
集大成ともいえる団体作品は、レオナルド・ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》より
みなさんは、「コスプレ」と聞くと、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか?わたしたちが取り組んでいる「アートコスプレラボ」では、絵画や彫刻などの作品を、自分たちの身体を使って、再現することをめざしています。再現にあたっては、作品に登場する人物のあり方や気配まで含めて表現しようとします。
多様な来館者と様々な作品を鑑賞する経験を重ねてきたとびラー(アート・コミュニケータ)が、その視点を活かし作品を鑑賞し、制作します。
ここからは、コスプレラボの過程をご紹介します。
①作品選び
②どんな風にコスプレするか熟考する
③制作
④撮影
①作品選び
まず、どの作品をアートコスプレするかについては、各とびラーの感性で自由に選択します。多くの人が目にしたであろう「名画」シリーズにこだわるとびラーや、東京都美術館で開催された展覧会の作品にこだわるとびラーなどそれぞれが、なぜその作品を選んだのかをミーティングで他のとびラーに話します。また、各自で選ぶ作品とは別に、複数のとびラーで一つの作品をつくることも考えていきます。
②研究
作品に向き合い、作品をじっくり見ます。色や形、質感や感触、時代、季節や気温、光や風の強弱、匂い、作家や登場する人物の気持ち、前後のストーリーまで推測します。図録やwebなどで作品の背景も研究します。自分たちなりの解釈に正解はなく、自分たちがその作品をどうキャッチしたかを大事にします。鑑賞する際の自分の受け止め方によって、その人らしいアートコスプレの表現につながっていくのです。
③制作
鑑賞してキャッチしたものをカタチにしていきます。最も楽しく、悩ましい過程です。制作に使う素材選びでは、100円ショップや布屋や古着屋などに何度も通います。制作にあたっては、どのようにカタチにしたらよいか迷いながら作っていきます。撮影までの間、とびラボで中間発表をしたり、お互いにお悩みを相談します。とびラボに参加するとびラーの発想力で、お互いの自宅に眠っている材料も使って制作をしていきます。。
クイズ:この素材は何でしょうか?
正解は、「羊毛フェルト」!完成度の高さにとびラーもびっくり!
④撮影
撮影は、制作したものを着用してすぐに写真を撮るわけではありません。この段階でもまた、作品をじっくりと見るのです。たとえば、作品の中の人物の上半身と下半身のプロポーションが現実ではありえないようなバランスだったり、頭を傾けるにも左右の角度だけでなく前後の角度も大事で、さらに捻りが入っていたりします。
これは、「作品をじっくりみる」だけでは気づけないことで、実際に身体をつかってみることで、はじめてわかるバランスや違和感があります。コスプレしている本人だけでなく、周囲のとびラーが「もっと左をむいて」「からだは正面だけど顔は右に!もっとうつむいて!」など的確な指示をだすことによって、より作品に近づけます。撮影の場では、とびラーのものすごいエネルギーが流れていて、みんな汗だくに!実際に演じてみてこそわかる不自然ともいえる体勢での撮影翌日には、筋肉痛になること間違いなしです!(笑)
たくさんの視点により入念にチェック。
撮影が長引くと、背景も持つ腕もプルプル・・・
【アートコスプレギャラリー(抜粋)】
実際に身体を使って再現してみると、作品を見ているだけでは気づかなかったことが次々に現れてきます。作家が何を表現したかったのか、どんな気持ちだったのか、じっくりみることで思いを馳せ、ひとりでつくる。そして、とびラー同士の別の角度からの視点と熱量があわさって、みんなでよりよくするための意見を出し合い、撮影して完成させる。コスプレーヤーとディレクターの相互作用で「アートコスプレ」となるのです。
アートコスプレは、カラダをつかった「模写」とも言えるかもしれません。
アートコスプレラボを実施する場に満ちている充実感や達成感は、内省的な創作活動だけでなく、とびラー同士の共同創作の成果だと思います。
ひとりでつくる楽しさもありますが、みんなでつくりあげる過程を楽しみたい、そう思えるとびラボでした。また、アートコスプレという方法を通して、新しい鑑賞のとびらが開かれたように感じています。

飛び入り参加のとびラーも加わり、いろんな個性が集合したひまわり。
執筆者:12期とびラー 笹村曜子
そこに居る人が、「来て良かった、ここにいていいんだ。」と感じられる場づくりをしたいです。
執筆者:12期とびラー 矢吹美樹
日々の暮らしや学びのなかで、ふとした瞬間のきらめきや、「ことば」がもつ力に惹かれています。一人ひとりの「ちいさな発見」や「その人らしさ」が自然にあらわれるような、温かな場づくりを大切にしていきたいです。
2026.03.15