2020.12.05
今年の新しいファミリープログラム「上野でGO!」は、Web会議サービスZoomを使った作品鑑賞と、実際にミュージアムで作品に出会うことを組み合わせた、2ステップのプログラムです。
オンラインとリアルの両方の良いところを組み合わせた「ブレンディッド・ラーニング」という新しい学びの形をデザインしています。
12月5日(土)は「上野へGO! リアル」と「上野へGO!オンライン」が東京都美術館で同日開催されました。
ここでは、「上野へGO! オンライン」の様子をお伝えします。
オンライン上で作品を鑑賞できるファミリー対象のプログラム「上野へGO! オンライン」は、8月、11月にひきつづき、今回で3回目の開催です。
今回の進行は、Museum Start あいうえのプログラム・オフィサーの鈴木智香子です。
プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)
2020.12.05
今年の新しいファミリープログラム「上野でGO!」は、Web会議サービスZoomを使った作品鑑賞と、実際にミュージアムで作品に出会うことを組み合わせた、2ステップのプログラムです。
オンラインとリアルの両方の良いところを組み合わせた「ブレンディッド・ラーニング」という新しい学びの形をデザインしています。
12月5日(土)は「上野へGO! リアル」と「上野へGO!オンライン」が東京都美術館で同日開催されました。
ここでは、「上野へGO! リアル」の様子をお伝えします。
12月5日(土)の午前、8月・11月のオンライン・プログラムに参加したファミリーが東京都美術館のアートスタディルーム(以下、ASR)に集合しました。
各回8組ずつの参加者です。ASRでのガイダンス、ノートづくりのワークショップに加え、今回は「展示室探検」が加わりました。
進行はMuseum Start あいうえの プログラム・オフィサーの渡邊祐子。ガイダンスでは、これまでのリアルの回と同じように、ミュージアムスタートパックの使い方、上野公園の楽しみ方に加え、「あいうえのからの指令」が伝えられました。
今回の「指令」は、「あかを探せ」です。
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2020.11.23
近年ミュージアムの活動は、人々の幸福な状態=ウェルビーイング(Wellbeing)を支え推進する活動である、という視点が大切にされるようになってきています。ミュージアムは多様な人々をつなぐ場であり、私たちの世界にある多様な価値を対等に分かち合う場としての役割を担っています。Museum Start あいうえのは、それぞれの人の文化が尊重されるより良い社会の実現に向けて「ダイバーシティ・プログラム」に取り組んでいます。プログラムが始まり5年目を迎える今年の活動テーマは、『うつくしい文字ってどんなかたち?』”What Makes Letters Beautiful?“。当日の活動風景を伝えます。
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2020.11.21
【開催報告】11月の建築ツアー
日時 |2020年11月21日(土) 14時00分~14時45分(ツアー実施)
場所 |東京都美術館
メンバー|参加者(事前申込)14名、とびラー11名、スタッフ5名
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ほのかな日差しのぬくもりが身に染みわたる11月の第三土曜日。本年度3回目となる「とびラーによる建築ツアー」が実施されました。今回もガイド&サポート役のとびラー2名と参加者2、3名の少人数グループに分かれ、東京都美術館(以下、都美)の建築をそれぞれの切り口から味わいます。
11月の建築ツアーでは、とびラー7期の井上夏実さんが進行役をつとめるグループにフォーカスします。
井上さんが目指すのは、「その場にいる人」が楽しめるツアー。
進行役となるとびラーから参加者へ都美の建築に関する知識を一方的にお伝えするのではなく、グループのメンバー同士で建築を介した双方向的な対話を行うことで、それぞれの眼から建築の魅力を発見していけるような場づくりを心がけているそうです。
今回は、井上さんのツアーの要となる「アイスブレイク」と「建築クイズ」のふたつに焦点を当て、実際の様子をお届けします。
◆アイスブレイク--その場の人をしる時間
はじめに紹介するのは「アイスブレイク」の様子。
アイスブレイクとは、はじめて出会った人同士の緊張感を、簡単な自己紹介やゲームによってときほぐすことを指します。建築ツアーでは、プログラム開始直前、グループのメンバーが揃いツアースタートを待っているタイミングで行われることが多いようです。
アイスブレイクの時間は、井上さんのガイドにとって欠かせないものです。
このグループの参加者はベビーカーのこどもを含めて4名。まずは、それぞれのお名前とツアーに申し込んだきっかけを伺います。
新聞に掲載された記事をみて、応募が始まってすぐ申し込まれた女性。普段から美術館の建物に関心を抱いている女性。建築系の研究者である配偶者かの紹介で参加した女性とベビーカーのお子さん。
井上さんいわく、このように状況を細かく把握できたタイミングで「もともと美術館や建築に興味を持っている方々だから、親しみやすい話もしつつ、押さえるところは押さえといたほうがいいのかな」と考え、もともと組み立てていたツアーのコースや話す内容を参加者に合わせて調整した、とのことでした。
頭の中に用意した台本をそのまま読み上げるのではなく、そこにいる人に合わせて、細かいところは臨機応変に整えていく。
「その場にいる人」を大切にする井上さんならではの工夫と言えそうです。
◆建築クイズ--自分で考えて、みつめる
次に紹介するのは「建築クイズ」の様子。
アイスブレイクを終え、正面エントランス外の中庭まで移動したところで、「ここでクイズです!」と井上さん。
グループ全員で見上げているのは、“東京都美術館”という看板の上部から右斜め上に向かってなだらかにのびる曲線。
これはオイルショックの影響を受け、次のセメントが注ぎ足される前に下のセメントが固まってしまった、という着工当時のハプニングの痕跡です。
今回クイズになったのは、この線を目にしたときの都美の設計者・前川國男のコメント。井上さんが示した選択肢は3つ。
「①ケーキの層みたいで美味しそう、②ボクシングの傷のようでカッコイイ、③アルプスの稜線みたいで趣がある。正解はどれでしょう?」
井上さんの掛け声に合わせ、参加者が指の本数で示した回答は三者三様。
それぞれの参加者にその答えを選んだ理由を尋ねると、「①…いわれてみれば、たしかにケーキみたいに見える」「②…石を削ることとボクシングに近いものを感じる」「③…建築家の言いそうなことだと思った」など、各々の視点から選択肢が選ばれたことが分かりました。
正解は③。しかしながら、このクイズのねらいは必ずしも正解へ辿り着いてもらうことだけではありません。
建築をじっくり見て、気づいたことを自分の言葉で表してみる。
そのための手がかりとして、井上さんの「建築クイズ」は機能しているようです。
井上さんのツアーでは、はじめの三者択一クイズだけでなく、二者択一式、自由回答式など、ツアーの要所要所でクイズが出題されます。
ツアー終盤に盛り込まれた、天井にある四角い装飾の用途(正解は釘隠し!)を尋ねる自由回答クイズのときには、参加者全員がためらうことなく回答するなど、すっかり打ち解けた空気が感じられました。
◆参加者のようす
ツアーの後半、参加者は自らの目で建築の魅力を発見しはじめたようです。
たとえば、新聞をみて申し込んでくださった参加者の方は、公募棟にいるとき「ここの絨毯とさっき見た柱(=はつりコンクリート)のピンクベージュがつながっているみたい」と、大きな窓越しに見える中庭を指さしながら、その場の人々に気づきを共有してくださいました。
また、もともと美術館の建物を見るのが好きな方は、エスプラナードから中央棟へと移動するとき、企画棟との間に見えるイチョウの木と打ち込みタイルの色の対比が気に入ったそうで、井上さんの話しを聞いたあと、少しだけその場に残り、スマートフォンで写真を撮っていました。
今回のグループのメンバーは、親子連れをのぞいて初対面同士。はじめは緊張感もありましたが、45分の建築ツアーの中で、互いの発見に笑顔で耳を傾けあえるアットホームな場となっていました。
井上さんによる「その場にいる人」をしっかりと見つめ、その人たちに合わせてツアーのコースと内容を丁寧に調整したからこそ、このようなツアーが生まれたのだとわたしは考えています。
次回、今年度ラストの建築ツアーは3月中旬に開催予定。(1月のツアーは新型コロナウイルス感染症拡大防止のため開催中止。)
井上さんをはじめとする7期とびラーにとっては、開扉(とびラー任期三年間の満了)前の最後のツアーとなります。
それぞれの学びが次回のツアーにどう反映されるのか。しっかりと見届けたいと思います。
(東京都美術館インターン 久光 真央)
2020.11.14
第6回建築実践講座|「教えない授業から考える」共同構築的な学び
日時|11月14日(土) 13:30〜15:30
場所|zoom(オンライン)
講師|山本崇雄(新渡戸文化学園中学 英語教諭)
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吹く風が冷たく身にしみるようになってきた11月14日の昼下がり。本年度6回目の建築実践講座が開催されました。今回は『「教えない授業」の始め方』の著者であり、現役の中学校の英語教諭である、山本崇雄先生をゲストにお迎えし、教える/教えられるという関係ではない「共同構築的な」学びについて考えました。
今回の講座では折り紙を用いた2つのワークがおこなわれました。はじめに取り組んだのは「今の自分を見つけるワーク」。手元の折り紙の色や形によって、アートコミュニケーターとして生かしたい自分の強みをカタチにしてみます。
もうひとつのワークへと移る前に、山本先生が取り組まれている「教えない授業」について、様々な事例を交えながらお話いただきました。そして満を持して取りかかった「なりたい自分を見つけるワーク」。これからアートコミュニケーターとしてどうありたいか、今度は目指したい自分を色や形で表現しました。そして最後に、山本先生と稲庭さんのディスカッションや質疑応答を通じ、自主的な学びについてさらに深く考えていきました。
〇今の自分を見つけるワーク|オンラインツール「My Padlet」にアップロードされた参加者の折り紙をみていく山本先生。参加者は自分の作った折り紙を4人組のブレイクアウトルームで紹介し合います。その後、それぞれで折り紙の写真を撮影してMy Padletに投稿することで、参加者全体に共有されました。
〇BORで意見交換|「教えない授業」について、山本先生から共有いただいた記事。この記事を読んで疑問に思ったことがあれば、チャットに書き込んでいきます。それぞれの質問には、山本先生ご自身からお答えいただきました。
参考:東洋経済オンライン「子どもの主体性を高める「教えない授業」の今」
〇講義「教えない授業」の実際|山本先生が所属する私立中学校の時間割。平日の7限目には、それぞれの生徒が興味関心に合わせて自由に学習できる「セルフペースドラーニング」が導入されています。
〇なりたい自分を見つけるワーク|折り紙で作った「なりたい自分」を紹介するとびラー。こちらの方は「緑に囲まれた上野公園で、角のとれた状態で様々な人とつながる姿」を切り絵で表現したそうです。
〇ディスカッション&質疑応答|日本の学校の現状と今後の展望について言葉を交わす山本先生と稲庭さん。
山本先生は、教える/教えられるという今までの授業の在り方を否定しているわけではありません。そうではなく、現代の状況に即して「教えない」という「選択肢を増やす」ことで、明治維新からの形式を保ったままの教育機関と急速に変化していくリアルな社会との間にある大きな隔たりを埋めていきたいのだと言います。
ここで今年度最初の建築実践講座をふりかえってみます。はじまりのガイダンスで伊藤達矢さん(東京藝術大学)は、講座全体の重要なテーマとして「自分の感覚を手がかりに建築を味わう」ことを掲げました。ただ都美の建築に関する知識を学ぶだけでなく、それぞれが自ら建築を楽しむ目をもち、その場にいる人同士で建築の魅力を共有していけるように。この目標は、教える/教えられるという知識提供型の教育から誰かに依存することのない双方向的な対話を目指す山本先生のお話やワークに少なからず通じるものがあるのではないでしょうか。
次回の講座では、外部向けのプログラムとしての提供を視野に入れたうえで、こども向けの建築プログラムメイキングに取り組みます。今回の講座で新たに出会った共同構築的な学びの在り方が、次回のグループワークにどう活かされていくのか。それぞれのとびラーの思考のプロセスやワークへの取り組み方に注目していきたいと思います。
(東京都美術館 インターン 久光真央)
2020.11.09
気持ちの良い秋晴れのもと、11月9日(月)に、足立区立高野小学校5年生のみなさんが
東京都美術館に来館しました!
来館のきっかけは、一本の電話でした。
コロナ禍において美術館の展覧会もお休みとなってしまった状況の中、
夏休みに入る前に、学校より来館希望の相談がありました。
そこで高野小学校と一緒に考えたのが、「美術館探検」プログラムです。
学校が立地するエリアには美術館や博物館などの文化施設がないので、
美術館を訪れる児童が少ないとのこと。
今回のプログラムがきっかけで、美術館の空間に親しんでもらうことをねらいとしました。
活動内容は、「建物探検」と「彫刻作品の鑑賞」です。
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2020.11.08
オンライン上で作品を鑑賞できるファミリー向けのプログラム「上野へGO!オンライン」が、11/8に開催されました。
8月にひきつづき、今回で2回目の開催です。
これは、オンライン上で世界中どこからでも「ミュージアム・デビュー」の第一歩を踏み出すことができる、学べて楽しいデジタルネイティブ世代のためのプログラムです。
時間になると、次々と参加者がオンライン上に集合してきました。
プログラムが始まるまでの時間は、進行役が集合してきた参加者一人ひとりに声をかけ、プログラムにスムーズに参加できるよう、zoomの簡単な操作方法を一緒に練習します。
プログラムが始まると、進行役から今日の流れや絵を見るときの大切なポイントと、今日みんなと一緒に活動をする仲間「とびラー」の紹介がありました。
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(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)
2020.10.24
第5回建築実践講座「コミュニケーションを生む場作りとは」
日時|10月24日(土) 13:00〜15:00
場所|zoom(オンライン)
講師|宇田川裕喜(株式会社バウム (BAUM LTD.)代表)
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さわやかな秋晴れに恵まれた10月24日のお昼過ぎ。今年度5回目となる建築実践講座が開催されました。今回のテーマは「コミュニケーションを生む場作り」。ゲスト講師としてコンセプトデザイナーの宇田川裕喜さんにお越しいただきました。
○街も一行の文章も「場」|講師の宇田川さんは、書き手と読み手がいるということから、「一行の文章」も最小単位での「場」と捉えています。
講座の前半は宇田川さんがこれまで手がけてこられた事業を、コミュニケーションという視点でご紹介いただきました。京都市京セラ美術館のミュージアムカフェ「ENFUSE」のコンペや丸の内仲通り「Urban Terrace(アーバンテラス)」などの事例を通じ、人の集う「場」を生み出し継続するためのプロセスについてお話しいただきました。後半にはコンセプトを考えるワークに取り組みました。ここでは3、4名ほどの少人数グループに分かれ、「良い街」と「悪い街」について思い浮かぶ要素を挙げていき、それぞれの考える「悪い街」をプロデュースするための企画を練りましたワークの終了後、宇多川さんから場をデザインするとき意識すべきポイントをレクチャーいただきました。また、本講座の中間と最後に設けられた質疑応答の時間には、とびラーから事業内容やキーワードに関連する質問や感想などが多く寄せられました。
〇コミュニケーションを生む場作り①:|京都市京セラ美術館の構想図。宇多川さんは採用された案が「建物のみで完結せず、街との連続性のあるもの」であったことに注目。「ピクニックセットをレンタルできる」カフェを設計し、晴れた日には美術館のある岡崎公園でお弁当を食べられる場をデザインしました。
〇コミュニケーションを生む場作り②:コンセプトを考えるワーク|東京都美術館のアートスタディールームから参加したとびラー数名によるワークの様子。
ここで練られた企画は「活気のない商店街」という悪い街のイメージをプロディースする方法として、「シャッターを地域の有志でペイントすることで人の集まる場をつくりあげる」というものでした。
〇質疑応答の時間|とびラーから寄せられた質問に答えていく宇田川さん。ここでは企画において人々を引き寄せる要素を指す言葉「磁石(マグネット)」についての質問に、具体的な事例を交えながら解説してくださいました。
ワークのまとめとして、宇田川さんはブランディングデザインを手がけるにあたって大切にしているポイントをいくつかお話くださいました。なかでもとくに強くお話されていたのが、「調査を丁寧に行う」こと。どのような場を作るにせよ、そこにはターゲットとなる、すなわち企画を届けたい対象の存在が必要不可欠です。その人たちにとって魅力的な提案となるよう、企画のモチベーションとなる要素(=マグネット)の力を把握し、対象者にとって足りないものや不便なこと(=ペイン)を理解しようと努める。このプロセスでの取り組みが丁寧であればあるほど、場のデザインの質が上がっていくのだといいます。
こうした考えは、とびラーが講座の中で考えてきた、東京都美術館の建築を軸に考える企画づくりにも当てはまることではないでしょうか。たとえば美術館に立ち寄った人全員が対象となる「とびラーによる建築ツアー(*)」とMuseum Start あいうえのの子ども向けプログラムとして開催された「うえの!ふしぎ発見:けんちく部」では、フィールドは重なっているものの対象者の層が異なるために、それぞれのプロセスのもとで別個のコミュニケーションの場が生み出されたといえます。さらに定期的に開催されている前者のプログラムに限っても、などの変化によりその場にいる人が変わることから、まったく同じ場が形成されることはないといえるでしょう。
(*)今年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響から、事前申込制で実施中。
これまでのプログラムは、とびラーが建築という箱だけでなく、そこに集う人々もしっかりと観察することで入念に作り上げられてきたものです。今回の講座は、建築プログラムの組み立てのプロセスだけでなく、場に集う参加者についてもあらためて考えてみる機会となったのではないでしょうか。
(東京都美術館 インターン 久光真央)
2020.10.12
第5回鑑賞実践講座
「作品選びのグループワーク」
日時|2020年10月12日(月)13:00-17:00
場所|zoom(オンライン)
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構/ARDA)
10月12日、第5回鑑賞実践講座を行いました。講師は引き続き、三ツ木紀英さん(NPO法人 芸術資源開発機構/ARDA)です。第5回では、どんな鑑賞者と、どんな作品を鑑賞するかを考える「作品選びのグループワーク」を行いました。
2020.09.26
第4回建築実践講座「美術館建築の歴史的変遷と公共性」
日時|9月26日(土) 13:30〜15:30
場所|zoom(オンライン)
講師|佐藤慎也(建築家/日本大学理工学部建築学科教授)
登壇|伊藤達矢(東京藝術大学)、稲庭彩和子(東京都美術館)
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またたく間に夏が過ぎ去り、はやくも冬の息吹すら感じられた9月26日の昼下がり。第4回目となる建築実践講座が開催されました。今回のテーマは「美術館建築の歴史と公共性」。ゲスト講師として建築家の佐藤慎也さんにお越しいただきました。美術館建築の公共的な役割にあらためて目を向け、これからの美術館の在り方、そして、より心地の良い空間をつくるため自分たちにできる働きかけを考える機会となりました。
講座の前半は佐藤さんによる講義。「美術館建築の公共性」について、1960年代以降に国内で設計された美術館建築の内部写真や図面を通して、いかにして美術館建築に人が主体となるワークショップのための空間が形作られてきたのかを概観しました。
そして後半はとびらプロジェクトの伊藤達矢さんと稲庭彩和子さんも登壇し、3名によるディスカッションです。
佐藤さんが現在計画に携わっている八戸市新美術館(仮称/以下、八戸市新美術館)の事例を中心に、「新たな美術館立ち上げのプロセスや背景」について、同館の基本構想に美術館を運営する立場から参与している伊藤さん、おなじく館を運営する立場としてさまざまな新美術館設立のための委員会に関わってきた稲庭さんが言葉を交わします。その直後の質疑応答では、先の対談でも触れられた美術館建築が成立するのに不可欠な土壌としての様々な人々(行政、委員会、運営、市民など)の在り方への理解を深めるための質問がとびラーから多数寄せられました。
〇講義:「美術館建築の公共性」|ここで佐藤さんが示しているのは、2021年開館予定の八戸市新美術館の設計図。共用スペースとして幅広い用途で使える「ジャイアントルーム」の規模が展示室にあたる「ホワイトキューブ」よりも大きいのが特色です。
〇対談:「新たな美術館立ち上げのプロセスや背景」|今回、対談と質疑応答の進行も務めてくださった伊藤さん。八戸市新美術館の基本構想を実現するために経た過程や「ジャイアントルーム」の運用方法などについて、佐藤さん、稲庭さんとお話しいただきました。
〇質疑応答の時間|とびラーから寄せられた質問に回答する稲庭さん。新しい美術館の構想に携わってきたお三方から「舞台裏」について伺える絶好の機会ということで、なかには先の対談からさらに踏み込んだ質問も。
ゲスト講師の佐藤さんは、昨年度11月に都美の講堂で開催されたオープンレクチャーで、これまでの国内外の美術館建築の歴史的変遷(「第一世代」から「第三世代」まで)と、それに連なる「劇場」としての機能を有する「第四世代美術館の可能性」についてお話しくださいました。本講座はその流れを汲むものです。今回の講義と対談の要となった八戸市新美術館は、展示室よりも広い共用空間が中心部に設けられ、アート・コミュニケータら市民の活動が基本構想の段階から盛り込まれているという意味において、佐藤さんの提案する「第四世代美術館」の在り方にもっとも近い事例たりうるのかもしれません。
それではあらためて、都美を拠点として活動する市民であるとびラーが、より心地の良い空間をつくるためにできることはなんでしょう?佐藤さんは、とびらプロジェクトの活動を「日常的な集団活動の場」に該当すると捉え、「第四世代美術館」の一例として紹介なさっていました。また、都美の公募展示室を「快適な滞在のための場」として取り上げています。
これまでの実践講座や建築ツアーなどのプログラムを介して都美建築を味わってきたとびラーの皆さんなら、公募展示室のみならず都美のいたるところを「快適な滞在のための場」にできる可能性があるのではないか。これまでの講座や活動を振り返り、そのように考えます。
国内での美術館建築の文脈における都美の立ち位置をあらためて把握するのみならず、建築と人とのかかわりがますます重要になっていくことを学ぶことができた本講座。プレイヤーとしてのとびラーの活動を今後とも見守っていきたいと思います。
(東京都美術館 インターン 久光真央)