東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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Archive for 8月 28th, 2026

2026.08.28

2026年4月から5月にかけて、「お気に入りの北欧美術・文化を共有しようラボ」を行いました。このラボは、2026年1月27日から4月12日まで開催された「スウェーデン絵画展 北欧の光、日常のかがやき」展(以下、スウェーデン絵画展)を観て北欧の美術への関心を深めた筆者が、「もっと多くの北欧の美術作品を知りたい!」と思いスタートしました。

ラボでは、北欧の美術や文化に興味を持つとびラーが集まり、それぞれのお気に入りをシェアしながら、北欧について視野を広げていきました。計3回行ったラボでは、毎回扱うテーマが異なっていたため、各回に分けてラボの内容をご紹介していきます!

〈ラボ1回目:北欧の美術・文化と自然の関わりについて〉

 

初回のラボでは、スウェーデン絵画展で展示された絵画をはじめ、北欧の文学作品、建築、照明、そして「オリエンテーリング」という北欧発祥のスポーツについての話題をとびラーでシェアしました。

「森の墓地」というスウェーデンにある自然と建築が調和している世界遺産周囲や、北欧の長く暗い冬を室内で心地よく暮らすための照明の工夫。さらに、自然の中のチェックポイントを巡るオリエンテーリングの魅力など、北欧の文化や美術が現地の自然環境と深く結びついていることを発見しました。

ラボ1回目に集まったとびラー

 

オリエンテーリングで使う地図をみんなで見ています

 

また、実際に自宅でデンマークの照明を使っているというとびラーからは、デンマークの照明の光はかなり暗いという実体験が共有されました。スウェーデン絵画展で展示されていた≪カードゲームの支度≫という室内画にも照明が描かれていますが、実際の室内は絵で描かれているよりも暗かったのではないか、という考察が出来たことが興味深かったです。

さらに、北欧発祥のスポーツであるオリエンテーリングの競技経験があるとびラーからは、北欧の森は地面の起伏が少ないため、オリエンテーリングがしやすいという現地ならではの話を聞きました。

ラボ終了後には、とびラーの数人でスウェーデン絵画展を鑑賞しました。ラボで話し合った内容を踏まえつつ、展示作品の室内や自然の描写について新たな視点から注目することが出来ました。

 

〈ラボ2回目:デザインからみる北欧の暮らしについて〉

 

2回目のラボでは、北欧の食器や家具、テキスタイル、料理や映画についてシェアしました。

デンマークでは「初任給でイスを買って長く使う」という習慣があることや、日光による家具の傷みを防ぐために北向きの部屋を好む人が多いということから、物を大切に使う北欧の人々の暮らしを知りました。

 

また、とびラーが持参してくれたフィンランドの食器やかばんなどを実際に手に取る時間もありました。どんな場面でも使いやすいシンプルな食器や、大胆ながらやさしい色使いのテキスタイルなど、日常に寄り添う北欧デザインの魅力を実感しました。

 

北欧のテキスタイルを紹介するとびラー

 

さらに、東京都美術館の美術情報室に置かれているイスがデンマーク製だったため、実際に座り、北欧の暮らしを想像しました。

〈ラボ3回目:北欧と日本の価値観、幸せについて〉

3回目のラボでは、北欧に関する漫画や絵本、映画などについてシェアしました。

あるとびラーがシェアした、アイスランドのジェンダー平等運動を取り上げた映画をきっかけに、話題が北欧と日本の価値観や、幸せのあり方へと広がっていきました。

「選択肢が多いことと少ないことのどちらが幸せなのか」、「北欧における手作りの物の多さや教育のあり方」など、北欧の文化や価値観を通し、私たちが暮らす日本における幸せとは何かについても考えを深めました。

一方で、近年日本ではメディアなどを通じ、北欧の国々の福祉や教育などの良い面が強調されがちである、という点にも気が付きました。北欧にも課題を抱える面があり、北欧の社会のあり方を理想化するのではなく、課題点も含めて考えることで、北欧そして日本の文化や社会について多様な点から理解する必要があると気づかされました。

〈ラボ全体の振り返り〉

北欧に心を惹かれるとびラーが、それぞれのお気に入りを持ち寄って共有した本ラボでは、北欧の絵画や建築、絵本やスポーツなど様々な視点から、なぜ私たちが北欧に魅力を感じるのかについて考えることが出来ました。

私はラボを通じて、北欧の美術や文化には「自然と人々の調和」や、「暮らしを心地よく整えようとする想い」があり、それが魅力に繋がっているのではないかと感じました。

ラボに参加したとびラーからは、「2回目のラボから対象を『美術』に限定せず、『文化全般』へと広げたことで、より多面的に北欧について知ることが出来た」、「その場にいる人でラボの中身を決めていける、とびラボらしい柔軟さがあった」「お気に入りの北欧の美術や文化を共有したい人も、他の人のお話をじっくり聞きたい人も、それぞれのスタイルで参加できるのが良かった」という感想が聞かれ、一人一人が無理なく参加し、北欧の美術や文化への興味を深掘りすることが出来るラボとなりました。

そして、私はこの秋から一年間、スウェーデンに留学をします。ラボを通じてとびラーと味わった北欧の美術・文化の魅力や、対話の中で生まれた新たな疑問について、現地での生活を通してさらに深めていきたいと考えています。


 

執筆:日比野花(14期とびラー)
現在都内の大学に通う大学三年生です。大学では学芸員課程を履修しています。とびラーの活動を通じて、一人一人が自分を受け止めてもらえる安心感を感じられる場や、そのような人と人のつながりを作るにはどうするべきかを学んでいます。

 

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