東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

とびラーのアクセシビリティー:アクセスプログラム実践講座4回目

2012.08.10

アクセスプログラム4回目は、「障がいのある方の為の特別鑑賞会」当日のサポート体制をより具体化させるための日となりました。まずは、杉山貴洋先生(白梅学園大学准教授)の指導のもとチーム編成。凡そ40名のとびラー候補生(以下:とびコー)が4班に別れ、展示室での鑑賞サポートはもとより、美術館の敷地内での誘導サポートも担当します。

 

展示室内や美術館の敷地内で、人的なサポートが必要と思われる場所は予めピックアップしてあり、各担当の班が持ち場を守ることになりますが、どのようなローテーションを用いて、起こりうるだろう不測の事態に備えるかは、それぞれの班の現場判断に委ねられています。自分たちで決めた現場対応の布陣であるからこそ、様々な局面にも柔軟に対応することができると考えています。

 

一度現場に立ったら、トラブルに対する迅速な対応や的を得たサポートは、各自の適切な判断でしか成し得ません。みなさん真剣に話し合っている様子です。

 

最後は、杉山先生から現場で知っておかなければならない知識についてアドバイスを頂きました。考えられる準備は全てしました。「障がいのある方の為の特別鑑賞会」がご来場下さるみなさんにとって良き日になる様に、とびらプロジェクト一同、力を合わせて行ければと思います。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

障がい理解と特別鑑賞会会場確認:アクセスプログラム実践講座3回目

2012.07.30

3回目のアクセスプログラム(障がいのある方の為の特別鑑賞会)の実践講座も2回目同様に、白梅学園大学准教授の杉山貴洋先生を講師にお招きして、「障がい理解と特別鑑賞会会場確認」をテーマに行われました。

 

杉山先生から本日の流れが説明されたあとに、早速折り紙が配られ、1分間で、好きな形に紙を折るように指示が出されました。器用なとびラー候補生(以下:とびコー)はささっと鶴!まで折り上げます。そのあと、3枚重ねの軍手が配られました。分厚い軍手をはめて、先ほどの1分間の折り紙と同じ形に折ってゆきます。しかし、全く思う様に折ることができません。これは、障がい理解のための体験などでよく使われる手法とのことでしたが、出来るはずと思っていた紙を折るイメージと、動かない手のギャップは想像以上の様子。更に杉山先生からは、身体の不自由に対する理解やサポートを考えるだけでなく、障がいのある方の心的なストレスにも同時に配慮をすべきとのお話を頂きました。例えば、入口から展示室までの誘導や、エレベータの案内表示など、視覚提示できるものを使いながら、予め来館者に行動の見通しを示すことも、安心して鑑賞できる会場とするには、かかすことのできない配慮とのことでした。

 

「安心で安全な鑑賞環境」を提供するには、とびコーさん自身の目で会場を一つひとつ確認する必要があります。そこで、杉山先生から配られた、会場チェックシートを持って、グループごとに会場確認に出発しました。この会場チェックシートは、「あそこがダメ」「ここがダメ」というご意見集めではなく、「ここをもっとこうしよう」と、とびコーさん自らの行動で対応可能なサポートに変換して行くための作業です。
まずは、正門から確認して行きます。展示室の入口はB1にあるため、一度、エレベータ、エスカレータ、階段のいずれかの方法で、B1まで降りなければなりません。正門からスムーズに展示室入口まで誘導するには、どういった人の配置やサインが必要なのかをみんなで確認しました。

 

次は北口玄関前です。北口はリニューアルにともなって出来た新しい入口なので、ご存知が無い方も多いかと思います。場所は搬入口の並びとなっており、タクシーでご来館頂く場合などは、一番利便性のよい玄関です。特別鑑賞会では、車椅子での来館者が多くなることが予想されます。どの様に対応したらよいか、講師が手取り足取り教えてくれるわけではありません。とびコーさんが自らか考え、最善の対応を一つひとつ確認して行きます。自らが考え、共有して、行動するのがとびらプロジェクト流です。

 

そして展示室の中。前回の実践講座でも車椅子に乗って鑑賞体験を行うなどの研修を実施しましたが、展示室には何度も足を運んで、会場の雰囲気や人の流れのイメージを体で覚えることはとても大事なことです。この日は休室日で他の来館者はいません。グループごとにとびコーさん同士で相談をしながら、展示室の確認をしていました。

 

最後はグループごとに「ここをもっとこうしよう」について発表し合いました。「色々なサインも大切だけど不用意な掲示は美観を損なう」ならば「適材適所に人がいることが大事なのではないか」という意見や、「展示室の中の椅子の数が少ないので、もっと休憩場所をつくろう」などさまざまな対応案が出されました。「障がいのある方の為の特別鑑賞会」に向けて、とびコーさんの準備は着実に進められています。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

チームワークとアクセシビリティー:アクセスプログラム実践講座2回目

2012.07.13

2回目のアクセスプログラム(障がいのある方の為の特別鑑賞会サポート)実践講座は、白梅学園大学准教授の杉山貴洋先生を講師に迎えて「チームワークとアクセシビリティー」というテーマで行われました。

 

はじめはグループ編成からスタート。ただしワークショップ形式で編成が行われます。スタッフがとびラー候補生(以下:とびコー)の背中に7色のシールのいずれかの色を貼ってゆきます。とびコーさんは自分の背中に貼ってあるシールの色は知りません。全員の背中にシールが貼られたら、とびコーさんたちは声を出さずに、相手の反応を伺いながら、また、周囲のとびコーさんにジェスチャーで合図を出しながら、同じ色同士のグループにまとまるように動きます。グループが出来たら一列になって着席。この何気ないワークショップの効果で、グループが編成されたきには既に意気投合できる雰囲気も出来上がっていました。ちょっとした工夫でチームワークをつくる導入となるのだなと関心しました。

 

続いて、「早並びゲーム」。編成されたグループ対抗で行います。最初は「手の小さい順」にとびコーさんが整列し直します。早くできたら順から全員揃って着席。その後「名前の五十音順」「自宅から東京都美術館までの時間順」と続きます。実はこのワークショップ、ゲーム感覚で自己紹介を自然にする為の手法とのこと。

 

予め配られていた(個別の顔写真付き)シートに、各自のゲームでの答えを記入してゆくと、自己紹介カードが出来上がります。チームワークをつくるワークショップの手法を体験することはとても楽しく、こうした経験はこれから小学校との連携などで役立ててゆけそうですね。

 

続いては「クイズ東京都美術館」。早速ですが問題です。「プロジェクションされた4つの写真はいずれも東京都美術館の玄関です。A、B、C、Dの玄関を北口、東口、正面、搬入口 の順に並びかえなさい。」できた人から手をあげて解答します。2問目はかなりの難問。何も展示されていない4つの展示室の写真を入り口から出口の順に並び替えるもの。3問目は現在マウリッツハイス美術館展で展示されている絵画を入口から出口の順に並び替える問題でした。いずれの知識も、障がいのある方の為の特別鑑賞会サポートには必要な知識でしたが、こうした手法で覚えると学習意欲もあがります。解答結果はというと、さすが都美に精通しているとびコーさん、迅速に正解を導きだしていました。
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後半は杉山先生に「障がいのある方の為の特別鑑賞会」を実施するあたり、「アクセシビリティー」をキーワードに具体的な注意事項などを含めたレクチャーをして頂きました。
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この「アクセシビリティー」とは、基本的には「バリアフリー」や「ユニバーサルデザイン」とほぼ変わらない「利便性」を指す言葉だそうです。しかし、「バリアフリー」や「ユニバーサルデザイン」が建物に付帯するのに対して、「アクセシビリティー」はアクセスする側に主体性があるとのこと。東京都美術館はバリアフリーとなってはいますが、それで全ての利便性が補われる訳ではく、そこに見守る人の目があることが何よりも大事。そこで、次回の「障がいのある方の為の特別鑑賞会」でとびコーさんが担うべきことは、ご来館頂くみなさまに「安心で安全な鑑賞環境を提供すること」が第一であり、その上でより有意義な時間を過ごしてもらう工夫が必要とのお話を頂きました。また、何かしてあげなくてはという気持ちから、「サポート」が「おせっかい」にならないように注意し、特に、障がいの名前ではなく、その場の困っている状況に寄り添うことが大事とのことでした。
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次回の「障がいのある方の為の特別鑑賞会」の組み立て方については、僕も杉山先生と事前にいろいろとお話をさせて頂きました。少人数のとびらスタッフで大勢の障がいのある方のサポートを行う場合、残念ながらケア出来る範囲にも限界が出てきます。なので、ご来場頂く方々が介助者の方と共に主体的に鑑賞して頂くことを基本とした上で、我々は「より何をすべきか」を考え、よりよい鑑賞体験を提供できる様に、とびコーさん一同と共に工夫をこらして行きたいと思っています。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

アクセスプログラム(障がいのある方の為の特別鑑賞会サポート):実践講座1回目

2012.07.05

アクセスプログラム(障がいのある方の為の特別鑑賞会サポート)の実践講座がはじまりました。初回、「マウリッツハイス美術館展」特別鑑賞会は8月27日(月)に予定されています。今回の講師は学芸員の大橋さん。「マウリッツハイス美術館展」の担当学芸員でもあります。はじめに、大橋さんから展示室内でのマナーや、これからはじまるアクセスプログラムの実践講座の概要について説明がありました。

 

本日は休館日(月曜日)。誰もいない展示室で、実践講座が進められました。まずは導線の確認をしながら、大橋さんに作品の解説をして頂きました。

 

展示室内にある長いエスカレーター。普段は1時間~2時間待ちで大混雑している館内ですが、今日はひっそりしています。

 

歩いて一通り導線を確認した後は、二人一組になって、車椅子で作品の鑑賞をして頂きました。車椅子で展示会場を移動するにはどうすれば良いか、またどのくらい離れれば作品がよく見えるかなどを直接体験して頂きました。車椅子が何台も展示室にあるときは、普段よりも展示室が狭く感じます。目の不自由なお客様もいらっしゃると思うので、空間の把握は大事です。
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当日は相当大勢の障がい者の方が来館される見通しです。色々工夫を重ねることで、アスセスプログラムが育って行ければと思います。
(プロジェクトマネージャ:伊藤達矢)

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