2012.07.01
6月3日に行われた基礎編に引き続き、平田オリザさんのワークショップ応用編が開催されました。今回はとびラー候補生(とびコー)さんに加え、学芸員の稲庭さん、佐々木さん、田村さんも一緒に参加されました。
2012.06.23
基礎講座最終回が終わった後、夕方6時から、東京都美術館内にあるレストランIVORYにて、基礎講座の打ち上げを兼ねた懇親会が催されました。全6回に渡る基礎講座も全て終了し、とびらー候補生(以下:とびコー)同士もかなり仲良くなりました。なかなか厳しい基礎講座だったと思います。みなさん大変お疲れさまでした。
以前、このブログでも紹介した「とびら楽団」のみなさんも登場しました。演奏して頂いた曲はNHKみんなのうたでおなじみの「メトロポリタン美術館」です。東京都美術館も東京メトロポリタンミュージアムなので。とびコーの時田さんがつくってくれた衣装とお揃いの青いターバンを身につけたとびら楽団の演奏は、とびらプロジェクトがはじまってからこの2ヶ月間の充実した活動を象徴しているかの様でした。
こちらの「真珠の耳飾りの少女」はマウリッツハイス美術館展の担当学芸員の大橋さん。かなり似合ってます!また、タイミングをみてとびコーさんが全員揃う会を是非開催したいですね。これからは実践講座です。みなさん頑張りましょう。(伊藤)
2012.06.23
全6回の基礎講座もついに最終回を迎えました。今回の講師は学芸員の稲庭彩和子さん、河野佑美さん、大橋菜都子さん、それと僕、伊藤達矢です。はじめに、稲庭さんと僕からもう一度東京都美術館(以下:都美)の目指すアートコミュニケーション概要についておさらいさせて頂きました。
最終回だけあり、みなさん何時にも増して真剣に受講されていました。
この4月から6月にかけて行われた基礎講座の期間中に、とびラー候補生(以下:とびコー)のみなさんには、「スクールマンデー(学校連携:対話を通した作品鑑賞)」、「建築ツアー」、「アクセスプログラム(障害のある方のための特別鑑賞会サポート)」のプログラムの中から必ず1つ以上選択して頂き、今後の活動の大きな方向性を決めて頂きました。選択したプログラムについては、該当するプログラムの実践講座を8割以上出席し、次年度からはそのプログラムのリーダー的存在になって頂くことを強く推奨しています。
そこで、それぞれのプログラムの特色を共有するために、それぞれの担当学芸員さんにプログラムの詳細を説明をして頂きました。はじめは「建築ツアー」担当学芸員の河野さんから。建築ツアーは既に実践講座がスタートしており、このブログでも紹介済ですが、コルビュジェに師事した日本を代表する建築家前川國男の作品である東京都美術館を紹介するツアー企画です。ステレオタイプの建築ガイドではなく、とびラーひとりひとりがつくるオリジナリティー溢れる建築ツアーを目指しています。
続いて、「アクセスプログラム(障害のある方のための特別鑑賞会のサポート)」については大橋さんからご説明を頂きました。都美では「障害のある方のための特別鑑賞会」を年に3回予定しています。休館日を使い、障害のある方にも安全に安心して作品を鑑賞してもらえる日をとびラーがつくります。初回の「障害のある方のための特別鑑賞会」はフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が展示されるマウリッツハイス美術館展です。
最後は「スクールマンデー(学校連携:対話を通した作品鑑賞)」担当の稲庭さん。小中学校と連携した鑑賞教育の実践の場として都美を開くプログラムです。普段は来館者が多いため、鑑賞教育の実践が難しい特別展を、休館日を活かして特別開館し、VTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)を中心とした対話型鑑賞教育を実施します。
「スクールマンデー(学校連携:対話を通した作品鑑賞)」、「建築ツアー」、「アクセスプログラム(障害のある方のための特別鑑賞会サポート)」はとびらプロジェクトの活動を支える3本柱となるプログラムです。そして、自分が選択したプログラム以外の活動であっても、人手が足りないときや、力を合わせなくてはならないとき、凄く興味のある内容のときなどは、プログラムの枠を超えて参加することをお勧めしています。
午前中の基礎講座は、この3本の主要プログラムの説明に加え、メーリングリストや「とびらプロジェクト掲示板」「本日のホワイトボード」などの専用情報共有システムについて確認したところで終了しました。とびらプロジェクト関係者以外の方でこのブログをご愛読頂いている方がいれば、きっとホームページ上のバナー「とびラー専用掲示板」にお気づきになった方もおられるかと思います。クリックすると「とびらプロジェクト掲示板」「本日のホワイトボード」の2つのバナーがでてきますが、残念ながら、ここから先はとびコーさんでないと見ることができません。実はこの先のシステムはとびコーさん同士のミーティングの記録がホワイトボードの写真ごとアップされていたり、ミーティング後の感想などや追加事項などがアップされていたりします。既に想像を超えて活発な活用が展開されています。
午後は、僕のファシリテートのもと、現在進行中の数々の新規プロジェクトのプレゼンテーションを担当のとびコーさん自身からして頂きました。楽器が出来るとびコーさんが集まり演奏を行う「とびら楽団」、新聞やブログなどを通して都美と芸大の情報共有と発信を目指す「とびら情報部」、とびラーの活動を支える為の都美のマップ作成と知識の共有を考える「マップ&マニュアル」などなど、とびコーさんの目線ならではの企画が既に10個以上立ち上がっています。一つ一つの企画を丁寧に発表して行くと、思わず助け合える企画同士を発見できたり、質問に答えているうちに新しいアイディアが生まれたりと、非常に実のあるプレゼンテーションの時間でした。
一つ一つの企画はまだ芽を出したばかりで、実現できるか否かはとびコーさんらの頑張り次第なところもありますが、とびらスタッフ一同、出来る限りとびコーさんたちをサポートして行きたいと思います。
また、そういった思いもある一方で、僕はプロジェクトマネージャとして、とびコーさんたちが自分たちの視点から生まれた活動をきっかけに、思いや理想をお互いに語り合うこと(共有すること)の方が、とびらプロジェクトの成長過程にとって非常に重要なプロセスであり財産だと考えています。(それを可能にするのが「きく力」なのです。)
年齢も職業もバラバラな凡そ90人のとびコーさんたちを繋いでいるのは、アートというプラットホームです。もちろんアートでなくとも、多様な人々の価値観を乗せるプラットホームは存在すると思います。しかし、性別や年齢、職業や価値観を軽やかに越境し、広くフラットに包み込むことの出来る類希なフレームはアートをおいて他に見当たらず、比類ない可能性を持ったフレームだからこそ、アートはコミュニティーに変換可能な媒体として機能できるのだと思います。(時代を超えた普遍的な魅力や価値がアートには内在しているからこそ、きっとこれだけの大きなフレームになりえるのでしょう。)
そして、アートをプラットホームとすることで、多種多様なとびコーさんたちが協調し合い、信頼関係を積み上げることこそ、とびらプロジェクトの”背骨”をつくることに繋がると思っています。
よく「芸術(アート)は社会の背骨である」とか、「芸術(アート)は社会にとって漢方薬のようにじんわり効能を発揮する」といった例えられ方をします。それは、芸術(アート)が人々の多種多様な価値観を抱える大きなプラットホームになることよって、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本:多様な人々が関わり合い、関係性を築くこと自体が社会の資本となり得るという概念)が、高い水準で社会(コミュニティー)に蓄えられた状態を指し示したものに他なりません。
とびらプロジェクトにとっても、このソーシャル・キャピタルの蓄積は至上命題です。異なった価値観に対して理解を示し、年齢や立場を超えた信頼を築くこと、そしてなによりも問題やリスク、困難や失敗をも共有することのできる関係を構築して行くことができなければ、本当の意味でとびらプロジェクトにソーシャル・キャピタルが蓄えられたとは言えません。
そして、これはとびコーさん同士で終わる話ではなく、都美で働く様々な業種の方々との間にも是非とも蓄えて行きたい資本であると思っています。つまり都美の中にソーシャル・キャピタルを蓄えて行きたいと考えています。むしろ、今年のとびらプロジェクトの活動の本質はそこにあると思っています。ソーシャル・キャピタルを蓄え、都美というコミュニティーに強靭な背骨をつくってゆかなければ、「美術館を拠点に、アートを介したコミュニケーションを促進し、オープンで実践的なコミュニティーを形成」する社会装置としての美術館の姿など到底夢のまた夢。。。とびコーさんにかかる期待はますます大きくなるばかりですが、大丈夫、このメンバーなら成し得てくれることでしょう。なぜなら「対話をすることの粘り強さと、誠意をもって接する力」を持つ方々をとびラー候補生として選出したつもりだからです。(休館前に障害のある方々の特別鑑賞会のボランティアを長らくされていた方々にも、そうした資質は共通していると感じて、ひとまとまりのとびら候補生となって頂きました。)
最後はこれからとびコーさんたちが企画を進行させて行く上での、テクニカルなアドバイスをさせて頂きました。はじめは、講師の西村さんが「とびらプロジェクト掲示版」に書き込みした内容のおさらい。その後は僕からのアドバイスです。意気込みをしっかりと推進力に変えて行くために必要な幾つかのポイントです。ちょっと気を付けておくだけで、結果は大きく変わるかと思います。
2012.06.19
2回目の建築ツアー実践講座が行われました。今回は主に、東京都美術館(以下:都美)の建物の特徴や歴史について学びました。講師は学芸員の河野さんです。とびラー候補生(以下:とびコー)が現場に立ってツアーガイドを行うときに知っておきたい基礎知識を中心に、ちょっとした裏話しまで幅広く講義して頂きました。スライドの写真は都美の父ともいわれる九州の炭鉱王佐藤慶太郎氏。当時の100万円(現在の33億円程度)を東京府に寄付し、1926年(大正15年)に東京府美術館(現 東京都美術館)が開館する礎を築いた方です。
2012.06.09
はじめに、西村さんから出されたテーマは「とびらプロジェクトと自分の今日この頃」。とびコーさんとなって、都美にもだいぶ馴染み、同期のとびコーさんとも仲良くなってきた今日この頃。いろいろな企画の芽も出はじめ、周囲から寄せられるとびコーさんへの期待の大きさと、振る舞いの難しさにも気付きはじめ今日この頃。少し今を振り返るために、ペアになって近況を話し合いました。もちろん大事なのは「きく力」です。西村さんからは改めて、「きく力」とは「本気でその人に興味や感心を持つこと」とのアドバイスもありました。
各々選んだ言葉が書かれたポストイットを見せ合い、3つの言葉からイメージできる、3人ならではのアイディアを考えます。はじめは特に都美という場所に捕われず、アイディアを出し合いました。ここに来てはじめて、とびコーさん同士の意外な特技に気付く事も有り、今後の活動に役立つヒントが多く隠されていることが分かりました。
企画の簡単なアイディアを3人で一度つくってみたところで、さらにイメージを深めて行きます。今度は、この3人で都美でできることは何かを考えます。3人で3つの言葉を持ち寄って、都美を舞台に、ここにいるメンバーだからこそ出来ることはなにかを話し合いながら、午前中は終了。午後までに、グループごとにA4用紙1枚に企画をまとめて提出する宿題が出され、お昼休みも活発なミーティングが続きました。
とびらプロジェクトの理想は高く険しい道のりの先にあるのかもしれませんが、きっとこのとびコーさんたちとなら、実現できると信じています。そして、ちょいちょいブログに登場するスタッフの他にも、とびらプロジェクトをしっかりと支えてくれているスタッフがいます。左から順に、インターンの真砂さん、コーディネータの近藤さん、アルバイトの熊谷さん、学芸員(マウリッツ美術館展担当!)の大橋さん。(ちょっとピンぼけしていてすみません。。。) アシスタントの大谷さんが写ってないのが残念。今度登場しますね。「ミッション先行ではなく、居合わせた人がすべて式」にしても、よくぞ集まったと思います。(伊藤)
2012.06.06
稲庭さんのトークが終わるとしばし歓談。お酒や食べ物などをご用意頂いており、周囲の方々とご挨拶やお話をさせて頂きました。今回会場に集まった方々は、東大の学生さんだけではなく、アーティストや一般企業・NPOで働く方々など幅広く、大変有意義なひと時を過ごすことが出来ました。
2012.06.05
仲のよい友だちに手紙を送るような気持ちで、都美のことを思い起こしながら書きます。とびコーさんとなって2ヶ月がたち、みなさんリニューアル後の都美にもだいぶ馴染んできたので、なかなかのスピードで筆が進みます。
手紙が書き終わったら、河野さんから同じ机のメンバーで手紙を読みまわす様に指示がでました。手紙を読むときのポイントは、「どのような伝え方をしているか」です。自分以外の目線で都美を見ることと、その魅力をどのように伝えようと工夫しているのかを共有することができました。
お互いの手紙を読み終えたら、テーブルごとに手紙の感想を含め「どんなところに興味を持ったのか」「どんな伝え方をしていたか」について意見交換をしました。手紙を共有したことにより、更に「建築物としての都美の魅力」や「その魅力の伝え方」について感心を深めることが出来ました。
その後、話し合いをした各テーブルごと意見をまとめ、伝え方の工夫や、気付いたことなどについて発表をしました。
再度、話合われた内容を各テーブルごとに発表して頂き、河野さんが、ホワイトボードにまとめて行きました。最後に河野さんから「1~10のことを全てお客さんに話す必要は無ありません。もちろん話しどころの要点などは多少ありますが、今回の講座であがった意見や考えをもとに、少しでもお客さん興味を持ってもらい、お客さんが主体となるような建築ツアーを目指したいですね」とのアドバイスがありました。とびコーさんたちが考える、都美の「建築ツアー」が動きだしました。とびコーさんたちがガイドとなるのは、ちょっと先ですが、かなりお勧めな企画になること間違いなしです。乞うご期待。
2012.06.03
2012.05.30
記念式典には多くのとびラー候補生(以下:とびコーさん)も参加し、寄贈のセレモニーが終わると屏風をじっくりと鑑賞しました。ガラスケースなどに入れることなく、これほど間近で鑑賞できるのは、複製品ならではの利点。本物の作品は劣化を防ぐ為に環境の良いところで保存しつつも、その作品のもつ魅力をよりリアルに体感できるのがこの高精細複製品の素晴らしさであり、「綴プロジェクト」(文化財未来継承プロジェクト)のコンセプトとのこと。弱視の方が至近距離で鑑賞したり、日常の生活空間で屏風の光を体験したりも出来ます。今後、寄贈頂いた2双の屏風をどの様に活かして行くのか、とびコーさんも真剣に考えを巡らしながら鑑賞していた様子でした。
会場内では、寄贈作品の展示に加え、高精細複製品をつくる技術についての展示も行われていました。キヤノンのカメラとプリンターを使いながら、高画質の撮影と、被写体と全く同じ色でプリントアウトを行うカラー出力の技術の実演を見学させて頂きました。プリントアウトに使われる紙は、屏風に使われている和紙の印象を保ちながらも、インクジェットプリンターの色彩表現を引き出せる様に研究されたもの。徹底したこだわりが伺えます。
続いて、プリントアウトされた絵に本物の金箔を打つ実演も行われました。真新しい金箔を、経年変化で古びた風合いにみせるなど、熟練した匠だからそこの技が屏風の複製に活かされていました。まさに、最先端の技術と代々伝受け継がれた匠の技のコラボレーションの瞬間でした。
2012.05.27
鑑賞のコツがつかめたら、とびコーさんと参加者のみなさんが3人1組ほどの小グループにわかれて、お気に入りの絵を探します。「公募展ベストセレクション美術 2012」は数ある公募団体のなかでも特に精力的に活動をしている27団体を取り上げ、かつ各団体の中で推薦を受けた作家のみが展示をしている、いわば公募団体オールスターズの展覧会。日本画、油画、水彩、工芸、彫刻と多彩な表現が展示室内にあふれています。
とびコーさんといろいろ相談をしながら、お気に入りの絵を2点決めてじっくりと鑑賞します。とびコーさんも楽しそうです。
お気に入りの絵がみつかったら、アートスタディルームに集まって、作品カードでお気に入りの絵を発表します。いろいろな絵がテーブルの上に並びました。
発表のあとは、各自お気に入りの絵の中にある色を絵の具を混ぜてつくります。その絵の中にある印象的な色に近づけるように、丁寧に色を混ぜ合わせます。1点の絵から5色の色をつくります。出来た色は1色ずつ帯状の紙に丁寧に塗ってゆきます。
いよいよ出来た色のピースを使って色見本帳をつくります。スケッチブックにお気に入りの絵を貼り、その隣に、お気に入りの絵をもとにつくった色のピースを貼ってゆきます。絵から取り出された色たちが再構成されて、また違った味わいが出ています。手を動かしながら色を考えたり、色の配置を並べ替えながら、隣り合った色と色の影響を体験したりすることで、よりお気に入りの絵を深く感じることができたのではないでしょうか。
みなさんそれぞれの色見本帳ができました。色見本帳もさることながら、あまった色のピースが入ったバットの中もなかなか奇麗です。
そこで最後は、あまった色のピースをお互いで交換し合いました。交換した色のピースはお土産としてお持ち帰り頂きました。たくさんの人がお気に入りの絵の中から取り出した色のかけらを拾い集めて、スケッチブックの上でまたちがった絵ができたら素敵ですね。今回の絵の具は、ターナー色彩(株)さまからご提供いただきました。ありがとうございました!(伊藤)