東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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【開催報告】出会いが広がる探検TURN!

2021年8月17日火曜日から19日木曜日までの3日間、東京都美術館の第1・第2公募展示室で開催された「TURNフェス6」において、とびらプロジェクトで活動している「とびラー」と一般社団法人アプリシエイトアプローチ(アププ)※1の上田と大川の進行で、来場者と一緒に鑑賞するプログラム「出会いが広がる探検TURN!」を実施しました。

期間中はとても暑い毎日で、時には通り雨の後晴れ間に虹がかかる夏らしい空も広がっていました。3日間を通してのべ30名の方が参加しました。みなさん、ありがとうございました。

 

「出会いが広がる探検TURN!」とは、とびらプロジェクトで活動するアート・コミュニケータ(とびラー)と一緒に「TURNフェス6」を鑑賞し、発見した気づきや感想を共有しあう参加型プログラムです。東京都美術館の中にあるアートスタディルーム(ASR)に集合しグループに分かれてまずはご挨拶。探検のための特製の「地図」を受け取ったら、展示室ではひとりでじっくりと探検するように一人で鑑賞しました。地図には「仲良くなりたい作品や作家を発見してくる」と探検のテーマが書かれています。それぞれが地図とテーマをもって鑑賞したあと、再び集合してとびラーと一緒に展示室で発見したことについての感想を共有しました。

 

「TURNフェス6」の「TURN」(※2)とは、障害の有無、世代、性、国籍、住環境などの背景や習慣の違いを超えた多様な人々の出会いによる相互作用を、表現として生み出すアートプロジェクトの総称です。2015年、東京2020オリンピック・パラリンピックの文化プログラムを先導する東京都のリーディングプロジェクトの一つとして始動した後、2017年度より、東京2020公認文化オリンピアードとして実施しています。「TURNフェス」は「TURN交流プログラム」や「TURN LAND」を実施する多様なアーティストや交流先との活動が一堂に集まるフェスティバルです。作品展示やワークショップ、オリジナルプログラムなど様々なコンテンツを通じて体感できる場です。今年で6回目の開催となりました。

 

◆3日間の様子はこちら◆

▲親子で仲良く鑑賞。

 

◆1日目【8月17日<火曜日>15:00〜16:30】初日は参加者11名をとびラー8名で迎えました。高校生1名・中学生2名・小学生2名と子供たちが多く参加しました。

◆2日目【8月18日<水曜日>14:00〜15:30】参加者8名をとびラー6名で迎えました。参加者は大人7名に幼稚園児1名でした。

◆3日目【8月19日<木曜日>14:00〜15:30】最終日は、全員大人の参加者11名をとびラー8名で迎えました。

▲今から向かう展示の概要を聞いています

 ▲小さなグループ毎に簡単な自己紹介をしています

▲手旗信号を体験中!「ソーシャルディスタンスを確保しながらコミニュケーションをとる方法として、会場には手旗信号が用意された。PARC (パーク)(特定非営利活動法人アート・コミュニケーション推進機構)企画」

 

参加者のみなさんは、これまでにとびらプロジェクトの他のプログラムに参加したことがある方や東京藝術大学の履修証明プログラムDiversity on the Arts Project (通称:DOOR)の受講生、初めての参加の方々、親子での参加など様々で、中にはすでに一度会場を回ってから参加した方もいました。みなさんの集合した時のわくわくした表情が印象的でした。

 

 

▲興味のある作品のところで立ち止まり真剣に見入ってます。

 

 

展示室ではみなさん自由に移動しながら一つ一つの作品をじっくりと鑑賞していきます。作家さんとの会話を楽しむ方、じっくりゆっくりと会場を周り心に残る言葉を拾っている方など、それぞれに楽しんでいた様子です。90分のプログラムの中で展示室での鑑賞時間は50分ほどでしたが、どの方もしっかりと向き合って鑑賞していたので、みる時間がとても足りないという声が上がるほどでした。また、初めての方でもリラックスして参加者同士で和気あいあいと展示室を巡る姿も多く見られました。

 

▲展示室へ探検に入ります。「気まぐれ八百屋だんだんと野口竜平|だんだんひらき、だんだんつつみ」の展示エリアにて。

▲作品に触れて感じてみる。「TURNラボ」の展示エリアにて。

(左上)音声を聴きながら作品を空想してみる。「TURNラボ」の展示エリアにて。

(右上)体験型の展示、いろいろやってみる。一体なんだろう?「TURNラボ」の展示エリアにて。

(左下)キャプションから作家のメッセージを感じ取っているのでしょうか。

(右下)作家さんに説明を聞いたり。「TURNラボの展示エリアにてアーティストの富塚絵美さんと」

▲糸電話も体験してみます。聴こえるかな?「近くで話さなくてもコミニュケーションをとる方法として、会場には糸電話が用意された。 PARC (パーク)(特定非営利活動法人アート・コミュニケーション推進機構)企画」

(左)展示作品をじっくりと鑑賞「丸山素直|エベレスト・インターナショナル・スクール・ジャパンとの旅」

(右)TURNで発せられた言葉の数々が書かれた「TURN NOTE」。文章だけど音符?音が流れてくる不思議な展示。「井川丹|TURN NOTE」

▲世界中の人々が撮った月の写真。作家の渡辺さんに作品のお話を伺っています。「アイムヒア プロジェクト|渡辺 篤「同じ月を見た日」」

 

アートスタディルームに戻ってからの感想共有では活発な意見が交わされたり、いろんな気づきについて話したりとどの日も話が尽きない様子でした。展示をみて感じた思いを一生懸命言葉にしたりその言葉に他の参加者が耳を傾けたりしているシーンが各グループで繰り広げられ、充実した時間を共有している様子がとても楽しそうでした。

あるグループから出てきた「コミュニケーションのお風呂みたい」という言葉がTURNをとてもよく言い表せているようで、しっかりと鑑賞してきたことが言葉に現れていると思いました。また、他の方の話を聞いて自分が気付かなかった視点に気付き、もう一度見たいと、プログラム後に展示室へ戻る方もいて嬉しく思いました。

最終日、前日参加した親子がこの日も展示室を巡っているのを発見し、それもまた嬉しい気持ちになりました。

<参加者のみなさんからの感想をピックアップしてご紹介します。>

  • 気付きが非常に多く大変勉強になった
  • 見えない感動がみなさんの言葉で立ち上がってきました。
  • 自分と違う人の着眼点を学べて楽しかった。
  • 自分だけでは見過ごしてしまいそうなところに、きっかけや視線を向けることができ良かったです。

  • 聴くのはもちろん、話すのもその展示を自分の中でかみくだいて言葉をつむいだため、より解釈や見方が広がった。
  • 色々な作品があって楽しかった。「このオペラが見えない、、、」「手旗信号」が気になった。
  • とても久しぶりに「感覚」を感じたように思います。非日常だけどつながっているような、、、。つい頭が思考優位になってしまうので、私にとって大事な機会になりました。
  • おもしろすぎた♡すごかった

3日間のプログラムを実施できたことは、私たちにとって本当に良い経験となりました。今回のプログラムの内容について検討していく中で難しかったのはコロナ禍でコミュニケーションをとりながら鑑賞を深めるプログラムを実施する点でした。過去のプログラムのように、展示室で参加者ととびラーがゆっくりと作品を見ておしゃべりをしながら巡るわけにはいかず、展示室では一人で鑑賞をしてもらうこととなりました。この一人での体験をどうすれば深く感じる鑑賞体験にしてもらえるだろうかと思案しました。TURNフェスはキャプションでは伝わりきれないアーティストたちの想いもあることが多く、そのことを一人で巡ってもキャッチできるような仕掛けはないかと考えました。「一人で展示室をめぐる、、、楽しく巡ってほしいよね、、、TURNフェスって何が起こるかわからないジャングルって感じもあるね。」考えあぐねた末に「探検!」というワードが閃きました。というわけで、「探検」というワード、そして今回のTURN2021のテーマ「出会いが広がる」をかけ合わせ、ジャングルのような展示室を探検しながら、出会いが広がるといいなという思いで、プログラム名を「出会いが広がる探検TURN!」としました。

TURNフェスでは多様なアーティストとその交流先との活動が表現されています。探検する心で展示室を巡ると新たな出来事や人との出会いが広がるだけでなく、自分自身の気持ちと新たな出会いがあるかもしれません。そんな体験の場になるといいなぁと願いました。探検のためにはその目標となるテーマが必要です。そのテーマは鑑賞体験の場をより充実してもらうための大事な仕掛けとなっていて、テーマを共有する地図があるといいね。というアイデアから地図を用意したり、とびラーさん達はどんな風に参加者の探検を支えると良いかなど相談を重ねてプログラムを作っていきました。

 

「探検TURN!」の実施までにとびラーのみなさんとの準備会を2度開催しました。最初の準備会は8月9日の月曜日に行いました。開扉(カイピ)とびラー(※3)である私たちにとっては久しぶりのアートスタディルームでの活動ですし、現役とびラーの方々に初めて会うことに期待でドキドキしていました。とびラーさん達とプログラムの目的・内容・役割を共有するためには、本番同様のリハーサルを行った方がより理解が深まると考え、その日開催していた別の展覧会でトライアルも実施しました。その後、プログラムをより良い形で開催できるようにブラッシュアップを重ね、8月17日開催当日の朝にも準備会を行いました。みんなで会場をゆっくり周り、展示内容を理解したり会場の雰囲気を把握し動線を考えたり、参加者とどんなふうに巡ろうかとイメージを膨らませつつ、グループに分かれてお互いに意見を出し合いながら実施に向けた「作戦会議」を行いました。こうした準備会に加えて、「とびらプロジェクト」オリジナルのコミュニケーションツールである「掲示板」も利用して、当日までみなさんで話し合いが続きました。

たくさんのみなさんと協力しあって開催できたこのプログラム、参加者のみなさんが満足そうな笑顔で帰っていく姿にもホッとしましたが、それ以上にこのプログラムに関わって良かったと言ってくれたとびラーのみなさんの笑顔も忘れられない思い出となり、開扉とびラーの私たちにとっても忘れられない”出会いの広がった”夏になりました。

 

※1  一般社団法人アプリシエイトアプローチ(アププ)は3年間の任期を終えた(開扉カイピ)とびラーが中心となり、2018年に立ち上げられたアートコミュニケータによる活動団体。

※2『TURN』についての詳細は下記のウェブサイトをご覧ください。

https://turn-project.com

 

※3  開扉とびラー=3年間のとびらプロジェクトを任期満了したとびラー。とびラーが3年の任期を終えることを、「新しい扉を開く」意味を込めて、「開扉(カイピ)」と呼んでいます。

執筆:上田紗智子・大川よしえ(アートコミュニケータ「元とびラー」)

2021.08.19

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