東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

トビカンアートナイト

2013.09.13

「とびラボ」から生まれた活動を、今回はとびラーによるレポートでお送りします。金曜の夜間開館を有効利用しようというアイディアから生まれたこの「トビカンアートナイト」。とびラーの目線で、実施に至るまでの企画意図までも語ってくれています。彼らの言葉から、とびラボにかける気持ちをちょっとでも感じて頂ければ幸いです。

(プロジェクトアシスタント 大谷)

 

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7月はじめ、全員集合の基礎講座後、アートプロジェクトルームで一つの机を囲みながらしていた雑談が、トビカンアートナイトプロジェクトの始まりでした。「先週、金曜日の夜にトビ(東京都美術館)に来たら、美術館でデートを楽しんでいる感じの大人たちが結構いたよ。」「トビって、子供向けのプログラムは充実している。大人向けのプログラムももっとあっても良い気がする。」「金曜日の夜にトビに来てもらう企画があったら、いいんじゃない?」そんな、言葉のキャッチボールの追い風となったのが、2020年のオリンピック招致に向けたトビの金曜日の夜間開館時間の延長でした。「やるならいまでしょ!」と勢いづいたとびラーたち。しかし、とびラボを自分たちで立ち上げるのは初めてという2期生が中心だったこともあり、プロジェクトは一筋縄では進みませんでした。それぞれの頭にある漠然とした考えや思いを具体化して行く中で、「自分たちがこの企画を通して来場者の方に何を提供したいのか?」「考えた案はアートコミュニケーションなのか?」と、スタッフの方からご意見をいただきながら、打合せを何度も重ね(時には議論が3時間以上になることも)、まず、とびラーの友人の協力の上、非公開イベントとして、福田美蘭展でトビカンアートナイトと称した大人向けのプログラムのトライアルを実施することになりました。

 

ここからは、当日(9/13)の模様をレポートします。

日が暮れた19時前にトビ1Fのラウンジで受付を開始。参加者の皆さんには、知り合い同士が同じグループにならないよう、クジで5人一組の3グループにわかれてもらいます。さらに一人ひとつ、紙の入ったカプセルを渡します。これが何かは、まだ秘密。それぞれのグループを担当するとびラーが場をほぐしつつプログラムの流れを説明しますが、ここではまだ緊張ぎみの方も・・・。

その後、グループ毎に会期中の福田美蘭展の会場へ。グループ鑑賞の始まりです。とびラーがファリシテータとなって、2作品を対話型鑑賞で見ていきます。会場で何をやっているのか興味をもたれた一般の来場の方が飛び入り参加されるグループもありました。

はじめは戸惑いがちだった対話型鑑賞も、2作品目になると場の雰囲気にも慣れてこられたのか、皆さんあったまってきた様子。発言が絶えなくなり、ファシリテータとのキャッチボールだけでなく、他の参加者の意見への賛同や興味を言葉で表現し、参加者同士のコミュニケーションが、徐々に生まれてきました。

グループ鑑賞が終わり、いよいよ最初に渡したカプセルを開いていただく時間です。カプセルのことは忘れかけていた参加者に、「最初にお渡しした、カプセルを開けて見てください!一人ひとりにミッションが書かれています!」ととびラーが発すると、皆さんの表情がワクワク感でいっぱいの表情に。

誰かと一緒に床にある絵を踏んでみよう!というミッションをチャレンジする参加者たち。

並行して、個人鑑賞。とびラーも隣で福田美蘭展を楽しみます。

個人鑑賞の終わりには、とびラーからミッションの作品を1つ1つ紹介。参加者もとびラーも一緒にまとまり感がでてきました。

ミュージアムテラスへ移動し、お茶をしながらプログラムを振り返ります。席に座ると、参加者同士、自然に隣の人との歓談が始まりました。

美術館は一人もしくは二人で来ることがほとんど。美術館で、一つの作品を今回のように複数の大人で見ることはないので、複数人の意見を聞きながら、絵を見るのが新鮮で面白かった。」

知り合い同士で話すというわけではなく、その場を共有したメンバで、経験したことをきっかけとした会話が始まっていました。

最初緊張ぎみだった参加者の表情が、プログラムが進むにつれて、参加者同士のコミュニケーションが増えていき、ミュージアムテラスにたどり着いた時は笑顔がいっぱいだったことが、印象的でした。ミュージアムテラスでは、アートコミュニケーションを介した新たな人と人とのつながりが出来つつあったように見えました。

このトライアルを通して、対話型鑑賞を取り入れた大人のアートコミュニケーションプログラムに手応えを感じました。一方、課題も色々と見えてきました。このトライアルを第一歩として、課題を一つひとつ解決しながら、定期開催出来るイベントにしていきたい!と企画メンバで、密かに思っています。

 

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筆者:とびラー 高橋聖子(たかはしあきこ)

会社員。アートを介した複数人での対話型鑑賞を通して、その場にいる鑑賞者と感じたことや思ったことを共有しあう楽しみやそこからの新たな発見を自ら体験し、その素晴らしさを一人でも多くの人に伝えたくて、とびらプロジェクトに参加。

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