2024.04.28
『とびdeラヂオぶ~☆』はとびラボです。
活動期間:2023年7月~2024年3月
頻度 :月に1~2回
■「とびLOVE#1」のゲスト・スタッフ越川さんととびラーで試聴する様子
■趣旨 美術館に興味のない人や足を運んだことのない人のきっかけをつくりたい。
( “すべての人に開かれた「アートへの入口」”に足をかけてほしい!)
■ラジオをツールとしたのはなぜ?
このとびラボは、「とびラーのなかでラジオをきく人が思っていたよりたくさんいたので、『ラジオとアートコミュニケーションをテーマに話してみたい』」というラジオの仕事に携わっているとびラーの思いがきっかけとなり始まりました。話していくなかで、ラジオは話し手と聞き手が1対1でつながるメディアであること。その強みを生かしラジオを通して 「東京都美術館の魅力を知ってもらいたい!」「東京都美術館に関わる様々な人の話や推しポイントを我々メンバーがききたい!知りたい!」ということになりました。
■これまでのラボの流れ
▼なりきり期…集まったメンバーで自身がラジオDJになったつもりで、好きな音楽を選曲し自己紹介。
また、ある日のラボでは「マティス展」が開催中だったので、マティスの作品をイメージして各々音楽を選曲してみました。そのようにしてみたことで、音楽とアートという組み合わせでできることについて話が膨らみました。
▼迷走期…ラジオを介してしたいこととは?となったとき「東京都美術館のミッションに立ち返ろう」「興味のある人は自ら情報を取得するけど、そうでもない人たちにも知ってもらうきっかけをつくりたい」「中高生の放送部と一緒になにかできないか?」など、思いばかりがどんどん膨らみ迷走してしまったのでスタッフに相談したところ、結局わたしたちは「ラジオ番組が作りたいんだ!」という明快な答えにたどり着きました。とはいえ、ラジオ番組を制作したことがないメンバーがほとんどだったので、どのような形で実現できるのか、録音や進行も試しながら、まずはとびラー同士で聞けるような番組を制作してみようということになりました。今回の企画の内容は①美術館に関わる様々な人(警備員さん、ショップ店員さん、来館者など)の話を聞きたい。②とびラー内コミュニケーションの活性に役立てたい。この点に関しては、約130人のとびラーそれぞれが様々な活動に取り組んでいるため、お互いが知り合うきっかけが意外と少ないと感じました。そこで、ラジオというメディアを通してとびラー同士がお互いを理解する機会を作りたい。そうすることで、とびラー同士のコミュニケーションがより活性化し、活動の幅が広がるのではないかと考えたのです。この思いを形にするべく始動しました。スタッフにも相談し、まずは身近なスタッフやとびラーに美術館についての話を聞くという、インタビュー番組の制作が決定しました。
▼制作実践期
方向性が決まり、さっそく「とびLOVE」というタイトルの番組制作にとりかかりました。この番組タイトルには、愛してやまない東京都美術館への思いを語ってほしい・聞きたいという意図をこめました。番組の長さは10分程度で、移動中やすきま時間に気軽に聞けるよう、また内容は、話してくれる人の人柄が少しでも伝わるものにしようと決めました。
制作過程…基本的にインタビュアーが話してみたい人に自ら依頼するところからスタートします。収録はハンドサイズのレコーダーを使用しました。ヘッドホンをつけて、音声がうまく録れているか音のバランスを確認しながらの作業です。初めての収録の時はドキドキでした。収録場所はとびラーの主な活動場所であるアートスタディルーム。初めのうちは部屋の静かな場所を選んでいましたが、進めていくにつれて同じ部屋でミーティングしている他のとびラーの声も番組のエッセンスとして収録するようになりました。
編集作業も、とびラーが担当。番組にはオープニングテーマやエンディングテーマもつけ、場面転換に使用する番組のタイトルを乗せた「ジングル」は、ギターを弾けるラボメンバーが作りました。また、番組タイトルをラボメンバーの子どもや、ゲスト出演者に言ってもらい、その声を乗せたバージョンのジングルも制作。様々な声が番組にいろどりを添えることになりました。出来上がった番組はラボメンバーで試聴し、カットしてもいい部分について話したりして最終的な番組の形に仕上げます。そして、とびラーには聞こえない・聞こえにくい仲間がいるので、文字でも番組の内容が楽しめる「文字版」を制作することにしました。番組の最終版が出来たところで文字起こしを行いそれをもとに文字版を制作します。文字版もラボメンバーで最終チェックをして完成です。完成した番組はダウンロードで聴取できるようデータをアップし、とびラー全員が聞けるようにお知らせをしました。
番組について…第2回目からはゲストにインタビューする人と、番組のオープニングとエンディングの案内役(ナビゲーター)を分けることにしました。そうすることでインタビュアーが変わっても番組の始まりと終わりをいつも同じ声でおとどけできるので番組自体の統一感がでました。また、全5回を通して共通していることはゲストの人となりが分かるインタビューだということです。いつも接しているスタッフがアートと関わることとなったきっかけや、とびラーがなぜとびらプロジェクトに応募しようと思ったのかについて触れることで、距離が縮まった感じがしたり、普通に接していただけでは触れられなかったかもしれない考えや思いを知ることができたりと毎回“驚きや感嘆、新しい発見”があるこのインタビューはとても個性豊かです。インタビュアー×ゲストの化学反応はもちろんですが、インタビュアーによって雰囲気が変わるのです。そして、録音に際しては、他のラボも開催中の部屋で協力してもらいながら実施。番組内でBGMのように様々な声が聞こえてくるのもとびラーの日常が感じられます。
文字版について…聞こえない・聞こえにくいとびラーとも番組の雰囲気や出演してくれたゲストについて共有したいという思いから、目でも楽しんでもらえるようにするため、ただの文字起こしではなく、収録時の様子を書き足したりしています。そうすることよって、聞こえるメンバーにも音だけでは伝わらない部分を伝える手段にもなりました。
番組を聴いたとびラーからの感想…番組ナビゲーターを担当したとびラーの口調のファンという人、「みんなの好きなことが集結してできている感じがいい」「(ゲストの)活動の様子や思いがきけてよかった」「文字版は、音だけでは伝わらなかったところまで知ることができる」などの声が寄せられています。聴いた・見た感想をきけるのもラボメンバー以外のとびラーが関心を寄せて支えてくれているからで、励みになっています。このやりとりがとびラー同士のコミュニケーションにもなっているはずです。
■『とびdeラヂオぶ~☆』は数多く存在するとびラボのなかのひとつのラボです。
我々とびラーが愛してやまないラブの対象・東京都美術館に来てみてほしい。そのきっかけになるようなことを発信したい!と思いつくままに意見を出し合い、膨らませ、想像してきました。たどり着いたのは、まずは身近な気になる仲間の美術館への思いを聞いてみようということでした。このラボを通してゲストの話をきけばきくほど、もっと他の人の話もききたい!という、ききたい欲が湧いてきました。
ラボメンバーからは「妄想から始まってだんだん具体的になって、これからどう発展するか楽しみ」「スタッフやとびラーの人となりをラジオを通してとびラー内に発信できたことで、親しみがわき接するときの心持ちが変化した」「番組を聴いて寄せられた感想を通して、出演してくれたとびラーだけでなく感想をくれたとびラーの人柄もわかった」「寄せてもらったメッセージからどんな思いで聴いてくれているのか想像をかきたてられ励みになった」という声があがっています。また、文字版については「全く予想していなかったが、その場の雰囲気まで伝えられるものになった」「聞こえない・聞こえにくいとびラーにも届けたいと考えて出来た文字版が、聞こえるとびラーにも音で伝わる以外の部分を感じてもらえることにつながった」「文字というのは形も音に通じるものがあると思う」「それぞれの人の持っている個性にあった文字があるように、番組らしいカラフルな文字版があると視覚的によりうまく伝わるのではないか」などの見解もでました。
番組も文字版もまだまだ可能性を秘めているとメンバー全員が感じているところですが、10期のとびラボメンバーが開扉するのを機にいったん解散。
スタッフ、とびラー仲間はもとより、その輪を広げて美術館に関わっている様々な人々に話をききたい。そして、知りたい、知らせたい。このラボを通して美術館と人とをつなげたい思いは広がっています。
・とびラブはつづく・・・。乞うご期待!!
執筆:
柴田 麻記(12期とびラー)
染谷 都(12期とびラー)
2024.04.27
【第2回基礎講座 「きく力」を身につける】
日時|2024年4月27日(土)10時~15時
場所|東京都美術館 交流棟2階 アートスタディルーム
講師|西村佳哲
内容|コミュニケーションの基本は、上手な話し方をするのではなく、話している相手に、本当に関心を持って「きく」ことから始まります。この回では、人の話を「きく力」について考えます。
・話を〈きかない〉とはどういうことか?
・話を〈きく〉とは? また、それによって生まれるものとは?
基礎講座の第2回は「きく力」がテーマでした。
この「きく力」はとびらプロジェクトが大切にしていることのひとつで、毎年1年目とびラーは西村さんのこの講座に参加します。
西村さんの挨拶や講座の進め方の話が終わると、早速「隣の人と2人組になって自己紹介してみましょう」「次は別の人と3人組になって自己紹介を!」と進み、13期とびラーたちの緊張がとけていく様子が伺えました。
いよいよ本題です。
まず西村さんから「きく力は、なぜ大事?」いう問いかけがあり、はなし手・きき手・観察の役割をローテーションしながら、いくつかのワークをグループでおこない、それぞれのきき方が相手に与えていた影響について語り合いました。
これらをふまえて、西村さんから「「きく」には【話の内容】に関心をある場合と【その人】に関心をもつ場合がある」という話がありました。
自分は普段どんなきき方をしているかを考えるきっかけになったとびラーも多かったようです。
午後は、午前のワークや話を、別の角度から捉えた話からスタートしました。
「事柄を正確に理解するのがひとの話をきくことだと思っている人が多いが、これは「きく」の一部。はなし手にとって言葉(概念)になっていないこと・気持ちもたっぷりある。そこに関心を向けることが、その人に関心を向け続けるということなのではないだろうか」と西村さんは語ります。
一文字も逃すまいとメモをとる人、うなずく人、西村さんの顔を見つめる人。とびラーそれぞれが西村さんの話に聞き入っていました。
さらに進んで「言葉の抽象性」について。
その言葉を使わないで説明するというワークを通して、同じ言葉でもそれぞれイメージしていること・ものが異なることを体験し、「意味や経験はひとりひとり違う」の理解を深めました。
最後に、とびらプロジェクト マネジャーの熊谷さんから、「とびらプロジェクトでは、お互いに関心を持ち合える関係性、ききあえる・はなしあえる関係性が大事だと思っています。それによって思ってもみてなかったようなアイディアが出てくる。そういうことを実践していくコミュニティにしていければと考えています」との話がありました。
この講座を受けたからといって、すぐにきく力がグーンッと高まったり、なぜきく力が大事か明確になったりすることはないかもしれません。
しかし何かしら「きく」について考えたのではないでしょうか。
13期とびラーには、ゆっくりじっくり自分のペースで、きく力を身につけていってもらえたらと思います。
(とびらプロジェクト コーディネータ 西見涼香)
2024.04.13
【第1回基礎講座 オリエンテーション】
日時|2024年4月13日(土)10時〜15時
場所|東京都美術館 交流棟2階 アートスタディルーム、東京藝術大学 美術学部 中央棟2階 第3・4講義室
51名の新しいとびラーを迎え、13年目のとびらプロジェクトがスタートしました。
基礎講座初回の午前は、とびラーの活動の拠点である東京都美術館アートスタディルームに13期のメンバーが集まり、活動に必要な情報のオリエンテーションや、2~3年目とびラーによる館内ツアーを行いました。
午後は東京藝大の講義室に11~13期とびラーと、東京藝大・東京都美術館のスタッフ全員が集合し、今年度のキックオフを行いました。
今年度も美術館を拠点にアートを介したコミュニティの輪を広げていきたいと思います。
13期とびラーのみなさん、これから3年間よろしくお願いします!
(とびらプロジェクトコーディネータ 越川さくら)
2024.03.27
日時|2023年7月31日(月)
・・・午前の部 ①10:30 ②10:50 ③11:10
・・・午後の部 ④13:00 ⑤13:20 ⑥13:40 ⑦15:00 ⑧15:20
場所|東京都美術館 アートスタディルーム
対象|18歳以下の方とその保護者
7月22日(土)から始まった『うえののそこから「はじまり、はじまり!」荒木珠奈 展』(以下、「はじまり展」)内で開催された「キッズ+U18デー」に合わせて、凹版ワークショップを開催しました。
「はじまり展」には「ケエジン※」という、不思議なキャラクターが潜んでいます。
このワークショップは、厚紙やプラスチックの板にニードルなどでケエジンを描き(製版)、描いた溝にインクを詰めて表面の余分なインクを拭き取り、プレス機で刷る、という凹版(おうはん)の手法を体験してもらうものです。
※荒木珠奈さんが同展覧会のために作られた《記憶のそこ》から生まれた精霊(キャラクター)。展覧会を案内する精霊として、展覧会場でのサインやポスターにちりばめられていました。
「はじまり展」には荒木さんの銅版画も多く展示されていました。銅版画というのは凹版の一種ですが、まずその仕組みを口で説明するのがなかなか難しく、一般の方が体験する機会もそれほど多くはありません。
理解してもらうには体験してもらうのが一番。とにかく体験してもらいたい! その体験を通して、キャラクターや展覧会に親しみを感じてもらえたり、作品への見方が深まったりするかもしれない、というのが企画をはじめた頃に考えていたことのひとつでした。
凹版についてのお話からスタート
ニードルを使って描きます
ゴムベラでインクをのせて、寒冷紗で拭き取ります
プレス機を回して…刷れた!
版と刷り上がった作品を台紙に貼って、完成!
「描く」「インクを詰めて拭き取る」「プレス機で刷る」という3つの工程を順に進み、最後はラッピングをして完成です。
参加された方の多くが、最初は緊張していた表情も、出来上がる頃にはすっかり笑顔になって「たのしかった!」と会場を後にしていく姿に、こちらがギフトをいただいたようなうれしい気持ちになりました。
海外から旅行中の方も参加されて、英語と中国語の翻訳にUDトーク(音声認識/自動翻訳アプリ)を活用する場面もありました。
終了後のアンケートコーナーでは、付箋に感想を書いてホワイトボードに貼ってもらうことにしました。たのしんで体験してもらえたことや、ケエジンを好きになってくれたことなどが伺えました。
当日は開始直前まで、お客さん来るかな? たのしんでもらえるかな? とドキドキしていた私たちとびラーでしたが、全8回、全ての回がほぼ満席となり、総勢64名以上の方が参加してくださいました。
LB階のエントランスで参加券を配布しました
今回使用した銅版用プレス機は、かつて荒木さんがワークショップで使っていたものです。十数年前に私が荒木さんから譲り受けたプレス機を持っていたことをきっかけに、15名のとびラーが集まってこの企画がスタートしました。前例のないワークショップでしたが、ひとりひとりが力を合わせ、手探りで試行錯誤を重ねて実現することができました。
同時期に開催していた「アート・コミュニケーション事業を体験する 2023展」 (7月29日(土)〜8月11日(金))の会場にも、このプレス機は展示されていました。
最後に
私がとびラーになった2021年は、コロナの真っ最中でした。出かけたり、人に会ったりすることにまだ制限がかかる日々でした。とびラー最後の3年目、ようやくたくさんの人に向けたプログラムが躊躇なくできるようになり、今回のワークショップを開催できたことは、とても幸運な巡り合わせだったなあ、とふりかえって感じました。
今回参加されたお子さんやご家族にとって、このワークショップが美術館でのたのしい思い出になっていたら、とてもうれしいです。
そしてまたいつか、どこかで版画に出会った時に、そういえば美術館であんな体験したなあ、と思い出してもらえる日が来ることを願っています。
執筆:
野口真弓(10期とびラー)
版画家。作品をつくりながら、「こどもとアート」をテーマに活動しています。自分一人でできることは限られているけれど、仲間と一緒だとこんなこともできちゃう。というのを体感したとびラー3年間でした。
2024.03.27
【ラボ実施の経緯】
とびラー11期の菊地と、とびラー10期の金城。
11期と10期で期が異なる私たち。
複数のとびラボで一緒に取り組む過程を経て、個性が違う私たちで一緒にラボを行ってみようという話になりました。
ラボを行うなら自分達も楽しく取り組みたいという想いから、「アートと自分達が好きなもの・得意なことを掛け合わせてラボを行ってみよう」と2人で話し合いました。
金城は化粧が好き。
菊地は歴史が好き。
化粧の歴史から見るアートの世界は、今までの自分達の見方とは異なる視点から、アート鑑賞に膨らみと広がりを与えるきっかけになるかもしれない。
そんな想いから、「化粧史×化粧師」ラボを企画・実施しました。
化粧史×化粧師ラボは、2部構成で進めました。
①化粧史:化粧とアートの歴史を参加者が調べてきて発表する時間。
②化粧師:化粧品業界でお勤めの方がおり、眉毛カットを体験する時間。
💄化粧史:アートと化粧の歴史を学ぶ💄
2回にわけて開催しました。
1回目は、菊地が、化粧とアートの歴史について参加者への講義を行いました。
1回目の集合写真
1回目はZOOMを併用し、遠隔でもラボに参加できる設計にしました。
2回目は、参加メンバーが各々「化粧とアートの歴史」について資料を作成。作成した資料を元に発表し合いました。
自分が興味を持った「化粧が印象に残るアート作品」について、参加者には歴史を背景として資料を作成してもらいました。
発表は1人あたりの持ち時間を決め、順番に行いました。
参加メンバーで2回目実施の際に作成した資料の一部を紹介します。
日本の化粧とアートの歴史から、世界の化粧とアートの歴史まで、幅広く見ていきました。
「化粧の歴史」に触れた後、歌川国貞の《今風化粧鏡》と、ロバート・フレデリック・ブルームの《化粧する芸者》の2作品を見てみました。
江戸時代は、首筋をたしなむという表現があったほど、うなじの色気に重きを置いていた印象。
絵師は斜め後ろから描き、鏡を通じて対象者を描く構図が多い。
歴史を知りアートを見ることで、その時代に定義された美しさに着目して鑑賞する新たな視点を得られました。
💄化粧師:性別を問わず、化粧に触れてみよう体験💄
化粧関係の仕事に携わっているアート・コミュニケータがいたので、性別問わず化粧に触れられる眉毛カットと眉毛プロポーションのレクチャーを行っていただきました。
男性も女性も、眉が整うと印象が変わりますね。
眉毛を整えてもらった後の方が、表情が明るくなった印象です。
化粧史×化粧師ラボを実施し、アートと別ジャンルの掛け合わせの可能性を感じました。
男性の参加者も数名おり、このラボ実施まで化粧の観点からアートを見たことがなかったとのこと。
性別によらないアートの見方を1つ体得したという感想もありました。
眉毛カットでは、第三者を通して装うことを楽しみました。
装うことは人の視線を意識する行為の意味合いもあり、眉毛カットの様子を見守られることは、まるで自分が作品となり鑑賞者から見られているようだ、との声もありました。
アートと自分が興味・関心のあることを掛け合わせると、新しいアートの見方と出会える。
日常で接するものとアートを掛け合わせると、新しい世界が芽吹くかもしれません。
このラボを実施し、化粧の歴史は深く、西洋と東洋で化粧への異なるアプローチの仕方が絵画に反映されていることに気づきました。
古代エジプトでは、瞼に塗る顔料は日差しから目を守る効果もあったとのこと。
「綺麗に装う」だけではなく、「その時代の実用性も兼ねる」という観点から化粧を見ると、歴史を知る、アートを見る楽しさが広がりました。
発表の場を設け、共有したからこそ発見できた楽しさでした。
自分が楽しいと思ったことを、発信していく。
やりたいと思ったことに対し、誰かが興味関心をよせてくれる場がとびらプロジェクトであると感じたラボでした。
2回目の集合写真
眉毛を整える企画があったため、全員活動場所に集合しました。
執筆:
とびらプロジェクトに参加して、美術館は作品を見るだけではなく、アートを通してつながるコミュニティスペースであることを知りました。より多くの方に、アートとつながりを楽しんでもらいたいです。
個人的に美術を楽しんできましたが、とびラーになり、皆で作品を見る楽しさに目覚めました。その楽しさを十分堪能するには、人の話を「じっくり聞く」ということが大切だということも教えてもらいました。(会社の会議に参加するたびに、全員、鑑賞実践講座で鍛える必要があるな、強く感じる日々です。)
2024.03.22
消しゴムはんこラボ。
消しゴムを彫ってはんこを作るラボ、と思われるかもしれませんがそれは活動の一部です。
作品を鑑賞してそれをモチーフにはんこを彫り、「障害のある方のための特別鑑賞会」の参加証送付用封筒に押し、参加証を封入し、特別鑑賞会でその封筒を展示して、来館者の方々に見て頂き、感想を聞くラボです。長いですね。
「障害のある方のための特別鑑賞会」とは障害のある方がより安心して鑑賞できるように、東京都美術館の特別展の休室日に開催する鑑賞会です。申込んだ人には参加証をお送りしていますが、よりウェルカムの気持ちをお伝えしたいと思い、特別展に関連するはんこを作成し、送付用の封筒に押して送付しています。
今年度は「マティス展」、「永遠の都ローマ展」、「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」で実施しました。
「マティス展」の特別鑑賞会の様子はコチラ
「永遠の都ローマ展」の特別鑑賞会の様子はコチラ
まずははんこのモチーフとなる作品を選びます。
展覧会で作品を鑑賞しながら、またはチラシや公式ホームページから彫りやすそうな、いえ、彫りたいと心が動く作品を選びます。
作品を選んだらどの部分を彫るのかデザインを決めます。
封筒に押すサイズは9×7cmです。これに収まるように縮小したり、一部分を切り取ったりします。
同じ作品でも切り取り箇所や表現に個性が現れます。
例えばチラシにも使われたこちらの作品。
同じ作品を元にしたのに、彫ったモチーフはこんなに違います。
このようにバリエーション豊かなはんこが出来ました。
そしてメインの彫り押し作業です。
初めて消しゴムはんこを彫る人も多かったですが、道具は100均でも揃えられ、
中学時代の彫刻刀を数十年ぶりに取り出す人もいました。
また道具を一度に揃えられない場合は、ラボのメンバーに借りて仕上げたりもしました。
線を彫るのか残すのか、どの線を生かすのか、おのおの作品と対話をしながら、黙々と彫り進めます。カニでも食べているのかと思うほどの無言の時間が流れます。彫っているところの写真はいつも頭頂部しか映りません。
彫り方はとびラー同士で教え合います。何期も前のとびラーから受け継がれている技もあります。事前にYouTubeの動画を観て勉強してくる人もいました。
彫れたらいよいよ封筒に押します。
図案を反転して彫っているので、押して初めてどんな作品かわかります。
また、インクの色や押し方でもイメージが変わります。
こうしてはんこの押された参加証送付用の封筒が完成しました。
様々なはんこができました。
並べると壮観です。
線そのものを彫る、線の周りを彫る、の違いや、一色で表したり、浮世絵のように色を重ねたり、同じモチーフでもこんなに違ったはんこになります。
違いを楽しむのも、消しゴムはんこの面白さです。
完成した封筒に参加証を入れる封入作業もスタッフと一緒に行っています。どんな方のお手元に届くのか、喜んでもらえるのか、どきどきしながら作業をします。
また、今年度から特別鑑賞会当日に消しゴムはんこを押した封筒の展示を行いました。
今まで参加証の封筒を受け取られた方から、押されたはんこについて「これは誰が彫っているの?」「みんな同じ絵柄なの?」「他にどんな絵柄があるの?」というお声を頂いたので、来館者の方々に消しゴムはんこを紹介しようとなったのです。
先ずは机上で展示のレイアウトを考えます。
その後、車椅子の方にも見やすいよう、目線を考慮して位置を調整していきます。
そして特別鑑賞会当日。
全ての封筒を展示したボードをアンケートコーナーに設置して、来館者を迎えました。
特別鑑賞会の申し込み方法は、Webフォームと、メール、はがきの3種類です。
メールとはがきで申し込んだ方には、参加証を封筒でお送りしますが、Webフォームで申し込んだ方は、参加証がメールで届くので、はんこが押された封筒の存在を知りません。8割以上の方がWebフォームからの申し込みなので、はんこが押された封筒をここで初めて見る方が大多数です。
また、封筒をお持ちの方も、他にどんな絵柄があるのか興味深げに見てくださいました。
封筒の絵柄や、モデルの実物の作品の感想を語ってくださったり、同じ作品でも彫る人によって表現の違いがあることに気付いてくださったり、多くの方が足を止めてくださいました。
今まで届いた封筒を全部取っておいている方、届いた封筒のはんこをイラストに描いてくれた方もいらっしゃって嬉しい驚きでした。
中には封筒が欲しいから次回はWebフォームではなく、はがきで申し込むと言う方もいらっしゃいました。嬉しい反面、時代に逆行して頂くのも気が引けるので、Webフォームで申し込んだ方には、封筒の代わりにはがきサイズの紙に押したはんこをランダムで1枚お土産として持って帰って頂きました。
裏返しにした紙を1枚引きます。どんな絵柄かは引いた後に表を見てからのお楽しみです。絵柄を見た方からは楽しげな歓声があがっていました。
消しゴムはんこラボは長く続いているラボですが、その時々で形を変えながら活動をしています。封筒の展示はコロナが明けた今年度から始めたことでしたが、今まで聞けなかった来館者の方たちの感想やお話を伺える貴重な機会となりました。
消しゴムなんて初めて彫るというとびラーも大勢参加してくれました。また、彫らなくてもボードの作成や封入作業に参加してくれたり、鑑賞会で来館者にボードの案内をしてくれるメンバーもいて、展示を盛り上げてくれました。
印刷かと見紛うほどの繊細なはんこを彫る人も、味がある太い線のはんこを彫る人も、彫らない人も、はんこを通じて作品と鑑賞者に向き合う。それが消しゴムはんこラボです。
美術館で作品を観た感動を何かに残したいと思ったそこのあなた、文章、模写の他に消しゴムはんこも一つの選択肢にぜひ加えてみてください。
執筆: 篠田綾子(10期とびラー)
超絶技を繰り出す人もいる消しゴムはんこラボで、初めての人も気後れせずに参加できるような大雑把なはんこを彫っています。上手くなくても楽しければいいんです。
2024.03.19
・「美術館でおしゃべりしましょう」「作品を誰かといっしょにみるって楽しい」そんな体験をお届けするプログラムを考えました。カジュアルで遊び心があって、自由で楽しい、素敵なひとときになるといいな。そうやって、はじめましての誰かと3人組になっての「おしゃべり鑑賞」という、新しい鑑賞のかたちが生まれました。
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【目的としたこと】
・その日に偶然出会った人とおしゃべりしながら鑑賞する出会いの体験や、一人で鑑賞するときとは違った他者の視点も味わって楽しんでもらうこと。さらに参加した方は、今度は誰かを誘って対話しながらの鑑賞を楽しむようになることを目的にしました。
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【プログラムの内容】
・その日出会った人(参加者)2名+とびラー1名が、3人1組になり、おしゃべりを楽しみながら作品を鑑賞します。参加者はプログラム前にくじにより分かれます。プログラムの時間は35分間です。
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・鑑賞する展覧会は、「上野アーティストプロジェクト2023 いのちをうつす ―菌類、植物、動物、人間」展(会期:2023年11月16日(木)~2024年1月8日(月・祝) 会場:ギャラリーA・C)。
・実施日は、11月24日(金)18時半~、12月15日(金)・20日(水)14時~、計3回を設定しました。
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【とびラーのファシリテーション】
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・初対面の方とおしゃべりしながら作品を楽しく鑑賞するにあたって、次のような工夫をしました。
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・・ファシリテータとなるとびラーは、参加者同士が安心して話せる場と対話できるようにきっかけを提供します。
・・作品選びは、とびラー自身がビビッときた作品、話のきっかけがたくさんある作品を、何回か展示室に足を運んで数点を選びます。
・・当日の出会いは、なごやかなおしゃべりから始めて、感じたこと、気がついたことを安心して話せるような雰囲気を心掛けます。一人一人の話をじっくり聞き、参加者同士がコミュニケーションを楽しめるような場を作るのがとびラーの役目です。
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・例えば、「今回参加したきっかけ」や「普段のアートとの関わり」など、参加者同士の身近な話題からおしゃべりをしました。場の雰囲気が和むことによって互いにコミュニケーションを取りやすくなり、作品鑑賞での会話もスムーズにできるようになります。
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・作品を見ることから出発して、おしゃべりの広がりを楽しみながらも、参加者のみんながそのポイントの鑑賞体験を共有できるように、いつも作品を見ることに戻る、そんな工夫も心がけました。
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・その一例として、作品を見た感想の言葉から「どこからそう思いました?」と問いかけて、作品の中のそのポイントをみんなで確認することで他の人にもその気づきを伝えます。そして「ここから何を感じますか?」と問いかけることで、同じところを見ても違う感じ方があることを発見します。
・また、「他にはいかがですか?」と他の発言を促したり、話題を変えたりすることで、参加者がより作品に近づき会話がはずむように工夫しました。
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【初日:11月24日(金)18時半~、参加者12名】
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・9月のキックオフから、メンバーのアイデアを結集しながらミーティング&トライアルを経てようやく形になったプログラム。待望の第1回を6チームで実施しました。参加者は最初にくじを引きます。偶然の出会いの演出にドキドキワクワクのひと時も、次第に打ち解けます。
・
・展示室のあちこちで、さまざまな楽しいおしゃべりが生まれました。
・
・作家・内山春雄氏のバードカービング(野鳥彫刻)の作品をよく見て、羽毛のやわらかな質感をイメージしたあと、同氏のタッチカービング(触れる野鳥彫刻)に触ってみると、想像と違って「固い!」ということに驚いて「彫刻だから当然ですよね」と3人で大笑い。そのことがきっかけで作品にグッと近づくことができたチーム。
・
・馬を被写体とした写真を撮影する今井壽恵氏のコーナーでは、人気の競走馬の《オグリキャップ黄色い光の中で》などの写真に足が止まる方が多く、予定していなかった作品の前でもおしゃべりが弾みました。
・参加者が作品の背景の描き方に興味を持っていることがわかると、作家・阿部知暁氏のゴリラが描かれた絵画のコーナーに移動して、特徴的な背景の話題に花を咲かせるチームもありました。
・
・みなさん、とてもリラックスして鑑賞しました。
・
【中日:12月15日(金)14時~、参加者10名】
・
・12月15日(金)第2回を5チームで実施しました。
・
・この日はキャンセルの方がいたため、当日参加の呼び込みをしました。チームが決まるまでの間にもとびラーからの展示についての問いかけから、参加者同士ので話が盛り上がり終始なごやな会話か進みました。
・
・作家・富田美穂氏のコーナーでは、実物大の牛の細密な絵に、「ゴツゴツしている」「生を感じる」と近寄ってみての驚きで盛り上がるチーム。
・
・バードカービングを鑑賞して、「ヤイロチョウの巣はどこにあるの?」「どうして巣をつくるの?」と巣の話題で盛り上がるチーム。
・「ヤンバルクイナって鳥なのに飛べないの?」「淡い首筋の色が不思議」と食い入るように作品に迫るチームなど、それぞれのチームで話に花が咲き、プログラム終了後に参加者同士でさらに鑑賞を続ける様子が見受けられました。
・
・
【千秋楽:12月20日(水)14時~、参加12名】
・
・ついに千秋楽、最終回の第3回を5チームで実施しました。
・
・この日は、東京都美術館年内最後の開館日であったので、公募棟の展示は全て14時で終了。館内も展示室内も静かでゆったりとした空間で、参加者の皆さんと作品を囲んで楽しくお話しできました。
・今回もいろんなエピソードが生まれました。
・最初は緊張していた参加者も鑑賞前の会話に時間をかけると、作品を前にしたときにワクワク感が発露して、参加者同士での会話がとても深まりました。
・会話が弾むのは、生き物の多彩なリアルな表現に触れたときです。写真にはありませんが、作家・辻永氏の花の写生のコーナーや作家・小林路子氏によるきのこを描いた作品のコーナーも、おしゃべりが弾みました。
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・3歳のお孫さんを連れて来られた参加者は、お孫さんを中心におしゃべり鑑賞をしたところ、大人では気づかないような様々な視点から意見を教えてくれました。また内山春雄氏のタッチカービング(触れる野鳥彫刻)のコーナーでは鳥の鳴き声を全部聞いて回りました。高周波の鳥の鳴き声は、お孫さんだけが聞き取れて、みんなでびっくりしました。
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【参加した方々の感想など】
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〜参加者アンケート(11月24日・12月15日・12月20日実施、回答数33名)の結果から〜
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・自由記述欄に参加された方の全員が感想を書いてくださり、たくさんの前向きな感想がありました。それらの一部を紹介します。
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・そして、アンケートの結果では、「プログラムの満足度」、「初対面の方とのおしゃべり鑑賞」、「プログラムで鑑賞した作品」の項目で「とても良かった」「良かった」の回答が9割を越えて、総じて好評価を得られました。
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・上野アーティストプロジェクト2023「いのちをうつすー菌類、植物、動物、人間ー」展は、身近な題材で老若男女誰でも親しむことができ、多様な表現が鑑賞できる展覧会であり、このプログラムとの相性がとても良いと企画段階から想定していました。
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・ファシリテータは、プログラム前に何回も会場に足を運んで鑑賞する作品を選びました。また、選んだ作品を徹底的にして観察して、鑑賞の話題づくりなどの準備を行いました。
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・プログラムの設計としては、特に「初対面の人」とおしゃべりしながら鑑賞する、というコンセプトも功を奏したと言えるでしょう。知らない人同士だからこそ率直に言葉にすることができるのかもしれません。
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・作品の前で語り合っていると、そこにあたたかい空間が生まれ、作品も生き生きとして見えてきます。人も作品も美術館も「いきている」「いのち」を感じる、そんなプログラムだったのではないでしょうか。
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【実施までをふりかえって】
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・コロナ禍が一定程度収束して、複数でおしゃべりしながら鑑賞することができるようになりました。とびらプロジェクトでも、鑑賞実践講座の「鑑賞ピクニック」という複数人で美術館をたずねる課題や、夏には「ダイアローグ・ナイト with とびラー」という複数人で対話しながら鑑賞するプログラムが実施されました。こうした楽しさをぜひ多くの方に味わっていただきたいし自分たちも楽しみたい、との思いで2023年8月29日(火)に「このゆびとまれ」と呼びかけました。呼びかけに23人が集まってスタートしました。
・秋は、とびラボが目白押しで、複数のとびラボにそれぞれ関わっているとびラーの予定を調整し、ミーティングやリハーサル、さらには本番の日程を決めるのに一苦労でした。企画内容もオンラインのミーティングツールを使うなど集まれる人で検討を進めました。その甲斐もあって、いたってシンプルでわかりやすい企画になったと思います。ミーティングは6回、リハーサルは2回、そして本番へ。ふりかえりの会は、12月20日(金)プログラム最終回の後に行いました。
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・このラボは、良い意味での「いいかげん」さがあって、メンバー各自の裁量に委ねる部分が多く、自由でおおらかに進みました。その分、当日の急なキャンセルにも呼び込みをしたり、コースを柔軟に変更したりなど臨機応変に動くことができました。ラボメンバーの皆さんからはやって良かった、とても楽しかったとの声が寄せられました。
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・プログラムにご参加いただいた方々、いっしょに駆け抜けてくださったスタッフの皆さま、そしてラボメンバーみんなに感謝します。
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・解散! また、お会いできる日を!
執筆:
藤牧功太郎(とびラー10期)
新しいこと、楽しいことが大好き。ARTの自由さを愛しています。「つながり」を「つなげる」ことに興味あり。社会教育の仕事にも活かしたいです。
2024.02.25
日時|2月25日(日)13:30〜16:00
場所|東京都美術館 ASR・スタジオ
講師|小牟田 悠介
テーマ|「1年間のふりかえり」
これまでの講座の内容と、その講座を受けたとびラーからのふりかえりを紹介し、グループでシェアしました。
講座の内容についてふりかえった後は、講座で扱ったテーマ以外で
「ミュージアムにアクセスすることが難しい人たちって?」をテーマに話し合いました。
とびラーからのふりかえりを抜粋します。
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・この一年間受講してみていかに自分は狭い視野だったんだろう、社会知らずだったのだろうと打ちのめされました。無自覚な接し方を少しでも減らしてアートを楽しんでもらえるようとびラー活動に活かしたいです。
・障害への差別意識はないと思い込んでいたが、それよりもどんな困り事があるのかを「知ること」のほうが大事だと感じた。 これまでも漠然と思っていたが、この講座で具体的な足掛かりができ、自分ができることから関わっていきたいと思うようになった。
・大変気づきの多い時間となりました。また、これらの問題解決のために様々な支援を行っている方の活動も知ることができました。現状を受け止めて常に意識していかないと何も変わっていきません。これから何に取り組もうか、目指す方向性が見つかったことも大きな収穫となりました。
・毎回受講する毎にアクセシビリティに関する現状を知り、驚きでした。時間の経過とともにそれも薄れていく中で、1年をふりかえる時間は貴重でした。頭の片隅にでもアクセシビリティを意識していないと、情報を見逃したり、忘れてしまいがちだと思います。
・知的障がいを持つ方たちと街に出るとき、私はとても周囲に気を使います。一般社会への気配りは裏を返せば、一般社会側が「障がい者」を受け入れていないと感じているためだと思います。しかし今回、教室の一番後ろの席から1年間の振り返りを聞いていた時、「少なくとも私の前に座っている人たちは、もし私たちが外に出て困っていたら手を差し伸べたり、温かく見守ってくれる人たちなんだ」と思ったと瞬間、とてつもない安心感と喜びが沸き上がりました。こんなに沢山の「味方」がいるんだと思いました。 こんなにたくさんの「味方」を目の当たりにできたこと、本当にうれしく思っています。
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1年間、お疲れ様でした!
(とびらプロジェクト コーディネータ 工藤 阿貴)
2024.02.17
第7回建築実践講座|「ふりかえり」
日時|2024年2月17日(土)14:00〜17:00
会場|ASR・スタジオ
いよいよ最終回。
まず、初回から前回までの講座の内容をふりかえり、
次に、年間課題である「建築を、みる、楽しむ、伝える」を実践した内容を、グループ内でシェアしました。
課題は、
<目的>「誰かとみる」を楽しむ
<内容>東京都美術館以外の建築ツアーに参加する、
建築関連のイベントに参加するなど、 誰かと建築を楽しもう。楽しんだ後はホワイトボードで他のとびラ ーにも体験をシェアしよう。
というもの。とびラー同士で誘い合いながら、またはそれぞれ旅先で、または友人を誘うなど、様々な方法で誰かと建築を楽しみました。
各々スマートフォン・タブレットで撮った写真や現地でもらったパンフレットなどの資料を見せながら、見学した建物や参加したツアーについて熱く語りあいました。
その後、東京都美術館の「とびラーによる建築ツアー」で、すでにガイドを務めているとびラー10名によるツアーを行いました。
この「とびラーによる建築ツアー」は年間6回、各回定員30名で実施されており、大変好評をいただいているツアーです。
とびラーになる前に参加した人もいますが、多くはこのツアーを体験していません。
実際にどのように行われているのか、何を感じるのか、とびラーならではの場づくりはどのようなものなのかをそれぞれが意識しながら参加し、
ツアー終了後はふりかえりを行いました。
今年度の締めくくりに3人組でシェアしたのは、「これからアート・コミュニケータとして人々をつなぐ場をデザインするために、これからどのような行動をおこしたいか」です。
とびラーからのふりかえりを抜粋します。
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・1年間の講座に共通して感じたことは、建築はその建物だけでは成り立たないということ。そこには必ず人が存在しているということ。鑑賞する際には、その建物の設立された背景や使っている人の営みの積み重ねがあり、現在の姿があることを意識したいと思った。
・建築をよく見て考えてシェアするには、他の人と安心して過ごしつつ集中できる場作りが必要で、そのためにとびラーの役割があると改めて感じた。
・東京都美術館の資源を活用して、同じ経験がここでも生まれていて「自分の感覚を手掛かりにすること」、今まさにこの場所に繋がっている。 建物を楽しい、と、思った「発見」を大切に、同じように参加者の方、鑑賞者の方へ伝えたい思いが更に増している。
・建築講座を一年受講してみて、とても愛に満ちた講座だなと思いました。色んな方の愛の形を見せてもらった気がします。
・今年の建築講座の仕立ては、みんなで建物を見る楽しさを体感する機会の創出、その経験の中で自分は何を推したいのかが徐々に明確になっていくプロセスが良かったと思います。知識の引き出しに関しても、先生方の講座で十分すぎるくらいにご提供いただけました。そもそも、知らないものは推せないし、知りたくなった時に取りにいけるので。
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例えば、東京都美術館のひとつひとつのディテールが、誰に、どんな思いで使って欲しいかを考えられてそこにあるのかがわかると、愛着がどんどん増します。
その良さや感動を自分だけのものにするのではなくて、誰かに共有することで、大切に思ってくれる人が増え、その建築がこれからも使われ続けることにつながります。
建築を物理的・構造的に見るだけではなく、そこに人がどう関わるのかをデザインした人がいて、利用する人がいて、今も大切にされているということ。
そこにとびラー(アート・コミュニケータ)がいることでさらに何かが生まれること。
とびラーには、開扉した後もそれぞれの場所で建築を介したコミュニケーションの場を作っていって欲しいと願っています。
1年間、お疲れ様でした!
(とびらプロジェクト コーディネータ 工藤阿貴)
2024.02.13
日時|2024年2月13日(火)10時〜16時
展覧会|印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵(会期:2024年1月27日(土)~4月7日(日))
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・東京都美術館で開催された「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展にて、「障害のある方のための特別鑑賞会」を実施しました。この鑑賞会は、障害のある方がより安心して鑑賞できるよう、特別展の休室日に事前申込制で開催しているものです。
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・当日は、障害のある方やその介助者770名以上が東京都美術館を訪れ、これまで日本で紹介される機会の少なかったアメリカ印象派の魅力に触れていました。
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・来場者を迎えるのは、アート・コミュニケータです。とびらプロジェクトで活動中のとびラーや、3年の任期を満了したアート・コミュニケータも数多く参加し、受付や展示室内など、館内の様々な場所で来場者のサポートをしました。
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・普段は混雑することもある展示室。
・この日は、事前申込・定員制のため、移動や混雑した状況に不安のある方にも、より安全にゆったりと展覧会をご覧いただくことができます。
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・来場者は、同行した介助者やアート・コミュニケータとのお話を楽しみながら、展示室でゆったりとした時間を過ごしていました。
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・とびラーの発案で、作品が見えにくい方のために、作品画像を拡大して見られるタブレットも用意されました。
・拡大してさらに作品の良さが見えてくることで、来場者とアート・コミュニケータの会話にもぐんと熱が入ります。気がつくと、一緒にタブレットを覗き込んでいた人同士のコミュニケーションも生まれていました。
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・とびラーが毎回の特別鑑賞会用にデザインしている案内状封筒の展示も行いました。今回のウスター美術館展でも、ウスター美術館展の作品を題材にしたさまざまな消しゴムハンコ作品が封筒を彩りました。
・実際に消しゴムはんこを彫ったとびラーと、封筒を受け取った来場者も、話に花を咲かせていました。
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・アート・コミュニケータは、車でお越しの方の待ち時間や、エレベータやエスカレータに乗り降りする場面など、美術館の様々な場所で来場者を見守ります。
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・来場者の美術館での時間がより思い出深いものになるように、ちいさなコミュニケーションを大切にしながら館内のあらゆる場所でサポートしました。
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・次の鑑賞会でもみなさまにお会いできるのを、アート・コミュニケータ一同楽しみにしています。