東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

2025鑑賞実践講座⑥|ファシリテーションのふりかえり

2025.11.24

 

 


 


第6回 鑑賞実践講座|ファシリテーションのふりかえり

日時|11月24日(月・休)13:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|越川さくら(東京藝術大学 芸術未来研究場 ケア&コミュニケーション領域 特任助手、とびらプロジェクトコーディネータ)

 



鑑賞実践講座では、講座で学ぶこと、実践の場に立つこと、そしてそれを振り返ることを循環させることで、とびラーのファシリテーション力が育っていきます。

 

とびラーがファシリテータを担当する現場は多岐にわたります。東京都美術館で開催される毎回テーマの変わる特別展や企画展、東京藝術大学大学美術館の作品や展覧会でのプログラム。また、対象者も「Museum Start あいうえの」に参加する子どもたちから、「Creative Ageing ずっとび」に参加する高齢者まで、非常に幅広い層にわたっています。

 

第6回は、こうしたさまざまな現場で実践を行ってきたとびラーが、どの実践に参加していても、自分自身でふりかえりを行い、スキルアップを目指していける方法を共有する回として位置づけられました。

 

 

10月13日(月・祝)、東京都美術館 アートスタディルームとスタジオを会場に、第6回鑑賞実践講座「ファシリテーションのふりかえり」を開催しました。講師は、鑑賞実践講座担当コーディネータの越川さくらです。

 

とびらプロジェクトでは、講座に参加しているすべてのとびラーが、同じ実践の場に立てるわけではありません。スペシャル・マンデーをはじめ、さまざまな鑑賞プログラムがあるなかで、とびラーはそれぞれ異なる実践の場に関わっています。だからこそ、第6回では「どの実践に出ていても使えるふりかえりの方法」を身につけることを大切にしました。

 

 

講座の冒頭では、「とびラーのファシリテーション力は、講座・実践・ふりかえりを行き来しながら育っていく」という考え方を、あらためて共有しました。特に、ふりかえりを客観的な視点で行うことが、ファシリテーション力の向上に欠かせない要素であることを、とびラーといっしょに確認しました。

 

 

 

 

客観的な視点に立って自分のファシリテーションをふりかえる具体的な方法として、「録音して、きく」という手法に取り組みました。とびラーは4人組になり、小さな作品画像を用いてVTSを行い、ファシリテータ役になった際のやり取りを録音し、実施後すぐに聞き返します。

 

 

 

 

録音を聞き返す際には、いくつかの視点を示しました。鑑賞者の言葉を丁寧に聞き、作品のどこに、どのように注目して話しているのかを捉えること。次に、ファシリテータとしての自分の言葉を聞き、鑑賞者の意図に沿って聞けていたかを確認すること。さらに、実際には行わなかった別のはたらきかけの可能性についても考えました。講座2・3年目で実践経験が多いとびラーには、対話全体の流れや、事前の作品研究との関係性まで含めて分析する視点も意識してもらいました。

 

 

その後、グループでのシェアを行い、録音を聞いて気づいたことを付箋に書き出し、共有しました。

 

 

 

第6回は、「どの実践でも、とびラー自身が成長していくためのふりかえりの方法」を共有する回となりました。録音を使って客観的にふりかえることで、自分のファシリテーションを見つめ直し、次の実践につなげていくことができます。12月のスペシャル・マンデーでは、各自がこの方法を使ってふりかえりを行い、講師やコーチによる見取りやフィードバックも予定されています。

 

講座・実践・ふりかえりを行き来しながら、とびラー、スタッフみんなで、とびラーのファシリテーション力を育てていきたいと思います。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2025アクセス実践講座⑦|キッズドア「子供の貧困」とは

2025.11.03

 


日時|2025年11月2日(日)13:30〜16:30
場所|東京藝術大学 第一講義室
講師|松見幸太郎(認定NPO法⼈キッズドア、執行役員NPO法⼈キッズドア基金 代表理事)


認定NPO法人キッズドアの松見幸太郎さんをお招きして、貧困家庭にある子供の経済状況とその影響についてお話しを伺いしました。認定NPO法人キッズドアは「すべての子どもが夢と希望をもてる社会へ」と2007年に設立された団体で、貧困に苦しむ日本の子どもたちの社会へのドアを開けるべく、多くの大学生・社会人ボランティアと共に、子どもの教育支援に特化した活動を展開しています。

 

 

とびラーの実践の中には、すべての子どもたちのミュージアムデビューを応援する「Museum Start あいうえの」ダイバーシティプログラムで、これまでにも認定NPO法人キッズドアさんと連携して東京藝術大学の卒業修了制作展を鑑賞するプログラムを複数年開催してきました。学習会に参加する子供達の中には楽しみにしてくれている人もいるようです。プログラム参加者の中には美術大学への受験を考え進学する人も出てきています。今年もどんな子ども達が参加し、藝大生とのコミュニケーションが生まれるのか楽しみです。

 

講座の中では、活動の理念からはじまり、昨今の物価高騰による影響も直接受けている状況を伺いました。
食費が嵩むことで必然的にそのほかにかけるお金は少なくなります。日本では、子どもの9人に1人が相対的貧困状態にあるとのこと。現場での子どもたちの状況や、学習支援の活動で将来につながった子どもたちのエピソードも合わせてご紹介がありました。


キッズドアの活動には子どもとその家族への支援活動だけでなく、貧困の社会的な状況を独自に調査し、数値やグラフで社会的に必要な理解を伝える活動もしており、実際の現場と客観的に外部へ伝える姿勢が大変参考になりました。データをとおして政策への提言も行い官民両方に対して支援の輪を広げる取り組みにも力を入れています。

お話を受けて、とびラーの講座後の振り返りでは

 

「親の貧困から子どもの貧困への連鎖を断ち切るための方法として学習支援を挙げられていたが、小さなことでもそれ以外で自分にできることは何があるかと考えさせられた。」

 

「子どもたちの学力につながる文化的資本については、美術館やとびラーにできることがそれなりにあると勇気づけられました。気軽に子どもたちが利用できるプログラムができないかなということも考えてみたいです。」という声がありました。

 

 

講座の後半では、4月から2回開催された「障害のある方のための特別鑑賞会」について考える時間をもちました。東京都美術館で開催される特別展の休室日に開催されるこの取り組みにとびラーはアートコミュニケータとして来館者を迎えています。とびラーにとって実践の場となっています。今年は5月と10月に2会開催されているため、3〜5名のグループになってそれぞれのこれまで「障害のある方のための特別鑑賞会」での経験を共有する時間をとりました。

 

「サポートが必要な部分はサポートするけど、する・されるの関係ではなく会話や鑑賞の時間はフラットな関係であることで、お互い心地よい時間を過ごせるのだなと思いました。その為には、設備や建物、展示のことを普段からよく観察して知っておくこと、自分がいっぱいいっぱいにならないような準備をして余白を作っておくことが必要そうだなと思いました。」

 

という鑑賞会にむけた準備についての話や、「5人で話し合いましたが、3人が参加しておりそれぞれの場所での活動を報告し合いました。まだ参加していなかった方からも次が楽しみ、という言葉がありました。

 

というとびラーからのコメントもあり、次回2月の障害のある方のための特別鑑賞会に向けて、まだ参加していないとびラーにとっても情報交換の機会となりました。

 

(とびらプロジェクト マネージャー  小牟田 悠介)

2025建築実践講座④|「とびラーと見つけよう!東京都美術館のみどころポイント」の準備

2025.11.02


第4回建築実践講座|「とびラーと見つけよう!東京都美術館のみどころポイント」の準備

日時|2025年11月1日(土) 14:00〜17:00
会場|東京都美術館 ASR


オープンレクチャーvol.16「みんなのけんちく〜みる・知るからはじめよう〜」で行う、関連プログラムの「とびラーと見つけよう!東京都美術館のみどころポイント」の準備を行いました。
このプログラムでは、とびラーが3人1組になり東京都美術館のみどころポイントを参加者に紹介します。

 

今回のオープンレクチャーでは、東京都美術館の建築家である前川國男や建物の特徴について知ることや、建物を主体的に学び鑑賞することを目的としています。
登壇者や関連プログラムの目的である、建築を楽しく見て話すことについてお話したら、いよいよプログラムの準備を始めます。

 

 

東京都美術館の打ち込みタイルや野外彫刻など様々な「みどころポイント」をどのように説明するかグループごとに相談して決めていきます。
実際に足を運んで、打ち込みタイルを触ってみたり天井を見上げてみたり・・・。

 

 

説明する内容が決まったら、とびラー同士でお互いに紹介しあいフィードバックをします。

 

 

当日に向けて、グループごとに準備をして参加者を迎える準備をします。
東京都美術館をよく見て、知る時間になりました。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 大東美穂)

 

2025建築実践講座⑤|オープンレクチャーvol.16/関連プログラム「とびラーとみつけよう!東京都美術館のおすすめポイント」

2025.11.02


第5回建築実践講座|オープンレクチャーvol.16/関連プログラム「とびラーとみつけよう!東京都美術館のおすすめポイント」

日時|2025年11月22日(土) 10:00〜16:00
会場|東京都美術館 講堂
講師|松隈洋(神奈川大学 建築学部 教授)
岩井祐介(慶應義塾幼稚舎 教諭)


オープンレクチャーvol.16「みんなのけんちく〜みる・知るからはじめよう〜」では、講師として松隈洋さんと岩井祐介さんをお迎えしました。

 

松隈さんからは、日本のモダニズム建築を代表する建築家・前川國男と東京都美術館についてお話を伺い、建築の魅力をわかりやすく紹介していただきました。
岩井先生からは、子どもたちが日々使っている校舎を題材に、建築を見て考え、感じたことを共有しながら学んでいく授業の実践についてご紹介いただきました。

 

オープンレクチャーの様子は、近日中に公開予定です。

 

 

午後からは関連プログラム「とびラーとみつけよう!東京都美術館のみどころポイント」を行いました。
とびラー達は、黄色いバンダナをつけてみどころポイントのタイトルを持ち講堂で参加者を待ちます。
参加者が揃ったら、いよいよプログラムのスタートです。

 

まずは、参加者と一緒に講堂からみどころポイントに移動します。

 

見るだけでなく、触ってみたり座ってみたり・・・
様々な方法で東京都美術館のみどころポイントを伝えました。

 

撮影:升谷玲子

参加者ととびラーが一緒に、東京都美術館を楽しむ時間となりました。

(とびらプロジェクト コーディネータ 大東美穂)

 

【開催報告】ゴッホ展「障害のある方のための特別鑑賞会」

2025.10.27

東京都美術館で開催された「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(会期:2025年9月12日(金)~12月21日(日))にて、展覧会の休室日にあたる10月27日(月)に「障害のある方のための特別鑑賞会」を実施しました。

当日は、とびラーとアート・コミュニケータ東京(任期満了したアート・コミュニケータの団体)が連携し、館内のさまざまな場所で来館者お一人お一人が安心して過ごせる環境を整えていきました。


展覧会入り口で来館者を迎えるアート・コミュニケータ

今回の特別鑑賞会でも、ミロ展に引き続き、とびラーが「とびラボ」で発案したアイデアが行われました。案内状のデザインや、手元のiPadで拡大画像を明るく見ることができる工夫、また、東京都美術館が制作した触図(しょくず・作品の構図やモチーフを凹凸のある線や点で立体的に表わした図版)を用いた鑑賞サポートも行われました。事前の準備段階から複数のとびラーが関わり、来館者が展覧会に出会うための入口をつくってきました。


案内状のデザインを紹介しながら参加者とコミュニケーション


iPadに入れた作品画像を手元で拡大して細部を見やすくサポート

触図を用いての鑑賞サポートでは、アート・コミュニケータが来館者と一緒に作品を鑑賞します。アート・コミュニケータは作品に描かれているものを説明したり、作品から受ける印象をお話しします。同時に、来館者の指先を触図にふれさせながら、構図や質感をイメージしてもらいます。

触図《種まく人》の前でも、多くの声が交わされました。まず多かったのは、触ることによって作品の全体像が立ち上がる驚きです。

ロービジョンの参加者からは、
「本物は会場が暗くてよく分からなかったけれど、触図だと木の太さや種をまく男の姿がよく分かる。見やすい」
という声が聞かれました。

また、触図を使ったアート・コミュニケータとの会話から、作品の細部に気づいていくことも多くあります。

「太陽はうすく赤くなっているのですか?色はどういう感じですか」

「青い袖を着ているんですね。種をまく手はどちら?」

「右手ですね。土に向かっている。左手は袋を持っている…あ、持っているのが分かります」

など、触図を起点に、色・身体の向き・動作が具体的なイメージとして共有され、鑑賞が深まっていきました。


触図に触れながら、《種まく人》の作品を鑑賞する様子

鑑賞会後のアンケートには、「安心して、ゆっくり鑑賞できた」「人混みを気にせず美術館に来られた」という声が多く寄せられました。


アート・コミュニケータについても、「そっと声をかけてくれた」「一緒に見てくれた」「新しい気づきがあった」といった感想が並び、鑑賞をともにつくる存在として受け取られていたようです。

とびラーから寄せられた当日のエピソードの中には、印象的なやりとりがいくつもありました。

《種まく人》の前を行ったり来たりしている来館者の方がいました。
「見づらいですか」と声をかけると、
「違うのよ。ほら、こっちから見ると絵の具がきらきらして、きれいでしょ。」
そう言って、右側に連れて行って教えてくださいました。
来館者の方の笑顔も、きらきらしていました。

説明する側・される側などの関係ではなく、作品の鑑賞を分かち合う時間が、自然とそこに生まれていました。

また今回は、慣れない移動や人混み、周囲の視線、音、光等の混在により不安やストレスを感じた際に気持ちを落ち着かせたい方のために、「カームダウンスペース」や「センサリーキバッグ」(イヤーマフやセンサリートイなどが入ったバッグ)を導入しました。また、お声掛けが苦手な方にスタッフやアート・コミュニケータが気がつけるようにするための目印(白紙の名札)も用意しました。

すべての方に安心して展覧会を楽しんでいただくための模索は続きます。

特別鑑賞会は、一度きりの特別な日ではなく、皆さまと美術館との関係の入口となる1日です。
この日のご来館をきっかけに、今後も皆さまとのご縁が続いていくことを願っています。

 


次回は、2026年2月9日(月)、東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやきにて開催を予定しています。

次の鑑賞会でもみなさまにお会いできるのを、アート・コミュニケータ一同楽しみにしています。

(とびらプロジェクトコーディネータ 越川さくら)


「障害のある方のための特別鑑賞会」は、東京都美術館の特別展ごとに1回ずつ開催しています。
詳細、お申し込みはこちらからどうぞ:https://www.tobikan.jp/learn/accessprogram.html

2025アクセス実践講座⑥|国籍・文化が違う人との共生

2025.10.20

 


日時|2025年10月19日(日)13:30〜16:30
場所|東京藝術大学 第一講義室
講師|村田陽次(東京都 生活文化スポーツ局 都民安全推進部 都民安全課)
         山藤弘子(地域日本語教育コーディネーター、多文化共生コーディネーター)


とびらプロジェクトの活動の拠点である東京都美術館は台東区にあります。
上野公園には毎日たくさんの観光客が海外から訪れています。また、台東区内は外国にルーツを持つ人が多く住んでいる地域でもあります。
アートコミュニケーションの活動を届ける際にも、そうした外国にルーツがある方、日本語を母語としない人たちへどのように情報を届けるか、来館した際にはどのようにコミュニケーションをとることができるかを考えています。

 

今回の講座では、東京都の多文化共生の推進に長く尽力されてきた村田陽次(東京都 都民安全総合対策本部)さんと、台東区在住で日本語教育のコーディネーターをしている山藤弘子さんをお迎えして、国・文化が違う人とどのようにコミュニケーションをとり共生していけるかについてお話を聞きしました。東京都の行政の取り組み、台東区での活動とそれぞれの違うお立場から現状と取り組みについて幅広くお話を聞くことができました。

 

 

村田さんのパートでは、東京都に住む外国にルーツのある方の状況と行政支援についての紹介や、日本語以外の言語を母語とする人とのコミュニケーションで英語よりも多くの外国人に伝わりやすいとされている「やさしい日本語」の考え方、使う際のコツをわかりやすい映像も交えて伺いました。「やさしい日本語」が必要とされる背景には、阪神・淡路大震災や東日本大震災震災などがあり、災害時の防災アナウンスで難しい言い回しによって伝わらなかった経験から行政やメディアの発信も見直されてきたそうです。

 

日本語を母語としている人にとって、話し方について普段から考える機会は少なく、改めて日本語の複雑さや、わかりにくい言い回しがあることに気づきます。また、どこの国の方にでも英語で話せば伝わるというわけでもない。ということも重要なポイントでした。

とびラーからも「やさしい日本語については、各自の母語を大切にしつつ、歩み寄るツールとなる可能性を感じた」という振り返りのコメントがありました。

 

村田さんからは、「やさしい日本語」は万能ではなく、お互いに理解し合えるプラットホームであり、まずはそこからはじまるということ。そこからはその時々に応じて工夫してコミュニケーションをつくる必要がある。ということも添えられました。とびらプロジェクトの活動も長く見守っていただいている村田さんからは、アート・コミュニケータの実際の活動を想定したアドバイスをたくさんいただきました。

 

 

山藤さんからは、いま接している子どもたちの状況や地域の状況を教えていただきました。日本語教室を開き、多文化共生の活動を行っている地域での事例を交えてお話ししてくださいました。

 

教育現場では外国ルーツの児童・生徒の増加による必要なサポートが不足していて、子ども、親、先生、それぞれの立場から困っている点を挙げていただきました。

日本語能力について、日常生活に必要な言語能力は1〜2年で習得できるが、学習するために必要な言語能力は5〜7年かかるそうだ。学校に通う子どもは日常のコミュニケーションは、比較的早く身に付く人が多いけれど、学習に必要な言語能力の習得はさらに時間がかかる。周囲の大人がその習得の違いを理解していないと、「ただ勉強ができない子という誤解や偏見が生まれてしまう」というお話は印象的で、受講するとびラーからも「自分が働く学校現場で、日本に来て数年たち日常会話は問題なく話せる外国にルーツがある子どもたちが、学習でつまづいている様子をうすうす感じていました。今回の講座で理由が初めて分かった気がしました」という振り返りのコメントがありました。

 

地域の多文化共生では、一過性の交流ではなく、ともに地域で暮らしている人として定期的に関わりをつくっていくことを大切にされていて、具体的な声として、日本で暮らす外国ルーツの人にとって、支援を受ける側というよりも、この先も日本に住む者として地域のコミュニティに参加し貢献したいという方も多いそう。

そうした人たちが一緒に餅つき大会やお祭りなど地域行事に参加するようになってきているというお話がありました。この呼びかけも「やさしい日本語」でチラシを作ることで、外国人住民から「初めて情報が目に入ってきて内容を受け取ることができた」「呼ばれている気がした。」という反応があり参加に繋がったそう。情報を発信する側の工夫で日本語を母語としていない人も歓迎していることが伝わるというお話でした。

これまでも、Museum Start あいうえののプログラムで、とびラーとの活動を一緒につくってきてくれた山藤さんからは、

「美術館は多様な人々が互いを認め合い、つながりを見つける場になる」ということ、「アートコミュニケーションこそ、今の社会の対立を和らげる力となる」というメッセージいただきました。

さまざまな言語を母語とする人がとびラーの中にもいたり、お仕事で外国ルーツの人と出会う機会もある方もいて、講座の最後の村田さんと山藤さんのクロストークと質疑応答の時間では、それぞれの背景からお二人のお話に対する様々な感想が交わされました。

 

振り返りの中では

「日本に長期滞在することになる外国にルーツを持つ方々に対して、改めて一緒に暮らしていく仲間であるという事実を再認識できた」

 

「どれほどオープンマインドでいるつもりでも、自分のよく知らない文化に対して「怖い」といったネガティブなバイアスを本当に持たずいられるのか。バイアスなどないと思い込んでいる時ほど、自分を省みることが必要かもしれない。」

 

「自分自身も、いま住んでいる地域に対するつながりを持てていないので、まずは自分が地域で行われている活動に関心を持つことから始めないと」

外国ルーツの在住者が増加している日本社会の状況で「事実に基づかない決めつけ」によって生まれる誤解や、自分で選んだわけでなくそうした状況にある子どもの状況を知ることで、いま美術館で活動をつくっていく意義について改めて共有する時間となったのではないかと思います。

 

 

「Museum Startあいうえの」のダイバーシティプログラムでは「美術館でやさしい日本語プログラム」を毎年行っています。外国ルーツの子どもたちとその保護者だけでなく、日本語話者の親子も一緒に作品を鑑賞して感じたことを身体や音、絵など言語以外の表現も使いながら伝え合います。このプログラムにもとびラーがいることで参加者一人一人の状況を見守り、子ども同士だけでなく、その保護者同士のコミュニケーションも大切にプログラムをつくっています。

 

今年も山藤さんにプログラムパートナーとして参加いただき、村田さんにもアドバイスを受けて準備を進めています。プログラムに向けて前提となる基礎的知識や最新の状況を知ることができました。また、とびラーの中には帰ってから自分の地域のこと、外国ルーツの方への支援活動を調べてみた人もいて、日常の中で多文化共生や、「やさしい日本語」について意識的になることができたようです。

 

(とびらプロジェクト マネージャー  小牟田 悠介)

2025鑑賞実践講座⑤|ファシリテーション事前準備

2025.10.13

 

 


 

第5回 鑑賞実践講座|ファシリテーション事前準備

日時|10月13日(月・祝)13:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))

 


 


10月13日(月・祝)午後、東京都美術館 アートスタディルームとスタジオを会場に、第5回鑑賞実践講座「ファシリテーション事前準備」を開催しました。講師は三ツ木紀英さん(NPO法人 芸術資源開発機構)です。

 

 

第5回は、第4回で学んだ展示室での場づくりをふまえ、鑑賞の実践に向けて、作品の魅力にどのように近づき、どのような準備を行うのかを学ぶ回として位置づけられています。鑑賞の場は、当日のふるまいだけでなく、ファシリテータが事前にどれだけ作品と向き合っているかによって大きく左右されます。この回では、その「事前準備」に焦点を当てました。

 

講座の前半では、VTSのファシリテーションに向けて行う作品研究の考え方についてレクチャーが行われました。作品研究というと、作者や制作年代などの情報を集めることを想像しがちですが、ここではその前にまず、作品をよく見て、鑑賞者が何を感じ、何を語るのかを想像すること、そしてその発言の裏付けとなる、より客観的な要素を作品の中から丁寧にたどることの大切さが共有されました。

 

また、鑑賞者が作品を見るときにもつさまざまな視点のバリエーションを想定し、視点を整理・分類しておくことで、作品の全体像や魅力をファシリテータ自身がつかんでおくことの重要性も確認されました。

 

 

続いて、グループに分かれて作品研究のワークを行いました。参加者は、作品画像を前にしながら、形や色、構図、モチーフなどに目を向け、気づいたことを言葉にしていきます。個人での観察と、グループでの共有を往復することで、ひとりでは気づかなかった視点や、見方の広がりを体験しました。

 

 

後半では、先ほどのグループワークで行った作品研究を、一人で行いました。とびラーからは、グループワークと違い、自分一人で作品をみる際には、視点の広がりや深さを自分自身で生み出す必要があるため、より難しさを感じたという声が聞かれました。VTSのファシリテーションには、ファシリテータ自身の鑑賞体験の豊かさも重要であることが、実感を伴って共有されました。

 

 

第5回は、ファシリテーションを「その場でうまく進める技術」として捉えるのではなく、事前にどれだけ作品に近づき、準備を重ねているかが鑑賞の質を支えていることを学ぶ回となりました。

次回の第6回では、ファシリテーションのスキルを高めるために不可欠な、実践のふりかえりに取り組んでいきます。

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

【開催報告】9月の「とびラーによる建築ツアー」

2025.10.01

日時  |2025年9月20日(土)
場所  |東京都美術館

参加者(事前申込)30名、とびラー16名

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

まだまだ暑い日が続き、涼しくなるのが待ち遠しい9月。
そんな中、2025年度 第3回目の「とびラーによる建築ツアー」が実施されました。

東京都美術館を建築した前川國男や歴史についてお話しした後、東京都美術館の特徴や見どころの紹介をしました。

この建築ツアーは、決まったコースはなく、それぞれのとびラーが考えたオリジナルのツアーです。

 

ガイドごとに、違ったツアーを体験することができます。
東京都美術館の魅力や新たな発見をしていただけたら嬉しいです。
……
次回の開催は11月15日(土)を予定しています。
みなさんのご参加を心より楽しみにしています。
*「とびラーによる建築ツアー」は、原則として、奇数月(5月、7月、9月、11月、1月、3月)の第3土曜日に開催しています。
詳細、お申し込みはこちらから。
(とびらプロジェクトコーディネータ 大東美穂)

2025建築実践講座③|HAGISO 最小文化施設の取り組みについて

2025.09.28


第3回建築実践講座|「HAGISO 最小文化施設の取り組みについて」

日時|2025年9月20日(土) 14:00〜16:00
会場|東京都美術館 講堂
講師|宮崎晃吉(株式会社HAGISO 代表取締役)


谷中銀座商店街から路地を入った静かな場所に位置するHAGISOは、築68年の木造アパートを修繕し2013年3月に「最小文化施設」としてオープンしました。
カフェとギャラリーが併設されており、トークイベント、地域交流の場そして、コンサートを行うなど様々な活動をしています。
その活動と地域との繋がりやそこから生まれるコミュニティーについて、宮崎晃吉さんにお話を伺いました。

 

建築を再生することで、「人が集まり、過ごし、交わっていく場所」としての〈場〉となり、そこには新しいつながりが育まれ、地域にこれまでになかった価値が生まれていきます。
この取り組みは、ただ古い建物を残すのではなく、その土地に眠っていた価値を見つめ直し、人が関わることで未来へつなぐ試みでもあります。
HAGISO は、建物を再生することを通して、「谷中」というまちに新しい息吹と価値を与えてきました。
建築の再生から、人とまち、そしてコミュニティが生まれていく可能性を実感するきっかけとなりました。

 

 

こうした取り組みを聞いて、とびラーとして、また3年の任期満了後に自分の地域での活動につながるきっかけを考える時間になったことと思います。

 

HAGISOのホームページはこちらからご確認いただけます。

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 大東美穂)

 

2025アクセス実践講座⑤|発達障害とは

2025.09.15

 


日時|2025年9月14日(日)13:30〜16:30
場所|東京都美術館 講堂
講師|柴田光規(川崎西部地域療育センター センター長)


普段、川崎西部地域療育センターで子どもたちの診療に携わる柴田光規さんにご登壇いただきました。

柴田さんは、元とびラーとしても活動し、任期満了後の現在では、川崎を拠点とするアートコミュニケーション事業「こと!こと?かわさき」のことラーとしても活動されています。

アート・コミュニケータの活動についてもよく知っている柴田さんに、発達に特性をもつ子どもへの支援についてご講演いただきました。

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などを総称する「神経発達症(いわゆる発達障害)」のそれぞれの症状の特性やそのときの子どもの心理的な状態について、専門的な立場からお聞きすることができました。

とびラーが伴走するMuseum Start あいうえのの学校プログラムでも、特別支援級や発達特性のある子どもたちも来館し一緒に作品鑑賞を行います。発達支援の基本的な考え方をお聞きし、迎える側にできることを知る機会をつくろうということで、今年のアクセス実践講座のテーマの一つとしました。

社会の中で子どもの「困った行動」に出会ったときの私たちの視点として、「困った行動」は実は子ども自身が困っている。対処法がわからなくてとった行動であることが多い。というお話があり、特性を理解することで、どのようなことに困っているのか、子どもの困りごとを想定し、情報の伝え方にあらかじめ工夫ができることがあることを療育センターの現場の具体的な対応を例に紹介がありました。

神経発達症の特性を持つ人たちには脳や神経の特性に由来する 独自の文化があると考える「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」についての紹介もありました。

とびラーの振り返りでは

「子どもにとって今どんな状況なのか?という目線で問題行動を見直し、否定しないで肯定的に具体的な指示を出す、視覚情報で再確認できるようにする、というのは、自閉症の子に限らず大切な関わり方だと感じた。」

 

「自閉症の方には、伝えたい情報に集中してもらうために、それ以外の動きを制御して混乱させないよう気をつける、というのは新たな学びだった。」

 

講座の後半では、東京都美術館の社会共生担当の工藤さんも登壇し、東京都美術館へ来館する際の展示室までの道のりを見通しを立ててあらかじめ知ることができる「ソーシャルストーリー」についての紹介がありました。制作の意図と大事にしているポイントを解説しつつ、ご尽力いただいた柴田さんにもコメントをもらいながら、ソーシャルストーリーのポイントと使う方の目線で解説しました。

 

とびラーからは

「自分自身、何の準備もなく初めての場所へ赴く際は、とても緊張しますし、初めての活動では、戸惑っていたことを思い出しました。ソーシャルストーリーをもう一度よく読んで、周りの人たちにも伝えたい」

というコメントがありました。

 

講座を通して、「発達障害」という子どもの状態を知ることができ、捉え方が変わることで、それぞれがこれからの対応にこれまでより少し視野を広く持って迎えることができるようになったのではないでしょうか。

 

柴田さんの講座の中での子どもたちの様子を表現するやさしい語り口からも、アートコミュニケータとして子どもたちを迎える際の視点を学べたような気がします。来館する子どもたちのその時の状況に寄り添って想像していくことが大事だともおもいました。

 

(とびらプロジェクト マネージャー  小牟田 悠介)

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