2018.12.16
2018年11月から2019年1月にかけて東京都美術館で開催された「見る、知る、感じるー現代の書」。この展覧会に合わせて、缶バッジ作りのワークショップ「墨のオリジナル缶バッジを作ろう!」を実施しました。
このプログラムは、書に関心をもっていただくきっかけとして、どなたでも墨のおもしろさ、美しさを体験できる、書をモチーフにオリジナル缶バッジを作るワークショップです。
当日は、真冬の寒さでしたが、日曜日で来館者も多く、館内は賑わっていました。このワークショップについて、とびラーがロビー階でご案内したり、「現代の書」展会場出入口や「ムンク」展会場出口でチラシをお渡ししたり、お声がけをして、ワークショップ会場であるアートスタディルームへご案内をしました。
多くの方に書をモチーフにした缶バッジ作りに興味をもっていただき、160名の方が参加してくださいました。
当日の様子をご報告します。
〈墨実験コーナー〉
受付後、墨で汚れないために雨がっぱを着ていただき、「墨実験コーナー」へご案内します。4つのテーブルの上には、90㎝×180㎝の障子紙が置いてあります。いったい何が始まるのでしょう。
ここでは、筆の代わりに縄、木の枝、段ボール、ヘチマ、特製大筆などを使います。たまたま同じテーブルになったメンバーで、この大きな紙に、文字でも絵でもなく思いのままに自由に描いていきます。初めはおそるおそる手を動かしていた人も、次第に身体を大きく使って描いています。
さまざまな道具や墨の濃淡で偶然できる線や点、にじみやかすれが大きな紙にどんどん広がり、重なっていきます。
汚れ防止の雨がっぱが、実験室での白衣のようで、まさに「墨の実験室」になっていました。大人も子どもも笑顔で楽しんでくれました。
〈大きな作品から小さな缶バッジに〉
一人一人の線や点が、同じ紙の上で手を動かした人のものと重なり合って、大きな墨アート作品が誕生しました。この作品を、天井から下げたバーに吊るして鑑賞します。吊り下げることで、墨が流れたりにじんだりして、また変化していきます。
「おぉ!」という歓声や、「わぁ、素敵!」「これはアートですね!」という声があがり、皆さん、予想以上の作品に驚いていました。写真を撮る方も多くいらっしゃいました。
この大きな墨アート作品から、どの部分を自分の缶バッジにしたいかを、特製スコープで探していきます。グループでの大きな作品から、個人の小さな作品に切り取る瞬間です。大人も子どもも真剣にスコープを動かして、お気に入りの「ここ!」というポイントを探していました。
選んだ所を少し大きめにカットして、いよいよ缶バッジに仕立てます。
とびラーが缶バッジマシーンにセットする時、「ここを上にして下さい。」「もう少し余白を出して。」など、お一人お一人が愛着をもってくださることを感じました。
出来上がった缶バッジを手にされた時は、皆さん笑顔で、満足感や喜びが伝わってきました。家族や友人同士で見せ合ったり、私達とびラーに「できました!」と嬉しそうに見せて下さったり、早速セーターやジャケットに着けて下さる方も多かったです。
160人の「世界に一つの墨の缶バッジ」ができました。
〈感想コメントより〉
参加者より、感想コメントもたくさん寄せていただきました。ここにいくつか紹介させていただきます。
・大きな紙に色々な道具を使って書くワクワク感と、偶然にできる缶バッジが、本当に楽しいワークショップでした!
・あえて大きな紙に描いてから小さく切るのが楽しかったです。大切にします。
・墨色の美しさ、白の美しさをあらためて感じました。
・「筆がない」という発想に驚きました!ここで初めて出会った人とチームで大きな作品を作れるという点も楽しかったです!
・墨の香りにいやされました。自分でも思ってもみなかった線と色で楽しかったです。
・書道は苦手です。でも、墨のワークショップは楽しかったです。缶バッジもGetできて、ありがとうございました。
・入った時に、すう~っと墨の香りがただよってきて、最初はどんなのができるかなとワクワクした。缶バッジ用の機械も見られて良かった。楽しかった。
・頭ではなく「手に任せる」。しかも何人かで一枚の大きな紙を使うワークショップは、とても新鮮な体験でした。楽しかったです、ありがとうございました。
〈終わりに〉
参加された方は、グループでの墨実験コーナーから、個人の缶バッジ作りの流れのなかで、墨の多様さ、おもしろさ、余白の美しさを感じてくださっていました。
皆さまの表情も、身体を動かして描きながら、生き生きと変化していき、最後に缶バッジを手にされた時には、満足そうな笑顔でした。
大人も子どもも、書になじみのない方にも、書を嗜む方にも楽しんでいただけたこと、たくさんの笑顔に出会えたことは、私達とびラーにとっても喜びでした。
また、当日は「現代の書」展示室で、とびラーによる「はなしてみま書!」という鑑賞プログラムも同時開催していて、鑑賞からワークショップへ、あるいはワークショップから鑑賞へというながれができたことも嬉しいことでした。
ご参加くださった皆さま、ありがとうございました。
執筆:関恵子 (アート・コミュニケータ「とびラー」)
2018.01.07
10月から1月にかけて東京都美術館で開催された「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」。この展覧会を題材に、「いろいろとび缶バッジ:ゴッホの毛糸玉~ゴッホの色選びを毛糸でやってみよう~」を実施しました。
日時 平成30年1月7日(日) 11時~15時
場所 東京都美術館 交流棟2Fアートスタディルーム
このプログラムは、ゴッホが毛糸玉で配色研究をしていたことから着想し、同展のメインとなる作品5点に使われている色の毛糸を用意しました。参加者はその毛糸を再構成して缶バッジを作ります。ゴッホの配色研究を追体験することで、鑑賞を深めようというプログラムです。
当日は、冬晴れの日曜日。そして会期末ということもあり、展示室は朝から大賑わい。その熱気とともにワークショップも大盛況でした。参加者は大人160名、子ども50名。合わせて210名の皆さんが楽しまれました。これから当日の様子をご報告します。
★ワークショップへのご案内
「ゴッホ展」の展示室と離れた場所で、このワークショップを実施しているため、展示室出口と美術館のエントランス付近で、とびラーが案内をします。ワークショップのちらしを配ったり簡単な説明をしたりと、会場に足を運んでくださった皆さんとの会話がスタートします。
毛糸の写真の看板に足を止めてくださったり、とびラーが付けている毛糸のスタッフバッジに目をとめてくださったりして、興味を持たれた方もとても多かったです。会場であるアートスタディルームに向かう際も、とびラーと一緒に展覧会のことやワークショップのことを話題に、会話が弾みました。
2017.06.11
ワークショップ「イロイロとび缶バッジ『ブリューゲルの版画を体験しよう!~なぞって彩る不思議な世界~』」を実施しました。
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ブリューゲルが版画で描いた不思議な世界。彼の筆跡をなぞってたどっていろどって…。あなただけの世界をバッジにして持ち帰りましょう!
日時 2017年6月11日(日)11:00~15:30
会場 東京都美術館 交流棟2Fアートスタディルーム
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「バベルの塔展」の展示室と離れた場所で実施しているため、まずは展示室を見終えたみなさんに、とびラーがワークショップの実施をご案内します。
そして、とびラーと一緒にアートスタディルームへ向かいます。
道すがら、先ほど見てきた展示作品へのホットなご感想をたくさん伺うことができました。
「都美にはよく来るけど、アートスタディルームに入るのは初めて!」と楽しみにしてくださる方も。
アートスタディルームに着いたら、まずは缶バッジにする作品を選びます。
ここでブリューゲルの版画8点を改めて見ていただき、「切り取って缶バッジにして持ち帰りたい!」と思うモチーフを選びます。
缶バッジサイズの円形の台紙をあててみながら、どの作品にしようか楽しそうに悩む方がたくさんいらっしゃいました。
「こんなおもしろいキャラクターがいたなんて気づかなかった!」と改めて発見が生まれる場面でもありました。
バッジにする作品を選んだら、とびラーから作品がコピーされた紙を受け取ります。
「あれ?これ違う絵なんじゃない?」と声をあげる方も。
そうです。これは、ただのコピーではありません。
本物の作品と左右が反転しています。
今、私たちが見ているブリューゲルの版画作品と、彼が実際に描いた原画は左右が逆になっています。
この左右反転したコピーにトレーシングペーパーを重ねて、気に入った部分をなぞって描いて、自分の想像する色を塗って、最後にトレーシングペーパーを裏返して作品と同じ向きにして缶バッジにする、というのが今回のワークショップです。
なぞり描きをする工程で、ブリューゲルの版画の緻密さに改めて触れ、線の細かな違いなどに気がつき、教えてくださる方もいらっしゃいました。
小さいお子さんからご年配の方まで、皆さんこの工程では、特に集中して「シーン」となって取り組んでいました。
なぞり描きを終えたら、次は彩色です。
自分の想像で、白黒の版画の世界に色をつけていきます。
ここでは、皆さんご一緒に来られた方と、たくさんの色鉛筆を前に、楽しそうにお話をしながら彩色をされていました。
同じモチーフでも、それぞれの選ぶ色で、全く違った雰囲気の作品に仕上がります。
さて、色塗りを終えたら、ついに缶バッジにします。
とびラーが、トレーシングペーパーを円形にカットし、それを反転させて缶バッジに仕上げます。
描き終えてここまで来た方のお顔は、なんだか達成感に満ちています。
そして、ついに出来上がり。
世界にひとつのオリジナルの缶バッジです。
よろしければご感想を・・・とお声かけしたところ、こんなにたくさん集まりました!
バッジ作りで火がついた創作熱が、この感想記入の場にも表れているようでした。
私たちとびラーにとっての嬉しい言葉もたくさんありました。
でも、どんな言葉よりも嬉しかったのは、できあがった缶バッジをお互いに見せ合ったり、服やかばんにさっそくつけたりする時の皆さんの笑顔でした。
展示室から離れたアートスタディルームでの実施でしたが、小さいお子さんからご年配の方まで、225名もの方が足を運んで参加してくださいました。
今回のワークショップが、「オリジナルの缶バッジを作って持ち帰れる」だけでなく、参加された方それぞれにとって、何か新しい気づきを得られるきっかけになっていたらいいなと思います。
参加してくださった皆さん、ありがとうございました。
執筆者:服部美香(とびラー・アートコミュニケータ)
2017.02.08
「ティツィアーノとヴェネツィア派展」で、缶バッジ・ワークショップを開催します。ヴェネツィア派の特徴と言える背景描写のうち、今回は特に「空」に着目します。鑑賞した作品の中で印象に残った空を、オイルパステルを使って表現してみてください。あなたが描いた「ヴェネツィアの空」を缶バッジに仕立てて、鑑賞の思い出とともに持ち帰りましょう。
2016.01.30
寒い北風の中、「卒展まわって缶バッジ」は、はじまりました。
缶バッジプロジェクト史上初の3つのシールを集めるシールラリー、そのシール収集後に卒展のポスターを使った「特製卒展缶バッジ」を持ち帰っていただくという試みに、全身全霊をかけ挑んだメンバーでした。
東京都美術館の第1公募棟で、声を掛けられるのを待ちながら、いよいよ来るぞーと、待ち構えること10分。
誰からの声掛けもなく、しょぼんとして作品を眺めていた時に参加者から「シールいただけますか?」「ありがとうございます」やっと1枚目のシールを渡し、私の最初のシフトは終わりました。
次のシフトは、東京藝術大学の絵画棟でした。今回のシールラリーは東京都美術館の第1公募棟・第2公募棟と東京藝術大学の絵画棟の3箇所をまわってシールを集めます。
暖かい美術館内を移動できる第1会場・第2会場とは違い少し離れた東京藝術大学まで、果たして来てくれるのか?など多少の不安はありましたが、のんびりと作品をみたり普段入れない大石膏室を覗いたりしていました。
その時に驚愕の報告が…
まだ始まって1時間しか経っていないのにマップ配布終了の知らせが届きました。
どよめくメンバー達ですが、やったねという笑顔も見られました。
その後、絵画棟1Fをウロウロしながら参加者とあれがよかったとかあれが好きだったとか、
楽しくお話をすることができ有意義な時間を過ごせました。
受付に戻り、ガチャポンの前に陣取ると先程お会いした方たちが、戻ってきてくれました。
皆さんが口々に「藝大の方も見れてよかった」といい、ガチャポンも楽しんでいただけました。
最後の参加者は、他館のスタンプラリーで手に入れた缶バッジを見せてくださり、「缶バッジラリーはとても楽しい」とお話してくださいました。
すべてがはじめて尽くしの開催でしたが、沢山の参加者の笑顔と沢山の楽しい会話から次回への確かな手ごたえを感じました。
山田美佐緒:いまだに「すべて潔し」の域には達せず、日々勉強の50代
2015.11.04
2015.01.29
2014.09.15
秋晴れの9月15日(月・祝)、『メトロポリタン美術館 古代エジプト展 女王と女神』展示室内2階休憩スペースで、とびラーによるワークショップ「古代文字ヒエログリフを書いてみよう!~イロイロとび缶バッジ~」を実施しました。
展示室を訪れた方々の鑑賞をより深めるための工夫はないかと思案したとびラーが、展示物に散見されるエジプトの古代文字(ヒエログリフ)に着目したことから生まれたワークショップです。自分の手で実際にヒエログリフを書いてみたら、神秘的な絵文字の刻まれた展示物をもっと身近に感じられるのではと考えたのです。そしてその体験を、美術館への親しみも込めて缶バッジに仕上げて持ち帰っていただこうと、オリジナルの50音表や台紙を作成して臨みました。
会場入口には大きなモニターを設置しました。とびらプロジェクトの活動と、今回のワークショップの成り立ちを紹介するためです。このワークショップのメイキングビデオの撮影&編集ももちろんとびラーの手によるものです。早速、動画に誘われて鑑賞を終えた方々が集まってきました。
受付では、ワークショップの主旨と作業手順を丁寧に説明してから50音表をお渡しします。ちいさなお子様の参加者に該当文字をマーキングして差し上げたのも、とびラーらしいおもてなし。「お名前は?」「○○ちゃんのお名前には鳥さんの絵がたくさんあるね!」と、受付での一コマにも参加者ととびラーの微笑ましいコミュニケーションが生まれていました。
50音表を受け取ったら、次は台紙選びです。この台紙は、東京都美術館の壁や床、ソファーなど、館内のいたるところの写真をプリントしたもの。ここにヒエログリフを書き込んだら、まるで東京都美術館の建築物に自分の名前を刻み込むような気持ちになりませんか?
作業台では、楽しそうに熱中する姿があちこちで見受けられました。一見難しそうなヒエログリフも、真似して書いてみたら意外に上手に仕上がるので、次々に感嘆の声があがります。
テーブルには書き順表や、とびラーが書いた見本もたくさん並んでいます。ヒエログリフには発音を充てた「表音文字」だけでなく、個々の意味や固有名に則した「表意文字」もあるので、ここではその一例として「ハトシェプスト女王」「ハトホル女王」など今回の展示にちなんだ名前や、「永遠」「健康」「やあ!君!」といった身近な言葉の表記を紹介しました。ご自身の名前に「永遠」の文字を組み合わせた作品を作った方もいらっしゃいましたよ!
作品が書けたらマシン台へ移動、とびラーが缶バッジに仕上げます。ドキドキ・ワクワクしながらプレスされるのを待つひとときもまた楽しいもの。でも実はその瞬間、担当とびラーも内心はドキドキです。世界でたったひとつの作品を仕上げるお手伝いをしているのですから、にこやかに対応しつつも失敗したらどうしようと気が気ではありません。だからこそ仕上がった喜びを参加者と共有できた瞬間は至福の時です。
素敵に仕上がった缶バッジにご満悦な参加者に「見せてください!」と、すかさずとびラーが声をかけます。「この背景の写真はあそこの壁のタイルです」「これはほら、この窓から見えるあの植え込みの石ですよ」「これは1階のアートラウンジにある椅子ですね、ぜひ帰りに覗いてみてください」等々のコメントとともに、東京都美術館のマップに撮影場所をマーキングしてお渡ししていたのは、『建築ツアー』でも活躍中のとびラーです。缶バッジをきっかけに、東京都美術館の建築物としての魅力をお伝えできたのも有意義なひとときでした。古代エジプトに思いを馳せつつ美術館の建物を意識してみると、3500年の時を超えて存在する展示品の偉大さもあらためて感じられたのではないでしょうか。次は『建築ツアー』でお会いしましょう!とのお約束もぜひ覚えていてくださいね。
こうして4時間半のワークショップが、たくさんの笑顔とともに終了しました。「展示品のヒエログリフをもう一度見てみたくなった」と展示室に戻られた方、「友だちに自慢したい!」と笑顔で伝えてくださった方、「職員証に付けて愛用する」と早速つけて見せてくださった方、「ヒエログリフの書き取りテストがあったら百点とれる!」との頼もしい小学生、「敬老の日のお祝いにおじいちゃまの名前を書いた」と教えてくださったご家族・・・ご参加いただいたみなさまが、今回のワークショップを機に『メトロポリタン美術館 古代エジプト展 女王と女神』を振り返り、鑑賞を深めていただけましたら幸いです。
わたしたちとびラーも参加者のみなさまと古代エジプト文化の一端をきっかけとしたコミュニケーションを存分に楽しませていただきました。
わたしたちとびラーは、これからも美術館がより身近な場所になるための活動を続けていきたいと思っています。みなさまとの再会、そしてより多くの新たな出会いをも願いつつ・・・。
筆者:とびラー 小松 一世