2012.06.19
2回目の建築ツアー実践講座が行われました。今回は主に、東京都美術館(以下:都美)の建物の特徴や歴史について学びました。講師は学芸員の河野さんです。とびラー候補生(以下:とびコー)が現場に立ってツアーガイドを行うときに知っておきたい基礎知識を中心に、ちょっとした裏話しまで幅広く講義して頂きました。スライドの写真は都美の父ともいわれる九州の炭鉱王佐藤慶太郎氏。当時の100万円(現在の33億円程度)を東京府に寄付し、1926年(大正15年)に東京府美術館(現 東京都美術館)が開館する礎を築いた方です。
2012.06.09
はじめに、西村さんから出されたテーマは「とびらプロジェクトと自分の今日この頃」。とびコーさんとなって、都美にもだいぶ馴染み、同期のとびコーさんとも仲良くなってきた今日この頃。いろいろな企画の芽も出はじめ、周囲から寄せられるとびコーさんへの期待の大きさと、振る舞いの難しさにも気付きはじめ今日この頃。少し今を振り返るために、ペアになって近況を話し合いました。もちろん大事なのは「きく力」です。西村さんからは改めて、「きく力」とは「本気でその人に興味や感心を持つこと」とのアドバイスもありました。
各々選んだ言葉が書かれたポストイットを見せ合い、3つの言葉からイメージできる、3人ならではのアイディアを考えます。はじめは特に都美という場所に捕われず、アイディアを出し合いました。ここに来てはじめて、とびコーさん同士の意外な特技に気付く事も有り、今後の活動に役立つヒントが多く隠されていることが分かりました。
企画の簡単なアイディアを3人で一度つくってみたところで、さらにイメージを深めて行きます。今度は、この3人で都美でできることは何かを考えます。3人で3つの言葉を持ち寄って、都美を舞台に、ここにいるメンバーだからこそ出来ることはなにかを話し合いながら、午前中は終了。午後までに、グループごとにA4用紙1枚に企画をまとめて提出する宿題が出され、お昼休みも活発なミーティングが続きました。
とびらプロジェクトの理想は高く険しい道のりの先にあるのかもしれませんが、きっとこのとびコーさんたちとなら、実現できると信じています。そして、ちょいちょいブログに登場するスタッフの他にも、とびらプロジェクトをしっかりと支えてくれているスタッフがいます。左から順に、インターンの真砂さん、コーディネータの近藤さん、アルバイトの熊谷さん、学芸員(マウリッツ美術館展担当!)の大橋さん。(ちょっとピンぼけしていてすみません。。。) アシスタントの大谷さんが写ってないのが残念。今度登場しますね。「ミッション先行ではなく、居合わせた人がすべて式」にしても、よくぞ集まったと思います。(伊藤)
2012.06.06
稲庭さんのトークが終わるとしばし歓談。お酒や食べ物などをご用意頂いており、周囲の方々とご挨拶やお話をさせて頂きました。今回会場に集まった方々は、東大の学生さんだけではなく、アーティストや一般企業・NPOで働く方々など幅広く、大変有意義なひと時を過ごすことが出来ました。
2012.06.05
仲のよい友だちに手紙を送るような気持ちで、都美のことを思い起こしながら書きます。とびコーさんとなって2ヶ月がたち、みなさんリニューアル後の都美にもだいぶ馴染んできたので、なかなかのスピードで筆が進みます。
手紙が書き終わったら、河野さんから同じ机のメンバーで手紙を読みまわす様に指示がでました。手紙を読むときのポイントは、「どのような伝え方をしているか」です。自分以外の目線で都美を見ることと、その魅力をどのように伝えようと工夫しているのかを共有することができました。
お互いの手紙を読み終えたら、テーブルごとに手紙の感想を含め「どんなところに興味を持ったのか」「どんな伝え方をしていたか」について意見交換をしました。手紙を共有したことにより、更に「建築物としての都美の魅力」や「その魅力の伝え方」について感心を深めることが出来ました。
その後、話し合いをした各テーブルごと意見をまとめ、伝え方の工夫や、気付いたことなどについて発表をしました。
再度、話合われた内容を各テーブルごとに発表して頂き、河野さんが、ホワイトボードにまとめて行きました。最後に河野さんから「1~10のことを全てお客さんに話す必要は無ありません。もちろん話しどころの要点などは多少ありますが、今回の講座であがった意見や考えをもとに、少しでもお客さん興味を持ってもらい、お客さんが主体となるような建築ツアーを目指したいですね」とのアドバイスがありました。とびコーさんたちが考える、都美の「建築ツアー」が動きだしました。とびコーさんたちがガイドとなるのは、ちょっと先ですが、かなりお勧めな企画になること間違いなしです。乞うご期待。
2012.06.03
2012.05.30
記念式典には多くのとびラー候補生(以下:とびコーさん)も参加し、寄贈のセレモニーが終わると屏風をじっくりと鑑賞しました。ガラスケースなどに入れることなく、これほど間近で鑑賞できるのは、複製品ならではの利点。本物の作品は劣化を防ぐ為に環境の良いところで保存しつつも、その作品のもつ魅力をよりリアルに体感できるのがこの高精細複製品の素晴らしさであり、「綴プロジェクト」(文化財未来継承プロジェクト)のコンセプトとのこと。弱視の方が至近距離で鑑賞したり、日常の生活空間で屏風の光を体験したりも出来ます。今後、寄贈頂いた2双の屏風をどの様に活かして行くのか、とびコーさんも真剣に考えを巡らしながら鑑賞していた様子でした。
会場内では、寄贈作品の展示に加え、高精細複製品をつくる技術についての展示も行われていました。キヤノンのカメラとプリンターを使いながら、高画質の撮影と、被写体と全く同じ色でプリントアウトを行うカラー出力の技術の実演を見学させて頂きました。プリントアウトに使われる紙は、屏風に使われている和紙の印象を保ちながらも、インクジェットプリンターの色彩表現を引き出せる様に研究されたもの。徹底したこだわりが伺えます。
続いて、プリントアウトされた絵に本物の金箔を打つ実演も行われました。真新しい金箔を、経年変化で古びた風合いにみせるなど、熟練した匠だからそこの技が屏風の複製に活かされていました。まさに、最先端の技術と代々伝受け継がれた匠の技のコラボレーションの瞬間でした。
2012.05.27
鑑賞のコツがつかめたら、とびコーさんと参加者のみなさんが3人1組ほどの小グループにわかれて、お気に入りの絵を探します。「公募展ベストセレクション美術 2012」は数ある公募団体のなかでも特に精力的に活動をしている27団体を取り上げ、かつ各団体の中で推薦を受けた作家のみが展示をしている、いわば公募団体オールスターズの展覧会。日本画、油画、水彩、工芸、彫刻と多彩な表現が展示室内にあふれています。
とびコーさんといろいろ相談をしながら、お気に入りの絵を2点決めてじっくりと鑑賞します。とびコーさんも楽しそうです。
お気に入りの絵がみつかったら、アートスタディルームに集まって、作品カードでお気に入りの絵を発表します。いろいろな絵がテーブルの上に並びました。
発表のあとは、各自お気に入りの絵の中にある色を絵の具を混ぜてつくります。その絵の中にある印象的な色に近づけるように、丁寧に色を混ぜ合わせます。1点の絵から5色の色をつくります。出来た色は1色ずつ帯状の紙に丁寧に塗ってゆきます。
いよいよ出来た色のピースを使って色見本帳をつくります。スケッチブックにお気に入りの絵を貼り、その隣に、お気に入りの絵をもとにつくった色のピースを貼ってゆきます。絵から取り出された色たちが再構成されて、また違った味わいが出ています。手を動かしながら色を考えたり、色の配置を並べ替えながら、隣り合った色と色の影響を体験したりすることで、よりお気に入りの絵を深く感じることができたのではないでしょうか。
みなさんそれぞれの色見本帳ができました。色見本帳もさることながら、あまった色のピースが入ったバットの中もなかなか奇麗です。
そこで最後は、あまった色のピースをお互いで交換し合いました。交換した色のピースはお土産としてお持ち帰り頂きました。たくさんの人がお気に入りの絵の中から取り出した色のかけらを拾い集めて、スケッチブックの上でまたちがった絵ができたら素敵ですね。今回の絵の具は、ターナー色彩(株)さまからご提供いただきました。ありがとうございました!(伊藤)
2012.05.26
前回の「とびラーのコミュニケーションデザインを考える」で、浮上した「とびら楽団」がついに活動を開始しました。呼びかけに答えてくれた方々は何と20名。すごい!サックスにコントラバス、ウクレレまでいます。第4回基礎講座のあと、初練習となりました。天気もよかったので、目の前の上野公園で演奏してきました。初見でみなさん演奏できるのが凄いと思いました。NHKみんなのうた「メトロポリタン美術館」が当面の課題曲です(笑)。何せ、都美は東京メトロポリンタンミュージアムですので。練習中に、犬を散歩していたお婆さんから声をかけられたり、考えてみれば、とびラー初の地域活動でした。アートコミュニケータに音楽は必要ですね。とびら楽団は、曲を演奏する人たちだけでなく、とびらプロジェクトに関わる皆さん全ての心を音楽で動かして行けるような、そんな楽団になればと願っております。さらに、こうしたエネルギーが美術館と地域や社会をつなぐ原動力になるのではと、すごく期待しています。(伊藤)
2012.05.26
第四回目の基礎講座は「学びの環境づくりを考える」。午前中の講師は、東京都美術館学芸員でアートコミュニケーション事業担当係長の稲庭彩和子さんと、損保ジャパン東郷青児美術館顧問の小口弘史さん。まずは、稲庭さんから、美術館に訪れる人々と作品をつなげることについて、学芸員になる前のご自身の体験談や、学芸員としてこれまで取り組まれてきたことなどをレクチャーして頂きました。美術館を単なる文化を学び知る場と捉えるのではなく、自らと対話する空間とすることの提案と実践を目的として、神奈川県立近代美術館で実施された「鑑賞鎌倉のたてる像たち」(中学生が絵画の鑑賞を通して思考を巡らす短編ドキュメンタリー)の映像などもご紹介頂きました。
引き続いて午前中の後半は、小口さんによるレクチャー。東郷青児美術館を中心とした新宿区での鑑賞教育の実践経験をもとに、美術館を利用した鑑賞教育を学校教育の中に取り入れる運用面での難しさ(授業時間内で学校と美術館とを往来することや学外授業の安全管理など)をご指摘頂きながらも、学校連携のプログラムについてとびらプロジェクトに期待する効果などをお話頂きました。また、東郷青児美術館で実施されていた対話による鑑賞教育の内容にも触れ、一般的な鑑賞方法と対話による環境方法との比較などを伺うことが出来ました。
午後の基礎講座の講師は稲庭さんと、同じく東京都美術館学芸員の武内厚子さん。早速、対話型鑑賞教育の実践に入りました。まずは、本物の作品をじっくり一人で鑑賞するところからスタートです。全員が展示室に移動して、気になった作品をじっくり鑑賞し、各々感想をメモしてゆきました。
対話による鑑賞方は、まず、各自がじっくり作品を鑑賞するところからはじまります。各自が感想をまとめたら、特にお気に入りの1点を選んでアートスタディルームに戻ります。
アートスタディルームに戻ってからは、稲庭さんの指示のもと、各自特に気になった作品について作品カードを使いながら、他のとびラー候補生と作品の感想を共有しました。
自分がその作品をどの様に感じたのか、みえたのかを説明することで、周囲の理解も深まり、これまでとは違った絵の見え方に気付くことができました。また、こうした時、作品の感想を話す側だけでなく、感想を聞く側の「きき方」がお互いの理解を深める上でとても大切になりますが、さすがとびラー候補生、2回目の基礎講座「きく力」の成果が随所に現れている様に感じました。
最後は武内さんによるVTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)の実践。実践講座にてとびラーがマスターしなければならない対話による鑑賞方のファシリテーションです。VTSでは、作品を鑑賞する際に、美術史の知識を必要としません。その代わりに、ファシリテータが複数の鑑賞者のそれぞれ違った感想や発見をいくつも引き出しながら、作品から紡ぎだされる鑑賞者の多様な声を丁寧に整理し、重ねてゆくことによって、作品への理解を統一的なものとせずに、個々人の中で深めて行く方向へと導きます。非常にファシリテータの経験値と力量が必要となりますが、きっととびラー候補生のみなさんなら大丈夫でしょう!とびラー候補生も日々成長しています。(伊藤)
2012.05.20