藝大生の卒業・修了作品を展示する「東京藝術大学 卒業・修了作品展(通称:藝大卒展)」が2018年1/28(日)〜2/3(土)の期間で開催されました。それに合わせて、とびラーの「藝大さんぽ」というプログラムを会期中に4回開催しました。卒展をとびラーと一緒に「さんぽ」するこちらのプログラムは今年で5回目の開催です。藝大生の方々にもたくさんのご協力をいただき、今年は4日間で約42名の来場者の方にご参加いただきました。
ということで!これから今年の「さんぽ」の模様をお伝えしていきたいと思います!
今年の藝大卒展は、休日に会期が始まり、平日の開場期間が長いスケジュール。初日は日曜効果も加わって、会場は大いに混みあっていました。とびラーとしても、案内する作品のほとんどは卒展の初日が初対面。「さんぽ」の開催初日が一番の混雑を迎える日、というドキドキの展開から、少しずつツアーのアップデートを重ねていく四日間でした。
それではさんぽの様子を紹介しましょう!
まずは東京都美術館にて受付。参加者の方に藝大会場と都美会場のどちらをまわりたいか要望をうかがって、いくつかのコースに分かれて出発しました。
始めに自己紹介など、ちょっぴりおしゃべりをしながら、参加メンバーが揃うのを待ちます。
メンバーが揃ったらいざ会場へ。各コースは約一時間程度で、とびラーが選んだ3つの作品を中心にまわります。作品をまわりながら、とびラーと話したり、じっくり作品を見たり、藝大生と話したり、なかなか話せなかったり(笑)。
なにせ学生にとっては慌ただしい卒展の期間中!とびラーの計画通りに行かないこともしばしば。そんな時は、もともとのコースにはなかった作品を見たり、たまたまそばにいた藝大生に話を聞いたり、そんな行き当たりばったりの作品と人との出会いから「さんぽ」を楽しみました。
そして最後に、参加者の方から「さんぽ」のなかで話した藝大生に宛てて、メッセージを書いていただきました。いただいたメッセージは「さんぽ」の後、作品を制作したそれぞれの藝大生までお届けしました。喜んでいただけたそうですよ!
さて、ここで「さんぽ」はいったん終了ですが、とびラーはふり返りへ向かいます。各日ともそれぞれのコースの様子を共有して話し合いました。「あの場所は参加者の方が作品に触れそうになりやすくて危なかったよ!」というような情報共有から、「どうしたら今日のさんぽはもっとよくなったんだろう…」といった相談まで、毎回のふり返りでとびラーも徐々にパワーアップしていったように思います。
実はわたし、今回が「さんぽ」の初体験でした。とびラーは今回の「藝大卒展さんぽ」や、秋の「藝祭さんぽ」など、作品鑑賞と藝大生との交流を楽しむ「さんぽ」を1年のなかでいくつか開催しています。
わたしは3日間、サポート役として「さんぽ」を支えましたが、ナビゲートするとびラーによってさんぽの内容も雰囲気も様々でびっくり!お話しする学生との事前のアポ取りをはじめ、道順や時間配分まで入念なコースを計画するところもあれば、集まった参加者の方の様子を見て、その場で観る作品を決めるコースもあって。
「各々のとびラーの性格やポリシーが出るんだなあ。」というのが、色んなコースをみたわたしの実感です。「藝大生インタビュー」で制作段階を取材したとびラーの「作者の想いを伝えたい」という気持ちがほとばしる瞬間を目の当たりにしました。また、卒展を参加者の方にどう体験していただこうか、と考えるとびラーの熱い想いに胸をうたれました。
とはいえどんなに準備をしていても、参加者の方に合わせて「さんぽ」は変わっていきます。参加者にとってはどんなとびラーに出会うか、もちろん私たちとびラーもどんな参加者の方と出会えるか、それに作品と藝大生まで加わって、本当に一期一会。参加者の方の質問によって、私では引き出せなかったような話を藝大生から聞くことができたり、予想を裏切る楽しさがありました。
「さんぽ」を終えた後、ある参加者の方が会場に残って卒展をまわっているのを発見。そっと様子をうかがえば、なんと藝大生を新たに捕まえて質問攻めに!なんだか頼もしくすら思えました。その他にも「美術館の歩き方を教わりました!」という声や、「美術作品との関わり方を見つけられた」という感想も。
ひとつの作品をじっくり見て、考えて、作者と話す体験が、参加者の方にとってなにかの扉を開くきっかけになったようでとても嬉しかったです。言葉にすると簡単なようですが、意外となかなか無い体験ですもんね。これがわたし達アート・コミュニケータの醍醐味なのかしら、なんて。
さて卒展最終日、まだまだ観てない作品ありすぎ!と足早に観てまわっていたところ、同じく足早なとびラーに遭遇。卒展期間中、何日も上野にいるのに全作品をまわりきれない我々です(笑)。
私も今年こそはまわりきってやると意気込んでいたのに、作者の方と話すことが出来たひとつひとつの作品に愛着が湧いてしまって、観るペースをぜんぜん速められませんでした。だけれども、あぁこの作品はあの人が作ったんだよな、ここで参加者の方とこんな話をしたな、とこんなに愛着を感じた展覧会は初めてで、とても心が温まりました。
「藝大生と来場者を繋げるような何かが出来ないか」という想いから始まったこのプログラム。たくさんの繋がりを生んでくれたのではないかと思います。
執筆:宮本ひとみ(アート・コミュニケータ「とびラー」)
ひよっことびラー気分でいたら、もう二年目。本郷で美にまつわる哲学を考えたり、上野でアートとのわくわくする関わり方を探したり。
2018.02.02