東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

【あいうえの連携】スペシャル・マンデー・コース@伊庭靖子展 まなざしのあわい
北区立田端小学校6年(2019.9.17)

2019.09.17

9月17日(火)、学校向けプログラム「スペシャル・マンデー・コース」が行われました。秋晴れのなか上野公園にやってきたのは、北区立田端小学校6年生の皆さんです。

「スペシャル・マンデー・コース」とは、休室日に学校のために特別に開室し、ゆったりとした環境の中でこどもたちが本物の作品と出会い、アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)と共に対話をしながら鑑賞する特別なプログラムです。

田端小の児童69名、引率の先生4名をお迎えしてスペシャルな午後が始まりました。

プログラムの様⼦はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

建築実践講座③|「ワークショッププランニング1:都美の建築に関する資料・素材を知る」

2019.09.14

建築実践講座第3回を行いました。

今回、次回と、2回連続の内容となっている「ワークショッププランニング」では、建築空間を活かすプログラムづくりについて考えていきます。

1回目のテーマは、「都美の建築に関する資料を知る」。これまでの建築ツアーなどでの経験の蓄積をもとにつくられた資料をヒントに、一人ずつがミニツアーを作ってみます。

【開催報告】「クリムトに誘われて “かたち”で描こう おとなのワークショップ」

2019.09.09

 

4月から7月に開催された「クリムト展ウィーンと日本1900」に合わせ、表現をする事から遠ざかっているおとなの方に向けたワークショップを開催しました。

 

このプログラムでは、クリムトの作品に描かれている文様や装飾的な形に着目し、参加者が一緒に1枚の大きな布に描く事で、自分のかたちをつくり、みつけていきます。お互いに影響し認め合いながらひとりひとりがかたちをつくり、見つける喜び・達成感だけではなく、共に描いた参加者との新しい関わり合いが生まれる場でもあります。

 

ではまず、どんな背景でこのワークショップが生まれたのかお伝えします。

 

 

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このプログラムの前身に「つくるって?」と言う名前のとびラボがありました。
集まったとびラーで「つくる事のプロセス」に注目してみたい。
そんな想いから立ち上げたとびラボです。

 

このとびラボでは、特に○○をつくりましょう!と言った共通のゴールは決めません。材料・技法などを変えながら、ひとりひとりが自由に手を動かし、発見を繰り返していきます。

 

例えば・・
・布を様々な方法で裂いたり編んだりして「よい形」をみつける
・お菓子の箱を分解して再構築する
・クリムト展のチラシに印刷されたに作品を、要素別に切り出しコラージュする

 

 

この造形活動を通じてメンバーの関心の中に「分解」と言う1つのキーワードが生まれました。
分解する行為からは、更に「解放」「癒し」と言う言葉が浮かび上がり、造形活動を行うことで、様々な枠に囚われてしまった日常の感覚から離れることができるのではないか?と考えました。

 

 

社会環境や価値観の激変した時代、変革と共に生きたクリムトの表現からヒントを得ながら、参加者に楽しんでもらえるワークショップを計画してみることに。

 

正解がないと戸惑ってしまう
作品鑑賞はついついキャプションの情報に頼ってしまう
社会で広く認められている価値と比べる事で自分の持つ価値観に自信が持てない…

 

造形活動に限らず日常の中でも感じられる事ではないでしょうか?
そんな方々にお届けしたい造形ワークショップとして、試行錯誤のミーティングやトライアルを重ね、当日を迎えました。

 

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では、当日の様子を報告いたしましょう!
 

2019年6月16日(日)長梅雨の貴重な晴れ間となった休日。

 

受付開始

 

案内看板を手に笑顔でお出迎え。
会場に着いた参加者から、2つのグループに分かれて座っていただきます。

 

 

グループ毎のテーブルには、クリムトの作品図版と展覧会カタログが置いてあります。開始時間まで手に取って観たり、とびラーとお話ししたり。まだまだ参加者の表情は少々固いでしょうか。

 

プログラム開始
この日の参加者は20代から60代と幅広い世代の方が11名。
「今日は、クリムトの描くかたち文様や装飾に着目して、『かたち』を見つけながら、みなさんと一緒に1つの大きな布に描きます。ここでしか味わえない体験を楽しみましょう」
ワークショップのながれの説明の後、つづいて各グループ毎に自己紹介が行われました。

 

クリムトの作品図版を使って自己紹介

 

 

自己紹介では、好きな・気になるクリムトの作品の作品図版を1人1枚選びます。
「この作品のここが好きです。」
どんな方と一緒に活動するのか、作品を通じてちょっぴり知り合う時間です。
自己紹介を終えると各グループ、二手に分かれ、クリムトの作品をみなさんで対話しながら鑑賞します。
クリムトの作品に描かれる細かいかたちも間近に見ながら、各々がどんな見方・考え方を持っているのか、そして自分はどう考えるのかを知ります。
このグループごとの鑑賞の時間は、後に続くグループで1つの作品をつくりかたちを見つけるワークの大切な道しるべにもなります。

 

作品図版で対話型鑑賞

 

ここでは「クリムトの“かたち”」を見つけます。
鑑賞ファシリテーターであるとびラー1名と、2~3名の参加者とのグループ構成です。
「かたち・色・気になる、好きなところはありますか」の問いかけから、
クリムトが描いたかたち(文様・装飾)に着目していきます。
「やはり金を使った装飾が素敵・・」
「よ~く見るとたくさんの文様が組み合わさっている」
「あら、そんな見方もあるのね」
自分1人では気づかなかった・気に留めなかったクリムトのかたち。
これからの造形ワークにどんな手掛かりを与えてくれるのでしょうか。
参加者のみなさんの表情が柔らかくなってきたところで、いよいよ「わたしのかたち」を見つけに行きます。

 

 

「クリムトの作品の中に気になったかたちはありましたか?これまではクリムトが描いた形を見つけてもらいましたが、これからは手を動かしながら、『わたしのかたち』を見つけていいきます。」

 

かたちを描いて型紙つくり

 

まずは一人一人に画用紙と木炭が用意されました。
木炭はデッサンの経験がない方には馴染みがない画材かもしれません。
さて、どんな書き心地でしょう・・

 

 

「紙の好きな場所に丸を描いてください。」
描きを終わると、
「次は線を描きます。ルールーがひとつあり、司会者が音を鳴らしている間は手を止めずに描き続けてください。」

 

 

初めての木炭、滑らかな書き心地を確かめながら描きます。

 

 

同じ形でも、ひとりひとり違う丸、自由な線・・ちょっと戸惑ってしまった時は、とびラーの声掛けで少しずつ手が進みます。
最後に描いた線をつなげて、ひとつのかたちをつくります。

 

 

これでひとり1枚の作業は終了です。
つづいて大きな紙が登場します!
「この1枚どう使うのかしら?」
B3サイズの画用紙から大きな紙へ・・参加者のみなさんはちょっとびっくり。

 

 

「大きな紙の好きな場所に自分に三角を描いてください。」
参加者は座っていた場所を離れ、好きな場所に移動しながら描きます。

 

 

B3サイズでは見られなかった大小様々な三角。ここで正解はありません。自分にとっての三角が様々な表現で描かれます。

 

 

「音を鳴らす間は描くのを止めず線をつなげて描いてみましょう」
カチカチカチカチ・・・・・・・
移動しながら、心のおもむくままに描いていきます。
大きな紙の上で、他の参加者と関わり合いながら描いていきます。
ぶつかったり重なったり交差したり・・互いの線が生き生きと交わり合います。

 


カチカチカチ。
音が鳴り終わり、ここからもうひとつわたしのかたちをつくります。
自分が描いた線と他のの参加者が描いた線がつながったり。
「この線いいね」
線と線が交わり偶然できた形の中から、気になった形を切り出します。
先に描いたB3の紙からも切り抜き、合計2枚。

 

 

切り抜いた『わたしのかたち』はこれから描く作品の型紙になります。

 

切り終わったらグループ毎に1枚の布の上に配置し、両面テープで固定します。

 

 

「ここがいいかな」「大きすぎるかな」「どちらを置いたらいいかな」
「こっちがいいね」「ここに置いてみたら」「これは動かさないで」
ひとりひとりの『わたしのかたち』。
どの様に置いたらいいか迷った時はグループの仲間やとびラーに相談します。

 

 

大胆なかたち、有機的なかたち、クリムトの作品にあった様なかたち?・・・
ひとつとして同じかたちはありません。
さて、これらはこれからどの様になるのでしょうか?次はいよいよアクリル絵の具を使って描きます。

 

アクリル絵の具でかたちを描く

 

作業台に並ぶ、不思議な道具とたっぷりの絵具。
この材料を使い、スタンピングの技法を中心に、かたちの型紙が置かれた大きな黒い布に描いていきます。

 

 

簡単な使い方のデモンストレーションが終わると、参加者は思い思いに紙パレットに絵具をたっぷり盛り付けます
「布の一番好きな場所から描き始めてみましょう」
参加者は手を動かすことにも慣れ、あっという間に布に描き始めました。
手元のパレットの絵具はいつの間にか混ざり合い、オリジナルの色で描かれて行きます。

 

 

「クリムトと言えば金色でしょ」
絵具係のとびラーにたっぷり盛り付けてもらった金色でかたちを描きます。

 

 

道具だけではなく手も使ってスタンピング。
思うかたちが描けるまで、絵具の感触を確かめながらまずは描いてみてみる。
参加者は手を休めず集中して描きます。
とびラーも一緒に描いて寄り添いながら夢中になっていきました。

 

 

「少しずつ型紙を剥がしてみましょうか」
参加者のみなさんの表情・手の動き、制作の進み具合のタイミングを見て、とびラーが声をかけます。
「おおおおお・・・」型紙を剥がし、最初につくった「わたしのかたち」が、黒く浮かび上がるたびに歓声が上がります
「イメージしていた通り」
「全く違うかたち」
「もう少し手を入れたいかな」
型紙を剥がしてみる事で、もっとこう描きたいという欲求が湧いてきました。
ちょっと離れて作品を見てみたり、また描いたり、制作に没頭する様子が伺えます。

 

 

さあ、完成です。
みんなで描いた大きな作品を展示している間に、お茶を飲みながら感想をシェアすると、率直な感想が笑みと一緒に溢れてきました。
「大きな絵を描くのは小学生以来」
「予想がつかないところが面白かった」
「他の人のスタンピングや色に影響された」
作品の展示が整い、全員での鑑賞会に移りました。

 

 

作品鑑賞
まずは、みんなで描いた大きな作品を眺めます。そして、大きな作品の中の特に好きな部分を選び、タイトルをつけてそれぞれの方が発表しました。

 

タイトル:生まれる
「ハートのかたちを中心に世界が出来ている様な気がするからです!」

 

タイトル:轍(わだち)
「わだちみたいだな・・と。沢山の人が通ったところの感じがしました」

 

タイトル:未来のニケ
「このかたちがニケに見えました。羽根のかたち・・色々なものがなくなって宇宙だけになってもここはあるみたいな感じがして・・・」

 

タイトル:ジュラ紀
「このかたちがジュラ紀からの生命の流れになって見えるからです」

 

自分で作った型紙や描いたかたち、グループの人と混ざり合ってできたかたち、いろいろな部分が選ばれました。
「ここ素敵じゃない」
「この作品とても好きです」
みなさん、お互いの「わたしのかたち」に興味津々です。

 

「ひとつの正解を探すのではなく、正解をつくる事ができる体験」
司会から伝えられたこの言葉を参加者のみなさんにも感じてもらえたのではないでしょうか。

 

 

最後に、開催中の「クリムト展ウィーンと日本1900」のご案内をして、ワークショップは解散となりました。終了後も会場では作品やメンバーと一緒の記念撮影で賑わっていました。

 

 

私たちとびラーが参加者に寄り添い、見守る中で感じた、描く集中力や初めて出会う方々との間で生まれる気づき・共につくる喜び。クリムトのかたちを互いに見つけ合う鑑賞や型紙づくり、手に取ってみたくなる画材・道具の選択、そして当日の場づくりが、今日のこの時間につながったのではないかという手応えを感じます。

 

創作することを通して美術館を体験する。言い変えればつくる事で生まれるコミュニケーション、美術館から生まれるコミュニケーションです。この造形プログラムを通じたコミュニケーションが、子供の頃に無心で何かをつくっていた時の気持ちに立ち返り、表現する事の魅力を見つけること、そして日常に戻ってからも様々なアートに親しむきっかけになって欲しいと願います。

 

さて、最後にこのワークショップに込めた「枠組みからの“解放”」について。参加者のみなさんがどのように解放を感じてくれたのか、アンケートの感想を見てみましょう。

 

◎人と一緒に描くとお互いのアイデアを「いいね」と認め合いながら、意図しなかった面白さと発見がたくさんあった。また参加したい。
◎自分のスキルなどを考えるとためらいましたが、思いのほか楽しくできたのが良かった。
◎初対面の人と1つの作品を創り上げる事が想像以上に楽しかった。
◎作品を通して感想や気づきを語り合えるのが良かった
◎家庭では出来ないダイナミックな創作ができた。
◎たくさんの絵具と思いもよらない描写道具が印象に残った
◎作業が楽しく人それぞれの印象など聞けて全てが正解
◎つくりながら人と関わるのって面白いな・・としみじみ思いました
◎色を自由に塗るたのしさ、思ってもみないかたちの面白さが印象的です
◎クリムトの絵について意見交換は他の参加者と意見が異なり発見があった
◎型紙がどの様に使われていくのか不安もあったが・・「なるほど・そういう事か」とわかったら驚きました。

 


執筆:下重 佳世(アート・コミュニケータ「とびラー」)

ふるいから落とされる事、隙間に挟まれてる事につい目が行ってしまう毎日・・・
そこにある魅力を受け入れてくれる場がアートでそこにある魅力に気づかせてくれるアートとコミュニケーション。さて、これからどの辺りとつながってみようかな?

 

【あいうえの連携】ミュージアム・トリップ:NPO法人キッズドア(2019.8.27)

2019.08.27

2019年8月27日、2019年度1回目の「ミュージアム・トリップ」が行われました。
「ミュージアム・トリップ」プログラムは、さまざまな状況にあるこどもたちにミュージアム・デビューの機会をつくるプログラムです。こどもたちの学習を支援している団体や児童養護施設、海外にツールを持つこどもたちを支援する団体など、各分野の専門機関と連携して実施しています。本年度1回目の実施となる「ミュージアム・トリップ」では、貧困など困難な環境にあるこどもたちへの無料の学習支援を行なっているNPO法人キッズドアと連携をして、活動を行いました。

中高生6名とキッズドアの引率者3名と共に、アート・コミュニケータ通称とびラー10名が活動しました。

 

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

鑑賞実践講座④|「展示室で学ぶ場づくり〜スペシャル・マンデーに向けて〜

2019.08.26

鑑賞実践講座・第4回
「展示室で学ぶ場づくり〜スペシャル・マンデーに向けて〜」
日時|2019年8月26日(月)13:00~17:00
場所|東京都美術館アートスタディルーム・「伊庭靖子展 まなざしのあわい」展示室(ギャラリーA・B・C)
講師|三ツ木紀英さん(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))、鈴木智香子さん(Museum Start あいうえの)


今回の目標:
・学校来館プログラム「スペシャル・マンデー」に向けて、来館前〜当日〜事後のプログラムがどのように作られているかを知る。展示室での活動の実際を学ぶ
・作品に近づくための事前準備について学ぶ

 

9月に、とびラーたちは実際に「スペシャル・マンデー」で学校来館の子どもたちと鑑賞を行います。今回は、Museum Start あいうえのの担当者からスペシャル・マンデーのプログラムについてレクチャーを聞いた後、展示室で実践を行います。

 

<スペシャル・マンデーとは>
「スペシャル・マンデー」は、とびらプロジェクトと連動する「Museum Start あいうえの」の学校来館プログラムです。このプログラムで、とびラーはVisual Thinking Strategiesのファシリテータとして子どもたちの鑑賞に伴走します。
担当者の鈴木智香子さんから、来館前〜当日〜事後のプログラムの流れや、とびラーが親でも先生でもない「斜め上の関係」の大人としてこのプログラムに参加する意義、子どもたちの鑑賞に伴走する際に大切な心得、また当日のプログラムの流れなどについてお話をいただきました。

 

 

<スペシャル・マンデー体験>
スペシャル・マンデーの一連の流れを、まずはとびラー自身が体験しました。
はじめに、展覧会のアートカードでお気に入りの作品を選びます。自分が実際にみたい作品を決めることで、展示室でのモチベーションを高めます。

 

 

次に、展示室に移動し、会場をぐるっとみて回ります。美術館の展示室がどんな場所になっているか、会場全体を把握することで、安心して作品を鑑賞する気持ちを作ります。

 

 

展示室の実際の作品をVisual Thinking Strategiesで鑑賞します。

 

実際の作品の前で行うと、作品保全のために気をつけることや、近づいたり離れたりした時の見え方の違い、グループの立ち位置など、新たな課題が見えてきます。

 

 

グループで鑑賞した後は、ひとりで鑑賞する時間です。Visual Thinking Strategiesでグループ鑑賞を行い、鑑賞の感覚を養った子どもたちが、ひとりの時間にどのように作品と対話をしているのかに思いを馳せました。

 

 

体験の後は、再びアートスタディルームに集合し、これまでの体験を振り返ります。

 


 

<作品研究>
Visual Thinking Strategiesは、知識によらず、鑑賞者自身が自分の目で見たことからスタートし、複数の人と意見を交換しながら作品の鑑賞を深めて行く手法です。Visual Thinking Strategiesファシリテータは、どのような事前の準備を行なっているのでしょうか。詳しくは、次回、第5回の講座で詳しく扱いますが、今回はグループワークを通して事前準備の基礎的なやり方を体験しました。

 

 

<Visual Thinking Strategiesファシリテーション練習>
講座の最後は、いつも通り、実践の時間です。今回はいよいよ、実際の展示室でこれまでの気づきを元に実践を行いました。

 

 

展示室を歩いて観察と実践と振り返りを行い、頭も体も心もフル回転の4時間を終えました。力を使い切った!疲れた!と、とびラーの声が聞こえていました。

 

講座は折り返しを迎え、9月のスペシャル・マンデー実践を経て、後半戦へと突入します。とびラーのみなさん、引き続き、よろしくお願いします!

 

(東京藝術大学美術学部 特任助手 越川さくら)

【あいうえの連携】うえのウェルカムコース@伊庭靖子展(2019.8.24)
台東区立忍岡小学校放課後子供教室

2019.08.24

8月24日(土)、台東区立忍岡小学校放課後子供教室の皆さんが、夏休みの特別企画として「うえのウェルカムコース」に参加しました。うえのウェルカムコースとは、上野公園のミュージアムの楽しみ方を知る・学ぶことができる学校向けプログラムで、授業や目的に合わせた幅広い活動を行っています。小学校1年生から5年生のこども13名、保護者12名を迎えて行われたプログラム当日の様子をお伝えします。

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【実施報告】TURNさんぽ

2019.08.18

まだまだ暑い日が続いていた8月半ば。TURNフェス5期間中の8月18日にとびらプロジェクトのプログラム、「TURNさんぽ」が開催されました。

 

「TURNさんぽ」とは、障害の有無・世代・性・国籍・住環境などの違いを超えて、アーティストと福祉施設やコミュニティが交流することで表現を生み出すアートプロジェクト「TURN」、その発表の場であるTURNフェスにおいて、とびラーと参加者がアーティストの方に話を聞きながら会場内をめぐるという企画です。

 

今回は3つのグループに分かれて、計11名の参加者の皆さんと共に展示室を「さんぽ」してきました。コースは、とびラーたちがそれぞれの興味をもとに考えたものです。

 

私は今年でとびラー3年目、つまり最後の一年です。「TURNさんぽ」は私がとびラーになってからの3年間、毎年開催されていましたが、実は今年が初参加でした。

TURNフェス自体は今年で5回目の開催となっています。とびラーになってから毎年展示室に足を運んでみてはいたものの、私はいまひとつ「参加した」感を得られずにいました。

そこで、最後の一年となった今年、アーティストの方に直接お話を聞けて、しかもとびラーとしてTURNフェスに関わることができる、「さんぽ」企画に参加することにしました。

 

さて、当日。

3つのグループそれぞれのコースは

  • 飯塚貴士さん→「OTON GLASS / FabBiotope」→「未来言語」
  • 出張TURN LAND:「気まぐれ八百屋だんだん」→富塚絵美さん→岩田とも子さん
  • 岩田とも子さん→出張TURN LAND:「ハーモニー」→「アトリエ・エー」

私は①コースのファシリテーション担当です。

 

始まる少し前から展示室内でチラシを配り、参加者を募ります。

はたして、どのくらい参加者が集まるのか…

ドキドキしながら展示室入口の集合場所で待っていると、チラシを手にした多くの方々が集まって下さいました。

 

参加者の皆さんには、3つのコースが書かれたスケッチブックを見て、行きたいグループに分かれてもらいました。

結果、①コース3名、②コース3名、③コース5名で、いよいよさんぽスタートです!

 

私がファシリテーションを務めた①コースではまず、人形を使って映像作品を制作している飯塚貴士さんの展示スペースへ向かいました。

 

飯塚さんはTURNの活動として、大田区立障がい者総合サポートセンターの定着支援のひとつである福祉施設「たまりば」で収録したライフストーリーをもとに、それとは別の児童発達支援事業所「LITALICOジュニア所沢教室」に通う子どもたちと共に、登場人物の気持ちを想像しながら人形のキャラクターをつくり、映像作品を制作しました。

今回の会場でも、ここを訪れた他の来場者の気持ちが書かれたメモをもとに、キャラクター設定を考え、紙で人形をつくり、映像を撮るというワークショップが行われました。

私たちは、すでに他の来場者によってつくられたキャラクターの中から好きなものを選び、カメラの前で即興のストーリーを撮影するという形で体験させていただきました。

参加者の3名は当日が初対面でしたが、このワークショップを通して自然と会話が生まれていました。

 

続いて向かったのは「OTON GLASS / FabBiotope」の展示スペース。

「OTON GLASS」というのは、主宰の島影圭佑さんがお父様の失読症をきっかけに研究開発をした文字を読み上げてくれるメガネのこと。この研究開発をする中で「支援」ではなく「新しいものづくり」のあり方を探求して生まれたのが「FabBiotope」という構想です。

今回の展示では、「OTON GLASS」の開発過程が視覚化されていたり、メンバーの公開会議が行われたりしていました。

私たちが訪れたときは、ちょうど「OTON GLASS」開発に関する公開プレゼンテーションを行っていました。それを聞きつつ、実際の「OTON GLASS」に触ってみました。

 

最後に訪ねたのは、「未来言語」のスペース。

2018年に発足したプロジェクトの「未来言語」は、デザイナー・発明家・日本語教師など様々な領域の専門家が集まり、誰もが会話可能な「未来の」言語を模索しています。

今回のTURNフェス5では、「未来言語ワークショップ」という「見えない」「聞こえない」「話せない」という状況でのコミュニケーションを体感するカードゲームと、活字と点字を組み合わせた「Braille Neue」の作成を体験することができました。

ちょうどゲームとゲームの間の時間に展示室に着いた私たちは、「未来言語」のメンバーで「Braille Neue」の生みの親でもある高橋鴻介さんからお話を伺うことができました。

活動に関わり始めたきっかけや、活字と点字の表記の違いによる今後の課題など、興味深いお話を聞くことができました。

さらに、参加者の方からも質問が出るなど、充実した時間となりました。

これにて「TURNさんぽ」は無事終了となりましたが、参加者の中には、そのあとすぐに開催された「未来言語」のカードゲームに参加しに行った方もいらっしゃいました。

約30分の「さんぽ」では、なかなか全てを紹介しきることはできません。そのため、「さんぽ」への参加が展覧会を楽しむ入口となってくれたという点はとても嬉しいことでした。

他の2つのグループでも、アーティストさんから直接お話を聞いたり、ワークショップに参加してみたりと、参加者とアーティスト、また参加者同士のコミュニケーションが生まれたようでした。

 

今回の参加者の皆さんからは、

「アーティストの話を聞いて展示が身近に感じた」

「一人で感じたことを複数で共有できてよかった」

「もっと時間が欲しかった」

といった感想をいただきました。

 

そして始めに触れたように、私はTURNさんぽ初参加だったわけですが、ファシリテーターではあったものの、参加者の皆さんと同じく「さんぽ」したメンバーのひとりとして楽しむことができました。

 

TURNフェスに参加されているアーティストの皆さんは、質問を投げかけてみれば丁寧に答えて下さって、様々な話を聞くことが可能です。しかし、個人で展示室を訪れたときにそれができるかというと、誰もが気軽にできることではないと思います。去年までの私も、誰にも話しかけられないまま帰路についていました。

そのため「TURNさんぽ」のように、興味・関心の異なる人たちと共に複数人で展示室をまわり、アーティストさんに質問をしてみる、というプログラムは良い機会だと改めて感じました。そして、別の展覧会でも鑑賞プログラムに参加してみたり、思い切って作家さんに話しかけてみたりと、今回の「TURNさんぽ」が私を含め、参加した皆さんの次の鑑賞に新たな楽しみを加えるきっかけになればと思います。

 


執筆:小田嶋景子(アート・コミュニケータ「とびラー」)
とびラーになり、みんなで観ることの面白さを実感しています。でも、ひとりで観るのも好きですが。3年目もマイペースに活動中です!

【あいうえの連携】オープンデイ「キュッパ・チャンネル」①(2019.8.13)

2019.08.14

夏休み真っ只中の8月13日、上野公園の東京都美術館では今年度新しく生まれ変わったファミリー向けプログラム「キュッパ・チャンネル」が開催されました。
今年から新しく始まった、オープンデイ「キュッパ・チャンネル」。
たくさんのこどもたちにミュージアム・デビューを!
そして、たくさんのこどもたちがミュージアムへ何度も来ることができる(リピーターになれる)ように!という思いから、「オープンデイ」という名前になりました。
また、「キュッパ・チャンネル」という名前は、私たちが大好きな絵本『キュッパのはくぶつかん』(オーシル・カンスタ・ヨンセン作、ひだにれいこ訳、福音館書店刊)に由来しています。ものを集めるのが大好きな”キュッパ”のように、いろいろなものにアンテナを張って、好きなものを、見つけて集めてみることができる、スペシャルな1日となっています。集めたものを使って何かを作ったり、考えたり、そして最後には自分の考えたことや感じたことをみんなに”発信”しよう!ということで、「チャンネル」という名前をつけました。

当日は、初めて「ミュージアム・スタート・パック」(以下、MSパック)を受け取る「デビュー・プログラム」と、すでにMSパックを持っている人が参加できる「リピーター・プログラム」、そしてその両方が参加できる5回連続のプログラム「ムービー部」の3つのプログラムが開催されていました。

プログラムの様⼦はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

鑑賞実践講座③|ファシリテーション基礎⑵

2019.08.11

鑑賞実践講座・第3回
「ファシリテーション基礎⑵」
日時|2019年8月5日(月)、8/11(日)9:30~16:30
場所|東京都美術館アートスタディルーム
講師|三ツ木紀英さん(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))


ファシリテーションの基礎を学ぶ夏期集中講義の2日目です。2日間の日程で、鑑賞の場を作るファシリテーションの基礎を学びます。この集中講義は、鑑賞実践講座を選択していないとびラーにも公開されています。月曜日に行われるA日程(7/29、8/5)と、土日に行われるB日程(8/10、8/11)合わせて100名以上のとびラーが参加しました。

 

今回の目標:鑑賞の場を作るファシリテーションの基礎を学ぶ(2/2)

鑑賞に適した安心・安全・集中の場を作り出すために、「ファシリテータがどんな振る舞いをしているか?」、映像視聴や体験を通して、観察→思考→実践→ふりかえりのサイクルを繰り返しながら講義が進められました。

 

<キーワードの振り返り>
前回、とびラー自身が発見したVisual Thinking Strategiesのキーワードを元に、自分のノートにまとめを行うところから第3回目がスタートしました。そのキーワードの何が大切なのか、ノートに記入することで言語化していきました。

 

 

<映像分析>
子どもたちがVisual Thinking Strategiesのプログラムで鑑賞を行なっている場面を映像で視聴し、実際の子どもたちの反応や展示室の様子などを元に、より多くの情報を観察、分析していきました。作品を鑑賞する前に、鑑賞者(子どもたち)との関係性をどのように作るのか、など、作品の前やそれ以外のファシリテーションの実際の様子から、学校来館のプログラムのイメージが深まりました。

 

 

<グループ鑑賞実践>
今回も、最後は実践の時間です。ここまでの気づきを元に、前回よりも大きな作品画像を使ってより実践に近いVisual Thinking Strategiesを行いました。前回のミニサイズの鑑賞実践に比べ、場全体により目配りを行うことが求められます。全員が作品をじっくり見れているか、参加できていない鑑賞者はいないか、など心配りをすることで、場が整えられ、鑑賞が深まっていきます。

 

 

三ツ木さんからは、
「学校来館のプログラムでは、1人残らず全員に美術館を好きになってほしい。そのために何ができるか、ぜひ考えてみてください」
とお話があり、とびラーたちが頷いていました。

 

集中講義の二日間を終え、とびラーたちはファシリテーションの基本のキを学びました。次回はいよいよ、展示室での鑑賞の場づくりについて体験を通して学んでいきます。

 

(東京藝術大学美術学部 特任助手 越川さくら)

鑑賞実践講座②|ファシリテーション基礎⑴

2019.08.10

鑑賞実践講座・第2回
「ファシリテーション基礎⑴」
日時|2019年7月29日(月)、8/10(土)9:30~16:30
場所|東京都美術館アートスタディルーム
講師|三ツ木紀英さん(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))


ファシリテーションの基礎を学ぶ夏期集中講義の1日目です。2日間の日程で、鑑賞の場を作るファシリテーションの基礎を学びます。この集中講義は、鑑賞実践講座を選択していないとびラーにも公開されています。月曜日に行われるA日程(7/29、8/5)と、土日に行われるB日程(8/10、8/11)合わせて100名以上のとびラーが参加しました。

 

今回の目標:鑑賞の場を作るファシリテーションの基礎を学ぶ(1/2)

 

鑑賞に適した安心・安全・集中の場を作り出すために、「ファシリテータがどんな振る舞いをしているか?」、映像視聴や体験を通して、観察→思考→実践→ふりかえりのサイクルを繰り返しながら講義が進められました。

 

<アートカード体験>
NPO法人ARDAの鑑賞ファシリテータによるアートカード体験(様々な作品が印刷されたアートカードをゲーム感覚で鑑賞する)を行いました。ファシリテータの振る舞いや鑑賞者の状態に注目してアートカード体験を観察します。気づいたことを書き出し、その気づきを元にグループディスカッションへ。その後全体でも共有しました。

 

 

ファシリテータが行なっている「言語」的な働きかけや、「非言語」的な振る舞いまで、観察によってとびラー自身がVisual Thinking Strategiesファシリテーションのキーポイントや鑑賞者の変化を発見していきました。

 

 

 

<Visual Thinking Strategies体験>
1つの作品を複数の人でじっくりと鑑賞するVisual Thinking Strategiesを三ツ木さんのファシリテーションで体験し、その様子を観察しました。ここでも観察した内容をグループ→全体で共有し、ファシリテータの振る舞いが鑑賞の場や鑑賞の質にどのように影響していたかを話し合いました。

 

 

<ミニファシリテーション実践>
ここまでに発見したファシリテーションのキーポイントを、発見ホヤホヤの状態でまずは実践してみました。見るとやるとでは大違い。実際にファシリテータとして場を作ろうとすると、緊張感が出てしまったり、なかなかすぐに「できた!」とはいきません。それでも鑑賞の場を作り出す楽しさを味わい、様々な意見を聞くことを楽しみながら、まずは多くのとびラーが最初の一歩を踏み出しました。

 

 

講師の三ツ木さんからは、
「Visual Thinking Strategiesをしようとすることで、ファシリテーションの基本である、『参加者全員をみる、きく、感じる』ということを意識するようになります。そして、できるようになるには、たくさんの実践をすることです!」
と、何よりも実践あるのみ!という言葉がとびラーに送られました。

 

Visual Thinking Strategiesを学ぶことが、とびラーの基本として大事にされる、きく力、作品に親しむこと、安全安心な対話のための場を作り出すことに繋がっていくことと思います。

 

(東京藝術大学美術学部 特任助手 越川さくら)

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