◆ミーハー建築ラボとは?
・建築って「楽しい」と思う気持ちをみんなで紐解きながら共有したい。
・好きなまちや建物をみんなで共有したい。その建物が持つ空気感・記憶・まちでの存在などについて語り合いたい。デザイン・資材・構造はもちろん重要だけど、まずは自分が感じたことや発見したことを大事にしたい。
・大規模建築公開イベント「東京建築祭」に向け、建物の情報も共有したい。
このラボは、そういった「知識量に囚われず、難しく考えず、まずは気軽に(=ミーハーに)建築を楽しんでみよう」という立ち上げ者の想いから始まりました。
◆集まったとびラー
「自分が建築が好きなのかはわからない」と感じていた私も、元々まちあるきは好き。歩いて楽しいまちには必ず、いいなと思える建物がある。「建物が持つ空気感・記憶・まちでの存在」といったワードに惹かれてラボに参加しました。
他にも、既に建築をみる楽しさに気づいて方々巡っている人、階段など特定のジャンルやパーツに偏愛のある人、東京建築祭を楽しみたい人。そして、まちあるきをする回に興味を持って飛び入りで参加した人。建築・まちに対して様々な興味、「好き」や「楽しみたい」気持ちを持ったとびラーが集まりました。
◆活動内容
2024年4月~8月にかけて全6回とびラボを開催しました。
ここでは主に「キックオフ」回と、そこからつながる「まちあるき」回に絞って紹介します。
◆キックオフ
まずはこのとびラボに参加したいと思った理由や想いを一人ずつ話し、みんなで共有しました。
・建築・建築家には特段の興味がなくても、なんだか気になる建物やまちの風景がある。
・見ていて落ち着いたり、好きだと思う建物や場所がある。
・そして、そこには生まれ育ったまちや、祖父母の仕事や昔遊びに行った家の記憶、様々な原体験があることに大人になってから気づいた。
こういった話から、互いに好きな建物やまちを記憶と共に共有し、風景を思い浮かべ、心地良い時間を過ごしました。
◆まちあるき(谷中編)
次は実際にとびラボを進めていく中で話が出たまちに行ってみよう!ということで、地図を片手に上野公園に隣接したまち「谷中」でまちあるきをしました。
谷中の住民ということで、この時は私が紹介したい場所・建物や巡り方を初めて考えてみることに。普段「いいな」と感じる風景や、誰かの想いによってリノベーションされ今も活用されている古い建物を巡ってみる案にしました。ただ、そもそも歴史的に著名な建築家が建てた建物があるわけではない、住宅街にある寺町エリアの一画のため、果たしてみんなが楽しめるのか、出発するまでは不安の方が大きい状態でした。
実際にまちに出てみると、その不安は5分でなくなりました。瓦屋根や梁から感じる日本文化。民家の玄関先や路地、お寺の境内の手入れされたお花や緑。住む人の気配が濃厚な温かいまちなみ。みんなで歩いてみると、目指す場所に向かう道すがら、私は当たり前に感じて見過ごしていたものにもたくさんの良さがあることがわかりました。
また、偶然出会い、快く境内に招き入れてくれたご住職からは、お庭の様々な植物のお話を聞くことができました。
*昭和13年築の三軒家を再生活用した店舗と工房の複合施設。
*保存活動もあり守られている谷中のシンボル、ヒマラヤ杉(左)
このまちあるきでは、発見するものや興味を持つもの、そこから感じることは人それぞれだと知ることができる新鮮さがありました。そして建物だけではなく、植物や文化、それらを通じたコミュニケーションは楽しいと思えたことが印象に残る回でした。
その後のとびラボでは、東京建築祭に向け、まずは建築祭がどういったものか、昨年「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)」に参加したメンバーから体験談を聞きました。
建物をみるだけではなく、まちの人の想いを知ったり、行った先での出会いの大切さを改めて認識したり、色々な楽しみ方を共有しました。
◆まちあるき(東京建築祭編)
いよいよ東京建築祭。神田・京橋・築地・銀座の周辺に絞り、神田の丸石ビルディングからスタートしてまちを歩きました。
*建築祭では普段入ることのできない建物内部が見学可能です。今回は、混雑のため外観を見るだけに。
建築祭に参加している中からお目当ての建築をいくつか選び、そこを目指して自分たちで組み立てたルートを巡りました。でも一番印象的だったのは、みんなでまちを歩くと、お目当てだった建築以外にも、通りすがりに各々目に留まる建物がたくさんあることでした。
一例を挙げると、洋風な看板建築の外観が気になり思わず足を止めた日本橋本町の建物(日本橋旧テーラー堀屋)や、グラデーションがきれいなタイルが目を惹く中央区立常盤小学校別館など。また、窓にあしらわれたガラスブロックに惹かれ立ち寄った神田のビルでは、ちょうど立ち話していたまちの方々と、ビルの話をきっかけにおしゃべりをしました。
*看板建築の2階窓の両側の意匠が気になり鑑賞。(左)タイルに興味をもち撮影。(右)
*路地裏に入ってみると都会の小学校ならではの景色に遭遇。復興小学校らしいレトロな常磐小学校の窓(左)
他にも、建築祭には参加していないけれどメンバーが好きなレトロビルに立ち寄ったりもしました。とにかく難しい事は考えずに、興味を持ったところにはまずは寄ってみて観察するところから始まり、そこから建築・まちを楽しんだ1日でした。
後日実施したふりかえりの場では、撮った写真を共有することで建物の細部を鑑賞する楽しさや、同じ建物を見ていても視点は人それぞれだと知ることができる楽しさがありました。また、気になった建物について調べてみることで、その建物にまつわる人々の想いも知ることができました。
◆ラボに参加したとびラーの声(抜粋)
これらの活動を通じ、参加したとびラーからは次のような声がありました。
・建物とまちがつながり、さらに人がつながった。
・今では、何でもないまちも好きになった。
・建物の細部を意識してみるようになった。
・「みる」に「誰かの経験・思い出・思い入れ」が加わり、丸ごと味わえるのが良い。
・みんなでみると、発見があり、感動のシェアができる。まちと建物を自分と違う視点から見直すことができる。
・自分がこれまで見ていた景色も違ってみえてくる。
*漠然と思っていた「イイね!」が、全体のふりかえりで言語化でき笑顔。
最初にまちあるきをした谷中は私が生まれ育った地元でもありますが、普段5分もかからず通り過ぎるだけの道を、みんなが色々発見して倍以上の時間をかけて味わう姿がすごく印象的でした。そして様々な視点を知れたおかげで、自分がこのまちが落ち着く理由や「いいな」と思う理由にも気づかせてもらえました。
「建物はモノではなく、その建物があるまち、そこに関わる人々の想いや記憶とつながっている」、「建物を介して他者との視点の違いを知ることができたり、誰かとコミュニケーションするのは楽しい」。みんなでミーハーに楽しむことから始めたら、最後には、そんな気づきを得られるとびラボになりました。
執筆:馬場 里美(12期とびラー):
普段は不動産賃貸・管理業に携わっています。とびラー活動を通じて、近すぎて当たり前に感じていた上野公園のよさにも改めて気づくことができました。
構成:染谷 都染谷 都(12期とびラー):
ラジオ番組制作ディレクター。藝大の森お世話隊でボランティア活動中。このとびラボを経てまちあるき、建築を通してのコミュニケーションを考えるきっかけに。とびらプロジェクトのこれからゼミ「『アート・コミュニケータの建築鑑賞まちあるき』を考える」「上野の森と建築を考える」の活動へつながった想いをさらに広げていきたいです。
2024.08.30