2022.11.20
ワークショップメイキング①「ミュージアムでのワークショップとは?」
日時|2022年10月30日(日)13:00~17:30
場所|オンライン
講師|小牟田悠介(東京藝術大学)
ワークショップメイキング②「企画を立てる」
日時|2022年11月20日(日)13:30~17:30
場所|東京藝術大学 第3・4講義室
講師|小牟田悠介(東京藝術大学)
藤岡勇人(東京都美術館)
ワークショップメイキング①は、建築実践講座と合同で行われました。
ワークショップメイキング②は、アクセス実践講座を選択したとびラーが改めてワークショップを考えます。
まずはこれまでの講座をふりかえりました。それから、先日行われた「ずっとび」のオレンジカフェについて、担当学芸員の藤岡さんや、参加したとびラーから当日の様子について聞きました。
次に、グループに別れて「65歳以上で東京都美術館に来れていない方」を対象にしたワークショップメイキングを行いました。机上で考えるだけではなく、実際に東京都美術館へ足を運びます。
講義室に戻り、実際に足を運んでみてからの内容を見直します。
他のグループの意見も交えながら、フィードバックを行いました。
(とびらプロジェクト コーディネータ 工藤阿貴)
2022.11.12
”今日はどんな気分?
「学校がしんどいな」とか
「いつもみんなで行動するのも疲れちゃう」と思ったら、
おいでよ、ぷらっと美術館に”
秋晴れの11月、土曜日の午後、私たちのこんな呼びかけに応募してくれた
3組の親子が東京都美術館のアートスタディルームに来てくれました。
「おいでよ・ぷらっと・びじゅつかん」は、学校が「しんどい」と感じている小学生・中学生とその保護者を対象としたプログラムで、2021年度から始まり今回が3回目の実施になります。
参加者ととびラーが1対1でペアになり、東京都美術館や展覧会を一緒にお散歩することで、美術館での過ごし方をみつけていく、オーダーメイドのプログラムです。
学校に行っていても、行っていなくても、何かしら「しんどさ」と感じている子供たちに対して、「社会の中には学校と家だけじゃなくていろんな場所があるよ」「美術館は『自分の居場所』のひとつになれるかもしれないよ」ということを伝えたいと思い企画しました。
■美術館へようこそ!
子供たちがゆっくりと来られるように、受付は14:30〜15:00の30分間設けました。美術館に来るのが楽しみで受付開始した直後にきてくれる子もいれば、あまり乗り気そうではなく受付時間ぎりぎりに連れて来られた子も。どんな状況でも来てくれただけで私たちは嬉しくて、少しでも緊張を解きほぐせるよう笑顔でお出迎えしました。
担当とびラーと参加者が席に着いたら、お互いに呼んで欲しい名前を付箋に書いて交換し、このプログラムの特別パスポートをお渡ししました。この特別パスポートは、お散歩の中で見つけた「お気に入り」を記録するために使います。また、参加者は初めての場所や初めて会うとびラーに緊張しているだろうと思い、まずは少しでも安心感を持ってもらえるよう、これからプログラムでやることをフリップを使って説明しました。
■お互いを知り合う時間
次に、アイスブレイクとして、岡本太郎の作品や東京都美術館の写真を使って、どんなものが気になるかについてお互いに話しました。テーブルに並べたたくさんのカードの中から、まずはとびラーが好きなカードを紹介します。次に子供に興味があるものや見たいと思うものを選んでもらい、どんなところが気になるかを聞きます。名前を書いた付箋を指人形のように使いお話しするペアもあり、カードを通じてお互い興味があることを話すことで、とびラーと子供の距離が少しずつ縮まっていきます。
熱心にお話ししてくれる子もいる一方で、なかなか話そうとしない子もいました。初めて会う人といきなり仲良くなるのは大人でも難しいので、そんな子がいてもおかしくありません。本人のペースで心が開くまで、時間をかけて話しかけていきました。その子もきっと話しかけられる言葉を聞きながら、とびラーがどんな人かを知ろうとしてくれていたのだと思います。一言、二言と少しずつ話してくれるようになり、20分間のアイスブレイクが終わる頃には、最初の頃の緊張は解け、とびラーとお散歩に行く気持ちができているようでした。
■お散歩へ出発
心の準備ができたら、お散歩へ出発です。ここからは保護者とは離れて、とびラーと子供だけの時間が始まります。みんなしっかりとした足取りで「展覧会 岡本太郎」に向かっていきました。会場に入り岡本太郎のエネルギッシュな作品の数々を見ると、元々楽しみにしていた子はもちろん、最初は興味なさそうだった子も一気に作品の魅力に惹きつけられたようでした。それぞれお気に入りの作品を見つけて、熱心に観察したり写真を撮ったりしながら鑑賞しました。一つの作品をじっくり見る子もいれば、多くの作品に興味が止まらない子もいて、作品の鑑賞の仕方にも一人ひとりの個性が出て、一緒に回るとびラーにも発見のある楽しい時間となりました。はじめは一言だけだった感想も、展覧会の最後には「作品のこんなところがが好き」という話から、普段の好きなものの話までたくさんお話ししてくれるようになっていました。
展覧会の後には美術館内を一緒にお散歩しました。東京都美術館には心休まる空間がたくさんあります。とびラーおすすめの場所に案内すると「わぁ」と声を上げ、展覧会とはまた別の表情を見せてくれました。
今回は、保護者にも美術館が居場所になり得ることを知ってほしいと思い、「参加者」としてとびラーと二人で活動する時間を設けました。なぜ私たちがこのプログラムを作ったのか、それぞれの個人的な思いも含めて伝えることから始め、1対1でじっくりとお話をしました。保護者からも、このプログラムへの応募動機や美術館への関心についてお話ししてもらい、子供と離れ、一人の大人として非日常のリフレッシュする時間を体験してもらいました。
■お気に入りボードとパスポートの作成
一組、また一組とお散歩を終えた子供たちが、目を輝かせてとびラーと楽しそうにアートスタディルームに戻ってきました。ちょっと休憩をして、美術館で見つけたそれぞれの「お気に入り」からお気に入りボードを作成する作業に取り掛かります。撮影した写真の中から1枚選んでプリントアウトし、岡本太郎の消しゴムハンコを押したり、絵を描いたりとそれぞれの方法で、「お気に入り」を思いっきり表現してくれました。子供たちはプログラム当初の緊張していた様子とは打って変わり、周りのとびラーにも何が気に入ったのか、何を作っているのかを元気よく話してくれ、部屋全体が賑やかな空気に包まれました。最後に保護者と子供それぞれにアンケートを回答してもらい、全部で90分のプログラムが終了しました。
■おいでよ・ぷらっと・びじゅつかんに込めた思い
私たちはこの企画を進めるにあたり、どうしたら参加者が「自分の居場所」と感じられるようになるか、何度も何度も話し合いました。その中で出てきたキーワードは、「子供と真剣に向き合い続けること」「違いをありのままに受け止め、肯定すること」「正直に向かい合い、取り繕わないこと」でした。子供たちがどんな心の状態で来てくれるのかわかりませんでしたが、どのような状況でもこれらのキーワードを守り、あとは柔軟に対応することに決めていました。
実際に、学校が「しんどい」理由も性格や興味も参加者それぞれ違い、想定していなかった状況も多々ありましたが、参加者にとって安心できる場にすることを何よりも大事にしました。参加者全員が最後に笑顔で帰っていった姿を見て、また、保護者から「新しい場所に行くことを少し躊躇するようになっていたが、初めての美術館がとても楽しい時間となったようです。」「美術館がお気に入りの場所になりそうです。」という声をいただき、私たちの想いを十分に届けることができたと感じています。
おいでよ、ぷらっと美術館に。
美術館がそんな場所となれることを願い、今後もっと多くの人に私たちの想いを届けていきたいです。
執筆:飯田 倫子(アート・コミュニケータ「とびラー」)
とびラー2年目。とびらプロジェクトを通じて色々な人に出会い、日々刺激を受けると共に、美術館が自分にとっても「居場所」になりつつあることを感じています。
2022.11.05
第5回・第6回建築実践講座|「ワークショップメイキング」
ワークショップメイキング①
日時|2022年10月30日(土) 13:00~16:00
会場|オンライン
ワークショップメイキング②
日時|2022年11月5日(土) 10:00~15:00
会場|東京藝術大学 中央棟第三講義室
第5回建築実践講座は、アクセス実践講座と合同で、オンラインにて行われました。
まず、とびらプロジェクトマネージャの小牟田悠介さんより、ワークショップメイキングとコミュニティメイキングについてお話がありました。
とびらプロジェクトでは、対話をもとにコミュニティを育むことを大切にしています。
プログラムを考えるとき、「何をするか?」を重視しがちです。
「相手にどうなってほしいか?」を軸に進めていけば、迷ったり行き詰まったりしたときに、一度立ち止まり、戻ることができます。
後半の時間は、実際にワークショップを考えます。
まず、一枚の家族写真が提示されました。
そこに写る人物が、東京都美術館に来にくい理由を考え、想像します。
ブレイクアウトルームに分かれたとびラーは、それぞれの経験などから、どうしたら「この人」が都美を楽しめるのか、話し合います。
休憩を挟んで、後半はその人物についてもう少しその人となりについての情報を追加していきます。
”ワークショップというと、ワークショップを「やること」が目的になってしまうことも多い気がしていて、それを「参加する人がどうなってほしいか」という結果から考えていくことが言われれば当たり前なのですが、新しい気づきでした。”
第6回建築実践講座は、東京藝術大学中央棟第三講義室で行われました。
まずは「自分」という属性を客観視して書き出していきます。
その後、グループの中から一人を選出し、東京都美術館の建物を楽しむワークショップを考えました。
選ばれた人がリーダーにならないこと、というグランドルールの中でグループ内でワークショップを考えます。
もうひとつのグランドルールは、必ず現地に行ってみること、そして実際に体感して変更した点を意識すること。
色々なプランが出てきました。
たとえば、企画名だけご紹介すると
などなど・・・
初めに考えていたプログラム、実際にトライアルしてみると、想像した通りにいかないことも。
トライアルから戻ってきて、最初に考えていたプランをブラッシュアップしていきます。
大切なのは、対象者が心地よく過ごせているかどうか。
参加したとびラーのふりかえりより一部引用します。
”自分がペルソナだったので、ものすごく掘り下げることができました。多様性のあるメンバーで作れたことで、奇をてらわず、現実的だけどよく考えられたアイデアになったと思います。午後にやってみたこともとてもよかったです。やってみると、メンバーから自然に変更のアイデアが出ました。素敵な体験でした。”
いよいよ次回は最終回です。
(とびらプロジェクト コーディネータ 工藤阿貴)
2022.10.31
第6回鑑賞実践講座|「コーチング/VTSファシリテーションの実践とふりかえり」
日時|2022年10月31日(月)13:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))
・グループ鑑賞の実践
・ふりかえり(コーチング)の仕方について
第6回となる今回は、ファシリテーションの様子をふりかえり、改善ポイントなどを確認する「ふりかえり(コーチング)」について学びます。
グループワークで、グループ鑑賞とふりかえり(コーチング)の実践を行いました。
それぞれのグループで「鑑賞者」「ファシリテータ」「コーチ」に分かれて鑑賞と場の観察をした後、グループ内でそれぞれの役割から鑑賞の場づくりをふりかえり、気づきを共有しました。
(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)
2022.10.11
トビカン・モーニング・ツアーは、午前中、まだ人もまばらで、のんびりとした空気の中の美術館をまわる30分のツアーです。周りの上野公園の緑も取り込みながら気持ちよく時間が過ぎていき、午後や夜とは少し違った景色を観ることができます。
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10月11日(火)
曇りがちな連休のあとに訪れた 気分の良い秋の朝での開催となりました。
建物の外に出た瞬間の風が気持ち良かったです。
この日は4チーム4つのコースで実施。参加者は7人。
今回は少人数のチームも多く、のんびりとじっくり回ることができたようです。
参加者の皆さんのニコニコな笑顔が印象的な回でした。
「別のツアーも参加したい!」の声も多かったようで、またお会いできることを楽しみにしています。
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トビカン・モーニング・ツアーは、午前中、まだ人もまばらで、のんびりとした空気の中の美術館をまわるツアーです。周りの上野公園の緑も取り込みながら気持ちよく時間が過ぎていきます。このツアーを通して、新しい美術館の魅力を見つけてくださるといいな、と思っています。(滝沢)
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執筆:
池田智雄(アート・コミュニケータ「とびラー」)
とびラー10期。散歩と美術館が好きで、その楽しさを他の人にも一緒に味わってもらうことができるこのとびラボが大好きです。ツアーの時に参加者が自分で見つけた美術館の魅力を言葉にして教えてくれるとガイドとしてとてもうれしくなります。
滝沢智恵子(アート・コミュニケータ「とびラー」)
とびラー9期。トビカン・モーニング・ツアーは、平日の午前中、上野公園全体がなんとなく緩やかに時間が過ぎている時間帯に開催されています。参加された皆さんが、そういう空気を感じながらのんびりとくつろいでいらっしゃる様子をみることがガイドとして、とても幸せです。
2022.10.10
第5回鑑賞実践講座|「ファシリテーション事前準備」
日時|2022年10月10日(月・祝)13:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム・スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))
内容|
・作品に近づく事前準備(ひとりVTS)
・作品選びのポイントを学ぶ
第5回の講座では、ファシリテーションの事前準備について三ツ木紀英さんのレクチャーが行われました。
Visual Thinking Strategies(ビジュアルシンキングストラテジーズ:複数の人で対話をしながら作品を鑑賞する手法。通称:VTS)のファシリテーションは、事前の準備を行うところから始まります。
対象者を想像し、その人に合った作品を選ぶことも事前準備の一つです。
事前にじっくりと時間をかけて、作品を鑑賞・観察・分析する準備を、ファシリテータがひとりで作品をよく見ることを「ひとりVTS」と呼んでいます。今回は各自で事前に行ってきた作品分析をグループでより深めながら、「ひとりVTS」の方法を学びました。
(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)
2022.10.08
第4回建築実践講座|「コミュニケーションを生む場作りとは」
日時|2022年10月8日(土) 14:00~17:00
会場|東京藝術大学中央棟第三講義室/上野公園
講師|宇田川裕喜(株式会社バウム 代表)
第4回目の建築実践講座は、株式会社バウム代表の宇田川裕喜さんです。
過去にもオンラインでお招きしていましたが、リアルでの開催は初めてです。
「何かを作るとき、知るという作業、探すという作業を時間をかけて行います。街だったり、空間だったり。
その後、それを整理して、関係者みんなが理解できる形にしていく。それに名前を付けたりとか、ロゴとかビジュアルとか。その動きが1つの傘のもとで動いていくようにしています。」
講座の後半では、そこに関わる人たちのことを知るワークショップを行いました。
テーマは、「小さなストレスを観察する」
出かける前に、一人一人想像できるストレスの仮説を考えます。
それからグループに分かれ、実際に上野公園へ出かけて小さいストレスを観察します。
約1時間のフィールドワークから戻り、見つけたストレスを書き出していきます。
それから、4つのグループに分類していきます。
小さいストレスに着目することで、よりよく過ごすことのできる場作りが想像できます。
参加したとびラーのふりかえりを一部引用します。
”「小さなストレス」をカテゴライズしていくと、「都美で解決できそうなこと」と「とびラーが関わることで解決できそうなこと」が見えてきました。都美という「場」には、とびラーがいる…だからこそ、広い可能性があるのではないか、と感じました。”
(とびらプロジェクト コーディネータ 工藤阿貴)
2022.09.26
シニアの皆さんを対象とした「暮らしの彩り おとな美術館」は2022年9月26日、東京都美術館で開催された「フィン・ユールとデンマークの椅子」展(2022年7月23日~10月9日)に合わせ開催いたしました。
◇ プログラムへの思い◇
年齢を重ねると、「暮らしを愉しみたい」という前向きな気持ちはあっても、行動に結びつけるのは難しくなることが多くなります。でもいくつになっても暮らしの中に沢山楽しみをシニアの方に見つけていただきたいですし、私たちもそんな発見を大切にして、毎日を心豊かに暮らしていきたいですよね。
東京都美術館には展覧会を楽しむだけではなく、レストランや公募棟、アートラウンジなどいつ訪れてものんびりと楽しめる素敵な場所がたくさんあります。そういう場所をご紹介することで、展覧会のない時でも、また、展覧会に来ていただいた後でも、楽しんでいただける場所の一つに加えていただきたいと思いました。
◇「フィン•ユールとデンマークの椅子」展で開催した理由 ◇
デンマークを始め、北欧の国では、厳しい寒さが続く冬が長いという気候から、家の中での暮らしをとても大切に、丁寧に考えています。その為、彼らの暮らしの中から家にいる時間が好きになるヒントを沢山見つけることができます。椅子一つとっても、座り心地の良さ、デザインの好みなどに個人個人がとてもこだわり、気に入ったものを大切に使い続ける方が多いと聞きます。
今回の展示で、実際に家具を見たり座ったりすることで、家具に対してのこだわりや、今後の暮らしを楽しむヒントを楽しみながら見つけていただきたいと思いました。また、アートというものが、決して観るだけではなく、生活の中に取り入れることもできるという楽しみ方を知っていただきたいということもありました。
東京都美術館では「アートラウンジ」を始め、いくつかの場所でフィン・ユールの椅子やテーブル他、素敵な家具を自由に使っていただくことができます。プログラムが終わった後、日常に戻ってからも楽しんでいただける場所として知っていただきたかったことも大きな理由の一つです。
◇工夫した点◇
では当日の様子をご紹介します。
午前と午後一回ずつの開催。当日はとてもお天気も良く気持ちよいスタートとなりました。各テーブルには参加者お2人と、とびラー2人(午前に3人づつのグループが1組)。基本的にこの4人が一つのグループとなってプログラムの間は一緒に過ごしました。
▶︎ 入り口やテーブルの上にはみんなで作った北欧の窓辺に飾られることの多い飾りや椅子のミニチュアを作ってお出迎え。初めて訪れる場所で緊張されている気持ちが少しでもほぐれることも願って作りました。
▶︎プログラムスタートまでは、今日呼ばれたいお名前を書いていただいたり、ご挨拶も兼ねてお話しをして待ちました。
▶︎プログラム最初は、この企画を提案したとびラーが、立ち上げた思いをお話ししました。とびラーのお母さんが美術館で楽しんでいる姿が映されています。
▶︎いよいよ各グループに分かれてのスタートです。手作りの「しおり」や地図を使って、これから先の内容の説明や美術館の中でゆっくりしていただける素敵な場所のご紹介をしました。
▶︎そしていよいよ展示室に向かって出発です。館内のご案内をしながら歩きました。
▶︎展示室の中では、参加者と、とびラーがペアになって一緒に鑑賞。座れる椅子のコーナーでは沢山の椅子に座りながら、お家にある椅子と比べてお話をされたり、これから買いたい椅子のお話をされたり、と、とても楽しそうでした。そして、展示の中から一枚好きな椅子を選んでいただいて写真を残しました。
▶︎展示室を出たら各チームでご案内したい場所にそれぞれ向かいます。美術館の中にはのんびりできる場所が沢山。
▶︎その後アートスタディルームに戻り、今度は他のチームと合流して感じたことをシェア。自分では気が付かなかったことに驚いたり、同じ椅子に興味を持たれていた方とお話が弾んだり、とても楽しい時間となりました。
お話をしている間に、先ほど展示室の中で撮影して残した1枚の写真をプリントアウト。それを、最初にお渡しした「しおり」に貼り付けて写真の周りをデコレーションしたりしてとても楽しい時間となりました。しおりはお土産にお持ち帰りいただきました。プログラムが終わる頃には皆さんおしゃべりがつきませんでした。
シニアの皆さんは経験豊富。椅子にまつわるエピソードも沢山あって、最後のシェアタイムではとても話が広がりました。今回のプログラムでは普段会わない人たちとの会話も大切にしていたので、楽しんでいただけて嬉しかったです。「椅子に興味が出たから今度家具のお店に椅子を探しに行こうかな。」とおっしゃって帰る方もいらっしゃいました。このプログラムをきっかけに、美術館での新しい過ごし方や、日常の暮らしの中で新しい発見、愉しみを増やしていただけたら嬉しいです。
私には80代も半ばの母がいます。元気なのですが、年相応に疲れやすかったり、「若い人ばかりだから行かない。」ということも度々です。東京都美術館での展示を観に来た時のこと。ずっと楽しみにしていたのに、いざ来てみると、「疲れたからもういい。」と、観ていない作品を沢山残して途中で外に出てしまいました。気分転換や休憩も兼ねて、私の好きな場所、公募棟の2階の上野を見渡せる場所に一緒に行ってみると、元気も戻り、初めて聞く上野の思い出話もしてくれました。帰りがけに美術館のカフェにも寄って、振り返れば、とてもいい時間を二人で過ごすことができていました。
この経験を通して、年齢を重ねても、無理をせず自分らしく、それぞれのペースで暮らしを愉しむことができればいいな、そして、美術館での色々な過ごし方をもっと知ってもらいたいな、と思い、とびラーの仲間達に声をかけて、このプログラムが始まりました。今回シニア向けのプログラムを終えてみて私たちが学んだことも沢山ありました。「楽しかった!」「次回はいつ?」という参加者の方々からいただいた声を大切に、次に繋がるといいな、思っています。
最後になりましたが、開催にあたって一緒に伴走してくださったとびらプロジェクトスタッフの皆さま、一緒にプログラムを創ったとびラーの皆さま、そしてこのプログラムを見つけて参加してくださった皆さま、心より感謝しております。ありがとうございました。
【参加アート・コミュニケータ】
纐纈、梅、岡田、尾駒、向井、黒岩、門田、長尾、登坂、山中、鹿子木、堀内、梨本、山本、隈井 、山﨑 、 井上、髙橋、安東、西内、滝沢
執筆:滝沢智恵子(アート・コミュニケータ「とびラー」)
とびラー9期。「初めて美術館に来た」というお子さんが、展示室に入って、「本物ってすごい!」と感動して前に進めなくなったことがありました。沢山の人にそういう感動を届けられるといいな、と思っています。
2022.09.25
日時|2022年9月25日(日)13:30~16:30
場所|東京藝術大学 第一講義室
講師|村田 陽次 (東京都 生活文化スポーツ局 都民生活部 地域活動推進課)
石平 晃子 (NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク)
2022.09.16
2022年9月16日、東京都美術館で開催された『ボストン美術館展 芸術×力』展(会期:2022年7月23日~10月2日)に合わせ「聴く 視る 話す 鑑賞を深く味わおう」を開催いたしました。
このプログラムには、ふたつの目指すところがありました。
・普段の鑑賞に「聴く」「視る」「話す」を意識するパートを加えることで「作品を深く味わえた」と実感していただきたい。いつもと違う美術館での過ごし方を体験することで、鑑賞スタイルの幅を広げて欲しい。
・参加者やとびラーとの交流を通して、美術館が「作品を鑑賞するだけの場ではない」人々の交流の場となり、新しい価値観を生みだす「心のゆたかさの拠り所」となることを感じていただきたい。
それでは、このプログラムが創り上げられていく過程からお伝えしたいと思います。
▶ワークショップ開催までの流れ
春先にラボを起ち上げ、集まってくれたメンバーで「作品を味わえた」と感じた経験について、共有することから始めました。
その中で、メンバーからはこんな意見が聞かれました。
・グループでの「対話型鑑賞」での体験。他の人の意見から異なる視点を得られた
・全ての作品ではなく、心に残った作品をじっくりと時間をかけて観察。新たな発見や気付きを得ることができた
・鑑賞後、他の人と感想を共有。多様な意見を交わし合うことで、作品への理解が深まった
メンバーのそれぞれの体験談から「聴く」「視る」「話す」という、3つの要素を軸にプログラム構成を考えよう、という方向に決まりました。ワークショップの流れと内容は下記の通りです。
聴く 『ボストン美術館展 芸術×力』展の作品画像をモニターに画像を映す。少人数のグループに分かれ「対話型鑑賞」を行う。グループで同じ作品を鑑賞しつつ、他の人の発話からいろいろな視点があることを実感してもらう
視る 『ボストン美術館展 芸術×力』展の会場に足を運び、本物の作品を観察、鑑賞する。同じ作品でもいろいろな意見がある、もっと自由に作品を鑑賞してもいいんだ、という「聴く」での体験を元に今度はひとりでじっくりと作品を鑑賞する
話す 本物の作品を鑑賞しての感想や、気になる作品をグループで共有する。他の人と感じたことを分かち合う楽しみと喜びを味わってもらう
参加者に、いかに心地良くストレスなくプログラムを楽しんでいただくか?
来場者が少ないことが予想される金曜夜の「夜間開館」の時間帯にプログラムを開催することにしました。
メンバーで何度もミーティングやトライアルを繰り返し、プログラムを練り上げていきました。
それでは、当日の様子をお伝えします。
暑さも少し和らぎ、過ごしやすさも感じる日和となりました。夜間開館の時間帯に展示室へ足を運べるよう、17時に受付開始です。20代~70代までの幅広い14名の方がご参加。参加者4~5名、とびラー3名の3グループに分かれます。
▶アートカードを使って自己紹介
受付をすませた参加者さんから、ゆるやかに輪になって座っていただきます。「東京都美術館へはよくいらっしゃるんですか?」初めて訪れる場所、初めて出会う人たち。緊張気味な参加者にとびラーがにこやかに話しかけ、リラックスしていただけるよう心掛けます。
参加者の表情が和らいできたところで、自己紹介タイムです。あらかじめ『ボストン美術館展 芸術×力』展の作品の図版が、ホワイトボードに貼りだしてあります。選ばれた作品は絵画のみならず、服飾や工芸品なども含まれる、幅広いラインナップが特徴となっている6点です。本展覧会への期待感を持ってもらうために何度もメンバー同士で話合い、作品を選びました。
まずはじめに参加者に「気になる作品」を選んでいただきました。なぜ、この作品が気になるのか?理由を話しながら自己紹介。見知らぬ参加者同士がお互いを知り合う、プログラム冒頭の大切な時間です。自分が選ばなかった作品への視点を知ることで、この後に控えた展示室での鑑賞にも興味が膨らみます。
▶モニターに作品を投影し対話型鑑賞
とびラーのファシリテーションで「対話型鑑賞」を行います。まずは作品をじっくり観察。参加者同士、感じたことや気になることを共有します。対話型鑑賞が初めての参加者がほとんどでしたが、自己紹介の時間ですっかり打ち解けた参加者より次々と発話が続きます。
▶展示室で「ボストン美術館展 芸術×力」展を鑑賞
展示への興味が充分高まったところで、いよいよ本物の作品を鑑賞します。
展示室で鑑賞する作品の作品名と、気付いたことをメモするコンパクトなメモ帳をお渡ししました。
安心して鑑賞に集中できるよう、展示室ではとびラーが見守る事をお伝えしました。皆さん、メモ帳片手に熱心に作品を鑑賞してくださったようです。
▶展示室から戻り感想を共有
「お帰りなさい!」60分間、本物の作品と向き合った参加者を笑顔でとびラーが迎えます。戻ってきた参加者の表情より「はやく見つけたこと、感じたことを話したい!」という高揚した気持ちが伝わってきます。
まずは「対話型鑑賞」を行った作品の共有から始めます。ひとつの作品を10分以上掛けて鑑賞する体験は皆さん初めてだったと思います。描かれている場面や人物から当時の時代背景、権力の構造にまで話が及んだグループもありました。短い時間で『ボストン美術館展 芸術×力』のテーマに迫る視点を共有できたことは、予想外の展開で充実した時間となりました。
場が温まったところで「自己紹介」の時間に選んだ作品について共有します。
隅々までじっくり観察することで、色彩の鮮やかさや構図の奥行き、描かれている絵画の空気感まで感じ取ってくださったようです。「他の人の感想を聞いて、もっと作品が観たくなってきた。また、展示を観に来ます!」という嬉しい言葉も飛び出しました。
今回は、冒頭の自己紹介から「対話型鑑賞」まで『ボストン美術館展 芸術×力』に展示されている作品を選びました。その流れによって、展示に向けての期待感が高まり展示室で鑑賞する時間もより深く興味を持って、過ごすことができたと思います。
皆さん、普段と違う美術館での過ごし方をどのように感じたのでしょうか?アンケートをみてみましょう。
・明るく楽しい雰囲気で、感じたことを遠慮なく話せました。皆さんの感想に「おお、なるほど!」となったり別の視点からの見方を知って、よりいっそう鑑賞の楽しみが増しました。
・ひとつの作品とじっくり向き合う時間。ひとりであるいは友人と一緒でも、今までこんなに長い時間を掛けて作品を観ることはなかった。いろんな角度で見て感じることで、より一層作品の印象が深くなった。
・スケジュールも細やかに検討されていて、流れるようなあっという間の時間でした。初めてで、不安に思っていましたが安心して参加することができました。
約半年にわたって練り上げた鑑賞プログラム「聴く 視る 話す」。無事に開催することができました。
最後にたくさんのアドバイスを下さった「とびらプロジェクト」スタッフの皆さま、一緒にプログラムを創り上げてきた仲間たち。当日参加してくださった皆さま、全ての方に心より御礼を申し上げます。
【参加アート・コミュニケータ】
岡田、栗山、小屋迫、長尾、堀内、山中、吉水、遊佐、井上、梅川、隈井、高崎、高橋、宮林、山本
執筆:遊佐 操(アート・コミュニケータ「とびラー」)
とびラー3年目。活動の中で「アートってひとを変えるチカラがあるんだ!」と実感する場面が何度もありました。これからもそんな奇跡のような、喜びに満ちた瞬間に関わり合っていきたいです。