東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

【とびラボ活動報告】「とびdeラヂオぶ〜☆@AC展2025」前編(ラジオ収録編)

2025.08.10

 

<美術館ラジオをやりたい!>

2023年7月からメンバー、形を変えながらとびラボとして活動している「とびdeラヂオぶ〜☆」(以下:ラヂオぶ)。このネーミングは、東京都美術館(以下:都美)のラジオ部!として音声コンテンツを届けたい!という気持ちと、Museum Startあいうえのでお馴染みの、上野公園の9つの文化施設の頭文字を合わせた呪文「ビビハドトカダブ」をちょっとだけもじったというもの!1年目はとびらプロジェクトのスタッフやとびラーのインタビュー番組を作り、自分たちのコミュニケーションを活発にするツールとして楽しみました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*お決まりポーズ、ラヂオぶの「ラ!」

やりたいことの1つだったのがTV番組「病院ラジオ」の美術館版、来館者の声を届ける「美術館ラジオ」でした。それに近いことができたのが2024年度に制作した番組「ずっとアートと生きていくラヂオ」

そして今年度は、『アート・コミュニケーション事業を体験する 2025 みること、つくること、つながること 「Museum Start あいうえの」12年と現在地』(以下:AC展)の展示室の一角に、即席ラジオブースを構えて、来館者のインタビュー収録をして制作した「みること、つくること、つながることラヂオ」。我々が軸にしてきた「美術館にあまりこない人にも美術館の良さを知ってもらいたい!来館者のアートにまつわる素敵なエピソードをシェアしたい!」という想いから、より拡散可能なポッドキャストへの音声公開をイメージしながらスタートしました。

*収録テスト中。奥にいる3人はわざと会話したりノイズを出したり。

 

<待望のマイクがきた!>

前回はボイスレコーダーをテーブルに置いて収録しましたが、周囲の音が入ってしまい聞き取りづらい部分があったことが課題でした。そこで、今回は新しいマイクを使って、参加者の声がしっかりと収録できるようにしました。事前の動作チェックでは、マイクの指向性を変えながら周囲の音がどれだけ入って来るのか確認しました。ちょっとレトロなフォルムのマイクにワクワクしながらのテスト収録でした。

<AC展の会場でインタビュー>

AC展では、3組の作家(森友紀恵、三輪途道、がかのか族(幸田千依と加茂昂とその息子)の作品が展示されており、後半のスペースには、私たちが参加するアート・コミュニケーション事業「とびらプロジェクト」や「Museum Start あいうえの」の歩みを知ることができる資料や映像も公開されていました。

8月9日・10日の2日間で展覧会の出口付近の机に、マイクとPOPを設置したブースをつくりインタビューを実施しました。

帰り際に興味を持ってくれた方や、作品や資料を鑑賞中に声がけをして、承諾してくれた方々の生の声を、ラヂオぶのブースにて収録しました。

インタビューの収録は基本的に、メインインタビュアー1人とメモ係1人の2人体制で臨みました。話が白熱して、テーブルのそばで聞いていた人から過去の展示内容について質問が飛んでくることもあり、スタッフがその場に加わって話してくれることもありました。

インタビューでは友人や、親子、一人で訪れた方やITや教育関連のお仕事をされている方、リタイア世代の方など様々な背景の人と出会いました。

父親と来ていた5歳のこどもは、がかのか族の展示室の一角で描いた絵の話をしてくれました。描いた絵を美術館に展示することができたのに持って帰ることを選んだそうです。「どうして?」と聞くと「ママがまだ見てないから持って帰る〜」と、アートでつながる家族の様子をうかがうことができました。

 

<インタビューを行ってみた感想(藤井)>

よく上野公園に散歩に来るという中国人留学生のインタビューが印象的でした。物腰が柔らかい方でした。

聞くところによると前日にも都美に足を運んでいたそうです。

自分は繊細で友人があまり多くないが人と話すこと自体は好きで、美術館に来ると自分と同じ世界の人がいっぱいいる、と語ってくれました。

その後、別の日に偶然彼と都美であいさつを交わす機会がありました。日本という異国の地で自分が心地いい居場所、つながることを見つけたのかもしれないと感じました。

改めて、美術館という場所がもたらす効果・多種多様な人々を受け入れる裾野の広さについて考えることができました。

 

 

<インタビューを行ってみた感想(柴田)>

中途失明の方へのインタビューでは、これからもアート・コミュニケータとして活動していくうえで大切にしておきたいことに気づかされました。会場内でガイドさんととても熱心に会話を交わしながら作品をみている様子を見て、私たちは「話しかけないほうがいいのではないか」と、自分たちなりの判断をしてしまったのです。ところが感想を伺うと、男性は「何人かの話を聞くことで作品の解像度が上がるので、いろいろな人の話を聞いてから、みたかった」と話してくれました。アート・コミュニケータとして会場にいるからこそ、まずは声をかけ、コミュニケーションを始めてみること。その大切さを、あらためて教えてもらった出来事でした。

<インタビューをふりかえって(藤井)

ラヂオぶの活動を通して、美術館に足を運ぶ人の多種多様さを肌で感じることができました。

こうして「多種多様」と言葉にするだけでは、こぼれ落ちてしまう個人個人の美術館への想いや過ごし方。そして、これまでの人生。そんな個別具体の生に対峙できたことが、何より貴重でやりがいに溢れる経験だったなと、ブログを書き振り返りながら、改めて思いました。

自分と同じ世界の仲間たちを見つけ足しげく美術館に通う人。記憶を辿りながら、ものを作ることが生きる力になると語る人。暮らしの中でスケッチすることが好きな人。娘を初めての美術館に連れて来たことを喜ぶ人。エンジニアにはアーティスト的な発想が必要だと力説する人。名前も知らない者同士が、ゆるやかにつながれる居場所づくりに取り組む人。など

あえて大袈裟にいうならば、

ラジオは、個々人の生き様や心の機微をこぼすことなくすくい上げ、映し出すことのできる、最も適したメディアの一つなのではないか、と感じました。

大きなメディアでは取り上げられにくく、またSNS上では声の大きな人の意見が先行しがちななかで、そうした声はなかなか見えてきません。

私たちが制作した音源も、そのような市民の「声」を届けるラジオ番組の一つとなれていることを、切に願っています!

 

<まとめ>

メンバーや形態を変えながら積み重ねてきたからこそたどり着いた「とびdeラヂオぶ〜☆@AC展2025」。実は、昨年から変化したことで、インタビューコーナーによい影響を与えたものがあります。冒頭でも紹介したように、新しく置き型のマイクを導入したことです。

これは質の良い音声を収録するためでしたが、マイクがあることで、2024年のAC展に比べて私たちが何をしているのかが伝わりやすくなり、来場者の方々も思いをより丁寧に話してくれたように感じます。

展示室の最後の一角に現れる“かたり場”は、ときに、たまたま居合わせた者同士が感想やアートへの思いを共有する場となり、ときに、自分の考えをアウトプットしたり整理したりする場にもなりました。また、一緒に来た人がどのように感じ、何を考えているのかを知るきっかけにもなっていました。

あるメンバーからは「収録をしなくても、こんな場が展示室の一角にあるっていいね」という声もあがりました。

AC展はラヂオぶにとって、来館した人たちととびラーが会場で直接コミュニケーションを交わすことができる場です。その中で生まれた思いや対話を“ラジオ”という音声コンテンツにのせて、来館したくてもできない・できなかった人や、アートには興味があっても美術館はハードルが高いと感じている人に向けて、会場の様子や訪れた人たちの感じ方を発信するのにぴったりな舞台となりました。

ぜひ「とびdeラヂオぶ〜☆@AC展2025」後編(ラジオ制作編)のブログもお楽しみください

 

執筆:藤井孝弘(とびラー14期)

普段はIT企業に勤務。仕事の傍らで、ジェネラティブ・アートを楽しむ日曜芸術家。

人と人とがそれぞれの「違い」を尊重し補い合いながら、一人ひとりが生きる喜びを実感できる社会の実現に、微力ながら貢献できればいいなぁという想いを胸に活動中。

 

執筆:柴田麻記(12期とびラー)

以前は、テレビ番組を制作していました。現在は、愉快な高校生と小学生と過ごす主婦。私のいちばん身近なコミュニティは家族です。とびラーで得た視点を日々の暮らしの中でこっそり使いながら実験中。実験範囲をじわりと広げているところです。

執筆/構成:染谷 都(12期とびラー)

ラヂオ番組制作ディレクター。旅と音楽と建築好き。藝大の森お世話隊でボランティア活動中。これからゼミ「上野の森と建築を考える」「『アートコミュニケータの建築鑑賞まちあるき』を考える」を実践中。その場が実在しなくても誰もが参加できるラジオ番組のようなココチいい場づくりをリアルで模索中。 

 

【開催報告】7月の「とびラーによる建築ツアー」

2025.08.01

日時  |2025年7月19日(土)
場所  |東京都美術館

参加者(事前申込)43名、とびラー21名

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日差しが強くなり、夏らしい天気の中で2025年度 第2回目の「とびラーによる建築ツアー」が実施されました。
館内だけでなく、中庭を歩いたりしながら東京都美術館を楽しみました。

この建築ツアーは、決まったコースはなく、それぞれのとびラーが考えたオリジナルのツアーです。

 

ガイドごとに、違ったツアーを体験することができます。
東京都美術館の魅力や新たな発見をしていただけたら嬉しいです。
……
次回の開催は9月20日(土)を予定しています。
みなさんのご参加を心より楽しみにしています。
*「とびラーによる建築ツアー」は、原則として、奇数月(5月、7月、9月、11月、1月、3月)の第3土曜日に開催しています。
詳細、お申し込みはこちらから。
(とびらプロジェクトコーディネータ 大東美穂)

【開催報告】障害のある方のための特別鑑賞会:「ミロ展」

2025.07.30


日時|2025年5月26日(月)10時〜16時
展覧会|ミロ展会期:2025年3月1日(土)〜7月6日(日)]


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東京都美術館で開催された「ミロ展」にて、「障害のある方のための特別鑑賞会」を実施しました。この鑑賞会は、障害のある方がより安心して鑑賞できるよう、特別展の休室日に事前申込制で開催しています。

鑑賞会当日には、障害のある方とその介助者約815名が東京都美術館を訪れ、スペイン出身の20世紀を代表する巨匠ジュアン・ミロ(1893~1983)の初期から晩年までの傑作の数々をゆっくりと鑑賞されていました。

参加者を迎えるのは、アート・コミュニケータです。とびらプロジェクトで活動中の「とびラー」やとびラーの3年の任期を満了したアート・コミュニケータが数多く参加しました。アート・コミュニケータは、受付で参加者をお迎えしたり、館内のエレベータの乗り降りをサポートしたり、展示室で鑑賞体験をサポートするなど、館内の様々な場所で活動しました。

展示室では、アート・コミュニケータと来館者の間に穏やかな対話が生まれていました。来館者それぞれの鑑賞のペースを見守りながら、ときに言葉や表情を交わす場面からは、「ともに作品を楽しむ」というアート・コミュニケータが生み出す鑑賞の場の魅力が育まれていたように感じます。


ミロの作品と言えばカラフルで大胆な作風が印象的ですが、今回の大回顧展では初期作品の緻密な描写や、スペイン内戦期の作品の暗い色調など、細部に注目すべき作品も多く並びました。そうした視覚情報を補うために活躍したのが「iPadラボ」のとびラーです。作品画像を、手元のiPadで拡大表示しながら説明を加えることで、より明確に細部の特徴を伝えることができました。

この日はのべ200名以上の来館者をiPadラボとびラーが対応し、多様なニーズに合わせた丁寧な鑑賞サポートが行われました。


さらに、前回の鑑賞会から引き続いて、視覚に障害のある方の鑑賞をサポートするための触図(しょくず)を用いた鑑賞サポートも行われました。触図とは、作品の構図やモチーフを凹凸のある線や点で立体的に表わした図版です。

来館者が触図の線や点を手指でたどりながら、アート・コミュニケータとの対話を通して作品を鑑賞しました。

触図を用いた鑑賞を体験された方からは、

「ミロのやさしい線も感じられる。勢いでなく、ゆっくり描いている感じがする。」
「ミロの描く星の形がわかったのが嬉しい。」
「月は触ってみるとふくよかな感じ。スマートな三日月より余裕を感じて好き。自分は全盲で、月や星など変わらないもの、永遠のもの、そこに希望を感じる。」

といった感想が寄せられ、作品への新たな親しみや喜びが生まれていました。

今回の触図の活用にあたっては、事前に「とびラボ」の活動の中で、とびラー同士が触図を実際に使いながら、「どのようにしたらより深い鑑賞ができるか」を探る時間を持ってきました。
活動を行ったとびラーは、以下のように振り返ります。

「触図を使ってより深い鑑賞をしていただくために、事前にとびラー同士で対話をしながら、自分たち自身の作品鑑賞の質を高めておくことが大事だと感じました。その効果もあり、来館者の方に良い鑑賞の時間を過ごしていただけたと思います」

※触図は、ミロ展の会期中に常時使用し、希望する方にスタッフが説明をしながら作品を鑑賞していました。

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次回は、2025年10月27日(月)、「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」展にて開催を予定しています。

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次の鑑賞会でもみなさまにお会いできるのを、アート・コミュニケータ一同楽しみにしています。

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(とびらプロジェクトコーディネータ 越川さくら)


「障害のある方のための特別鑑賞会」は、東京都美術館の特別展ごとに1回ずつ開催しています。
詳細、お申し込みはこちらからどうぞ:https://www.tobikan.jp/learn/accessprogram.html


2025鑑賞実践講座③|ファシリテーション基礎(2)

2025.07.21

 

 


 

第3回 鑑賞実践講座|ファシリテーション基礎(2)

日時|7月21日(月・祝)10:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))

 


 

7月21日(月・祝)、東京都美術館 アートスタディルームとスタジオにて、第3回鑑賞実践講座「ファシリテーション基礎(2)」を開催しました。講師は引き続き、三ツ木紀英さんとARDAコーチの皆さんです。

 

 

第3回は、第2回で体験したVTSをあらためて見直し、鑑賞の場で何が起きているのかを分析し、理解を深める回として構成されました。対話のプロセスから鑑賞の場で起こっていることの結果と、それが起こった原因を観察し、言語化することがこの回のテーマです。

 

講座の前半では、子どもたちとのVTSの映像を用いた分析を行いました。ファシリテータの問いかけや、参加者の発言のつながり方に注目しながら、対話がどのように展開していくのかをとびラーがそれぞれ観察しました。問いの順序や言葉の選び方が、鑑賞者の思考にどのような影響を与えているのかについて、具体的に考えていきます。

 

 

後半では、再びVTSの実践を行い、その後、グループで振り返りを行いました。ここでは、とびラーがファシリテータ・鑑賞者・観察者に分かれ、VTSの鑑賞の中で起こっていたことの観察から、その原因をグループで分析する形でふりかえりが行われました。

 

 

きこえにくい方の参加について、第2回から引き続き、自動文字化アプリとサングラス型モニターを使用しながら行いました。ただ、サングラス型のモニターは視界への負担が大きく疲れも出てきました。そのため、様子を見て手話通訳サポートしてもらいながら進めていきました。

 

第2回と第3回を通して、参加者はVTSを「やってみる」だけでなく、「考え、振り返り、次に生かす」ための視点を身につけていきます。このファシリテーション基礎(1)(2)は、今後の現場での実践に向けて、とびラー全体のVTSの知見を揃えるための重要な土台となりました。この後、講座事前準備や場づくり、作品選びへとつながる重要なステップとなりました。次回第4回では、実際の展示室で、実践の場を視野に入れた準備について学んでいきます。

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2025鑑賞実践講座②|ファシリテーション基礎(1)

2025.07.20

 

 


 

第2回 鑑賞実践講座|ファシリテーション基礎(1)

日時|7月20日(日)10:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))

 


 


7月20日(日)、東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオにて、第2回鑑賞実践講座「ファシリテーション基礎(1)」を開催しました。講師は三ツ木紀英さん(NPO法人 芸術資源開発機構)とARDAコーチの皆さんです。

 

 

第1回では、とびらプロジェクトが大切にしている鑑賞体験の全体像を共有しました。第2回・第3回は、その土台の上に立ち、Visual Thinking Strategies(ビジュアルシンキングストラテジーズ:複数の人で対話をしながら作品を鑑賞する手法。以下、VTS)を中心に、鑑賞の場をつくるファシリテーションの基礎を、体験と理論の両面から学ぶ回です。

 

第2回ではまず、ARDAコーチがファシリテーションを行い、グループで作品画像を鑑賞する体験から始めました。ここでは、2つの作品を60分かけてじっくりと鑑賞し、グループのなかで対話がどのように立ち上がるのか、グループ全体の鑑賞の深まりがどのように進むのかを体感しました。また、その体験をふりかえり、「VTSで作品をみることでどんな発見があった?」という問いで意見を交わしました。

 

次に、三ツ木さんがファシリテーションを行い、東京都美術館で開催予定の展覧会「アート・コミュニケーション事業を体験する 2025 みること、つくること、つながること「Museum Start あいうえの」12年と現在地(以下、AC展。会期 2025 年 7 月 31日(木)~8 月 10 日(日))」の出品作品の画像を用いてVTSを行いました。ここでは、8名の1年目のとびラーが鑑賞者、それ以外のとびラーが観察者役となりました。観察者役は、ファシリテータが行なっている声掛けや問い、態度などを観察し、鑑賞の場にファシリテーションのはたらきかけがどのように作用しているかを考えました。

 

 

 

 

続いて、VTSの基本的な考え方や構造についてレクチャーが行われました。VTSでは、作品をよく見ること、他者の発言に耳を傾けること、作品を見て感じたことの根拠を作品の中に見つけることを繰り返しながら、考えが重ねられていきます。こうしたプロセスがどのように鑑賞の面白さや思考の広がりにつながるのかを、実例を交えながら確認しました。

 

後半には、レクチャーの内容を踏まえた上で、もう一度別の作品で三ツ木さんのファシリテーションによるVTSの体験と観察を行いました。

これまでの体験と観察をふまえ、最後にとびラー全員が、小さな作品画像を使い、実際にVTSのファシリテーションにトライしてみました。実際にやってみるとファシリテーションはなかなか難しく、経験が必要であることを実感する時間となりました。

 

 

 

きこえにくい方の参加について、第2回からは、VTSの手法を用いた鑑賞で複数の人が言葉を交わす場面が増えてきます。そのため、対話の内容が、「なるべくリアルタイムで」「正確に」伝わるにはどうしたらよいのか、きこえない方といっしょに方法を考えました。当日は、手話通訳と音声の自動文字化アプリを併用してみることにしました。VTSをするときには、自動文字化アプリをサングラス型のモニターに投影し、作品に目を向けながら、発話者の言葉が文字化されたものを同時に見ることができるように工夫しました。また、全体へのレクチャーやグループでの振り返り等の場面では、手話通訳にもサポートしてもらいながら進めていきました。

 

 

第2回は、VTSで深まる鑑賞の面白さに触れながら、ファシリテーションとは何かを観察とレクチャーを通してつかむ回となりました。次回の第3回では、鑑賞の実践を振り返り言語化することで、ファシリテーションについての解像度をあげ、実践に向けて理解を深めていきます。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2025アクセス実践講座①|合理的配慮とは/社会共生について考える

2025.07.07

 


日時|2025年7月6日(日)10:00~12:00
場所|東京藝術大学 第1講義室
講師|稲庭彩和子/独立行政法人国立美術館国立アートリサーチセンター 主任研究員
小牟田悠介/東京藝術大学 特任准教授
工藤阿貴/東京都美術館 社会共生担当


 

2025年度アクセス実践講座の第1回は、合理的配慮と社会共生について考えました。

最初に、とびらプロジェクトマネジャーの小牟田さんから講座の趣旨や東京都美術館のミッションについてお話がありました。

 

 

その後、独立行政法人国立美術館国立アートリサーチセンター の稲庭さんから「合理的配慮」について、その背景となる美術館のアクセシビリティについての歴史と、近年の世界的な流れを踏まえて紹介していただきました。

合理的配慮とは、要望のある方に対して、建設的な対話によってアクセスするために必要な対応をすること。双方があらかじめ納得して、可能な対応を個別におこなうことであると伺いました。

合理的配慮のハンドブック」を参考に美術館での実際の例をもとに考えてました。

 

 

 

とびラーの中には、ろう者や難聴者、全盲の方がいます。
様々な人や環境で活動するとびラーにとって、当事者が困りごとを要望しやすい場をつくることが大事だと気づく講座になったのではないでしょうか。

 

後半は、東京都美術館 社会共生担当の工藤さんから社会共生とは何か、東京都美術館で取り組んでいる日本手話による動画作成や、美術館の利用に不安を感じる方に向けたソーシャルストーリーの作成、展覧会広報物に音声コードを導入。また、展覧会における触図の作成などの取り組みの紹介しました。

東京都美術館の取り組みを真剣に聞いているとびラーたちの姿が印象的でした。

 

 

最後の登壇者3名によるディスカッションでは、東京都美術館のアクセシビリティがここまで行われている背景には、多様なバックグラウンドを持つとびラーが活動する中で、「その人に何ができるか」を常に考え続けていることがあるのではないか、というお話がありました。また、あらためて社会共生の重要性についても考える時間となりました。

 

「合理的配慮」という言葉を聞くと難しく感じ、何をすればよいのかわからず身構えてしまうこともあります。しかし、とびらプロジェクトで日頃実践しているように、まずは気軽に声をかけることから始めてみたいと感じた講座でした。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 大東美穂)

 

2025アクセス実践講座②|きこえない・きこえにくい人

2025.07.07

 


日時|2025年7月6日(日)13:30〜15:30
場所|東京都美術館 講堂
講師|小野広祐/明晴学園 校長


日本で唯一日本手話と日本語、ろう文化と聴文化によるバイリンガル・バイカルチュラルろう教育を行っている私立ろう学校(特別支援学校)の明晴学園の校長小野広祐先生をお招きし、『ろう文化「ようこそ ろうの世界へ」』と題して、講座をお願いしました。

 

小野先生はNHK手話ニュース845 (月曜日担当)や週間手話ニュースなどでキャスターとしてテレビにも出演されています。

 

 

とびらプロジェクトではこれまでにも、難聴や手話話者のとびラーが所属していました。2022年度11期のとびラーに3名のろう、難聴の方が入りました。

現在では11期のとびラーが任期満了し、2025年度には4名のろう・難聴の方がとびラーになりました。今年度は12期〜14期のとびラーで活動がスタートしています。

日本手話は、日本語とは違う独自の文法体系を持つ少数言語の一つであることについては知らない人が多く、初めて受講するとびラーからは毎年驚きの声が上がります。

 

ろう者は生まれた時から視覚で情報を得ていて、手話による視覚言語で思考しています。そのため音を意識しなくてもきこえてくる聴者とろう者では思考スタイルも異なります。言語が違うと思考スタイルも異なるのです。

聞こえてくる音から周囲の状況を受けとっている聴者と違い、視覚で捉えることで認識するろう者は、みえないものは認識しないということになります。そのため、ろう者のコミュニケーションの特徴として、今の状況やこの後のこと、お互い決まったことも、その都度「確認」をします。聴者の文化を「察する文化」、ろう者の文化を「確認する文化」といったりもするそうです。この違いによって、聴者とろう者のコミュニケーションでは誤解やすれ違いが起こることがあります。小野先生の講座の中でも生活や教室で起こるエピソードが紹介されました。この違いをあらかじめ知っているだけで、お互いコミュニケーションを尊重して接することができます。

 

 

今年も小野先生のユーモアの交じる巧みなお話しで、音としては静かですが、賑やかで活気ある講義となりました。

 

「私たちが無意識に音で察していることにも今回の講義で改めて気付かされ、その点からもろう者にとっては察する文化が存在しないのだということにも驚き、とても納得できる内容だった。」

 

「ろう者は見えないことはないものとして扱う、というのは一見当然のようですが、つい聞こえる環境にいると抜けてしまう視点であり、自分の立場から捉え直せるよう具体例や例えを入れていただいて興味深いと思いました。」

 

「ろう者は言語的少数者であり、文化や思考の仕方が異なるだけで、決して「可哀想な人」ではないのだというメッセージから、ろう者へのイメージが変わるような感じがしました。マジョリティ側を前提とすることで、マイノリティ側に勝手に押しつけているイメージというのは、色々なところにあるのだろうと思いました。」

 

きこえの違いは人によって様々です。ろう、難聴と一言にいってもそのきこえ方にはっきりとした境界があるわけではないようです。それぞれの育ってきた環境によっても認識は異なります。

そのため、講座内容をベースとしながらも、私たちが今度出会うろう、難聴の方がどのようなきこえの状態か、どうするとコミュニケーションが取りやすいかは人それぞれだということも念頭に置かなければなりません。

 

 

この日、小野先生の講座の後には、とびラーが自発的に開催する「とびラボ」として14期として入った4名のろう、難聴者のとびラーによる発案で、4名それぞれの「きこえ」の違いについて、これから一緒に活動していくとびラーへ共有するラボが開かれました。60名近くのとびラーが参加しました。

 

参加したとびラーからは

「講座自体でもたくさんの学びがありましたが、講座の後の聴覚障害者の当事者による説明会でも4名それぞれの聞こえ方、背景、適当な配慮が違うことがさらによくわかりました。このような有意義な場を設けてくれた皆さんに感謝です。」

 

「「ろう」だけでなく中途失聴や難聴の方それぞれ違いがあるため、それについても知りたいと思いました。この日講義後の時間にあった14期の当事者の説明会で聞くことができてとてもよかったです!」

 

「これからとびラーとして、ろう者とどんな風に出会うことができるのか。早くコミュニケーションをとってみたいとワクワクしてきた。それまでに、少しでも日本手話を学んでみようと思う。」

「講座自体でもたくさんの学びがありましたが、講座の後の聴覚障害者の当事者による説明会でも4名それぞれの聞こえ方、背景、適当な配慮が違うことがさらによくわかりました。このような有意義な場を設けてくれた皆さんに感謝です。」

 

講座と合わせて理解が進み、さらに聴者が多いコミュニティにとって、一緒に活動をする仲間の状態をしっかりと確認できる時間となりました。小野先生もこのラボの最後まで同席し、共に活動を作っていくことを励ましてくださいました。

とびラーの日常の活動の中でもきこえの違いがある人が一緒に活動をつくっていくことについてこれから考えていきます。

夏にはMuseum Start あいうえののプログラムで聴者、ろう者、難聴者が一緒に美術館でプログラムを考える4日間のワークショップ「みるラボ:つながりをつなげる」を開催します。

とびラーの日常の活動の中でもきこえの違いがある人が一緒に活動をつくっていくことについてこれから考えていきます。

東京都美術館では手話による施設案内動画と、建築紹介動画を公開しています。

手話による施設案内動画

手話による建築紹介動画

建築紹介動画には小野先生も登場しています。こちらも併せてぜひご覧ください。

 

(とびらプロジェクト マネージャー  小牟田 悠介)

2025建築実践講座①|都美の建築と歴史と楽しみ方

2025.07.06


第1回建築実践講座|「都美の建築と歴史と楽しみ方」

日時|2025年7月5日(土) 10:00〜15:00
会場|AM:東京都美術館 講堂/PM:東京藝術大学 第3講義室
講師|河野佑美(東京都美術館 学芸員)


 

1925年に閉館した「旧館」の当時の様子や、1975年に「新館」として建設された東京都美術館の建設に至るまでの経緯など、東京都美術館の建物や歴史について、東京都美術館 学芸員の河野佑美さんにお話しいただきました。
また、建築ツアーが生まれた経緯や建築家ではない人がツアーを作り上げていくことについても、河野さんの経験を交えながら熱く語っていただきました。

「新館」建設にあたり、建築家として抜擢された前川國男。彼が東京都から与えられた、幾つものミッションを全てクリアして建てられた現在の東京都美術館にはたくさんの魅力があります。
そんな、東京都美術館の魅力を河野さんが撮影した写真を見て、お話を聞いて味わった後は、とびラー同士で東京都美術館のオススメポイントを紹介するシェアタイムを行いました。
自分のオススメポイントを他のとびラーと共有し、新たな見方や発見ができる時間となりました。
「初めて知った!」・「ここ私も好きな場所」・「同じ場所でも、時間と天気で見え方が違って見えるんです」と楽しそうにお話をしているとびラー達が印象的でした。

東京都美術館で実施している「とびラーによる建築ツアー」は、2012年のリニューアル時におこなった館内ツアーがきっかけで始まりました。
建築家が込めた想い、歴史、建物の色・デザインといった建築を楽しむポイントを切り口に、とびラーと対話しながら味わいます。
ガイドによって、ツアーの内容が変わるのも魅力の一つです。

そして午後は、「とびラーによる建築ツアー」を体験しました。
ガイド経験者のとびラーがガイドとなり、参加者のとびラーと都美館内を45分間で巡りました。
ツアーの後は、各チームごとにふりかえりをおこない、ツアーの感想や印象的だったことシェアしました。
今回、初めての建築ツアーに参加したとびラーは、「こんなに楽しいなんて!」・「45分があっという間だった」とお話ししていました。

最後に1日を通じての感想を共有して、私たちの拠点となる東京都美術館への関心を深めていきました。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 大東美穂)

 

基礎講座⑥|この指とまれ/そこに居合わせる人が全て式/解散設定

2025.07.05

 


 

【第6回基礎講座 この指とまれ/そこに居合わせる人が全て式/解散設定】
日時|2025年6月21日(土)10時~15時
場所|東京藝術大学 美術学部 中央棟2階 第3講義室
講師|西村佳哲
内容|とびラーは、自分たちの関心を寄せ合い、アイデアを共有し、プロセスを大事にしながら活動をつくります。この回では、小さく始めるプロジェクトのつくり方や、そこに集まった人みんなの力を活かした活動について学びます。また、活動のはじめ方だけではなく、終わり方のデザインについても理解を深めます。

 


 

基礎講座最終回は「とびらプロジェクトの活動の進め方」がテーマです。

 

特に、とびラーはこの後「とびラボ」というとびラー同士が自発的に開催するミーティングのことで、新しいプロジェクトの検討と発信が行われる場をつくっていきます。

 

そんな「とびラボ」の「はじめ方/すすめ方/おわり方」や「あり方」について考えました。

 

講義は西村さんと、とびらプロジェクト マネジャーの小牟田さんのクロストーク形式で進みました。

 

 

「この指とまれ式」

新しい活動のアイデアをひらめいたとびラーは掲示板で一緒に活動するとびラーを募集します。3人以上集まったら「とびラボ」のスタートです。

このはじまり方を「この指とまれ式」と呼んでいます。

 

西村さんや小牟田さんから

・適正人数(グループサイズ)を考えること

・指を立てた人、集まった人同士の想いや視点をよく確かめ合うこと

・成功を目的化しない、プロセスを大事にすること

の3つのポイントが伝えられました。

 

「人数が多いと感じたり、やりたいことが違っていたりしたら別のラボに分かれてもいい」というお話に「へえー」とうなずくとびラーもいました。

 

今回の基礎講座も講義の合間にペアで考えたことや疑問点について話し合う時間が多くあります。早速、「この指とまれ式」について活発に話し合いました。

 

 

「そこに居合わせる人が全て式」

「とびラボ」では集まった人同士の想いや視点を確かめ合ったあと、いまここで「やりたい・できる・やるべき」アイデアを生み出し育てていきます。

 

一般的な活動がやるべき事や問題点からアイデアが生まれ、必要な事を考えていくのに対して、「とびラボ」はそこにいる人からアイデアが生まれます。

 

西村さんの「今夜冷蔵庫にあるもので、なにか美味しいものをつくる」という例えに納得したとびラーも多かったのではないでしょうか。

 

 

また、「とびラボ」をすすめる上での新たな試みとして、ミーティングの最後に内容と過程についてふりかえる時間を設けることが西村さんから提案されました。

 

内容のふりかえりでは、決まったこと、重要なこと、まだ検討が要ることについてを、過程のふりかえりでは、ミーティングの進め方、進み方についてを話し合います。

 

実際に、今回の講座のここまでの過程をふりかえってみると、
「ペアで話し合う時間があることで疑問が共有できる、けど忙しい」
「1人じゃなくて2人のクロストーク形式だからわかりやすい」
など進め方について色々な意見が出ました。

 

14期にはきこえない・きこえにくいとびラーがいます。聞こえやコミュニケーションの方法はそれぞれ違うため、ミーティングの進め方も一様ではありません。全員がやりやすい方法をその場にいる全員でその都度考えることが大切であるという認識を共有しました。

 

「解散」

活動の目的を達成して成果をとびラー自身がふりかえることができたら、その「とびラボ」は解散します。

 

普段の生活で「終わらせること」を意識する機会はあまりないかもしれません。

「反省会にならないように」という小牟田さんの言葉を受け、「創造的な解散」とはどういうことか考えました。

 

 

とびラボ実践編

まず、西村さんから「アイデアとは、既にあるもののあたらしい組み合わせである」というお話があり、アイデアを紐解いてみるワークに移りました。

 

既存のアイデアは何が組み合わさったものなのか?

 

たとえば歌番組のように、それぞれ思いついた身の回りのアイデアを紐解き、自分の発見を楽しそうにシェアする様子が印象的でした。

 

 

続いて、とびらプロジェクト コーディネータの越川さんから過去の「とびラボ」の事例を聞きました。

 

アイデアが生まれ活動へとつながっていく過程を具体的にイメージすることができたのではないでしょうか。

 

 

全6回にわたる基礎講座、お疲れ様でした!

基礎講座を終えられた今、どのようなお気持ちでしょうか?

 

「よし、どんどん活動していくぞ!」という方もいれば、

「まだ全然わかんない、果たしてやっていけるのか、、、」という方もいらっしゃると思います。(こちらの方が多いかも?)

 

東京都美術館のミッションのもと、とびラー・都美スタッフ・藝大スタッフが一体となってとびらプロジェクトの活動をつくっていきましょう!

 

(とびらプロジェクト アシスタント 三原凜子)

 

【とびラボ活動報告】VTSを練習する!ラボ

2025.07.04

 

◆とびラボの「この指とまれ」~VTSを学んで~

とびらプロジェクトでは、とびラー向けに通年で3つの実践講座が開かれています。その一つ「鑑賞実践講座」では、複数の人がともに作品を鑑賞するためのコミュニケーションの場づくりの基本として、対話型美術鑑賞の手法の一つであるVTS(Visual Thinking Strategies)のファシリテーションを学びます。講座では、VTSをMuseum Start あいうえののプログラムなど、さまざまなとびラーの実践に活かすことを目的に、専任の講師による実演ととびラー同士のワークによって手法と理論を学び合います。

この鑑賞実践講座での1年間の学びを終え、ファシリテータとして実践をするなかで「これで鑑賞者の作品鑑賞は深まっているのかな?」という迷いが生まれました。その靄(もや)のような感覚を共有し、試行錯誤する場として、想いを同じくしたとびラーが集まって「VTSを練習する!」ラボがスタートしました。

 

◆キックオフ~ラボの目的の共有と練習方法について~

まずは、メンバーそれぞれのVTS実践に対する課題認識や想いを共有しました。

VTSを1年間学んだ2年目のとびラーからは「とにかくファシリテータとしての場数を増やして慣れたい」という声が多く聞かれました。

また、3年目のとびラーからは「VTSをもっと楽しみたい」「鑑賞の場ではファシリテータの力が大切。練習を積みたい」という声が聞かれました。

 

鑑賞実践講座を選択していないとびラーからは、「日程的に鑑賞実践講座を選択することが叶わなかったので、このとびラボで学びたい」という声もありました。

経験の段階はとびラーごとにそれぞれですが「VTSのファシリテーションを練習したい」という動機は共通していました。

こうした声を受け「とにかく練習する!」というラボの目的を共有しました。

 

練習方法は、グループワークをメインにして、必ず対話のふりかえりをすることにしました。

鑑賞作品は鑑賞実践講座で馴染みのある6作品を予めピックアップ。メンバー各自がラボ当日(練習日)までにファシリテーションする作品を決めて参加を表明します。これによって、練習の人数把握とグループ分け、タイムテーブル作成、というラボ運営に際しての準備作業をおこないました。


「V」「T」「S」を作っての撮影がお決まりのポーズになりました。

 

 

◆いざ、練習!~ふりかえりで得るもの~

計4日程4回の練習を実施しました。

各回の練習は、以下の要領で進め、その日参加したとびラー全員が必ず1回はファシリテータをしました。

・1グループ4~5人で、2~3グループを作ってのグループ練習。

・各グループ内で「ファシリテータ」「鑑賞者」「観察者(記録)」の役割を分担。

・役割を交替しながら「VTS(12分)+ふりかえり(7分)」を1セット。

・4~5(人数分)クールを実施。

 

ふりかえりの時間では観察者の記録を基に、グループで対話の流れを確認しながら、ファシリテータの声掛け・態度によって、対話がどのように進んでいったかを考察しました。

 

それにより、それぞれの役割に以下のような効果がありました。

・ファシリテータは、自身の課題をより明確に把握できる。

・鑑賞者は、ファシリテータの言葉や振る舞いが作品の鑑賞にどのように作用するのかを体験できる。

・観察者(記録)は、対話の流れを書き出すことで鑑賞の場を客観的に捉えることができる。

 

いずれも、多様な視点を持ち寄ることで、より良い鑑賞の場をつくるためのファシリテーションのヒントを得る時間になりました。

 

練習の様子。12分間で1作品を鑑賞。

 

ふりかえりの様子。対話の流れを確認。

 

◆スピンオフ~作品研究&練習会をふりかえる~

練習を重ねるうちに、メンバーは各自の課題をみつけ、具体的にその課題と向き合うことが多くなっていきました。そうしたなかで、「作品研究」(※)について、このとびラボで取り組む”スピンオフ回”も実施することになりました。

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※作品研究とは…VTSの場において、ファシリテータが鑑賞者の多様な意見を受けとめることを目的に、予め、ファシリテータ自身が作品を細部まで観察し、作品の特徴や鑑賞者の解釈を多角的に分析する作業。作品から感じたことを「客観的事実」と「主観的解釈」に分けて書き出し、グルーピングして小見出しをつけ、グループ同士の関係性について分析して、作品の全体像を把握すること。

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この「作品研究」は、通常はファシリテータが一人で取り組みます。このとびラボでは、作品研究を複数人でおこなうことで、自分一人では至らない発見や考えに触れ、これまでの各自の作品研究のやり方を見直す機会になりました。

 

また、この回では、各自がファシリテータとして鑑賞者と向き合うなかで生じたさまざまな課題感や想いを共有し、話し合う時間もありました。

・VTSでよく最初の問いかけに使われる「この作品の中で何が起こっている?」という質問だけではなく、作品によって相応しい問いをみつけるのがよいのではないか。

・ファシリテータは鑑賞者の話を受けとめる人、鑑賞者が作品と向き合う時間に伴走する人であるということ。

・ファシリテータも鑑賞者として作品に向き合う姿勢が大切。

等、様々な気づきをとびラー同士で共有していきました。

 

それらをまとめると、「作品研究はあくまでも目の前の鑑賞者の話を、ファシリテータがよくきくための準備。鑑賞の場では目の前の鑑賞者の話しに集中する。ファシリテータは鑑賞者の話をよくきき、対話を編集することも忘れずに。鑑賞者が作品と向き合って思考することの手助けをするのが役割」ということがわかりました。

 

グループで作品研究をして、発表しているところ。

 

グループでおこなった作品研究のシート。

 

◆とびラボの活動を通して

「参加した全員が必ず1回はファシリテータをする」というミッションの下、限られた時間内で活動するため、ラボ当日(練習日)は時間厳守が求められるハードさがありましたが、「少しでもVTSでの課題を克服するんだ!」というメンバーの情熱で練習に励んだ日々でした。目的を同じくする仲間同士で、忌憚のない建設的な対話によってフィードバックをもらいながら研鑽を積んだことで、「とにかく練習して慣れる」という目標の達成には近づくことができたのではないかと思います。

VTSでの対話型美術鑑賞の場は、一つとして同じことはありません。私たちは、鑑賞者との作品鑑賞は一期一会であることを知っているからこそ、ファシリテータとしてよりよい鑑賞の場を作るため、今後も、それぞれの実践のなかで試行錯誤を続けていきたいと思います。

 


 

執筆者:石井真理子(12期とびラー)

対話型美術鑑賞に興味があってとびラーになりました。VTSって簡単ではないのだな…と痛感。それでも、誰かと対話をしながら作品を鑑賞するのは楽しい。これからも、鑑賞者の声に耳を傾け続けたいです。

 

 

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