなさんも登場しました。演奏して頂いた曲はNHKみんなのうたでおなじみの「メトロポリタン美術館」です。東京都美術館も東京メトロポリタンミュージアムなので。とびコーの時田さんがつくってくれた衣装とお揃いの青いターバンを身につけたとびら楽団の演奏は、とびらプロジェクトがはじまってからこの2ヶ月間の充実した活動を象徴しているかの様でした。
こちらの「真珠の耳飾りの少女」はマウリッツハイス美術館展の担当学芸員の大橋さん。かなり似合ってます!また、タイミングをみてとびコーさんが全員揃う会を是非開催したいですね。これからは実践講座です。みなさん頑張りましょう。(伊藤)
2012.06.23
全6回の基礎講座もついに最終回を迎えました。今回の講師は学芸員の稲庭彩和子さん、河野佑美さん、大橋菜都子さん、それと僕、伊藤達矢です。はじめに、稲庭さんと僕からもう一度東京都美術館(以下:都美)の目指すアートコミュニケーション概要についておさらいさせて頂きました。
最終回だけあり、みなさん何時にも増して真剣に受講されていました。
この4月から6月にかけて行われた基礎講座の期間中に、とびラー候補生(以下:とびコー)のみなさんには、「スクールマンデー(学校連携:対話を通した作品鑑賞)」、「建築ツアー」、「アクセスプログラム(障害のある方のための特別鑑賞会サポート)」のプログラムの中から必ず1つ以上選択して頂き、今後の活動の大きな方向性を決めて頂きました。選択したプログラムについては、該当するプログラムの実践講座を8割以上出席し、次年度からはそのプログラムのリーダー的存在になって頂くことを強く推奨しています。
そこで、それぞれのプログラムの特色を共有するために、それぞれの担当学芸員さんにプログラムの詳細を説明をして頂きました。はじめは「建築ツアー」担当学芸員の河野さんから。建築ツアーは既に実践講座がスタートしており、このブログでも紹介済ですが、コルビュジェに師事した日本を代表する建築家前川國男の作品である東京都美術館を紹介するツアー企画です。ステレオタイプの建築ガイドではなく、とびラーひとりひとりがつくるオリジナリティー溢れる建築ツアーを目指しています。
続いて、「アクセスプログラム(障害のある方のための特別鑑賞会のサポート)」については大橋さんからご説明を頂きました。都美では「障害のある方のための特別鑑賞会」を年に3回予定しています。休館日を使い、障害のある方にも安全に安心して作品を鑑賞してもらえる日をとびラーがつくります。初回の「障害のある方のための特別鑑賞会」はフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が展示されるマウリッツハイス美術館展です。
最後は「スクールマンデー(学校連携:対話を通した作品鑑賞)」担当の稲庭さん。小中学校と連携した鑑賞教育の実践の場として都美を開くプログラムです。普段は来館者が多いため、鑑賞教育の実践が難しい特別展を、休館日を活かして特別開館し、VTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)を中心とした対話型鑑賞教育を実施します。
「スクールマンデー(学校連携:対話を通した作品鑑賞)」、「建築ツアー」、「アクセスプログラム(障害のある方のための特別鑑賞会サポート)」はとびらプロジェクトの活動を支える3本柱となるプログラムです。そして、自分が選択したプログラム以外の活動であっても、人手が足りないときや、力を合わせなくてはならないとき、凄く興味のある内容のときなどは、プログラムの枠を超えて参加することをお勧めしています。
午前中の基礎講座は、この3本の主要プログラムの説明に加え、メーリングリストや「とびらプロジェクト掲示板」「本日のホワイトボード」などの専用情報共有システムについて確認したところで終了しました。とびらプロジェクト関係者以外の方でこのブログをご愛読頂いている方がいれば、きっとホームページ上のバナー「とびラー専用掲示板」にお気づきになった方もおられるかと思います。クリックすると「とびらプロジェクト掲示板」「本日のホワイトボード」の2つのバナーがでてきますが、残念ながら、ここから先はとびコーさんでないと見ることができません。実はこの先のシステムはとびコーさん同士のミーティングの記録がホワイトボードの写真ごとアップされていたり、ミーティング後の感想などや追加事項などがアップされていたりします。既に想像を超えて活発な活用が展開されています。
午後は、僕のファシリテートのもと、現在進行中の数々の新規プロジェクトのプレゼンテーションを担当のとびコーさん自身からして頂きました。楽器が出来るとびコーさんが集まり演奏を行う「とびら楽団」、新聞やブログなどを通して都美と芸大の情報共有と発信を目指す「とびら情報部」、とびラーの活動を支える為の都美のマップ作成と知識の共有を考える「マップ&マニュアル」などなど、とびコーさんの目線ならではの企画が既に10個以上立ち上がっています。一つ一つの企画を丁寧に発表して行くと、思わず助け合える企画同士を発見できたり、質問に答えているうちに新しいアイディアが生まれたりと、非常に実のあるプレゼンテーションの時間でした。
一つ一つの企画はまだ芽を出したばかりで、実現できるか否かはとびコーさんらの頑張り次第なところもありますが、とびらスタッフ一同、出来る限りとびコーさんたちをサポートして行きたいと思います。
また、そういった思いもある一方で、僕はプロジェクトマネージャとして、とびコーさんたちが自分たちの視点から生まれた活動をきっかけに、思いや理想をお互いに語り合うこと(共有すること)の方が、とびらプロジェクトの成長過程にとって非常に重要なプロセスであり財産だと考えています。(それを可能にするのが「きく力」なのです。)
年齢も職業もバラバラな凡そ90人のとびコーさんたちを繋いでいるのは、アートというプラットホームです。もちろんアートでなくとも、多様な人々の価値観を乗せるプラットホームは存在すると思います。しかし、性別や年齢、職業や価値観を軽やかに越境し、広くフラットに包み込むことの出来る類希なフレームはアートをおいて他に見当たらず、比類ない可能性を持ったフレームだからこそ、アートはコミュニティーに変換可能な媒体として機能できるのだと思います。(時代を超えた普遍的な魅力や価値がアートには内在しているからこそ、きっとこれだけの大きなフレームになりえるのでしょう。)
そして、アートをプラットホームとすることで、多種多様なとびコーさんたちが協調し合い、信頼関係を積み上げることこそ、とびらプロジェクトの”背骨”をつくることに繋がると思っています。
よく「芸術(アート)は社会の背骨である」とか、「芸術(アート)は社会にとって漢方薬のようにじんわり効能を発揮する」といった例えられ方をします。それは、芸術(アート)が人々の多種多様な価値観を抱える大きなプラットホームになることよって、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本:多様な人々が関わり合い、関係性を築くこと自体が社会の資本となり得るという概念)が、高い水準で社会(コミュニティー)に蓄えられた状態を指し示したものに他なりません。
とびらプロジェクトにとっても、このソーシャル・キャピタルの蓄積は至上命題です。異なった価値観に対して理解を示し、年齢や立場を超えた信頼を築くこと、そしてなによりも問題やリスク、困難や失敗をも共有することのできる関係を構築して行くことができなければ、本当の意味でとびらプロジェクトにソーシャル・キャピタルが蓄えられたとは言えません。
そして、これはとびコーさん同士で終わる話ではなく、都美で働く様々な業種の方々との間にも是非とも蓄えて行きたい資本であると思っています。つまり都美の中にソーシャル・キャピタルを蓄えて行きたいと考えています。むしろ、今年のとびらプロジェクトの活動の本質はそこにあると思っています。ソーシャル・キャピタルを蓄え、都美というコミュニティーに強靭な背骨をつくってゆかなければ、「美術館を拠点に、アートを介したコミュニケーションを促進し、オープンで実践的なコミュニティーを形成」する社会装置としての美術館の姿など到底夢のまた夢。。。とびコーさんにかかる期待はますます大きくなるばかりですが、大丈夫、このメンバーなら成し得てくれることでしょう。なぜなら「対話をすることの粘り強さと、誠意をもって接する力」を持つ方々をとびラー候補生として選出したつもりだからです。(休館前に障害のある方々の特別鑑賞会のボランティアを長らくされていた方々にも、そうした資質は共通していると感じて、ひとまとまりのとびら候補生となって頂きました。)
最後はこれからとびコーさんたちが企画を進行させて行く上での、テクニカルなアドバイスをさせて頂きました。はじめは、講師の西村さんが「とびらプロジェクト掲示版」に書き込みした内容のおさらい。その後は僕からのアドバイスです。意気込みをしっかりと推進力に変えて行くために必要な幾つかのポイントです。ちょっと気を付けておくだけで、結果は大きく変わるかと思います。
2012.06.19
2回目の建築ツアー実践講座が行われました。今回は主に、東京都美術館(以下:都美)の建物の特徴や歴史について学びました。講師は学芸員の河野さんです。とびラー候補生(以下:とびコー)が現場に立ってツアーガイドを行うときに知っておきたい基礎知識を中心に、ちょっとした裏話しまで幅広く講義して頂きました。スライドの写真は都美の父ともいわれる九州の炭鉱王佐藤慶太郎氏。当時の100万円(現在の33億円程度)を東京府に寄付し、1926年(大正15年)に東京府美術館(現 東京都美術館)が開館する礎を築いた方です。
2012.06.09
はじめに、西村さんから出されたテーマは「とびらプロジェクトと自分の今日この頃」。とびコーさんとなって、都美にもだいぶ馴染み、同期のとびコーさんとも仲良くなってきた今日この頃。いろいろな企画の芽も出はじめ、周囲から寄せられるとびコーさんへの期待の大きさと、振る舞いの難しさにも気付きはじめ今日この頃。少し今を振り返るために、ペアになって近況を話し合いました。もちろん大事なのは「きく力」です。西村さんからは改めて、「きく力」とは「本気でその人に興味や感心を持つこと」とのアドバイスもありました。
各々選んだ言葉が書かれたポストイットを見せ合い、3つの言葉からイメージできる、3人ならではのアイディアを考えます。はじめは特に都美という場所に捕われず、アイディアを出し合いました。ここに来てはじめて、とびコーさん同士の意外な特技に気付く事も有り、今後の活動に役立つヒントが多く隠されていることが分かりました。
企画の簡単なアイディアを3人で一度つくってみたところで、さらにイメージを深めて行きます。今度は、この3人で都美でできることは何かを考えます。3人で3つの言葉を持ち寄って、都美を舞台に、ここにいるメンバーだからこそ出来ることはなにかを話し合いながら、午前中は終了。午後までに、グループごとにA4用紙1枚に企画をまとめて提出する宿題が出され、お昼休みも活発なミーティングが続きました。
とびらプロジェクトの理想は高く険しい道のりの先にあるのかもしれませんが、きっとこのとびコーさんたちとなら、実現できると信じています。そして、ちょいちょいブログに登場するスタッフの他にも、とびらプロジェクトをしっかりと支えてくれているスタッフがいます。左から順に、インターンの真砂さん、コーディネータの近藤さん、アルバイトの熊谷さん、学芸員(マウリッツ美術館展担当!)の大橋さん。(ちょっとピンぼけしていてすみません。。。) アシスタントの大谷さんが写ってないのが残念。今度登場しますね。「ミッション先行ではなく、居合わせた人がすべて式」にしても、よくぞ集まったと思います。(伊藤)