東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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第2回基礎講座<美術館は人々にとってどんなところか?>

今年度の第2回基礎講座では、「美術館での体験とは?」についてみんなで考え、実際に体験しました。

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午前中は稲庭さんより映像を3本紹介してもらい、見終わったら感想を全体で共有する時間。

1本目はアメリカのニューヨーク市にあるメトロポリタン美術館館長トーマス・キャンベル氏によるTEDでのプレゼンテーションの映像です。


この映像では、展覧会においての具体的な例を挙げながら、美術館でしか得られない体験について語られています。とびラーは映像を見ながら、大事だと思われるキーワードをそれぞれ書き留めていきます。その時に出て来た主なキーワードはこちら。

「歴史や専門知識の目だけで見るのではなく、自分の目を使って発見の瞬間を得ること。」
「本物を目の前にすることで、時空を超えて過去の人たちに出会う体験ができる。それにより自分をより深く知り、未来に向ける。」
とびラーのみなさんも大事なメッセージを受け止めた様子で、1本目からとても活発な意見が出ていました。

「作品をみること」「作品から感じる体験とはなんだろう?」ということを考えはじめたところで、次の映像です。2本目はアメリカのボストン市にあるイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館で行われている教育プログラムをまとめたドキュメンタリー映像「Thinking Through Arts」です。ここで紹介されているのは、VTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ)という手法を使った主に小学生を対象とした対話型鑑賞のプログラム。

この映像をみた後に、近くの3人で一組になり感じたことを話し合いました。
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全体で共有したときに出て来たキーワードと、稲庭さんがそれに呼応して話したことをいくつか紹介します。
「映像に出てくるファシリテータは、こどもたちを褒めていない。前回の講座の“きく力”を思い出し、とても良い聞き役だと感じた。」
「ファシリテータの技術によって単なる“会話”ではなく、 積み重なる“対話”になる。」
「 “何が見える?”ではなく、“何が起こっている?”という質問では大きな違いを感じた。」
「より絵の中に入って散歩していくようにみるきっかけになるため、こどもたちから出てくる発言の質が変わってくる。」
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さらに別のアプローチをしている事例の紹介です。3本目は神奈川県立近代美術館の「鎌倉の立てる像たち」という映像作品です。ここでは、中学生たちがワークショップを通して、自分自身を作品や作家に投影しながら、鑑賞を深めている様子を見ることができました。

印象的だったのは、誰しもが感じる疑問に対して稲庭さんが答えてくれた言葉でした。
「“実はこの作品は・・・”という種明かしはしないのか?」
「種明かしは特にない。みんなが“答え”が欲しいと思う理由は、実は思考を止めたいから。」

「正解」という情報を知った時に理解した気になり、ほっとひと安心するような感覚を味わったことはありませんか。そうすることで知識は積み重なるかもしれないけど、それは考えることから解放された安心感からくる「ほっ」なのだと稲庭さんは言います。その安心感に満足してしまうと、もはやその作品をについて考えなくなってしまうこと思考を止めることにつながるのです。
ここで紹介したVTSによる鑑賞体験では、作品を知ることが目的ではなく、鑑賞者が「これは何だろう?」「なんでだろう?」と考え続けることを目指しています。とびらプロジェクトにおける「鑑賞」の活動は、この考え方をベースにしています。
最後に稲庭さんから、「美術館での鑑賞体験を深められるにはどうしたらいいか、実践するときに一人一人が考えていってほしい」というメッセージが伝えられました。

午後はアクティビティです!
まずはウォーミングアップとして「Museum Box 宝箱」のアートカードを使います。
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キーワードを聞いて、イメージするアートカードを指差す「指さしゲーム」や・・・

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ランダムなアートカード3枚をつなげて物語をつくる「ものがたりゲーム」で盛り上がりました!

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ゲームを通して「言葉」と「イメージ」の結びつき、イメージの受け取り方には多様な感じ方があることを体感してもらいながら、自然にと作品の”中”に入る準備体操ができたはず。

この後、いよいよ展示室における鑑賞を体験してもらうべく、開催中の「大英博物館展」を見に行ってもらいました。その時のルールは以下の3つです。
①まず、空間を把握すること。②選んだ作品を1点鑑賞してくること。③場をデザインすることにも気を配ること。
この1〜3の活動は、単に「展示室に行って好きに作品を見て来てね」というものではありません。とびラーのみなさんが実践の場としてもらうスクールプログラムの時に直面する問題を想定しています。鑑賞している人たちがそれぞれ気持ちよく過ごしてもらうために、自分がどのように振る舞えばいいのか、まずは体で体験してきて下さい、と呼びかけました。

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それぞれ無事にミッションを終えて、気になる作品同士で集まって見つけてきたことや考えを共有します。
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それぞれの作品について各グループより紹介してもらいました。
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最後に、<鑑賞実践講座>についての紹介です。
来館した人々にとって、より豊かな美術館体験をしてもらうために「対話による鑑賞」と「パーソナルな体験」を行き来させつつ、彼らの言葉を引き出す力を身につける講座です。それは第1回基礎講座でいっしょに考えた、「きく力」と共通するものになります。ただ単に「VTS」を身につけることではなく、あくまでこどもたちや来館者と寄り添って、まなざしを共有できることを目的としています。
ここから、とびラー一人一人が「美術館で起こる体験」について実践的に考え、デザインしていく3年間がはじまります!

(東京藝術大学美術学部特任助手 鈴木智香子)

2015.04.25

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