東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

建築ツアー実践講座2回目「東京都美術館の歴史」

2012.06.19

2回目の建築ツアー実践講座が行われました。今回は主に、東京都美術館(以下:都美)の建物の特徴や歴史について学びました。講師は学芸員の河野さんです。とびラー候補生(以下:とびコー)が現場に立ってツアーガイドを行うときに知っておきたい基礎知識を中心に、ちょっとした裏話しまで幅広く講義して頂きました。スライドの写真は都美の父ともいわれる九州の炭鉱王佐藤慶太郎氏。当時の100万円(現在の33億円程度)を東京府に寄付し、1926年(大正15年)に東京府美術館(現 東京都美術館)が開館する礎を築いた方です。

 

佐藤慶太郎氏の寄付により建てられた旧東京都美術館も時代の流れの中で、建て替えを余儀なくされます。昭和50年に旧東京都美術館から現在の前川國男設計の東京都美術館に移行を完了させたそうですが、なんと、旧館を運営しながら、隣に新館を建設するというかなりアクロバティックな乗り換えだったようです。また、前川氏は同じ上野公園内にある東京文化会館の設計も行っており、さらにその向かい側にある国立西洋美術館は彼の師であるル・コルビュジェの作品です。一方、上野公園には、不忍池や武蔵野の原生林の面影が漂う自然の風景も残されています。こうした多様な魅力を上手に融合させ、建物を取り巻く公園全体の環境を大切にしながら、前川氏の手によって都美の建設は進められました。
^
さらに館内に目を向ければ、都美の建物の中には、普段は気付かない色々な工夫が隠されています。例えば、館内の階段に付いている手すりは、全ての角を落として丸く処理されています。これは、都美が建てられた1970年代当初は、まだ美術館の来館者の多くが着物だったため、袂を手すりに引っ掛けない様にデザインされたそうで、リニューアル後の今でもその面影をの見ることができます。その他にも、一度奇麗に固めたコンクリートの表面を砕き細かな凹凸を付ける「ハツリ加工」が生み出す柔らかい光と影の印象や、都美の外観を覆い尽くす一見レンガに見える「打ち込みタイル工法」の仕組みなど、なるほど〜と思わずうなずくことがたくさん有りました。

 

時代を感じるエピソードとして印象的だったのは、都美の正面入口のコンクリートに今でも残る斜めの大きな傷のお話し。都美を建設中の70年代前半、日本はオイルショックに見舞われました。その影響で何と都美の正面入口をつくっている最中にコンクリートミキサー車が到着できなくなるというハプニングが起こったそうです。継ぎ足すコンクリートが届かないまま、途中まで入れたコンクリートが凝固しはじめ、結果的に断絶の跡が大きく残ってしまったとのこと。当時の現場担当者はこの不始末を詫びるために前川氏に土下座したとも伝えられていますが、「それも時代の傷だよ。山の稜線みたいでいいのでは。」と、前川氏はさらっと返したと言われています。なかなか深い話です。
^
まだまだ都美にまつわるお話は絶えません。現在とびコーさんたちは、来るべき建築ツアーのために各々が勉強中です。次回、建築ツアー実践講座は1ヶ月先になります。それまでとびコーさんに出された宿題は各自でツアーコースをつくって来ること。どんなツアーコースが出てくるかとても楽しみです。(伊藤)

基礎講座5回目「とびラーの働き方研究」

2012.06.09

5回目の基礎講座のテーマは「とびラーの働き方研究」です。講師は西村佳哲さん(働き方研究家/リビングワールド代表)と森司さん(東京都歴史文化財団 文化発信プロジェクト室 地域文化交流推進担当課長)です。基礎講座も大詰めとなる中、これからとびラー候補生(以下:とびコー)が具体的に東京都美術館(以下:都美)を舞台にどの様に働くことができるのか、その可能性と心構えについて講座が開かれました。

はじめに、西村さんから出されたテーマは「とびらプロジェクトと自分の今日この頃」。とびコーさんとなって、都美にもだいぶ馴染み、同期のとびコーさんとも仲良くなってきた今日この頃。いろいろな企画の芽も出はじめ、周囲から寄せられるとびコーさんへの期待の大きさと、振る舞いの難しさにも気付きはじめ今日この頃。少し今を振り返るために、ペアになって近況を話し合いました。もちろん大事なのは「きく力」です。西村さんからは改めて、「きく力」とは「本気でその人に興味や感心を持つこと」とのアドバイスもありました。

 

その後、西村さんから「自分の仕事を考える3日間」(2009年)という講演会であった豊島秀樹さん(元グラフ)のお話を例に、「ミッション先行ではなく、居合わせた人がすべて式」について、お話しして頂きました。奈良美智さんの作品のインストールデザインなどを手がけ、世界を舞台に活動を展開するデザイン会社グラフは、そもそも、大阪の中之島公会堂の石段に、缶コーヒーを持って集まった6人の友人たちによってつくられた会社だったとのこと。当時、いずれの面子も半人前の職人や料理人で、仕事が終わった後に集まっては、お互いの夢や仕事の近況などを語りあっていたそうです。そんな中、一人のメンバーが椅子をつくってきたところから、グラフの活動は動きだします。椅子をつくれるなら俺が売りに行ってやるよ、売れたら量産が必要だから工房いるよね、ならばビル借りようか、ならショールームつくれるね、だったら俺がカフェをやろうと、そんな具合にグラフはアイディアの連鎖で急成長を遂げていったそうです。ミッションやゴールを決めて必要な力を持つ人材を探し集めるのではなく、その場に居合わせたメンバーから可能性が芽生える。お互いの夢や可能性を共有し、ぼんやりとした、こんな感じかなと思う未来の形を探り当てて行く方法が「ミッション先行ではなく、居合わせた人がすべて式」です。
この「ミッション先行ではなく、居合わせた人がすべて式」はとびらプロジェクトの考える「あさって性」に実に共通するところがあります。(「あさって性」の詳細は、6月6日:Educe cafe:アートが引き出すコミュニティ(東京大学にて)をご参照ください。)都美に集う多様な顔ぶれと、そこでしか生まれない出来事を積み上げ行くことでできるぼんやりとした未来像を、とびらプロジェクトも大事にして行きたいと思っています。
 ^
実を言えば、とびらプロジェクトの活動イメージは計画当初にキチンと固まっていたわけではなく、学芸員の稲庭さんも僕も(まさかプロジェクトマネージャしているとは夢にも思わなかった。。)、講師陣の誰一人すら去年の今頃はまだなにも想像できていませんでした。しかし、人と出会い、話し合い、共感し、考えて、暖めて、とびらプロジェクトの理念や方向性を一つ一つ積み上げてきました。まさに、このスタッフの顔ぶれだからこそ、今のとびらプロジェクトの形が生まれたといえます。そして、こうしたスタンスは変わることなく、とびラーの活動方針にもつなげて行きたいと思います。
きっとそんな思いも込められていたのか(定かでは有りませんが)、西村さんから出た次の指示は、ここに集まったメンバーで3人組をつくり、その3人だからこそ出来るアイディアを考えることでした。3人とは社会の最小単位をイメージしたグループとのこと。さっそく3人組をつくり、まずは、各々自分に「できること」「不得意でないこと」「いつかやってみたいこと」をノートに書き出すことからはじめます。ノートに書き出したら、配られた、ポストイットに、その中から一つだけ言葉を選び記入します。

各々選んだ言葉が書かれたポストイットを見せ合い、3つの言葉からイメージできる、3人ならではのアイディアを考えます。はじめは特に都美という場所に捕われず、アイディアを出し合いました。ここに来てはじめて、とびコーさん同士の意外な特技に気付く事も有り、今後の活動に役立つヒントが多く隠されていることが分かりました。

 

企画の簡単なアイディアを3人で一度つくってみたところで、さらにイメージを深めて行きます。今度は、この3人で都美でできることは何かを考えます。3人で3つの言葉を持ち寄って、都美を舞台に、ここにいるメンバーだからこそ出来ることはなにかを話し合いながら、午前中は終了。午後までに、グループごとにA4用紙1枚に企画をまとめて提出する宿題が出され、お昼休みも活発なミーティングが続きました。

 

お昼休みが終わり、午後の部がスタートしました。森さんも加わり、企画を一つ一つチェックして行きます。「スカイダイビングをしたい」塩見さん、「日本一周したい」小松さん、「悪いこと以外で新聞にでたい」平野さんが集まると「空からとびラー」(笑)。「日本各地をスカイダイビングでとびらーが訪れます。パラシュートには東京都美術館の文字。降り立った地で写真を撮り、都美で展示します。」ぜったい無理ですね。その他にも、「ナイトミュージアム」や「都美をうろうろ お掃除しよう」などなどかなりユニークなアイディアがたくさん出されました。
森さんからは、「企画をつくるということは、さまざまなアイディアをもとにイメージを膨らませながらも、よりシンプルなアクションプランに落とし込んでゆくこと」「みんなのアイディアを列挙しただけの列挙型プランは企画とは呼ばない。」などなど、現実的なアイディアも、そうでないアイディアもまとめて、シビアかつ的確なアドバイスを頂きました。

 

企画書についてのコメントが一通り済んだあと、森さんから「さまざまなアイディアがでましたが、ここから先の問題は、いったいこのアイディアを誰が実行するのかということです」と鋭いご指摘を頂きました。そして、とびラーへの期待を「新しい公共」という言葉で表現されていました。
 ^
この「新しい公共」について少し僕なりに補足すると、80年代、文化施設をつくればまちが文化的になるといった考えのもとに、多くの公民館やホールがつくられたハコ(建物)もの行政と呼ばれた時代がありました。ハコをつくれば市民が集い、文化的な活動が展開されるはず、文化的な活動が起これば、その施設周辺にもその効果は波及し、花があり、彫刻がありとなるはず、、、といった思惑はまったく叶いませんでした。誰でも使える多目的な施設は、何に使ってよいかいまいち掴みどころのない施設となってしまい、「閑古鳥が鳴く豪華シャンデリアの施設」などと揶揄されるほどでした。この失敗の原因は、ハードがあればソフトは自然に生まれるといった発想にありました。そして、活動のエネルギーは建物に宿るのではなく、人に宿ることが明らかになったころ、日本経済はバブル崩壊とともに大きく傾いて行きます。結局ハコをつくっても、中身を考えなければ意味がない、むしろ中身があれば、ハコは工夫次第ではないかという声のもと、時代は「ハコから人へ」(ハードからソフトへ)とシフトして行きます。(まちの中でアートプロジェクトが展開され出したのもこの頃からです。)これまで「ハコ」に付帯されていた公共への利益還元の役割を、「ハコ」ではなく「人」に託そうする考えが「新しい公共」という言葉に込められています。

 

ですが、この「新しい公共」の担い手として、「とびラーが、何を実行するのか。」この問いについては、プロジェクトマネージャとして深く考えさせられます。実質的にプロジェクトを行う現場視点で見たとき、非常に難しいことは、アクションとなる「プラン」と「思いつき」は明らかに違うという点です。あくまで僕なりの解釈ですが、「プラン」は「戦略」を意味することができると思っています。つまりは、期待する未来の全体像をイメージしながら、道筋をみつけて行くこと。そのイメージさえ(ぼんやりでも)あれば、途中途中にある失敗や、上手く行かない足踏みも、成果の一つとして積み重ねてゆくことができるはずです。しかし、その場その場の「思いつき」の失敗や足踏みは 、落胆や失望を生み易く、せっかく蓄えたエネルギーをいたずらに消費してしまいがちでいけません。なぜなら「思いつき」は目の前の現場を何とかしようとする「作戦」に留まってしまい、俯瞰した視点を持ち難いからです。よって、大きな「戦略」(プラン)のない「作戦」(思いつき)を繰り返すことは、プロジェクトを運営する上で非常に危険な行為に繋がって行きます。
 ^
恐らく、その一般的な回避方法としては、プロジェクトの進行段階にあわせて、全員に共通した「戦略」(プラン)を都度提示し、適切な役割分担で進行することだと思います。ですが、あえてとびらプロジェクトでは、それをしないようにしたいと思っています。これはとびらプロジェクトのひとつのチャレンジでもあります。「戦略」(プラン)に関しても、例えば僕なら、どの様なステップでとびらプロジェクトを成長させて行けるかを考えますが、とびコーのみなさんなら、とびらプロジェクトに参加することでどんな自己実現が可能か、その為に今何をやろうかなど、その思いは人それぞれでよく、必ずしも全員が一つに絞ったイメージを共有しなくてもよいと思います。一人一人が自分の動機にあった「道筋」(戦略)を見つけてゆくことが大事だと思います。組織立てるための恒常的な役割分担を決定せず、それぞれの「戦略」(プラン)を持ったとびラーによって随時構成される有機的なチームの集合体が、とびらプロジェクトの全体像を描いてゆける様にしたいと思っています。相当ハードルが高いことは承知の上ですが。。。
 ^
森さんと西村さんのお話のなかにも「とびラーは各々が個人事業主である」という言葉がありました。まさにその通りだと思います。とびラーは役割を与えられたボランティアさんではないのです。
 ^
「新しい公共」とは単にボランティアさんが働くことを意味してはいません。個々人の成熟した在り方が問われる、非常に高いレベルの振る舞いが期待されているのです。この「新しい公共」となりえる個々人と、それらがプロジェクトとなって織りなす活動の遠心力。それがとびらプロジェクトにかかる大きな期待であり、とびコーさんに実感してもらいたいことでもあります。
^
そして、この大きな期待を持って、「つぎ、なにをする?」という質問がとびコーのみなさんに、提示されました。

再度、気持ちを新たに3人組を再編成し、「つぎ、なにをする?」について話し合いをはじめました。「ミッション先行ではなく、居合わせた人がすべて式」、「新しい公共」という概念、どちらもとびらーの働き方を考える上では、とても重要なテーマとなります。「つぎ、なにをする?」という課題にこめられたメッセージは思いのほか深いものがありました。
^
この課題については、基礎講座期の時間内に提出するのではなく、「とびラー専用掲示板」に書き込むことで提出となりました。(とびコーさん以外でブログを見て下さっている方には公開できませんことお詫び致します。。。)今後、実現できそうなものは実現に向けて進めることになる予定です。

 

とびらプロジェクトの理想は高く険しい道のりの先にあるのかもしれませんが、きっとこのとびコーさんたちとなら、実現できると信じています。そして、ちょいちょいブログに登場するスタッフの他にも、とびらプロジェクトをしっかりと支えてくれているスタッフがいます。左から順に、インターンの真砂さん、コーディネータの近藤さん、アルバイトの熊谷さん、学芸員(マウリッツ美術館展担当!)の大橋さん。(ちょっとピンぼけしていてすみません。。。) アシスタントの大谷さんが写ってないのが残念。今度登場しますね。「ミッション先行ではなく、居合わせた人がすべて式」にしても、よくぞ集まったと思います。(伊藤)

Educe cafe:アートが引き出すコミュニティ(東京大学にて)

2012.06.06

東京大学の福武ホールにて開催された「Educe cafe」に学芸員の稲庭彩和子さん(アートコミュニケーション担当係長)がゲストに招かれ、「アートが引き出すコミュニティ」というテーマでトークイベントが開かれました。もちろん伊藤も近藤さん(とびらプロジェクトコーディネータ)大谷さん(とびらプロジェクトアシスタント)とびラー候補生(以下:とびコー)のみなさんと一緒に参加して参りました。
(ミーハーな伊藤としては、東大の敷地の美しさと広さに感動しきりでした。)
今回のテーマである「アートが引き出すコミュニティ」をもう少し咀嚼すると、アートがコミュニティ形成に果たせる役割とは何か、また美術館はそれに対してどのようなアプローチが可能かという問いが浮かび上がります。そして、この問いは、まさにリニューアル後の東京都美術館(以下:都美)に課せられたテーマでもあります。
稲庭さんからは、まずご自身がお住まいの台東区松葉町を題材としたコミュニティを形成する要素(空間、時間の層、求心的事象や物の存在、実践の場、集団的学び、ハレの場など)の分析があり、これを踏まえた上で、地域の中にある寺社仏閣と美術館の双方の役割や機能性を比較することから、コミュニティを形成する社会装置としての美術館の可能性についてお話がありました。
^
稲庭さんからのお話をもとに僕の感想も含めて書きますと、寺や神社は日常の生活空間の中にあり、人々の生活に深く根ざしていながらも、どこか非日常を感じさせる空間だといえます。僕などは取り立てて信仰心などはないのですが、それでも門や鳥居を潜ると、少し居ずまいを正すような気持ちになります。また、寺や神社は普段はひっそりしていても、一旦お祭りとなると、地域の人々が大勢集まり、我が事として盛り上がります。地域の人々は祭られている仏様や神様を、人の手には届かない特別な存在としながらも、自分たちの生活の中に取り込み、ごく親しげな存在として息づかせています。
このような非日常的空間と日常空間の絶妙な距離感は、地域のコミュニティに活力を与える上で、とても重要な要素であると感じました。
都美の目指す地域に根ざした美術館の理想像の中にも、そのような人々との関わり合いの姿があります。例えば、普段の美術館はひっそりしていて(都美はめったにひっそりしていませんが、、、)、奥には美術作品の展示室があり、少しハードルが高い様にも思われます。建物の中に入れば、ちょっと静かにしていなくてはならないような緊張感もあります。しかし、一旦何か地域の方々と一致団結できる時があれば、美術館の持っている力を様々な人々と分かち合うことができ、そして、地域の人々にとっても、ここは自分たちの美術館なのだと思ってもらえるような、そんな距離感の美術館に都美がなれればと思います。
美術館の多くは作品のコレクションや研究、展覧会の開催などが主だった機能であり、役割を明確化させることで「求心力」のある社会装置として機能してきました。しかし、幸か不幸か、都美には作品のコレクションがありません(厳密にいえば少しあります)。都美で展示される作品は企画によりその都度入れ替わって行きます。「マウリッツハイス美術館展」や「メトロポリタン美術館展」の様な大型企画展から、アマチュア作家の公募団体展まで幅広く行われます。作品を鑑賞しに来る人、公募展に出品する人、または隣の敷地の東京藝大の教員・学生や、上野公園の散歩ついでに都美のレストランでランチをする人など、コレクションはなくても、アートが媒体となって様々な人々とコネクトするチャンスが都美にはたくさんあります。このチャンスを活かし、都美はアートコミュニケ—タ(とびラー)の力を借りながら、より多くの人々とつながり、美術館の持つエネルギーを地域・社会に広く還元できるような「遠心力」を高めて行きたいと思います。その為には、まずとびコーさんたちに、都美が自分たちの美術館なんだと感じてもらえる様に、とびらプロジェクトを成長させてゆかなければと、稲庭さんのトークの後に改めて思いました。

 

稲庭さんのトークが終わるとしばし歓談。お酒や食べ物などをご用意頂いており、周囲の方々とご挨拶やお話をさせて頂きました。今回会場に集まった方々は、東大の学生さんだけではなく、アーティストや一般企業・NPOで働く方々など幅広く、大変有意義なひと時を過ごすことが出来ました。

 

後半は稲庭さんへの質問を含め、カンバセーションの時間となりました。リニューアル後の都美の方向性やとびらプロジェクトの今後の進展などを皮切りに、アートとコミュニティの関係について、様々な立場の方々の視点で、熱い議論が交わされました。特に話の焦点となったのは、とびらプロジェクトの到達目標をどこにイメージしているかという質問に対しての答えであった「あさって性」についてでした。僕も少しだけ客席から発言させて頂いたのですが、「あさって性」とは『100人で語る美術館の未来』(慶応義塾大学出版会株式会社 2011年)に記載されている鷲田清一氏の言葉の引用で、意味としては「なんとなくぼんやりした未来イメージ」を指します。対象的に「明日」のイメージは、「すでに目的が決まっているはっきりとした未来」です。「明日」の想定される成果を達成する為に、タスクをあげてスケジュールに落とし込み、実行する。成果目標から逆算的に行程を導きだすことで作り上げて行く未来のイメージです。恐らくほとんどの人々がそうした「明日」のイメージの中で生活を送っていると思います。(伊藤もそうです) しかし、ここでいう「あさって」とは、「明日」の時間的な地続きにある未来ではなく、明日を超えた向こう側にある未来のイメージを指しています。都美の目指す「あさって」のイメージは既に「遠心力(型)」についての下りでご説明した通りですが、それに向かうが為に逆算的に行程を導き出すのではなく、都美に集う多様な顔ぶれと、そこでしか生まれない出来事を積み上げ行くことこそが、とびらプロジェクトの「あさって」へ向かうスタンスであると考えています。途中、会場に来てくれたとびコーさんたちを紹介する場面もあり、アートコミュニケータとしてこれから活躍してゆく立場から、お一人ずつ今考えていることなどをお話して頂きました。とびコーさんという当事者がいることで、話はより深まりをみせることができたと思います。
^
考えてみれば、とびコーさんは10代から70代までおり、学生、会社員、主婦、退職後の方、研究者、介護士、教員、新聞記者、アーティスト、地方議員、なぞなぞ作家、などなど、相当バラエティーにとんだ90人もの個性派揃いです。こうした立場や世代や価値観の違った人たちを、フラットな立場でつないでゆけるプラットフォームなど、アート以外のあるでしょうか。(書いてて、よく集まったなぁ~と我ながら感心)様々な人たちが集い、それぞれの個性を尊重し合い、時に目的を共有し、時に議論しながら、新しい価値観をもったコミュニティーを生み出して行ける場が、とびらプロジェクトなのだと考えます。(伊藤)

建築ツアー実践講座1回目:「建築を伝える とは?」

2012.06.05

とびらプロジェクト「実践講座」がついにスタートしました。実践講座とは、とびラー(アートコミュニケ—タ)として活動する上で、必ず一つは担当しなくてはならない3つのプログラム(スクールマンデー(対話を通した作品鑑賞)」、「建築ツアー」、「アクセスプログラム(障害のある方のための鑑賞サポート)」の中から1つ必須。複数選択してもよい。)を実行するのに必要となる知識や経験を身に付けるための講座です。
^
今回実施されたのは「建築ツアー」の実践講座です。東京都美術館(以下:都美)は建築家前川國男(コルビュジェに師事、同じ上野公園内の東京文化会館も設計)が設計した建築物で、それ自体が非常に魅力的な作品となっており、この建物を見学して廻る企画が「建築ツアー」です。「建築ツアー」の実践講座は平日の夕方6時30分からスタートとなりますが、会社帰りや学校帰りのとびラー候補生(以下とびコー)さんが集まり、熱心に講座を受講しました。はじめに講師(学芸員)の河野さんより都美の建築物としての歴史やリニューアルオープン前に行った「建築ツアー」の様子などを紹介して下さいました。実はこの「建築ツアー」、リニューアルオープン前にも実施されており、好評を博した企画であったため、リニューアル後に結成された「とびらプロジェクト」のメインプログラムの一つとして採用された経緯があります。(以前は館長自身がツアーのガイドをされたこともあり、館長室で館長と参加者が談話していたなんてエピソードもある人気企画でした。)
^
こうした経緯を踏まえつつ、河野さんが今回の実践講座のテーマとしたのは「建築を伝える とは?」でした。「建築を伝える」と聞くと少し難しそうな気がしますが、河野さんからの出題は、スライドの内容を踏まえた上で「手紙を書く」ことでした。

仲のよい友だちに手紙を送るような気持ちで、都美のことを思い起こしながら書きます。とびコーさんとなって2ヶ月がたち、みなさんリニューアル後の都美にもだいぶ馴染んできたので、なかなかのスピードで筆が進みます。

 

手紙が書き終わったら、河野さんから同じ机のメンバーで手紙を読みまわす様に指示がでました。手紙を読むときのポイントは、「どのような伝え方をしているか」です。自分以外の目線で都美を見ることと、その魅力をどのように伝えようと工夫しているのかを共有することができました。

 

お互いの手紙を読み終えたら、テーブルごとに手紙の感想を含め「どんなところに興味を持ったのか」「どんな伝え方をしていたか」について意見交換をしました。手紙を共有したことにより、更に「建築物としての都美の魅力」や「その魅力の伝え方」について感心を深めることが出来ました。

 

その後、話し合いをした各テーブルごと意見をまとめ、伝え方の工夫や、気付いたことなどについて発表をしました。

 

出てきたアイディアや感想を河野さんがホワイトボードにまとめて行きます。建築物そのものの特徴というよりは、都美を取り巻く環境や内部の設備、アメニティについての話題がたくさん出されました。ちなみに、都美の建築物としての特徴の一つに、レストランが館の中央部分に大きく設定されていることがあります。これは、設計者の前川國男がかなりのグルメで、「美術館に来て美味しいものが食べられないなんてあり得ない」とのことから、レストランを強調した設計を行ったとのこと。リニューアル後の都美も、レストランの存在は変わらず大きく扱われています。
※レストランのメニュー(とくにローストビーフ)については、別にレポートをする予定です。お楽しみに。

 

「どんなところに興味を持ったのか」「どんな伝え方をしていたか」を共有できたところで、河野さんから「みなさんが伝えようと思ったことの全てが建築ツアーで活かせる内容です。建築ツアーでは、皆さんに知識だけを詰め込んで頂き、ステレオタイプな解説者となって頂くことを想定していません。みなさんの見方感じ方を基に、建築ツアーをつくりあげて行きたいです」とのコメントがありました。
^
そこで、再度テーブルごとに、より自分たちの伝えたいと思ったことを伝えるには、どのような工夫が必要か、より興味を持ってもらうには、どうしたら良いかについて、話し合いを行いました。

 

再度、話合われた内容を各テーブルごとに発表して頂き、河野さんが、ホワイトボードにまとめて行きました。最後に河野さんから「1~10のことを全てお客さんに話す必要は無ありません。もちろん話しどころの要点などは多少ありますが、今回の講座であがった意見や考えをもとに、少しでもお客さん興味を持ってもらい、お客さんが主体となるような建築ツアーを目指したいですね」とのアドバイスがありました。とびコーさんたちが考える、都美の「建築ツアー」が動きだしました。とびコーさんたちがガイドとなるのは、ちょっと先ですが、かなりお勧めな企画になること間違いなしです。乞うご期待。

平田オリザによる演劇の手法を用いたワークショップ(基礎編)

2012.06.03

劇作家で演出家の平田オリザさんが、とびラー候補生(以下:とびコー)向けにワークショップを開催して下さいました。7月15日(日)~25日(水)までの11日間、東京都美術館の講堂ロビーにて、平田さんが主宰する劇団「青年団」による「東京ノート」が公演されます。
フェルメールが展示されている美術館のロビーが「東京ノート」の舞台想定となっていますが、この劇中の設定が6月30日から東京都美術館ではじまる「マウリッツハイス美術館展」にて実際のものとなります。本当に「真珠の耳飾りの少女」が展示される美術館のロビーで、「東京ノート」が公演されるのは初めての試み。公演が今から楽しみです。とびコーさんたちもお手伝いをする予定です。今回の演劇ワークショップはこの公演にちなんでアートコミュニケータ(とびラー)育成を目的として特別に行われました。平田さんご自身が講師をされる貴重な機会とあり、多くのとびコーさんが参加しました。

» さらに詳しく読む

「綴プロジェクト」寄贈式典

2012.05.30

「綴プロジェクト」(文化財未来継承プロジェクト)第5期作品 寄贈式典が執り行われました。「綴プロジェクト」とは、京都文化協会とキヤノン株式会社が協同で推進する社会貢献活動です。今回、東京都美術館に寄贈されたのは6曲1双の高精細複製品屏風2双です。<「桜図屏風:さくらずびょうぶ」(伝俵屋宗達筆)、「群鶴図屏風:ぐんかくずびょうぶ」(尾形光琳筆)の高精細複製品>
キヤノンによる高度なデジタル技術と、京都の伝統工芸史の匠の融合により、再現された2双の屏風は、本物に引けを取らない素晴らしい仕上がりでした。寄贈頂いた屏風は、今後アートコミュニケーション事業を中心に、鑑賞教育の実践や、さまざまなワークショップなどで活用することを計画しております。

 

記念式典には多くのとびラー候補生(以下:とびコーさん)も参加し、寄贈のセレモニーが終わると屏風をじっくりと鑑賞しました。ガラスケースなどに入れることなく、これほど間近で鑑賞できるのは、複製品ならではの利点。本物の作品は劣化を防ぐ為に環境の良いところで保存しつつも、その作品のもつ魅力をよりリアルに体感できるのがこの高精細複製品の素晴らしさであり、「綴プロジェクト」(文化財未来継承プロジェクト)のコンセプトとのこと。弱視の方が至近距離で鑑賞したり、日常の生活空間で屏風の光を体験したりも出来ます。今後、寄贈頂いた2双の屏風をどの様に活かして行くのか、とびコーさんも真剣に考えを巡らしながら鑑賞していた様子でした。

 

会場内では、寄贈作品の展示に加え、高精細複製品をつくる技術についての展示も行われていました。キヤノンのカメラとプリンターを使いながら、高画質の撮影と、被写体と全く同じ色でプリントアウトを行うカラー出力の技術の実演を見学させて頂きました。プリントアウトに使われる紙は、屏風に使われている和紙の印象を保ちながらも、インクジェットプリンターの色彩表現を引き出せる様に研究されたもの。徹底したこだわりが伺えます。

 

続いて、プリントアウトされた絵に本物の金箔を打つ実演も行われました。真新しい金箔を、経年変化で古びた風合いにみせるなど、熟練した匠だからそこの技が屏風の複製に活かされていました。まさに、最先端の技術と代々伝受け継がれた匠の技のコラボレーションの瞬間でした。

 

金箔を打つ実演の後は、伝統工芸士の方から、屏風の再現にあたりもっとも苦心された部分などについてご説明を頂きました。本物にある傷や経年変化による風合いはもちろん、金箔の色の使い分けや、金箔の打ち方によって、屏風の表面の絵柄にそって凹凸を感じさせる陰影の技術など、随所に込められた匠の技に驚かせられました。記念式典での実演はありませんでしたが、金箔が打たれ、仕上がった絵を屏風に張り込む表具師の方の技も加わり、ようやくこうした高精細複製品の屏風が完成するそうです。この2双の屏風はオリジナル作品のある複製品ではありますが、完成に至まで、多くの方々の努力と研究の粋が注ぎ込まれた素晴しい価値のある作品だと感じました。これからこの屏風を使ったプログラムをとびコーさんと詰めて行くのが楽しみです。(伊藤)

びじゅつ探偵団!いろ色BooK

2012.05.27

「公募展ベストセレクション美術 2012」展最終日に、展示されている絵や彫刻の色をもとに、世界にひとつだけの色見本帳「いろ色BooK」をつくるワークショップが開催されました。東京都美術館のミュージアムショップを運営する(株)美術出版サービスセンターと東京都美術館が共催し行われた今回の企画は、リニューアル開館以来はじめて広く参加者を募ったワークショプとなりました。ご参加を頂いた皆さまは大人子どもあわせて25名、親子連れで楽しんで頂きました。もちろんとびラー候補生(以下:とびコーさん)がワークショップのサポートをしっかりと担当しました。
ワークショップがはじまると早速展示室へ向かい、学芸員の稲庭彩和子さんのファシリテートのもと、まずは全員で1枚の絵を鑑賞します。みんなで声をだしながら鑑賞してみると、思わぬところに奇麗な色が隠れていたり、色に込められているメッセージを感じたりと、お互い新しい発見をすることができました。

 

鑑賞のコツがつかめたら、とびコーさんと参加者のみなさんが3人1組ほどの小グループにわかれて、お気に入りの絵を探します。「公募展ベストセレクション美術 2012」は数ある公募団体のなかでも特に精力的に活動をしている27団体を取り上げ、かつ各団体の中で推薦を受けた作家のみが展示をしている、いわば公募団体オールスターズの展覧会。日本画、油画、水彩、工芸、彫刻と多彩な表現が展示室内にあふれています。

 

とびコーさんといろいろ相談をしながら、お気に入りの絵を2点決めてじっくりと鑑賞します。とびコーさんも楽しそうです。

 

お気に入りの絵がみつかったら、アートスタディルームに集まって、作品カードでお気に入りの絵を発表します。いろいろな絵がテーブルの上に並びました。

 

発表のあとは、各自お気に入りの絵の中にある色を絵の具を混ぜてつくります。その絵の中にある印象的な色に近づけるように、丁寧に色を混ぜ合わせます。1点の絵から5色の色をつくります。出来た色は1色ずつ帯状の紙に丁寧に塗ってゆきます。

 

2点の絵で合計10色の色の帯ができあがりました。次に出来た色の帯をはさみでパチパチ切り、色のピースに仕立ててゆきます。色のピースの大きさや形は、参考にした絵をヒントに、ドンと大きく塗られていた色は大きな四角いピースに、ちらっと見えた色は小さな三角ピースにという具合に刻まれてゆきました。

いよいよ出来た色のピースを使って色見本帳をつくります。スケッチブックにお気に入りの絵を貼り、その隣に、お気に入りの絵をもとにつくった色のピースを貼ってゆきます。絵から取り出された色たちが再構成されて、また違った味わいが出ています。手を動かしながら色を考えたり、色の配置を並べ替えながら、隣り合った色と色の影響を体験したりすることで、よりお気に入りの絵を深く感じることができたのではないでしょうか。

 

みなさんそれぞれの色見本帳ができました。色見本帳もさることながら、あまった色のピースが入ったバットの中もなかなか奇麗です。

 

そこで最後は、あまった色のピースをお互いで交換し合いました。交換した色のピースはお土産としてお持ち帰り頂きました。たくさんの人がお気に入りの絵の中から取り出した色のかけらを拾い集めて、スケッチブックの上でまたちがった絵ができたら素敵ですね。今回の絵の具は、ターナー色彩(株)さまからご提供いただきました。ありがとうございました!(伊藤)

「とびら楽団」始動!

2012.05.26

前回の「とびラーのコミュニケーションデザインを考える」で、浮上した「とびら楽団」がついに活動を開始しました。呼びかけに答えてくれた方々は何と20名。すごい!サックスにコントラバス、ウクレレまでいます。第4回基礎講座のあと、初練習となりました。天気もよかったので、目の前の上野公園で演奏してきました。初見でみなさん演奏できるのが凄いと思いました。NHKみんなのうた「メトロポリタン美術館」が当面の課題曲です(笑)。何せ、都美は東京メトロポリンタンミュージアムですので。練習中に、犬を散歩していたお婆さんから声をかけられたり、考えてみれば、とびラー初の地域活動でした。アートコミュニケータに音楽は必要ですね。とびら楽団は、曲を演奏する人たちだけでなく、とびらプロジェクトに関わる皆さん全ての心を音楽で動かして行けるような、そんな楽団になればと願っております。さらに、こうしたエネルギーが美術館と地域や社会をつなぐ原動力になるのではと、すごく期待しています。(伊藤)

基礎講座4回目「学びの環境づくりを考える」

2012.05.26

第四回目の基礎講座は「学びの環境づくりを考える」。午前中の講師は、東京都美術館学芸員でアートコミュニケーション事業担当係長の稲庭彩和子さんと、損保ジャパン東郷青児美術館顧問の小口弘史さん。まずは、稲庭さんから、美術館に訪れる人々と作品をつなげることについて、学芸員になる前のご自身の体験談や、学芸員としてこれまで取り組まれてきたことなどをレクチャーして頂きました。美術館を単なる文化を学び知る場と捉えるのではなく、自らと対話する空間とすることの提案と実践を目的として、神奈川県立近代美術館で実施された「鑑賞鎌倉のたてる像たち」(中学生が絵画の鑑賞を通して思考を巡らす短編ドキュメンタリー)の映像などもご紹介頂きました。

 

引き続いて午前中の後半は、小口さんによるレクチャー。東郷青児美術館を中心とした新宿区での鑑賞教育の実践経験をもとに、美術館を利用した鑑賞教育を学校教育の中に取り入れる運用面での難しさ(授業時間内で学校と美術館とを往来することや学外授業の安全管理など)をご指摘頂きながらも、学校連携のプログラムについてとびらプロジェクトに期待する効果などをお話頂きました。また、東郷青児美術館で実施されていた対話による鑑賞教育の内容にも触れ、一般的な鑑賞方法と対話による環境方法との比較などを伺うことが出来ました。

 

午後の基礎講座の講師は稲庭さんと、同じく東京都美術館学芸員の武内厚子さん。早速、対話型鑑賞教育の実践に入りました。まずは、本物の作品をじっくり一人で鑑賞するところからスタートです。全員が展示室に移動して、気になった作品をじっくり鑑賞し、各々感想をメモしてゆきました。

 

対話による鑑賞方は、まず、各自がじっくり作品を鑑賞するところからはじまります。各自が感想をまとめたら、特にお気に入りの1点を選んでアートスタディルームに戻ります。

 

アートスタディルームに戻ってからは、稲庭さんの指示のもと、各自特に気になった作品について作品カードを使いながら、他のとびラー候補生と作品の感想を共有しました。

 

自分がその作品をどの様に感じたのか、みえたのかを説明することで、周囲の理解も深まり、これまでとは違った絵の見え方に気付くことができました。また、こうした時、作品の感想を話す側だけでなく、感想を聞く側の「きき方」がお互いの理解を深める上でとても大切になりますが、さすがとびラー候補生、2回目の基礎講座「きく力」の成果が随所に現れている様に感じました。

 

最後は武内さんによるVTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)の実践。実践講座にてとびラーがマスターしなければならない対話による鑑賞方のファシリテーションです。VTSでは、作品を鑑賞する際に、美術史の知識を必要としません。その代わりに、ファシリテータが複数の鑑賞者のそれぞれ違った感想や発見をいくつも引き出しながら、作品から紡ぎだされる鑑賞者の多様な声を丁寧に整理し、重ねてゆくことによって、作品への理解を統一的なものとせずに、個々人の中で深めて行く方向へと導きます。非常にファシリテータの経験値と力量が必要となりますが、きっととびラー候補生のみなさんなら大丈夫でしょう!とびラー候補生も日々成長しています。(伊藤)

とびラボ:とびラーのコミュニケーションデザインを考える

2012.05.20

5月20日(日)のとびラボは僕(伊藤達矢)の呼びかけによる「とびラーのコミュニケーションデザインを考える」でした。どうしたら、もっととびラー候補生とスタッフ含め100人以上の大所帯のコミュニケーションをスムーズにできるか、とびラー候補生にとって都美がさらに刺激的な場になるためにはどうしたら良いかを主題にミーティングを行いました。そこで、僭越ながら僕から一つ提案させて頂いたのが「とびら楽団」の設立です。きっとこれだけいれば、楽器が出来る人が必ずいるのではないかと思い、呼びかけをさせて頂きました。早速ご賛同いただき、一気に設立の運びとなりました。とびら楽団は、曲を演奏する人たちだけでなく、とびらプロジェクトに関わる皆さん全ての心を音楽で動かして行けるような、そんな楽団になればなと願っております。その他にも、メールやブログなどの情報共有の方法から、「基礎講座が終わってしまうととびラー候補生が全員でそろう場所がない。是非定期的に全員でそろう場をつくりたい」などの具体的なご意見が出た他、アートスタディルームの壁を使って、共通の話題に付せんでコメントを足して行くアナログなコミュニケーションも進めてはどうかなどたくさん意見が交わされました。基礎講座も前半戦を過ぎました。とびラー候補生にとっての基礎は知識だけでなく、横のネットワークも大事な基礎になるのです。(伊藤)

カレンダー

2025年6月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

アーカイブ

カテゴリー