第4回建築実践講座|前川國男と東京都美術館
日時|2026年9月12日 (土) 14:00〜16:00
会場|東京都美術館 講堂
講師|早川典子(東京都庭園美術館 学芸員)
第4回建築実践講座では、東京都庭園美術館 学芸員の早川典子さんに講師としてお越しいただき、「前川國男と東京都美術館」をテーマにお話をしていただきました。

早川さんは、江戸東京たてもの園に勤務していた際、前川國男邸の復元を担当したことをきっかけに、前川國男について研究を始めました。
前川國男の建築を研究するとき、まず建物から入ることが多いなか、早川さんは、彼が実際にどのような暮らしをしていたのか、家族や事務所の関係者から話を聞くところから研究を始めたそうです。そうした経験から、建物だけでは見えてこない、 彼の人柄や、周囲の人との関係についても紹介してくださいました。
講座では、まず前川國男と上野との関わりから話が始まりました。
上野公園の歴史を振り返りながら、ル・コルビュジエが設計した国立西洋美術館や、前川國男が設計した東京文化会館など、上野にある建築をたどっていきます。
さまざまな建築を見ていくことで、前川國男が上野という場所とどのように関わってきたのか、そして、この場所にどのような建築をつくってきたのかが少しずつ見えてきます。
そして話は、東京都美術館へ。
早川さんは、東京都美術館に勤務していた経験もあり、設営や撤去に関わった経験を交えながら、建物の動線や展示室のつくられ方についても紹介しました。展示室ごとに入口が分かれていることや、作品の搬入・搬出を考えた動線など、普段、来館者として美術館を訪れるだけではなかなか意識しない部分にも、建物の工夫があることがわかります。
また、東京都美術館の特徴のひとつである、打ち込みタイルや斫りのコンクリートについても話が広がりました。
後半の質疑応答では、正門のタイルの色や配置について質問が出るなど、とびラーが普段から東京都美術館を歩くなかで感じていた疑問も飛び出しました。
そのなかで印象的だったのが、「触る」ということ。
早川さんは、江戸東京たてもの園にある前川國男邸の階段の手すりについて、人が気持ちよく触れられるよう、木の角が丁寧に取られていることを紹介しました。
東京都美術館の斫りや打ち込みタイルについても、目で見るだけでなく、素材の質感を実際に触って感じてみてほしいと話します。
建物を「見る」だけでなく、歩いたり、触れたり、音を聞いたりしながら味わってみる。
前川國男がどんな建物をつくったのかを知るだけでなく、そこに込められた工夫や、実際に建物を使う人へのまなざしを知ることで、いつも歩いている東京都美術館の見え方も少し変わってきます。
今回の講座をきっかけに、あらためて東京都美術館を歩いてみると、これまで気づかなかった「前川國男」の工夫が見つけられるかもしれません。
(とびらプロジェクトコーディネータ 大東美穂)
2026.09.13