2023.10.07
・東京都美術館の正門から美術館内に向かう広場に野外彫刻があるのをご存じですか。「あの銀色の大きな球?」そうです。それだけではありません。東京都美術館には、いつでも会える10点の野外彫刻があります。私たち、東京都美術館のアートコミュニケータ、通称「とびラー」は、日々の活動の中で「野外彫刻っておもしろいかも?」と、その魅力に気がつき始めていました。
・東京都美術館の数少ない常設展示である野外彫刻を、多くの人と対話を通して鑑賞し、新たなコミュニケーションの場を作りたい。野外彫刻に関心を持っていただき、発見や楽しみを分かち合いたい。そんな思いでこの企画を始めました。
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(1)徹底的に楽しむ・
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・2023年4月のラボの立ち上げから約半年にわたる活動では、まず、自分たちが野外彫刻の魅力を徹底的に楽しむことから始めました。雨の日には、水に濡れて変わる素材の石の色や水滴の魅力、晴れの日には、光の反射、ひなたと日陰のコントラスト。新緑の背景、聞こえてくる鳥の声。季節や時間が違うことで様々な彫刻の顔が見えます。野外彫刻の足元に咲いている小さな花や、建物の色が彫刻に映る美しさも新たな発見です。近づいてみたり、離れてみたり。みんなでわいわいと話しながら、「よく見る」「感じる」「話す」「仲間の意見をよく聞く」のステップを踏むことで、一人では気がつかなかった多くの発見を共有していきました。その過程の中で、野外彫刻がどんどん愛おしく感じられて、「魅力を伝える」モチベーションが高まっていきました。
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(2)作品研究
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・次のステップでは、それぞれの作品研究を行いました。担当を決めて、作者の人となりや、エピソード、作品の背景や素材、他にはどんな作品があるのかなど、様々な角度から参考資料を当たり、手作りのスライドなどを使って発表会を行いました。メンバーの声で印象的だったのは、「事前にみんなで自由に作品を楽しんでいたから、作者の意図や背景がすっと胸に落ちた気がする。最初に調べて、頭でっかちになって作品を鑑賞しても、この面白さは味わえなかったのではないか。」という言葉でした。仲間と自分自身が調べた情報を共有することで、作品への愛着が深まっていきました。
(3)プログラムの検討
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・野外彫刻への高まる愛を胸に、この面白さをどう参加者に伝えることができるか、その方法の検討が始まりました。鑑賞する作品、グループの人数、スタッフの役割分担、タイムスケジュールなど多くのことを具体的に決めていきました。
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こだわり①
・私たちのプログラムでは、「自分が気になる作品を担当する」ことを大事にして、ファシリテータを務めるとびラーが希望する作品を自ら案内することにしました。どの作品も魅力的ですが、とびラーそれぞれの思い入れがある作品を案内する時の熱意は、必ず参加者に伝わって、いい結果を生むのではないかという考えでした。
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こだわり②
・楽しい鑑賞を行うためには、参加者が安全に安心して過ごしていただくことが不可欠です。実施を予定した9月は初秋とはいえ、暑い屋外で過ごすため、熱中症予防に鑑賞の合間に空調の効いた建物で一度休むコース設定や、水分補給の声かけを行いました。また、鑑賞するふたつの作品がある東門のエリアは、大きな木に囲まれて、館内にいながらにして自然を感じられる場所なのですが、なんと蚊が多い。そのため虫よけスプレーをサポート役が携帯し、必要に応じて使えるよう準備しました。
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(4)トライアルとアイスブレイク開発
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・プログラムの骨組みが決まると、とびラー仲間から参加者を募集して、本番さながらにトライアルを行いました。そこで寄せられた意見も反映しながらリハーサルを重ねて、安心・安全かつ、みんなで楽しめるプログラムへとブラッシュアップしていきました。
・あわせて検討したのは、作品鑑賞に入る前のアイスブレイクの時間をどう過ごして、頭と心のウォーミングアップを行ったらいいだろうかということでした。ここで誕生したのが「小さな立体を作るゲーム」です。
・まず、立方体、球体、円筒など、用意した様々な形の木材と石から、各自が3つ程度のパーツを選び、それらを組み合わせて立体作品を作ります。
・次に、全員椅子から立ち上がり、机の周りをまわって、360度からそれぞれの作品をよく見て鑑賞しあいます。その後、気になった作品が「どのように見えるか」、そして作った本人が「どういうイメージで作ったか」を語り合うゲームは、仲間の言葉から、自分では意図していなかったことへの気づきと共感があり、トライアルでも期待以上に盛り上がりました。
・作品を三次元でよく見ることの大切さ、鑑賞は自由であること、遠慮をせずに意見を声に出すことなどを体験し、グループで鑑賞するためのウォーミングアップになるという手ごたえを感じるものとなりました。
2.プログラムの実施
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・さて、いよいよ本番です。事前にホームページでお知らせし、一般応募いただいた方をお迎えして、同じ内容で2回行いました。
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開始前に気合を入れるメンバー
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開催概要
■開催日時: 2023年9月30日(土)と10月7日(土) 14時~16時
■参加人数: (9/30) 一般参加者 13名 とびラー:13名
・・・・・・・(10/7)一般参加者 14名 とびラー:17名
■会場:東京都美術館屋外エスプラナード及び東門、アートスタディルーム
■プログラム概要:参加者が4〜5名のグループに分かれ、アイスブレイクを経て、野外彫刻3作品を鑑賞する。室内に戻りグループごとのふりかえり、その後全体で鑑賞したなかでの発見や気づきを共有する。
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(1)開会~アイスブレイク
・冒頭ではアートスタディルームでスライドを使い、プロジェクトとプログラムの概要を説明し、みんなで野外彫刻を鑑賞するコツ「よく見る・感じる・言葉にする・よく聞く」で、自由に楽しみましょうとお伝えして、グループごとにプログラムがスタートしました。
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・まずはお互いのことを知り、発言しやすい場をつくるために自己紹介。アイスブレイク「小さな立体を作るゲーム」では、ひとつの作品をいろんな角度から鑑賞し、少し体を動かしたことで緊張もほぐれ、それぞれの自由な発想に「なるほど!」とうなずくうちに、自然と和やかな雰囲気になりました。さぁ、野外彫刻の鑑賞にわくわくしながら出発です。
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アイスブレイク「小さな立体を作るゲーム」
(2)作品鑑賞
・屋外には、正門から建物中央棟に向かう広場「エスプラナード」に大きな金属の球体や、直方体や立方体を組み合わせたもの、東口の入口近くの空間には文字が刻まれた巨石などの彫刻が展示されています。
・今回は全体で7点の作品を、3つ、グループ毎に選んで順番に鑑賞していきました。大きな作品を囲んで最初は自由に、周りをぐるぐる回りながら360度から見たり、離れてみたり、近づいたりしながら自由に鑑賞します。最初は遠慮しながら発言していた参加者たちも、ファシリテータの声かけで、ひとことずつ、つぶやくように気づいたことをシェアしていきました。そのうちに改めて作品を見直しながら「本当だ!」「確かにそうですね。」「こっちから見ると面白いよ。」と、どんどん発言が活発になり、グループのなかでの気づきが増えていきました。そして、2作品目、3作品目と鑑賞を重ねるうちに、すっかり打ち解けて、自然に言葉が交わされるようになり、鑑賞が深まっていく様子がはっきりと伝わってきました。
鑑賞の様子
・作品と作品の間の移動では、みんなでおしゃべりをしながら歩くのも楽しい時間でした。途中、にわか雨に降られて室内から作品を眺めたり、暑さを避けてアートラウンジで涼んだり。東口の手前にある大きなイチョウの木からは、たくさんのギンナンが落ちていて、踏まないようにそうっとつま先立ちで歩くのも、ちょっとした冒険気分でした。(2回目の開催時には、美術館の清掃の方にプログラムに合わせてギンナンをお掃除していただき、一同感激しました。)
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(3)ふりかえり~閉会
・約1時間の鑑賞を終えて、アートスタディルームに戻ります。参加者のみなさんの笑顔からは、充実した時間が伝わってきて、このプログラムの最大の目的であった「野外彫刻を楽しむ」ことは実現できたかなと胸が熱くなりました。
・アイスブレイクと同じ、グループごとのふりかえりでは、野外彫刻の鑑賞体験で気づいたことの話に花が咲きます。特に「美術館には何度も来ていたけれど、今まで通り過ぎていた野外彫刻がこんなに面白いものと気づくことができた。」「みんなで観ることで、自分ひとりでは気づかなかったことや、考え方を知ることができて楽しかった。」などの感想は、どのグループからも聞こえてきました。
・最後にとびラーから、それぞれのグループでどんな感想が出たかを発表して、全員で分かち合いました。みんなで観ること、言葉にすること、そしてそれを聞くことで得られる多くの喜びや、気づいたおもしろい疑問からは、今まで見えなかった世界の扉が開かれる機会となったことがうかがい知れました。
ふりかえりの様子
4.参加者の感想
・プログラム終了後にご記入いただいたアンケートから、参加者の声を一部ご紹介します。2回で計27名の参加者全員から「大変満足」の評価をいただいた結果に驚くとともに、改めて野外彫刻には多くの人を惹きつける魅力があることを確信しました。
(アンケートから抜粋)
・いつもきちんと見てあげていなかった作品たちを正面から横から後ろから見て、常設作品だからこそ数々の楽しみ方があるんだと気づくことができました。
・他の人の意見を聞くことで、自分だけでは考えられなかった視点を得ることができた。
・長い時間の予定でしたので心配でしたが、すぐに時間がたってしまって、とても楽しかったです。
・導入の作品づくりが楽しく、作品鑑賞の助けになりました。
・とてもゆったりしたタイムスケジュールで、みなさんとの鑑賞をたっぷり楽しむことができました。
・これからは街とかにあるオブジェにも心を向けてみようかなって思いました。
・彫刻作品と認識すらしていなかったものが、とてもおもしろいものに変化するという貴重な体験をさせていただきました。
・自由に意見を言える環境だったのがとても良かった。心理的安全性がとても大切だと再認識した。
・ファシリの方が導入してくださったことが、自然でじっくりたのしめた。
・季節が美しく、彫刻が一緒にすごしてくれてる感じ、又たのしんでみたいです。
5.最後に
・参加者のみなさんのすてきな笑顔に、改めてこんなに魅力的な彫刻たちにいつでも会えることの喜びをかみしめる場になりました。長い期間にわたって、それぞれの仲間が得意技を活かし、意見を重ねて作り上げた野外彫刻を楽しむプログラム。参加してくださったみなさんに心から感謝し、今回の一歩が、野外彫刻の魅力を知る喜びをさらに広げていくことを願っています。
・どうぞみなさん、次に東京都美術館にお越しの際は、ちょっと野外彫刻の前で立ち止まってご覧ください!そこにはきっと、新しい扉があります。
(東京都美術館の野外彫刻 https://www.tobikan.jp/archives/collection.html)
ありがとうございました!
執筆:11期とびラー 曽我千文
好きな野鳥のガイドをしています。対話型鑑賞には感動を分かち合う喜びのヒントがあると思い、とびラーになりました。生きとし輝けるもの全てに、それらを介した人とのつながりが生まれることを確信し、楽しくてしかたがないとびラーライフです。
2023.09.15
東京都美術館にある野外彫刻をご覧になったことがありますか。
美術館の庭を探検し、見つけた彫刻たちについて感じたこと、気づいたことをみんなで自由に話しながら、彫刻の魅力を味わう、楽しいひとときを過ごしましょう。
美術の知識や、彫刻の見かたは知らなくても大丈夫。彫刻ってこんなにおもしろいの?きっと発見がありますよ。
2時間のワークショップの中で、とびラー(アート・コミュニケータ)と一緒に作品を見ていきます。お気軽にご参加ください。
日時|
①2023年9月30日(土)14:00〜16:00 (13:45受付開始)
②2023年10月7日(土)14:00〜16:00 (13:45受付開始)
※①と②は同じ内容です。重複してのお申し込みはできません。
場所|東京都美術館
集合場所|東京都美術館交流棟2階アートスタディルーム
対象|16歳以上の方
定員|15名(先着順・定員に達し次第受付終了)
参加費|無料
参加方法|事前申込制。以下の専用フォームよりお申し込みください。
※特別に配慮が必要な方はお知らせください。
※小雨決行
①2023年9月30日(土)14:00〜16:00 (13:45受付開始)
②2023年10月7日(土)14:00〜16:00 (13:45受付開始)
※本フォームでのお申し込みが完了すると、「返信先Eメールアドレス」宛にメールが届きます。必ずご確認ください。
※お申込み前に「迷惑メール」などの設定を確認し、「@tobikan.jp」からの申込受付メールを受信できるようにしてください。申込完了の自動返信メールが届かない場合は、お申込みされたお名前と電話番号を明記のうえ、p-tobira@tobira-project.info(とびらプロジェクト)宛にメールをお送りください。
※広報や記録用に撮影・録音を行います。ご了承ください。
※定員に達し次第、申し込み受付を終了します。
2023.09.11
第4回鑑賞実践講座|「展示室で学ぶ場づくり 〜スペシャル・マンデーに向けて〜」
日時|2023年9月11日(月)13:00〜16:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ、ギャラリーA・B・C(『うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈 展』 会場)
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)、石丸郁乃(Museum Start あいうえの)
内容|
・「スペシャル・マンデー」の事前〜当日〜事後の流れを学ぶ
・当日の流れを展示室で体験する
・会場を知る
第4回の講座では、とびラーが活動する「Museum Start あいうえの」の学校プログラム「スペシャル・マンデー」に向けて、展示室での鑑賞の場づくりについて考えました。
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まず、「Museum Start あいうえの」のプログラム・オフィサーである石丸郁乃さんから、「スペシャル・マンデー」の概要と、事前授業〜当日の展覧会鑑賞〜事後授業まで行うプログラムの流れについてのレクチャーがありました。
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つぎにARDAの三ツ木さんからは、美術館の展示室で子どもたちの鑑賞をファシリテーションする際のポイントを、実際の鑑賞の様子を映像で見ながら解説してもらいました。
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その後、スペシャル・マンデー当日のプログラムの流れを体験し展示室での場づくりについてより具体的に考えていきました。
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(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)
2023.09.09
日時|9月9日(土)13:30〜16:00
場所|東京都美術館 講堂
講師・テーマ|
・村田陽次(東京都 生活文化スポーツ局 都民生活部 地域活動推進課)
・「やさしい日本語」
・山藤弘子(日本語教師)
・「生活者としての外国人と共に~地域の現場から~」
多文化共生をテーマに、お二人の講師を招いてお話を伺いました。
東京都の村田陽次さんからは、多文化共生を推進する東京都の取り組みについてお話を聞きました。外国にルーツを持つ方々への支援格差の問題や「やさしい日本語」の活用について、また多文化共生をめざす東京都や全国の美術館・博物館や劇場など様々な文化施設の取り組みも紹介されました。
二人目の講師として、日本語教師で、外国人住民と台東区の地域をつなぐ活動をしている山藤弘子さんからお話を聞きました。Museum Start あいうえの のやさしい日本語プログラムでは、山藤さんを通じて台東区の外国ルーツのお子さんとその保護者がプログラムに参加しています。(やさしい日本語プログラム過去の事例はこちら)
外国人住民が、地域を支える生活者として活躍できるよう、住民同士が日常的な関わりを続けていくことの重要性について伺い、とびラーも関心をもって聞いていました。
行政の取り組みと、地元での顔のみえる距離での関わりの両方があることで、多文化共生社会へとつながっていくことをお二人のお話から感じ、アート・コミュニケータが外国人住民との日本人の関わりを美術館を拠点としてつくっていく意義を再確認することができました。
(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)
2023.09.03
2023年春〜夏、とびラボ・荒木珠奈研究会を全4回で行いました。
荒木珠奈研究会とは?
とびラー対象の荒木珠奈展の事前勉強会後、「荒木珠奈展、とっても面白そう、みんなで荒木珠奈さんや作品について研究してみたら絶対楽しい!」と意気投合した3人が研究仲間を募集してスタートしたラボです。初回でラボの目的を「荒木珠奈さんのことや作品について研究することで、展覧会の鑑賞をより楽しめるようになりたい」と共有し、毎回色々な方法で荒木珠奈さんや作品に迫っていきました。
『うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈』 会期:2023年7月22日(土)~10月9日(月・祝) :https://www.tobikan.jp/hajimarihajimari/
研究方法の一つは、ラボ参加者=研究員、が各々で集めた資料を持ち寄り、シェアをすること。絵本やチラシ、過去の展覧会の図録や紹介動画、関連の論文(!)など、たくさん集まりました。研究員それぞれの関心やコメントが多様で、興味深く聞きあい、コメントを交わしながら、みんなで理解を深めていきます。
また、研究員の一人に銅版画を学んでいた方がいてお話をきくことができた回も。凹版画の基礎、技法の解説、版画のエディションまで話が及び、貴重なお話の数々にみんな興味津々でした。ガスマスクをつけて銅板を腐食する方法もあるという話では、他の研究員から驚きの声が!
さらにある回では、荒木さんと縁が深く作品のモチーフにも多く登場するメキシコに焦点をあて、メキシコ留学経験のあるとびラーからお話を聞きました。お話から鮮やかに想像される、メキシコの風土や文化、住んでいる人の人柄…。荒木さんはメキシコをどのように体験し、それがどんな風に作品に反映されているのだろう?ますます興味が深まります。
研究会が3回を終えた頃、荒木珠奈展がスタートしました。ラボでの体験と実際の作品たちへの溢れんばかりの期待を抱えて、研究員それぞれの鑑賞体験とファシリテーターの実践が始まりました。
そして、一か月ほどの期間を空けて再び研究員が集合し、それぞれの荒木珠奈展体験をシェアしました。
気になった作品はあった?から話し出すと、研究員それぞれの話が止まりません。自然と始まるVTS(対話型鑑賞)。荒木さんの作品は見れば見るほど、面白い!とみんなで興奮気味にコメントを交わしました。
ラボを振り返ってみると…。ラボで知ったことや感じたことが、深くみることに繋がった。ファシリテーターへの自信に繋がった。などの声が。それぞれの研究員がラボでの研究と実際の展覧会での鑑賞、ファシリテーターの実践が繋がった感覚を持ち、展覧会を楽しんでいることをシェア出来ました。
ここで一旦、荒木珠奈研究会は解散。ですが、ラボ解散後も展覧会の会期は残っていました。みんなで話したことをファシリテーターに活かそう、研究員同士で盛り上がったこの作品を誰かと見てみよう、そんな、「これから」に繋がる話がたくさん聞かれた最終回でした。
ラボ内で共有された資料は、研究員のみに留まらず、“荒木珠奈展ファシリテーター⇒ケエジン”の皆さんも閲覧できるようになったりと思いがけない展開もありました。この作品、この展覧会が好きだな、気になるな…そんな小さな芽が誰かと共有されたことから始まったラボ。みんなで調べ、みんなで見て、話す。たくさんの人の視点や経験を分け合うことで、それぞれの見方が広がり、作品との出会いが豊かになる。そしてそれがまた別の誰かの豊かな体験にも繋がっていく。そんなことが実感できたラボでした。
執筆:足立恵美子(11期とびラー)
アートや美術館の持つ力と人の持つ力が掛け合わされると、
2023.08.28
第3回鑑賞実践講座|「ファシリテーション基礎(2)」
日時|2023年8月28日(日)10:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム・スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)、ARDAコーチ5名
内容|
・Visual Thinking Strategies ファシリテーション分析
・Visual Thinking Strategies ファシリテーション実践
第3回は、前回に引き続き、NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)の三ツ木紀英さんから、Visual Thinking Strategies(ビジュアルシンキングストラテジーズ:複数の人で対話をしながら作品を鑑賞する手法。略称:VTS)におけるファシリテーションの基礎を学ぶ2回目です。
・
午前は、前回の講座でとびラーが見つけたファシリテーションのポイントを思い出しながら、少人数のグループで全員がファシリテーションを実践してみました。
午後は、ARDAコーチによる鑑賞プログラムのファシリテーションを体験し、作品を豊かに鑑賞するための場(プログラム)のデザインを観察・分析をしました。
(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)
2023.08.27
第3回建築実践講座|「建築の見方・楽しみ方を知る」
日時|2023年8月27日(日) 14:00~16:00
会場|東京都美術館 講堂
講師|倉方俊輔 / 大阪公立大学 教授
建築の素材や建築家、年代などの情報からではなく、
「建築を鑑賞する」という新しい観点について、倉方先生からお話を伺いました。
また、美術作品と建築との違いや共通点、建築を保護・保存するために私たちが何をできるのか。視野の広いお話を伺いました。
とびラーのふりかえりを抜粋します。
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・現地まで赴き、空間を体験し、思考を巡らせるお話から(五感で)空間を感じることが本物の「建築鑑賞」ではないかと思った。
・建築と空間という概念が結びついていることがとても印象的で、現地への移動、建築とその周辺を含めた空間を体験すること、そこで思考を巡らせることが建築鑑賞にあたることを意識できた。
・お話を聞くことで私のような非建築関係者でも建築鑑賞を自由に楽しんでいいこと、またそのような人が増えていることを聞くことができてとても良かったです。とびラーとして、同じように感覚的に建築を楽しむことをこれからいろんな人と共有できる機会があればいいなと思いました。
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(とびらプロジェクト コーディネータ 工藤阿貴)
2023.08.14
第2回鑑賞実践講座|「ファシリテーション基礎(1)」
日時|2023年8月14日(月)10:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム・スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))、ARDAコーチ5名
内容|
・鑑賞体験
・ファシリテーションのポイント観察
・Visual Thinking Strategies ファシリテーション実践
第2回からは、NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)の三ツ木紀英さんを講師に迎え、Visual Thinking Strategies(ビジュアルシンキングストラテジーズ:複数の人で対話をしながら作品を鑑賞する手法)におけるファシリテーションを学びながら、作品をよりよくみることや、アートを介したコミュニケーションの場づくりについて考えていきます。
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第2・3回は、ファシリテーションの基礎を学ぶ2日間です。
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第2回の午前は、三ツ木さんがなぜアートを介した人々のコミュニケーションの場を生み出す活動をしているのか、そのはじまりを伺いながら、とびラー自身がこの講座を通して学び、活動を作っていく目的について考えを巡らせました。
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・
また、三ツ木さんがファシリテーションする鑑賞の場を観察し、三ツ木さんの振る舞いや声かけやその意図について、とびラーが見つけたことをもとに議論をしながら理解を深めていきました。
午後は、グループに分かれ、ARDAのコーチの皆さんのファシリテーションを観察し、とびラーも実践を行いました。
(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)
2023.08.14
ライトアップされた東京都美術館を散策する金曜夜限定の40分ツアーです。
夜ならではの建物のみどころをとびラー(アート・コミュニケータ)がご案内します!
美術館全体が、まるで宝石箱のような輝きを放つ夜。昼とは違うその表情を一緒に楽しみませんか?
※東京都美術館の夜間開館日に合わせて実施いたします。事前申込が必要です。
日時|
① 2023年9月 8日(金) 19:05 – 19:45(受付開始18:50)
② 2023年9月22日(金) 19:05 – 19:45(受付開始18:50)
会場|東京都美術館
集合|東京都美術館 LB階(ロビー階)中庭 正面玄関右手/雨天時は講堂前
対象|どなたでも
定員|各回20名(先着順・定員に達し次第受付終了)
参加費|無料
参加方法|事前申込制。以下の専用フォームよりお申し込みください。
① 9月8日(金)のご参加
② 9月22日(金)のご参加
【申込の際にお願い】
1)参加される方のお名前でお申込みください。
2)複数名での参加を希望の場合、参加希望のそれぞれ1人ずつの申込が必要です。
※小学生以下のお子様が参加される場合は、その他連絡事項欄に年齢のご記入をお願いします。
※特別に配慮が必要な方はお知らせください。
※定員に達し次第、申込み受付を終了いたします。
※本フォームでのお申し込みが完了すると、「返信先Eメールアドレス」宛にメールが届きます。必ずご確認ください。
※お申し込み前に「迷惑メール」などの設定を確認し、「@tobikan.jp」からのメールを受信できるようにしてください。申込受付完了の自動返信メールが届かない場合は、お申込みされたお名前と電話番号を明記のうえ、p-tobira@tobira-project.info(とびらプロジェクト)宛にメールをお送りください。
※広報や記録用に撮影を行います。ご了承ください。
2023.08.05
日時|2023年8月5日(土)14:30~17:00
場所|東京都美術館 ロビー階第3公募展示室(「アート・コミュニケーション事業を体験する 2023」会場内)
講師|西智弘(川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター腫瘍内科/緩和ケア内科、一般社団法人プラスケア)
「アート・コミュニケーション事業を体験する 2023」の会場となった東京都美術館の公募棟展示室にて、川崎市立井田病院の医師であり、一般社団法人プラスケアで「暮らしの保健室」などの運営に携わる西智弘さんからお話を伺いました。
医療の現場で注目され始めた、「社会的孤立」という現代の病に対して、薬ではなく「地域での人のつながり」 を処方する「社会的処方」について、また、人と地域とのつながりをうみだす「リンクワーカー」というはたらきについて共有していただきました。
会場では、「アート・コミュニケーション事業を体験する 2023」にいらした来場者や任期満了したアート・コミュニケータも西さんのお話に耳を傾け、議論に参加しました。
「暮らしの保健室」がある川崎では、2024年春から川崎市と東京藝術大学が連携したアートコミュニティを育むプロジェクト「こと!こと?かわさき」がはじまります。西さんもプロジェクトに関わっており、川崎の街でもアートコミュニケータと活動をつくられていくそうです。
これからもますますアートを介したコミュニティの輪が広がっていくことが期待できるアクセス実践講座第3回でした。
(とびらプロジェクトコーディネータ 越川さくら)
川崎市のアート・コミュニケータ始動!
「こと!こと?かわさき」では、今年度からあらたにアートコミュニケータ「ことラー」を募集しています。
詳しくはこちら→https://kotokoto-kawasaki.com/